月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-災厄の神の落し子

災厄の神の落とし子 第131話 物語は進む

帝都では様々な問題が起きている。帝国全土となるとさらに問題は山積みだ。それでもワイズマン帝国騎士団長は、こうして帝国騎士養成学校の行事に参加している。騎士養成学校運営の責任者なのだから当然なのだが、心の中のモヤモヤが消えない。こんなことを…

災厄の神の落とし子 第130話 観戦もままならない

秋になり、帝国騎士養成学校では例年通り、体育祭が開催された。一年生の時から番狂わせを起こして、良くも悪くも大会を盛り上げた騎士候補生たちは、すでに卒表していない。それでも帝都の人々の体育祭への関心は、それほど薄れていなかった。また新たに大…

災厄の神の落とし子 第129話 新居

シュバルツフルメ騎士団の本拠地は帝都外壁内の山中にある。かつては山の実りを目当てに訪れる人がそれなりにいたのだが、今は足を踏み入れる人はいない。魔獣が異常繁殖したことで、帝都外壁内でも、もっとも危険な場所のひとつになってしまったのだ。私設…

災厄の神の落とし子 第128話 集う者たち

フェンの行方は、それぞれ目的が違っているが、多くの人が探している。帝国内部でも目的は様々だ。悪意を持って追っているのはフォルナシス皇太子派だ。ただフェンが何者であるかを分かった上で、それを行っている者は少ない。フェンが公安部員として武器密…

災厄の神の落とし子 第127話 皇太子の憂鬱

帝都は揺れに揺れている。その原因は帝国騎士団員の大量処刑。死罪となった者だけで五百名を超えている。これだけ一度に死罪とされたのは過去に遡っても例がない。現皇帝とルイミラ妃の残忍性の証。事情を知らない者たちはこう受け取った。 内通の事実を知り…

災厄の神の落とし子 第126話 露見

ヴァイオレットの敵討ちは。ローレルの立場から言うと、順調に進んでいる様子だ。ヌーベル騎士団の次に復讐の対象となったのは帝国騎士団の千人将。元西南方面軍の軍将だ。自分が襲われる可能性はまったく考えていなかったようで、歓楽街で遊んだ帰りに、同…

災厄の神の落とし子 第125話 未来の可能性

マグノリア公安部副部長は出勤してすぐにワイズマン帝国騎士団長に呼び出された。執務室に呼ばれることほぼ毎日のことだが、朝一からというのは珍しい。何事か急ぎ対処すべき問題が起きたということだ。 急ぎ足で廊下を進み、ワイズマンの執務室に向かう。扉…

災厄の神の落とし子 第124話 始動

ヴァイオレットの葬儀は雨の中で行われた。帝国では葬儀において雨は避けるべき天候ではない。故人の死を天も悲しんでいる。こう捉えられ、葬儀の日に雨が降ることは正しいことだとされているのだ。 喪主はローレルが務めることになった。メルガ家の人々は誰…

災厄の神の落とし子 第123話 覚醒

ヴァイオレットの死は、帝国騎士団公安部の調べでも自殺と認定された。使用人の証言から、ヴァイオレットがここ最近、何か思い悩んでいたことが分かった。屋敷から何か盗まれた形跡もない。それほど多くない貴重品はひとつもなくなっていないことが、これも…

災厄の神の落し子 第122話 喪失

自分の仮説はどうやら真実だった。朦朧としている意識の中で、ヴァイオレットはそれを知ることになった。ずっとどうするべきか悩んでいた。仮説は間違い。こう思いたかった。ずっと真実は闇の中であれば良いと願った。だがそれは、恐らく、無理だ。真実はい…

災厄の神の落し子 第121話 望まない真実

帝国騎士団との演習が終わった後は、三年生は卒業を待つだけになる。演習はかなり激しい内容になることが分かっている。参加した三年生のほぼ全員が程度の差はあれ、怪我を負うことになる。その怪我を癒す期間として授業のない自習期間が設けられているのだ…

災厄の神の落し子 第120話 最強の証明

無駄な足掻きであることは分かっていた。それでも同級生たちは勝利を望んだ。勝つ為の戦術を求めた。惨敗という結果になっても構わない。その前提で、そんな結果にするつもりはないが、戦い方を考えた。 それでもやはり、結果は順当。勝てないまでも本陣に迫…

災厄の神の落し子 第119話 卒業演習

卒業式を除けば、帝国騎士養成学校の年間行事の最後となる演習訓練。帝国騎士団に卒業間近の三年生が挑む演習だ。ただ結果は毎年同じ。帝国騎士団が圧倒的な力を見せつけて終わる。結果が決まりきった演習は観ても面白くない。一般的には体育祭に比べると人…

災厄の神の落し子 第118話 葛藤

近頃、ローレルの頭の中を占めているのはヴァイオレットのこと。いくら考えても答えは出ない。ヴァイオレットとリルの関係は不適切なもの。すぐに解消させなければならない。理性でも感情でもそれは分かっている。だがその理性と感情が別の考えも生み出して…

災厄の神の落し子 第117話 秘められていた想い

卒業まで残された日も少なくなった。それでも三年生の毎日は変わらない。鍛錬に勤しむ日々が続いている。ほとんどの三年生が卒業後は貴族家の騎士団か私設騎士団に進む。実戦の場に出ることになる。怠けている場合ではないのだ。それに最後の行事も待ってい…

