ファンタジー小説-SRPGアルデバラン王国動乱記~改~
栄光騎士団はめざましい活躍を見せている。アリシアの活躍のおかげ、とするのは少し違う。活躍はアリシアのお人好し、ではなく正義感があってこそであるのは間違いないことだが、それだけで任務が上手く行くはずがない。栄光騎士団の活躍は王国諜報部の支え…
タイラーはずっと亡くなった兄クリスチャンの屋敷に引きこもっている。心の整理が出来ないでいるのだ。そうであって欲しくはなかったが、やはり、クリスティアンは自分の暗殺を企んでいた。それはすでに明らかになっている。自分を殺そうとしたクリスティア…
ジュリアン王子の騎士団、栄光騎士団の初任務は王国中央南部にある少数民族バスケス族の居住地での調査になった。そこが選ばれた理由は単にカリバ族が暮らしているハートランドから、比較的近いというだけ。協力するカリバ族の人たちが合流しやすいからとい…
黒色兵団は王都に戻って来た。自ら望んでのことではない。国王の召喚を受けて、仕方なくだ。さすがにレグルスも国王の命令を無視するわけにはいかなかったのだ。 王都は、王国各地で争乱が起きているとは思えない、明るい雰囲気。それに疑問を感じたレグルス…
王都に戻って来たアリシアだが、彼女には住む場所がない。レグルスとの婚約が解消となり、ブラックバーン家に貸し与えられていた屋敷を出た後は、ジークフリート王子が用意してくれた屋敷に住んでいたのだが、今はそこも出ている。好意に甘え続けているのは…
黒色兵団が任務に復帰する、という情報はまだ王都には伝わっていない。だからといって、それを待たなければ任務を行えないということではない。王国騎士団の下部組織という位置づけではあるが、王女であるエリザベス王女が率いる黒色兵団には、かなりの独立…
アリシアは忙しい任務の合間を利用して、王都に戻って来た。国王の命令を受けての帰還なので、合間がなくても戻らなければならなかっただろう。 王国の各地で次々と起こる争乱。貴族家の内乱であったり、少数民族の蜂起であったり、大規模盗賊団が暴れている…
猫の手も借りたいほどの忙しさ。この言葉通りの状況に陥っている王国騎士団ではあるが、実際に猫の手を借りても事態は解決しない。それが人の手であったとしても、戦う力のない者の手では役に立たない。無駄に死傷者を増やすだけの結果に終わってしまう。 反…
物語が一気に加速した。これはアリシアの感想だ。この世界がゲーム世界、ゲームストーリーからは完全に外れているがゲームと同じ設定の人々が生きる、普通とは違う世界だと知っているアリシアだからそう思うのであって、そうではない人々は、各地で起きた争…
領地に向かう準備で忙しくしているのはレグルスだけではない。レグルスの周囲の人々も色々とやらなければならないことがあって、忙しくしている。 なんといっても一番は「何でも屋」のバンディー。王都を離れていることが増えたレグルスに代わって「何でも屋…
レグルスが新たな領地を与えられたという噂は、少しずつではあるが、確実に人々の間に広まっていった。噂が広まるのに時間がかかったのは前領主サイリ子爵の死の真相を公に出来ない事情が王国にあるから。隣国から人を攫ってきて奴隷のように扱っていたなど…
領地替えの準備で寝る間もないほど忙しくしている中、レグルスは意外な来客を迎えることになった。サマンサアンだ。彼女がこのタイミングで会いに来る理由が、レグルスには思いつかない。彼女との関係は過去の人生とは違う。特別なものはまったくない。そう…
領地替え。それもこれまでのゲルメニア族の居住地を領地としていたのとは異なり、きちんと領地を運営しなければならないことにレグルスはなった。ただ住む場所を引っ越せば良いというわけでは、当然ない。様々な役割の家臣を揃えていかなければならい。まし…
パーティー会場を離れてレグルスは、国王と共に執務エリアの奥の小会議室に入った。レグルスが初めて訪れた会議室。国王が少人数で他に聞かせられない相談を行う為の会議室なのだが、そんなことはレグルスには分からない。 会議室に入ると、先に宰相と諜報部…
王城の大広間には着飾った多くの人が集まっている。奏でられる音楽、テーブルの上に並ぶ様々な料理。飲み物を乗せたトレイを持つ給仕人たちが、人々の間を動き回っている。王国主催のパーティーが開かれているのだ。 ただ今日開かれているパーティーは、通常…
