ファンタジー小説-悪役令嬢に恋をして
ランスロットとマリアの無理心中。この結末は、グランフラム王国にとって思いもよらない出来事だった。だが驚き、悔やむだけで他には何も出来ない。 そうなる状況を作ったリオンを罰するにも、リオンが行ったのは、ランスロットとマリアを引き合わせただけ。…
捕らわれたマリアがいるのは王都の城に昔から存在した監獄塔。身分の高い者が罪を犯した場合に、閉じ込めておく場所だ。 監獄塔と呼ばれているが待遇は悪くない。部屋はそれなりの広さがあり、掃除も行き届いている。ベッドのシーツは毎日変えてもらえるくら…
一進一退の攻防を繰り広げていたグランフラム王国とグレートアレクサンドロス帝国の頂上決戦は、最後はその言葉通りに、アーノルドとランスロットの一騎打ちとなった。お互いに、それを望んでいたのだ。成るべくして成ったというところだ。 戦いが一騎打ちに…
マーキュリー率いる黒色騎獣兵団の千名は無事、貧民街の者たちを回収して、後方に下がろうとしている。当然、帝国はそれを許すまいとして、懸命に防いでいる。マーキュリーの部隊の前に立ち塞がっているのは、グランフラム王国を裏切った部隊だ。それが陣形…
まさかの自軍兵士の裏切り。この事態の収拾を図るために近衛騎士団を率いて、前線に向かって駆けているアーノルド。あと少しという位置まで来たところで、前方で雷鳴が轟いた。 突然、巻き起こった激しい雷は戦場に直撃。兵士が大混乱になっているのが、アー…
初戦こそ、グランフラム王国側の大勝という形で決着がついたが、その後の戦いは一進一退という状況だ。 グレートアレクサンドロス帝国は、本来の戦法に戻して、グランフラム王国軍の陣地に、激しい砲撃を行った。だが、初めこそ、大いに混乱したグランフラム…
自軍に向かって、グランフラム王国の陣地の間を、もの凄い勢いで駆けてくる騎獣の群れ。それに気が付いたグレートアレクサンドロス帝国軍の指揮官は、すぐに前線に出て、敵陣地を攻撃している歩兵爆撃隊に撤退の命令を下し、それと同時に、後方に控えている…
グレートアレクサンドロス帝国の決断は出撃だった。調査の結果、南部崩壊の原因は、地下に広がっていた空間が崩落した為だと分かった。その地下空間が何かを、帝国は知っている。それが南地区だけでなく、他の方面にも広がっている事も。更なる崩落が起これ…
グランフラム王国とグレートアレクサンドロス帝国の戦いは、当事者たちの予想を大きく覆して、グランフラム王国優勢に進んでいる。 不思議の国傭兵団によるバンドゥ南部の制圧は、とっくに完了。占領地の実効支配を進めるとともに、その他の街へ、民衆の叛乱…
ランスロットの決断で、グレートアレクサンドロス帝国は、帝都を出ての決戦を挑む準備に入った。帝国騎士団、帝国兵団では、これまで以上に厳しい鍛錬が行われるようになり、それは国軍にも波及していった。騎士団や兵団の緊迫した様子に、国軍の将官も只事…
ランスロットにとって、この数ヶ月は何だか夢の中にいるような気分だった。事態が次々と変化して、何が何だか分からないまま時間だけが過ぎて行き、気がついた時には、グレートアレクサンドロス帝国を取り巻く環境は一変していた。グレートアレクサンドロス…
グレートアレクサンドロス帝国軍の、かなりの数が帝都を発って、南下したという情報を受けて、グランフラム王国軍は動き出した。予定通りの進軍だ。 予定外だったのは、帝都へ向かう途上の街が、次々と白旗をあげて傘下に入ってきた事。しかも、それを成した…
街の中央広場に、多くの住人たちが集まっていた。普段はない柵の周囲に集まった住人たちは、不安気な表情で、中央に設けられた処刑台を見つめている。これから公開処刑が始まるのだ。 この街で公開処刑が行われるのは初めての事だ。まして、これから処刑され…
グランフラム王国と不思議の国傭兵団の二度目の軍議。今回、不思議の国傭兵団からは、リオンとアリスだけが出席している。 軍議といっても、まず最初に話し合われるのは報酬などの条件。グランフラム王国と不思議の国傭兵団の契約は、まだ結ばれていないのだ…
不思議の国傭兵団は、カマークを出て、駐屯地にしている周辺の村に向かったのだが、リオンは同行せずに、カマークに残ったままだった。これからの事を打ち合わせる為だ。 打ち合わせの場所は、カマークのフォルスの店。敷地の奥にある、許された者しか入れな…
