月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説

継ぐ者たちの戦記 第17話 甘やかされている気になる

アークとミラは討伐依頼を引き受けることになった。場所は勇者ギルドがあるグレンオードの町から二日ほどのところにある森だ。二日の移動となると二人にとっては遠出。これまでが日帰り出来る場所の依頼しか引き受けて来なかったのだ。といっても今回の依頼…

継ぐ者たちの戦記 第16話 旧友、ではない

朝一でその日の依頼を確認。リスクが低い依頼がなければ諦め。鍛錬と勉強でその日を過ごすことにしている。ゴブリン討伐に関しては自信を持ったアークたちだが、オークに対してはまだ不安が残っている。絶対に群れにオークはいない。これが明らかな依頼しか…

継ぐ者たちの戦記 第15話 つきまとわれている?

ホープはやたらとアークたちに絡んでくる。こう思うのはアークたちが事情を知らないから。ホープは二人を狙う犯人を見つけ出す為に二人の側にいようとしているだけだ。犯人から見れば襲撃は失敗。少なくとも二度、そうだと思える事件があったからには諦めて…

継ぐ者たちの戦記 第14話 Sランク勇者候補に会った

アークとミラは依頼を引き受けることなく、鍛錬と勉強の日々を続けている。稼ぎがないのは痛い。だがそれはより良い装備を買い揃える上で痛いということであって、暮らしに困ることではない。良家の生まれであることを知る人には驚きの質素な暮らしを未だに…

継ぐ者たちの戦記 第13話 お宝をGETした

今日も鍛錬と勉強の為に勇者ギルドを訪れたアークとミラ。到着してすぐに受付に呼ばれることになった。前回の依頼達成に関する手続きが必要という話で。 通常、依頼が終わると報酬と依頼達成ポイントは自動的に加算される。報酬は勇者ギルドが銀行代わりに預…

継ぐ者たちの戦記 第12話 ギルド支店長の本音

勇者ギルドの支店長は何かと忙しい。登録パーティーについての定期レポートだけでも結構な量がある。さらに個々の勇者候補の情報にまで目を通すとなれば、かなりの時間を必要とする。一定期間毎の依頼に関する分析も必要だ。たとえば討伐依頼が急増していれ…

継ぐ者たちの戦記 第11話 報われることを考えない努力

アークとミラは洞窟でのゴブリン討伐を続けている。二人で息を合わせた戦いが出来るようになる為。ミラがアークの戦い方を理解する為とも言える。アークの戦いの先を予想し、最適な支援魔法を使う。かなり難しい課題で、出来るようになるには、とにかく数を…

継ぐ者たちの戦記 第10話 見る気のない目では何も見えない

勇者ギルドの支店があるグレンオードの近くには広大な洞窟がある。この洞窟があるから勇者ギルドの支店が置かれたのだ。洞窟は人魔大戦時代に魔王軍のアジトとされていた場所とされている。真偽のほどは定かではない。だが洞窟内には多くの魔獣、そして妖魔…

継ぐ者たちの戦記 第9話 チームワークは大切だ

勇者ギルドのランクには、明確に定義されていないが、意味がある。Cランクは勇者候補としても、まだ見習い。戦いの基本を覚える為の期間だ。勇者ギルドの一員としての心得を学び、身につける為の期間でもある。Bランクになると今度は個の成長だけでなく、…

継ぐ者たちの戦記 第8話 当たり前の、とは違うけど、日常

体内にある魔力を感じ取れるようになること。これが当面のアークの目標になった。ただ何をどうすれば良いのか分からない。少なくとも勇者ギルドの資料庫ではそれについて記された書物は見つからなかった。 そもそも魔力の有無は特別鍛錬などをしなくても分か…

継ぐ者たちの戦記 第7話 特別待遇ってこんなことに利用するもの?

ハイランド王国には軍閥貴族という存在がいる。将爵という他国にはない特別な爵位を与えられている貴族家だ。元は人魔大戦時に生まれた私的軍事勢力が、その軍事力を背景に政治的影響力を持つに至った軍閥。その軍閥の影響力を恐れたハイランド王国が王国内…

継ぐ者たちの戦記 第6話 良くも悪くも人と違えば特別な存在だ

二人が所属する勇者ギルドは、勇者ギルドの組織全体で見ると、ハイランド王国支店ということになる。この大陸には都市国家も含めると二十を超える国があり、それぞれに勇者ギルドの支店があるのだ。ハイランド王国は、領土の広さでは小国に分類されるが、国…

継ぐ者たちの戦記 第5話 ひとつの仮説を立ててみた

ミラの自宅は、アークのそれとは違い、勇者ギルドから離れた場所にある。グレンオードの町では裕福とされる人たちが住む、いわゆる高級住宅地の一角だ。そこに立つ、そのエリアの中では比較的小さいとされる一軒家。彼女はそこで暮らしている。 「ただいま戻…

継ぐ者たちの戦記 第4話 新パーティー結成!