レグルスに興味を持ったのは、初めて会ったホーマット伯爵領での戦いの時だ。自分が知る王国騎士団とは異なる動きを見せる部隊。その指揮官と思われる若い騎士の言動もかなり異質だった。 その実力はどうなのかと考え、確かめる為に戦いを挑んでみたが、ホル…
サイリ子爵を討ちとり、共に出撃してきた子爵家軍を殲滅、とまでは行かなかったが壊滅的な打撃を与えた黒色兵団は、そのままサイリ子爵の館に攻め込んだ。建物が堅牢であっても防衛戦力が壊滅してしまっていては守りきることなど出来ない。館に残っていた人…
何か所かに分かれて強制労働をさせられていた人々を、レグルスたちは解放した。女性も含めて、八百人を超える数だ。その数を連れてレグルスが向かったのは、サイリ子爵がいる城。逃げるのではなく攻める。捕らえられていた人々のほとんどが想定していなかっ…
ぱっと見は地方の小領主の館。街ひとつ程度の領地しか持たない貴族家の暮らしは、王都郊外の豪農と変わらない。下手すれば、もっと質素なくらいだ。王国にはそういった小領主が大勢いる。 サイリ子爵も、子爵という爵位だけで考えれば、その建物で暮らしてい…
東方辺境伯家、ホワイトロック家の王都屋敷でアリシアは、キャリナローズとタイラー、そして今はタイラーの妻となっているフランセスの三人と久しぶりに会っている。こういう機会は卒業してから一度もなかったのだが、いきなりキャリナローズに呼び出された…
山中にある古い木こり小屋。もう何年も使われることのなかったその建物に、人の気配がある。黒色兵団の団員たちだ。正規に、中身は偽情報だが、発行された王国の通行証を使って、燐家の関所を抜けた彼らは、そこから街道を逸れ、人が足を踏む入れることのな…
偵察により安全を確認したところで、再び庶民を装って白金騎士団は領主であるスタンプ伯爵が捕らわれているだろう領主館のある街に侵入した。難しい問題はなかった。反乱を起こしたであろう者たちが警戒している様子はない。重要拠点でもないその街に入るの…
白金騎士団の任務地は、王国南西部にあるスタンプ伯爵領だった。王国中央部と呼ばれている地域からは少し国境側に外れた場所。西方辺境伯領と南方辺境伯領からはまだ距離がある位置だ。 激戦地となった歴史はあるが、それは遠い過去の話。今は軍事的な要所と…
王都にある聖パンティオン教会本部。その建物の周囲を鎧兜に身を固めた騎士たちが囲んでいる。煌びやかな鎧兜を身につけた、その騎士たちは近衛騎士団だ。国王が教皇と会談を行う為に教会本部を訪れているので、警護を行っているのだ。 国王が教会本部に足を…
王都に戻った白金騎士団は、休む間もなくすぐに、次の任務の準備に入った。白金騎士団、というより、ジークフリート王子は功績を積み重ねることを必要としている。能力では兄であるジュリアン王子より高く評価されているとはいえ、それだけで王位継承順位を…
王城の奥。王家の人々の居住スペースとなっている建物の屋上で、エリザベス王女はぼんやりと夜空を眺めている。他人にはそう見えるだけで、実際にエリザベス王女が見ようとしているのは夜空ではない。視たいのは、そう遠くない未来だ。 エリザベス王女の持つ…
レグルスとキャリナローズとの間に生まれた子供についての話が終わった後も、東方辺境伯は城に残って、国王との話し合いを続けている。普段は領地にいる東方辺境伯だ。こうして王都に来て、国王と話をすることなど頻繁にあることではない。国のこと、国境を…
王国騎士団の施設は、王城のすぐ隣の広大な敷地の中にある。王国騎士団と呼ばれるのは特選騎士と一般騎士、従士、それに後方支援要員を合わせても二千名ほどの人数。だが訓練施設を利用するのは王国騎士団の騎士に加えて職業兵士、そして徴兵を加え、最大で…
ホーマット伯爵捕縛任務は、伯爵の自死という結果で終わった。ジークフリート王子率いる白金騎士団がかなり強引に防壁を突破し、屋敷への突入を果たしたところで、敗北を悟ったホーマット伯爵は自死を選んだということだった。 捕縛は失敗したが、罪を認めて…
喧嘩はレグルスの勝利。圧勝という結果だ。その決着を見ていた軍勢に向かって、勝利を宣言したレグルス。だがそれに反応する者はいない。 「約束だ。武器を捨てて、家に帰れ」 約束を守るように告げても、やはり反応する者はいなかった。王国軍側の多くは、…