リオンたちは朝からカマークに向かっている。グランフラム王国の依頼を受けるためだ。 アリスは検討して返事をするとアーノルドに伝えたが、依頼を受ける事は初めから決まっていた。そうでなければ、バンドゥに現れる必要はないのだ。返答を先延ばしにしたの…
グランフラム王国軍による追撃で、グレートアレクサンドロス帝国軍の混乱は激しさを増し、完全に戦うどころではなくなってしまった。兵士の混乱を治めるべき指揮官の大半が、すでに逃げ出してしまっている事が大きかった。 グレートアレクサンドロス帝国軍に…
城壁の上から西を望むとグレートアレクサンドロス帝国軍の姿が見える。遂にカマークに到着したのだ。 まずは陣地を固めようとところなのだろう。その場から近づいてくる事はなく、何やら慌ただしく動いている様子が見える。 この距離でもすでに大砲の射程内…
初戦を、ほぼ完敗という結果に終わったグランフラム王国ではあったが、グレートアレクサンドロス帝国軍がすぐに侵攻を開始しなかったおかげで、どうにか軍を立て直す事が出来た。 バンドゥが四方を山に囲まれていた事も幸いだった。兵士は逃げたくても逃げる…
マリアにとってグランフラム王国との戦いは、決して負けられない戦いになる。ここで負けるような事態になれば、自身の軍部への影響力は失われる事となり、それが帝国全体への影響力の低下に繋がる事はマリアにも分かっている。 皇后としてただ奥にいるだけの…
まさかのメリカ王国侵攻作戦の失敗に、グレートアレクサンドロス帝国は浮足立った。先行軍として送り込んだ二万のうち帰還出来たのは、わずか四割に過ぎない。銃や大砲は全て戦場に放棄され、その損失もかなりのものだった。 すぐに後続軍を送り再侵攻を図ろ…
グランフラム王国にグレートアレクサンドロス帝国の使者が現れた。用件は聞くまでもなく分かっている。降伏勧告の使者だ。 追い返しても良いのではないかという意見もあったが、アーノルドは話だけは聞くことにした。降伏勧告を受け入れる余地があるという事…
ファティラース王国が消失した事でグレートアレクサンドロス帝国は、旧グランフラム王国領のほぼ全てを手にした事になる。バンドゥとその周辺が残っているが、旧グランフラム王国領全体で見れば辺境のわずかな土地に過ぎない。グレートアレクサンドロス帝国…
バンドゥ南部の領境は、今はファティラース王国との国境だ。その国境の砦で両国の交渉が行われていた。同盟交渉という名目で始まった交渉ではあるが、今では中身が変わっている。ファティラース王国は領地の支配力を失いかけていて、国としての体を成さなく…
北部、旧ウィンヒール王国領に侵攻するだけの軍勢は今のグランフラム王国にはいない。領土拡大の機会ではあるが、それは諦めざるを得ない。その上でアーノルドは何か出来ないかを考えた。国の為ではなく民の為に。その結果、思い付いたのは。 「……北部に物資…
帝都防衛戦において多くの犠牲を出したグレートアレクサンドロス帝国は、軍の再建に専念しており、軍事行動を控えている。ただその期間は、グランフラム王国が考えているよりも、遥かに短くなるはずだ。 帝国における軍の再建とは戦いで失った銃火器、そして…
グランフラム王国による王都奪回作戦は失敗した。元ウィンヒール王国貴族の裏切りもあって、グレートアレクサンドロス帝国はその支配地域を更に拡大する事となっている。旧グランフラム王国領の西部全域、北部の八割、南部についてもすでに過半がグレートア…
アーノルド王太子が近衛騎士団を率いて、マリアの親衛隊との戦いを優勢に進めている頃。グランフラム王国軍全体は、グレートアレクサンドロス帝国の砲撃によって崩された陣形の再構築に必死の状況だった。 大砲の射程外に部隊を後退させようとしても、砲撃は…
グランフラム王国軍の本隊二万がカマークを発って二ヶ月。グレートアレクサンドロス帝国から一切の攻撃がないままに、旧グランフラム王都、現アレクサンドロス帝都トキオにたどり着いた。ウィンヒール方面から移動してきた別動隊三万も同じ。何事もなく進軍…
ウィンヒール王国を崩壊させ、その力をほぼそのまま吸収したグランフラム王国は王都奪回へと動き出した。これがグレートアレクサンドロス帝国の望む通りの展開だと知りもしないで。 ただ仮に知っていたとしても、グランフラム王国の決断は変わらなかっただろ…