月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-逢魔が時に龍が舞う

逢魔が時に龍が舞う 第34話 政治

尊と約束した通り、葛城陸将補は行動を起こした。何の勝算もない行動だ。だが第七七四特務部隊の部隊長とはいえ、一軍人に過ぎない葛城陸将補には、それしか出来ることがないのだ。 久しぶりに訪れた新都心。高層ビルが立ち並ぶ新都心の道路を徒歩で進む葛城…

逢魔が時に龍が舞う 第33話 裏切り

桜木学園襲撃。場所でいえば、それは第七七四特務部隊本部への襲撃と同じ。それを桜木学園襲撃とするのは、特務部隊の戦闘員のほぼ全員が別の場所にいた為に、襲われたのは隊員ではなく候補生だけだったこと。桜木学院生徒が襲撃されたということだ。 その結…

逢魔が時に龍が舞う 第32話 見えてきたもの

尊が桜に会っている間、精霊科学研究所内にある訓練室で汗を流していた天宮。訓練で時間を潰すだけであれば、そもそも研究所まで付いてこなければ良いのだが、天宮はそう考えない。何故、そう考えないかも考えないほど、鈍感なのだ。 一応、それらしい理由は…

逢魔が時に龍が舞う 第31話 黒幕

低いモーター音が部屋の中に響いている。それほど大きな音ではないのだが、地下にあるこの部屋の作りが、そこにいる人々の沈黙が、それを彼等の耳に届けてしまうのだ。 ここは、いくつもある『YOMI』のアジトの一つ。その中でも幹部だけが知る特別なアジ…

逢魔が時に龍が舞う 第30話 今度こそデート

第七七四特務部隊に休日の定めはない。鬼が出現し、出動の要請があれば、いつでも現場に向かうことになる。とはいえ、日ごとに分隊の出動優先順が決められていて、それが最下位の分隊員は、割と自由にその日を過ごしている。外出も許可されるのだ。 今日は遊…

逢魔が時に龍が舞う 第29話 こんなはずでは

第七七四特務部隊の次の任務は、その難度を増している。今回の作戦も『YOMI』のアジトの襲撃。それを一分隊だけで実施しようというのだ。もちろん、前回よりも敵の数は少ない。確認されている敵の数は二人。それに対して一分隊を当てるのだから、数の優…

逢魔が時に龍が舞う 第28話 影

湾岸南地区にある『YOMI』のアジト。以前、国防軍に襲撃されたアジトとは別のものだ。多くのメンバーにとって、アジトなんて特別なものではない。仲間が集まっていて、そこで寝起きしていれば、そこがアジト。そういうことだ。 「そう……ミコトくんが、そ…

逢魔が時に龍が舞う 第27話 逆襲

湾岸西地区の旧海岸通り沿い。海に面したその場所に立ち並ぶ大きな建物群は旧倉庫街だ。空港にもほど近いその場所は、首都圏における物流の中心地とされた場所の一つ。大震災が起こる以前であり、空港や高速道路、そして倉庫街そのものも半分が海に沈んでし…

逢魔が時に龍が舞う 第25話 知ってしまった想い

怪我を負った尊は、軍の病院に入院させられている。場所が軍管轄の病院というだけで治療に携わっている人間のほとんどは、精霊科学研究所の研究員だ。尊の怪我は激しい運動を控えることと、定期的に薬や包帯を替えれば良いだけで、これ以上、特別な治療は必…

逢魔が時に龍が舞う 第26話 兄妹喧嘩

尊の入院は予定通り一ヶ月で終わった。精霊科学研究所にとっては納得出来ない退院だ。検査の結果は異常なし。尊が持つ特殊能力の元となるようなものは何も見つけることが出来なかった。かといって入院の延長も出来ない。それ以上、何を検査すれば良いのかも…

逢魔が時に龍が舞う 第24話 八つ当たり

第七七四特務部隊の定例会議の場は、重苦しい雰囲気に包まれている。先日発生した遊撃分隊に対する襲撃。それはYOMIとの戦いが本格化したことを示している、と考える参加者は多い。そうであるなら第七七四特務部隊に勝ち目はあるのか。難しいと考えるの…

逢魔が時に龍が舞う 第23話 厄介者

救出された今泉の配属先が変わった。尊と同じ遊撃分隊への異動だ。これはヒアリングによって分かったことを、十分に検討した結果の措置。もちろん、その検討に尊は関わっていない。関わっていれば、その時点で尊は異動に反対したはず。そうであっても異動と…

逢魔が時に龍が舞う 第22話 救出作戦

第七七四特務部隊本部にあるオペレーター室。今、そこに全特務部隊員が集合している。全員といっても集まれる隊員だけ。それが出来ない隊員もいる。彼等が集まっているのは、その集まれない隊員の為だ。 オペレーター室では、無線の声が流れている。第七七四…

逢魔が時に龍が舞う 第21話 嫌いな理由

尊は鬼の所在を探知出来る。この事実は秘密にはならなかった。あくまでも第七七四特務部隊内、そしてその特務部隊の存在を知る人々の間では、という条件付きだが。 隠しても意味はない。その事実を証明する尊の行動はショッピングセンターでの事件が初めてで…

逢魔が時に龍が舞う 第20話 分析

天宮から甘さを指摘された尊への尋問だが、実際にそれで終わるはずがない。 相手に肉体的、精神的苦痛を与えて真実を追究するという手段は、前時代的なものだ。今の時代にそれを行えば、絶対に弾三者に知られない状況であれば別だが、かなりの確率で職を失う…

逢魔が時に龍が舞う 第19話 尋問ゲーム

本部の会議室。緊張した面持ちで座っているのは葛城陸将補と立花遊撃隊指揮官、そして二人の向かい側に座る天宮だ。その天宮の隣に座る尊は、いつもの様にぼんやりした雰囲気をまとっている。これから問い詰められるのは、尊だというのに。 ショッピングセン…

逢魔が時に龍が舞う 第18話 初デート?

