月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-災厄の神の落し子

災厄の神の落し子 第21話 無自覚な出会い

騎士養成学校の毎日は午前中は戦術基礎の講義。午後はひたすら体力作りの授業となっている。元々、素人を一から従士見習いに育て上げる為に考えられた授業内容だ。入学当初は基礎、基礎、基礎。ひたすら基礎を叩き込まれる期間となっている。 これを物足りな…

災厄の神の落し子 第20話 悔恨の情

燃え盛る炎が建物を包んでいる。建物はかなり大きな屋敷だ。だが四方八方から一斉に火をつけられては、建物すべてに燃え広がるまでに多くの時間は必要としなかった。炎の熱で窓のガラスが砕け散る。窓から吸い込まれた空気が、また炎の勢いを盛んにする。逃…

災厄の神の落し子 第19話 帰り道

帝都からイザール侯爵領までは馬で三時間ほど。近いと言える距離ではない。帝都に屋敷を借りることも検討されていて、実際に物件を探してもいる。ただ侯爵家の子息が住むに相応しい、ローレル本人はそういうことはまったく気にしていないが、屋敷となると、…

災厄の神の落し子 第18話 再会の時

騎士養成学校の初日は帝国建国の歴史についての講義で終わり。本格的な騎士候補としての鍛錬はなかった。それを物足りなく思う新騎士候補生も多いが、さすがにそれは気持ちが逸り過ぎ。一日目はこんなものだ。今日は授業の日ではなく、新騎士候補生を迎える…

災厄の神の落し子 第17話 入学初日から問題発生

入学式を終えた新入騎士候補生たちは、そのまま講義室に移動。授業を受けることになった。授業といっても、その中身は剣術でも戦術講義でもなく、帝国建国の歴史。さらにいえば、初代皇帝アルカス一世の偉大さが語られるもの。入学式の延長、は言い過ぎだが…

災厄の神の落し子 第16話 帝立帝国騎士養成学校

帝立帝国騎士養成学校の校舎は帝都の第一層、皇城の外周部にある。十一代皇帝サウラク二世の肝煎りで設立された騎士養成学校。皇帝が視察しやすいようにという理由もあって、帝都の中心部に校舎が作られたのだ。 今日そこに新たな騎士候補生たちが加わること…

災厄の神の落し子 第15話 逸材なんてものは

リルはさらに忙しい毎日を送ることになった。ノトス騎士団の訓練に参加することになったのが、その原因だ。 朝は馬飼の仕事をしながら、プリムローズとローレルの馬術の訓練に付き合う。今はもう馬術の訓練と言えるくらいになった。ただレイヴンとルミナスに…

災厄の神の落し子 第14話 やっぱり、可愛いは武器

宿舎での共同生活が始まった。リルにとっては、まさかの状況。一晩は成り行きから仕方がないことだと思う。止める、止められる存在もその場にはいなかった。だが夜が明け、プリムローズとローレルの二人が宿舎に泊まったことは周囲にも知られたはず。当主で…

災厄の神の落し子 第13話 早過ぎるプロポーズ?

食堂を出たプリムローズの足は止まらない。珍しく怒りの感情を表に出し、彼女らしくない荒々しい足音を立てて、といっても小さな彼女では音の大きさはたかがしれているが、玄関に向かって行く。 あとを追いかけているローレルはその様子にかなり焦っている。…

災厄の神の落し子 第12話 それぞれが望む未来

イアールンヴィズ騎士団の拠点は帝都の第五層。農地と帝国騎士団施設がある地域にある。帝国騎士団施設があるからそこに拠点を設けた、のではない。帝都の中心に近くなれば近くなるほど土地も建物も高くなる。手ごろな価格で手に入れられる第五層で探し、良…

災厄の神の落し子 第11話 心通う

リルは、他の使用人たちがいない、専用の宿舎で暮らしている。前任者が使っていた場所をそのまま与えられたからだ。何故、前任者はこのような特別待遇を得られたのか。レイヴンの世話を出来る馬飼がその人しかいなかったからだと、リルは思っていたが、実際…

災厄の神の落し子 第10話 進路未定

騎士養成学校。正式名称は帝立帝国騎士養成学校だ。歴史は長くて百年近くになる。それでも帝国建国からは二百年以上経ってからの創立。それは帝国騎士団の要員不足が問題化したのが、その頃だったからだ。騎士養成学校は定員不足、成り手不足を補う為に広く…

災厄の神の落し子 第9話 これは出世なのか?

