月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説

災厄の神の落し子 第11話 心通う

リルは、他の使用人たちがいない、専用の宿舎で暮らしている。前任者が使っていた場所をそのまま与えられたからだ。何故、前任者はこのような特別待遇を得られたのか。レイヴンの世話を出来る馬飼がその人しかいなかったからだと、リルは思っていたが、実際…

災厄の神の落し子 第10話 進路未定

騎士養成学校。正式名称は帝立帝国騎士養成学校だ。歴史は長くて百年近くになる。それでも帝国建国からは二百年以上経ってからの創立。それは帝国騎士団の要員不足が問題化したのが、その頃だったからだ。騎士養成学校は定員不足、成り手不足を補う為に広く…

災厄の神の落し子 第9話 これは出世なのか?

リルはまたイザール候に呼び出された。今回は用件が分かっている。プリムローズを守るということを口実にして、ラークの従者を叩きのめした。相手はイザール候の息子であるラークの従者だ。咎められることは、やる前から分かっていた。分かっていたが、黙っ…

災厄の神の落し子 第8話 変わっていく日常

プリムローズの日常は以前とは大きく変わった。兄のローレルと共に過ごす時間以外は、自室に引きこもって本を読み続けている毎日だったプリムローズ。今は違う。午前中は第二馬場に行って馬術の稽古、といってもルミナスの朝の運動時間に乗り手となっている…

災厄の神の落し子 第7話 馬飼の仕事、ではない

リルの毎日はレイヴンとルミナスの二頭の馬の世話、それとプリムローズ、そしてローレルの世話、という言い方はローレルが怒るだろうが、も加わった。馬に乗る練習だけでなく、剣の訓練についても二人一緒に行うことになったのだ。 リルとしては、本音は、迷…

災厄の神の落し子 第6話 悠久の時を超えて

リルはイザール侯に呼び出された。面と向かって会うのはこれが二度目。プリムローズを助けて、ここを訪れて以来、一度も会っていなかったのだ。別に珍しいことではない。末端の使用人が当主であるイザール侯に会うことなど、滅多にあることではない。母屋で…

災厄の神の落し子 第5話 第一印象は……

プリムローズと共に馬場に現れたのはイザール侯爵家のローレル。三人いるプリムローズの兄の中では一番年下。もっとも年齢が近い兄だ。兄妹ではあるが、金色の髪以外は似たところはない。瞳の色が違うだけでなく、美少女と言えるプリムローズと比べてしまう…

災厄の神の落し子 第4話 成り行きと運命は紙一重

リルの寝床は馬屋のすぐ隣にある小さな建物。亡くなった御者が使っていた部屋だ。前任者は変わり者で、人といるよりも馬といるほうを好んだ。人と接するのが嫌いだった、という表現のほうが正しい。レイヴンを扱える稀有な人物ということで、特別に本人の望…

災厄の神の落し子 第3話 天職というべきなのか

帝都の定義がどこまでというのは難しい。公式にはかなり広範囲。帝都を囲む防壁は大きく分けると内壁と外壁の二つがあり、外壁の内側が帝都となる。ただ外壁は一周するのに半月はかかるほどの広範囲を囲っている。正確には囲っているというのは誤りで、いく…

災厄の神の落し子 第2話 怪しいことが多すぎる

馬が大人しくなったところで御者を代わった彼。そうしたくてしているわけではない。女の子に任せては、また同じ結果になるだけ。自分がやるしかないのでやっているだけだ。 女の子はその彼の隣に座っている。馬車の中には何体もの死体がある。いくら親しい人…

災厄の神の落し子 プロローグ

初代皇帝アルカス一世によって建国されたアークトゥラス帝国の治世は三百年に届こうとしている。未だに帝国の支配は盤石、とは決して言えない。真逆の状態だ。 帝国貴族の何人かが力を増すようになり、領地を巡る争いが増えて行った。帝国に力があるうちはま…

災厄の神の落し子 第1話 A girl meets a boy

地面に転がるいくつもの死体。その中に立つ、ふわふわした金髪に大きな翠色の瞳のまだ幼い、十人が十人、可愛らしいと思うだろう女の子。だが今の彼女は可愛らしい顔を歪め、目の前に立つ剣を持った男たちを睨んでいる。死体は彼女の従者たち。馬車で移動し…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第222話 エピローグ

またやり直しの人生。それでも今回は、前回と同じように前向きになれる変化があるはずだった。それをジョーディーは望んでいた。だがその変化は今のところない。少なくともジョーディーはその事実を認識出来ていない。それ以前の人生をなぞることになってい…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第221話 プロローグのプロローグ

オペレーションルームで鳴り響く警告アラームが執務室全体に響き渡っている。警告アラームそのものは珍しくもない。システムの異常を検知して発せられるアラームは、オペレータに対処を促すことが目的。対応するオペレータによって止められて、それで終わり…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第220話 バッドエンド

こんなはずではなかった。これまでも自分が求める通りの結果を得られたわけではない。そうだから、何度もやり直してきている。だが、今回の結果は過去のどれと比べても最悪。ジークフリート王が得られたものは、彼の基準では、無に等しい。どうしてこのよう…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第219話 決戦