特務部隊員といっても普段は、兵士としての調練を行っている時間以外はだが、普通の生活をしている。住んでいるのは桜木学園内の合宿所。部屋でテレビを見たり、仲間たちと馬鹿騒ぎをしたり、人によってはゲームを楽しんでいたりと、同世代の人たちとそう変…

逢魔が時に龍が舞う 第17話 わずかな真実

『YOMI』の襲撃を受けた翌日。第七七四特務部隊の本部で天宮は葛城陸将補を問い詰めていた。よく一晩待っていられたなと思うくらいの勢いで。 隣で話を聞いている立花分隊指揮官は、その勢いにハラハラしている。 「彼は『YOMI』と繋がりがあります…

逢魔が時に龍が舞う 第16話 敵味方

尊たちは精霊科学研究所を出て、帰路についた。すっかり日は暮れている。樹海の間を縫うように走る暗い夜道を尊たちが乗った装甲車は進んでいた。 車内の雰囲気は複雑だ。尊は珍しく顔に笑みを浮かべている。妹の桜に会えた嬉しさがまだ残っているのだ。 そ…

逢魔が時に龍が舞う 第15話 死者との出会い

精霊科学研究所は富士山のふもとに広がる樹海の中にある。樹海の中を走る道路から少し奥に入ったところ。高い木々に囲まれた五階建ての雑居ビルのような建物だ。もちろんそれは偽装で本当の精霊研究所はその建物の地下深くにある。 建物の中に入って、どこに…

逢魔が時に龍が舞う 第14話 働く理由

第七七四特務部隊の本部には陸士たちの机もある。ほとんど使われることのないその机だが、今はそこに尊が座っていた。教科書を開いて熱心に勉強をしている尊。だが熱心さと勉強の進みは必ずしも比例するわけではないようだ。腕を組んで「うんうん」唸ってい…

逢魔が時に龍が舞う 第13話 見捨てられた土地

湾岸地区は国から見捨てられた場所。こんな風に言われるくらい、震災後の復旧が進んでいない。被害が甚大であった湾岸地区を復旧するには、ただ元に戻すだけでなく、津波も含めた地震対策を施すことも必要で、それには莫大な費用がかかる。それよりも新都心…

逢魔が時に龍が舞う 第12話 年齢詐称?

第七七四特務部隊の臨時会議。定例会議では見ない顔まで揃っている。前回任務の内容はこれまでの考えを大きく変えてしまうもの。その異常事態に関係部署の責任者が全て集められているのだ。今、報告に立っているのは公安調査局。 「鬼が組織を形成していると…

逢魔が時に龍が舞う 第11話 YOMI

天宮の登場は絶望的な状況であった第五分隊にとっては救いの神。そして敵にとっては。 倒れた仲間を一瞥しただけで、それ以上の興味は全くないという様子で、残りの鬼が天宮に近づいてくる。別におかしなことではない。鬼には人としての感情などない。ただ殺…

逢魔が時に龍に舞う 第10話 意地

灯りの消えた都会のビルの森を進む天宮。所々にある非常灯の明かりのおかげで、闇に視界を完全に閉ざされるまでには至っていないのは救いだ。部隊に用意してもらった暗視ゴーグルではあるが、このような状況の戦闘などは想定しておらず装着しての訓練など行…

逢魔が時に龍が舞う 第9話 指揮官の憂鬱

夜空に響くプロペラの音。陸軍配備の汎用型ヘリBH-60JAを改造して様々な電子機器を組み込み、第七七四特務部隊の指揮車両と同等の機能を持たせた特殊ヘリだ。そのヘリに乗って遊撃分隊は目的地に向かっている。本来は非番であった彼らに緊急出動命令が出たの…

逢魔が時に龍が舞う 第8話 初仕事

現場に向かう指揮車両。第七七四特務部隊遊撃分隊の指揮車両だ。今日が遊撃分隊にとっての初仕事とあって、車両の中には緊張した雰囲気が漂っている。 その雰囲気は、もっぱら立花分隊指揮官が醸し出しているもの。防衛技官である立花分隊指揮官は本来、本部…

逢魔が時に龍が舞う 第7話 嫌よ嫌よも?

天宮の戦闘訓練の相手をすることになった尊。剣を持っての立ち会いだ。以前、尊が見た天宮の戦い方は精霊力を剣と盾に変えての近接戦闘。光の剣はかなり自由に形を変えられるようなので近接戦闘だけというわけではなさそうだが、得手であることは間違いない…

逢魔が時に龍が舞う 第6話 学園生活

桜木学園の体育館。体育館と呼ばれているが実態を考えれば武道館と呼ぶほうが相応しい場所だ。建物の窓という窓は全て閉め切られ、その上には黒い暗幕が張られている。外から中の様子が窺えないように施された体育館の中で行われているのは、特務隊員や候補…

逢魔が時に龍が舞う 第5話 思惑

第七七四特務部隊の定例会議の日。後方支援要員を入れても二百人にも満たない小さな組織の会議だが、その参加者はそうそうたるメンバーだ。 国防軍のトップである国防省長官、情報機関からは国防軍情報部長および公安調査局長。政府からも国家安全保障担当大…