建物の外に出た途端、血の匂いが鼻につく。視線の先には地面に仰向けに倒れているアークの姿がある。その周りには無数のマーダーウルフの死骸が転がっていた。周囲に動く存在はいない。逃げ出したのか、それとも全て彼が倒したのか。建物の中にいたミラには…

継ぐ者たちの戦記 第3話 こんなはずじゃなかった

依頼で町の外に向かう場合、その移動は勇者ギルドが支援してくれる。これは歩く以外に移動手段を持たない低位ランク勇者候補にとってはありがたい。移動だけで丸一日、もしくはそれ以上かけているようでは稼ぎが少なってしまうのだ。 勇者ギルドにとっても依…

継ぐ者たちの戦記 第2話 出会いは偶然から始まる

勇者ギルドに届いた依頼は、引受先が指定された指名依頼以外、ほぼ全てが掲示板に張り出される。勇者候補たちはそこから自分のランクに合った、引き受けたいと思う依頼を探し、その依頼書を持って窓口で手続きをすることで契約として成立することになる。 良…

継ぐ者たちの戦記 第1話 失恋はある日突然に

勇者ギルド。かつては傭兵ギルドと称していたこの組織は、およそ二百年前の人魔大戦以降、今のように名乗るようになった。世界を混乱に陥れ、人々に恐怖を与えた存在、魔王を倒した勇者が傭兵ギルドの一員だったことからだ。 組織の名称は勇者ギルドであるが…

災厄の神の落とし子 第131話 物語は進む

帝都では様々な問題が起きている。帝国全土となるとさらに問題は山積みだ。それでもワイズマン帝国騎士団長は、こうして帝国騎士養成学校の行事に参加している。騎士養成学校運営の責任者なのだから当然なのだが、心の中のモヤモヤが消えない。こんなことを…

災厄の神の落とし子 第130話 観戦もままならない

秋になり、帝国騎士養成学校では例年通り、体育祭が開催された。一年生の時から番狂わせを起こして、良くも悪くも大会を盛り上げた騎士候補生たちは、すでに卒表していない。それでも帝都の人々の体育祭への関心は、それほど薄れていなかった。また新たに大…

災厄の神の落とし子 第129話 新居

シュバルツフルメ騎士団の本拠地は帝都外壁内の山中にある。かつては山の実りを目当てに訪れる人がそれなりにいたのだが、今は足を踏み入れる人はいない。魔獣が異常繁殖したことで、帝都外壁内でも、もっとも危険な場所のひとつになってしまったのだ。私設…

災厄の神の落とし子 第128話 集う者たち

フェンの行方は、それぞれ目的が違っているが、多くの人が探している。帝国内部でも目的は様々だ。悪意を持って追っているのはフォルナシス皇太子派だ。ただフェンが何者であるかを分かった上で、それを行っている者は少ない。フェンが公安部員として武器密…

災厄の神の落とし子 第127話 皇太子の憂鬱

帝都は揺れに揺れている。その原因は帝国騎士団員の大量処刑。死罪となった者だけで五百名を超えている。これだけ一度に死罪とされたのは過去に遡っても例がない。現皇帝とルイミラ妃の残忍性の証。事情を知らない者たちはこう受け取った。 内通の事実を知り…

災厄の神の落とし子 第126話 露見

ヴァイオレットの敵討ちは。ローレルの立場から言うと、順調に進んでいる様子だ。ヌーベル騎士団の次に復讐の対象となったのは帝国騎士団の千人将。元西南方面軍の軍将だ。自分が襲われる可能性はまったく考えていなかったようで、歓楽街で遊んだ帰りに、同…

災厄の神の落とし子 第125話 未来の可能性

マグノリア公安部副部長は出勤してすぐにワイズマン帝国騎士団長に呼び出された。執務室に呼ばれることほぼ毎日のことだが、朝一からというのは珍しい。何事か急ぎ対処すべき問題が起きたということだ。 急ぎ足で廊下を進み、ワイズマンの執務室に向かう。扉…

災厄の神の落とし子 第124話 始動

ヴァイオレットの葬儀は雨の中で行われた。帝国では葬儀において雨は避けるべき天候ではない。故人の死を天も悲しんでいる。こう捉えられ、葬儀の日に雨が降ることは正しいことだとされているのだ。 喪主はローレルが務めることになった。メルガ家の人々は誰…

災厄の神の落とし子 第123話 覚醒

ヴァイオレットの死は、帝国騎士団公安部の調べでも自殺と認定された。使用人の証言から、ヴァイオレットがここ最近、何か思い悩んでいたことが分かった。屋敷から何か盗まれた形跡もない。それほど多くない貴重品はひとつもなくなっていないことが、これも…

災厄の神の落し子 第122話 喪失

自分の仮説はどうやら真実だった。朦朧としている意識の中で、ヴァイオレットはそれを知ることになった。ずっとどうするべきか悩んでいた。仮説は間違い。こう思いたかった。ずっと真実は闇の中であれば良いと願った。だがそれは、恐らく、無理だ。真実はい…

災厄の神の落し子 第121話 望まない真実

帝国騎士団との演習が終わった後は、三年生は卒業を待つだけになる。演習はかなり激しい内容になることが分かっている。参加した三年生のほぼ全員が程度の差はあれ、怪我を負うことになる。その怪我を癒す期間として授業のない自習期間が設けられているのだ…

災厄の神の落し子 第120話 最強の証明

無駄な足掻きであることは分かっていた。それでも同級生たちは勝利を望んだ。勝つ為の戦術を求めた。惨敗という結果になっても構わない。その前提で、そんな結果にするつもりはないが、戦い方を考えた。 それでもやはり、結果は順当。勝てないまでも本陣に迫…

災厄の神の落し子 第119話 卒業演習

卒業式を除けば、帝国騎士養成学校の年間行事の最後となる演習訓練。帝国騎士団に卒業間近の三年生が挑む演習だ。ただ結果は毎年同じ。帝国騎士団が圧倒的な力を見せつけて終わる。結果が決まりきった演習は観ても面白くない。一般的には体育祭に比べると人…