二戦連続での敗北。それも圧倒的に有利な状況からの惨敗だ。その結果がもたらしたものは大きかった。王国北部はほぼ反乱軍一色に染まる。北部貴族はブラックバーン家に、形としてはエリザベスに、仕えることを選択したのだ。北部だけではない。各地でブラッ…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第218話 切り札

戦いの帰趨を決めるかもしれない戦いが始まろうとしている。こう考えているのはブラックバーン家、そしてアルデバラン王国上層部の一部だけで、大多数は、この先も続く戦いの中のひとつ、それも反乱鎮圧に向けた戦いの始まりだという認識だ。 そう思われる理…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第217話 四面楚歌

王国の重臣会議。今日の会議は、通常の参加者ではなく、その中から更に人選を行って、開かれている。多くに知らせるにはまだ早い情報。未確定な部分が多いというだけでなく、伝える人を選ばなければならない重要な情報がもたらされたのだ。アルデバラン王国…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第216話 後戻りは出来ない

アルデバラン王国西部に侵攻したエルタニン王国軍を撃退する為に派遣された王国騎士団。総指揮官は王国騎士団三神将の一人、オーガスティン中将。領土内に他国が侵攻したという一大事だ。三神将が総指揮官を努めるのは当然のこと。ただ彼が任命された理由は…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第215話 まだ先の話

アルデバラン王国騎士団との一戦での勝利で盛り返したブラックバーン家軍。一度は王国に降伏したブラックバーン騎士団や家臣たちが味方に戻ったことで戦力も充実。勢いに乗って、王都に向かって進軍を開始する、ことにはならなかった。 情勢はそこまで甘くな…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第214話 稀代の謀略家?

ジークフリート王は今日も重臣たちを招集して、会議を行っている。王国全土で事が動いている。その勢いを止めることなく、次の一手を繰り出していかなければならない。世界制覇までは、まだ道は遠いはず。のんびりしている余裕はないのだ。今は何もかも自分…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第213話 北部動乱

エリザベスを担いだ反乱は、それを起こした側にとっては上手く行っていない。要因はいくつかある。ひとつは、反乱を起こす側であるのに後手に回ってしまったこと。エリザベスが旗印となる前、アルデバラン王国とブラックバーン本家に反旗を翻した人たちは、…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第212話 手放した者たち、手をつなぐ者たち

戦争中は軍同士の戦闘以外の、表には出ない闘争も行われている。諜者同士の戦いだ。戦時中でなくてもある戦いだが、平常時と異なるのは躊躇うことなく敵側を殺すこと。泳がせて相手の意図を探るなんて真似はしない。少しでも多くの情報を入手すること、情報…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第211話 シン・二代 胆勇無双

ジークフリート王はご機嫌だ。いくつかの誤算はあったが、主導権を握ってからは、自分が求める通りに物事は進んでいる。順調と評価できる状況だ。 姉のエリザベスは行方不明。所在が明らかになることはない。すでに死んでいて、死体はどこかに埋められている…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第210話 抗う者

東方辺境伯領ほどではないが、西方辺境伯家の状況も慌しい。辺境伯家は王国の守りの要、とはなっているが、近年は自国の領土を攻められることなど、ほとんど想定していない。一方的に攻め込む側だったのだ。 そうはいっても備えは万全。エルタニン王国軍が全…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第209話 追いつめられた人たち

物事はジークフリート王の、もしくはジョーディーの思い描く通りに進んでいる。そんなことにはならない。そんな簡単に物事が進むのであれば、ジークフリート王かジョーディーのどちらかが、とっくに目的を果たしている。想定外のことが起きるからゲームは、…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第208話 重なる謀略

さすがに、城内に女性を連れ込んで遊び惚けることをずっと続けるなんて真似は、ジョーディー新王には許されない。王としての責務を果たさなければならない。しかも今は国難の時、と言っても良いくらいの状況。考えるべきこと、決めるべきことは山ほどあるの…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第207話 下衆な男

サマンサアンは王妃になる。その座を奪うはずだったアリシアのほうが今回、絞首台に昇った。何度も何度も繰り返された悲劇が、ようやく回避されたのだ。 そうであるのにジョーディーの気持ちは晴れない。今の状況に心を痛めている。彼の目的はサマンサアンを…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第206話 曝け出した素顔

国王の急逝を受けて、王国は速やかに次の国王を決定した。ジークフリート王子がその人だ。長幼の序を守れば、ジュリアン王子が次の国王となるべき。こういう声は当然あった。どちらに決まるにしても片方が不在の間に決定するのはいかがなものか、という意見…

SRPG「アルデバラン王国動乱記」~改~ 第205話 崩壊の始まり

花街での出来事は、その日のうちに国王の耳に届いた。花街と国王の間には特別な繋がりがある。隠すことなど出来ない。それでも国王は一日の間を空けた。自分に花街での話を伝えてきた者を、ジークフリート王子に推測させない為だ。それでもジークフリート王…