リルはまたイザール候に呼び出された。今回は用件が分かっている。プリムローズを守るということを口実にして、ラークの従者を叩きのめした。相手はイザール候の息子であるラークの従者だ。咎められることは、やる前から分かっていた。分かっていたが、黙っ…

災厄の神の落し子 第8話 変わっていく日常

プリムローズの日常は以前とは大きく変わった。兄のローレルと共に過ごす時間以外は、自室に引きこもって本を読み続けている毎日だったプリムローズ。今は違う。午前中は第二馬場に行って馬術の稽古、といってもルミナスの朝の運動時間に乗り手となっている…

災厄の神の落し子 第7話 馬飼の仕事、ではない

リルの毎日はレイヴンとルミナスの二頭の馬の世話、それとプリムローズ、そしてローレルの世話、という言い方はローレルが怒るだろうが、も加わった。馬に乗る練習だけでなく、剣の訓練についても二人一緒に行うことになったのだ。 リルとしては、本音は、迷…

災厄の神の落し子 第6話 悠久の時を超えて

リルはイザール侯に呼び出された。面と向かって会うのはこれが二度目。プリムローズを助けて、ここを訪れて以来、一度も会っていなかったのだ。別に珍しいことではない。末端の使用人が当主であるイザール侯に会うことなど、滅多にあることではない。母屋で…

災厄の神の落し子 第5話 第一印象は……

プリムローズと共に馬場に現れたのはイザール侯爵家のローレル。三人いるプリムローズの兄の中では一番年下。もっとも年齢が近い兄だ。兄妹ではあるが、金色の髪以外は似たところはない。瞳の色が違うだけでなく、美少女と言えるプリムローズと比べてしまう…

災厄の神の落し子 第4話 成り行きと運命は紙一重

リルの寝床は馬屋のすぐ隣にある小さな建物。亡くなった御者が使っていた部屋だ。前任者は変わり者で、人といるよりも馬といるほうを好んだ。人と接するのが嫌いだった、という表現のほうが正しい。レイヴンを扱える稀有な人物ということで、特別に本人の望…

災厄の神の落し子 第3話 天職というべきなのか

帝都の定義がどこまでというのは難しい。公式にはかなり広範囲。帝都を囲む防壁は大きく分けると内壁と外壁の二つがあり、外壁の内側が帝都となる。ただ外壁は一周するのに半月はかかるほどの広範囲を囲っている。正確には囲っているというのは誤りで、いく…

災厄の神の落し子 第2話 怪しいことが多すぎる

馬が大人しくなったところで御者を代わった彼。そうしたくてしているわけではない。女の子に任せては、また同じ結果になるだけ。自分がやるしかないのでやっているだけだ。 女の子はその彼の隣に座っている。馬車の中には何体もの死体がある。いくら親しい人…

災厄の神の落し子 プロローグ

初代皇帝アルカス一世によって建国されたアークトゥラス帝国の治世は三百年に届こうとしている。未だに帝国の支配は盤石、とは決して言えない。真逆の状態だ。 帝国貴族の何人かが力を増すようになり、領地を巡る争いが増えて行った。帝国に力があるうちはま…

災厄の神の落し子 第1話 A girl meets a boy

地面に転がるいくつもの死体。その中に立つ、ふわふわした金髪に大きな翠色の瞳のまだ幼い、十人が十人、可愛らしいと思うだろう女の子。だが今の彼女は可愛らしい顔を歪め、目の前に立つ剣を持った男たちを睨んでいる。死体は彼女の従者たち。馬車で移動し…