災厄の神の落し子 第116話 思いが交わる夜

体育祭の当日、リルは観客席で観戦。ハティと、何故かヴァイオレットも一緒だ。しかも、これもまた何故か席は皇帝の観覧席の近く。本来は護衛の都合で立ち入り禁止とされているはずのエリアに座らされることになった。ルイミラ妃の強い意向だが、それをリル…

災厄の神の落し子 第115話 運命が加速する

リルが運び込まれたのは酒場や売春宿が立ち並ぶ帝都歓楽街でも、最も賑やかなエリアの端。賑やかな看板が並ぶ中、逆に目立つ薄汚い病院の看板が掲げられている古い建物だ。外観だけでなく、建物の中もオンボロという言葉を遠慮なく使える有様。その部屋の中…

災厄の神の落し子 第114話 急展開

昼休み。リルは一人、皆がいるテーブルを離れて食事している。目の前には食事だけでなく、教科書も積まれている。公安部の仕事のせいで生まれた授業の遅れを取り戻すために食事中も勉強しているのだ。 事実ではあるが、口実でもある。近頃、リルはローレルと…

災厄の神の落し子 第113話 浮かび上がらない真実

ローレルの成人式が行われた。ほぼ身内だけでの成人式だ。次男のラークがすでに成人式を終えている状況では、三男のローレルの成人式は政治的な意味を持たない。守護神の加護を得る儀式としての成人式ではなく、普通に成人を祝い会であっても良かった。そう…

災厄の神の落し子 第112話 因縁

皇帝に謁見を申し込んだワイズマン帝国騎士団長。それはすぐに許され、その日のうちに実現することになった。定例会議を待たずにワイズマンが自ら謁見を求める。それは余程のことだと皇帝も分かっているのだ。ワイズマンの職務に対する誠実さを皇帝は高く評…

災厄の神の落し子 第111話 疑惑

ユミルとの話し合いを終えて、リルとハティは外に出た。すっかり夜も更けて、周囲の建物の窓から漏れ出る明かりも少なくなっている。路地を抜けて、表通りに出てもその薄暗さは変わらない。今の時間では歓楽街もそう変わらないはずだ。店で働く人たちはまだ…

災厄の神の落し子 第110話 欠けているピース

帝都第三層、歓楽街から二区画ほど外れたこの場所まで来ると、夜のこの時間でも人通りはない。遊ぶ店がないのだ。わざわざ訪れようとする人はいない。このエリアで暮らしている人たちも、すでに自宅でくつろいでいる時間だ。 人気のない通りを歩いているリル…

災厄の神の落し子 第109話 不正、不純

帝国騎士団官舎のワイズマン帝国騎士団長の執務室。マグノリア公安部副部長が訪れて、打ち合わせが行われている。ワイズマンの側近ヴォイドも同席しての打ち合わせだ。公式なものではない。定例会議の前にワイズマンに相談したいことがマグノリアにはあった…

災厄の神の落し子 第108話 進む道

放課後の訓練場では多くの騎士候補生たちが自主練習を行っている。数が多いのは三年生。二年生がそれに次ぐ。上級生ほど意識が高い、ということではあるが、そうなった理由がある。リル、そしてリルのいる三年ガンマ組の影響だ。 入学したばかりの頃、ローレ…

災厄の神の落し子 第107話 大人になるということ

今日は次男ラークの成人式。イザール侯爵家屋敷には多くの人たちが集まっている。ただ、かつてのようなお祝いムードはない。長男アイビスの成人式での死が、人々から成人式に対する楽観的な気分を消し飛ばしたのだ。 その事件からまだ一年が過ぎたばかり。そ…

災厄の神の落し子 第106話 それぞれの誓い

インターンとして帝国騎士団公安部で働くことになったリル、といっても本業はあくまでも騎士候補生。それを理由に授業を欠席することは許されない。この先はどうなるか分からないが。 三年生の授業はより実戦的なものになっている。個人の技量を高める為の授…

災厄の神の落し子 第105話 無茶振り

外に出た時には、すっかり日が暮れていた。騎士養成学校での授業を終えてからここに来たのだ。当初聞かされていた通り、プリムローズへの贈り物を受け取ってすぐに帰ったのであれば、明るいうちに家に着けただろうが。それでは終わらなかった。終えることは…

災厄の神の落し子 第104話 罪滅ぼしの形

帝国騎士養成学校は新年度を迎えた。ローレルとリルは三年生に、そしてプリムローズが新一年生として入学してきた。朝から始まった入学式が終わり、その後の講義も終了。新一年生の初日はこれで終わりなのだが、上級生はそうはいかない。午後も授業がある。 …

災厄の神の落し子 第103話 真実はどこに?

まんまと嵌められたかもしれない。近頃、ローレルの心の片隅には常にこの想いがある。エセリアル子爵屋敷で話をした後、ヴァイオレットはローレルに伝えた通り、正式にイザール侯爵家に婚姻を申し込んできた。そこからイザール侯爵家とローレルの話し合いが…

災厄の神の落し子 第102話 加害者と被害者

皇城の後宮にあるルイミラ妃の私室エリアは他の妃とその家族のそれとは離れた場所にある。意図してのことだ。地方の大きくもない街の宿屋の娘であったルイミラが皇帝の妃となるのには、かなりの抵抗があった。皇帝はその反対の声を黙殺し、強引に第三妃とし…