月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説

勇者の影で生まれた英雄 #93 刺激された野心

重臣会議が終わると健太郎は、そのまま王都にある自分の居館に戻った。子爵位を授けられた時に下賜された屋敷だ。 屋敷に入って真っ直ぐに目的の部屋に向かう。そこで待っていたのは、結衣と金髪碧眼のかなり美形の男の二人だった。 「あれ? フローレンスは…

逢魔が時に龍が舞う #19 尋問ゲーム

本部の会議室。緊張した面持ちで座っているのは葛城陸将補と立花遊撃隊指揮官、そして二人の向かい側に座る天宮だ。その天宮の隣に座る尊は、いつもの様にぼんやりした雰囲気をまとっている。これから問い詰められるのは、尊だというのに。 ショッピングセン…

異伝ブルーメンリッター戦記 #93 敵側の配役に問題があるのは物語として正しいのか?

リリエンベルク公国の冬の訪れは早い。あくまでもローゼンガルテン王国領の中では、であって更に北の国々はすでにほぼ全土が雪に覆われている。リリエンベルク公国の北部も同じ。すっかり雪景色だ。その雪景色は徐々に南部に広がっていく。ブラオリーリエの…

悪役令嬢に恋をして #61 隣国からの使者

マーキュリーとソルの決戦の日、と言うには少々大袈裟過ぎた。決着はあっという間についてしまったからだ。マーキュリーは、バンドゥの若手の中では一、二を争う使い手だが、如何せん相手が悪すぎた。 ソルは王国騎士の精鋭である近衛騎士の中で、いずれは最…

四季は大地を駆け巡る #91 大森林で生きるということ

冬樹が目覚めた。夏に三日遅れての復活だ。これは予想していたよりも早い。剣術一辺倒であった冬樹は魔力量はもっと少ないと思われていたのだ。実際は間違っていない。冬樹の魔力の絶対量は夏に比べるとかなり少ない。そうであるのに復活が予想より早かった…

勇者の影で生まれた英雄 #92 暗躍する者たち

この会議に参加するにあたって、ジョシュア王太子は一つの覚悟を決めていた。ウェヌス王国の王太子として自分が為すべきことをしようと。何の力のない自分であっても正しいと思うことを貫く勇気を持とうと。 その覚悟を胸に秘めて会議の成り行きを、時に会話…

逢魔が時に龍が舞う #18 初デート?

特務部隊員といっても普段は、兵士としての調練を行っている時間以外はだが、普通の生活をしている。住んでいるのは桜木学園内の合宿所。部屋でテレビを見たり、仲間たちと馬鹿騒ぎをしたり、人によってはゲームを楽しんでいたりと、同世代の人たちとそう変…

異伝ブルーメンリッター戦記 #92 敵味方の区別が複雑さを増していく

リーゼロッテの父マクシミリアンはブラオリーリエの南にある街グラスルーツにいる。リリエンベルク公爵家、今はテーリング家と呼ぶのが適切かもしれないが、の当主であるマクシミリアンがいるその街がリリエンベルク公国の都、政治の中心ということになる。 …

悪役令嬢に恋をして #60 バンドゥへの帰還

王都からバンドゥへの帰路は、下手な行軍訓練よりも遥かに厳しいものだった。リオンが進む足を急がせたのだ。本来であれば、各街に寄って、レジストの者たちに状況を確認しながら、帰るつもりだったのだが、近衛騎士と同行している状況で、そんな事が出来る…

四季は大地を駆け巡る #90 変わらないもの、変わったもの

気が付いた時、夏は見知らぬ部屋のベッドで寝かされていた。シルフと結んだ途端に、魔力切れで気を失った。あらかじめ知らされてはいたが、あれは不意打ちと同じ。気絶する前に頭に浮かんだ文句をすぐに言いに行こうと、夏は部屋を出て、ヒューガに会いに向…

勇者の影で生まれた英雄 #91 誤算

ゼクソン王国の反乱鎮圧。その名目で出兵した勇者軍ではあったが、その結果はウェヌス王国の上層部を驚愕させるものとなった。 健太郎の帰還を待って行われた重臣会議。参加者の表情は苦渋に満ちた顔、呆れかえった顔と様々ではあるが、どの参加者にも共通し…

悪役令嬢に恋をして #59 心と心

リオンは子爵となった。リオン・フレイ子爵。爵位が変わっただけだ。領地はバンドゥのまま、一寸の領地も増えることはなかった。与えられた報奨金は大金ではあるが、領政として新たな何かが出来るほどのものではない。あげた戦功に比べれば、明らかに少ない…

四季は大地を駆け巡る #89 王として臣下としての心構え

ヒューガは結論の出ない思考の渦に巻き込まれたような気がしてきた。一人になってからずっと考えていた。自分は何をやりたいのか、と。王になった。多くのエルフたちを助けた。国の整備を頑張って行っている。仲間が多くなった。さらに新たな仲間を増やすこ…

異伝ブルーメンリッター戦記 #91 物語が破綻すれば登場人物たちは解放される

まんまとローゼンガルテン王国の実権を手に入れたキルシュバオム公爵家。だがそれを喜んでいるだけではいられない。現状は自公国と王都、そして軍事力を押さえているだけでローゼンガルテン王国全体に支配が及んでいるわけではないのだ。同盟関係であるゾン…

四季は大地を駆け巡る #88 踏み出された一歩

ヒューガはタムに言われたことへの気持ちの整理がつかないままに、セレネに会うことになった。タムが語った「外に目を向けるべき」の外は、ドュンケルハイト大森林の外のこと。セレネたち西の拠点に住む人たちのことではないのだが、仲間を増やすという点で…

逢魔が時に龍が舞う #17 わずかな真実

『YOMI』の襲撃を受けた翌日。第七七四特務部隊の本部で天宮は葛城陸将補を問い詰めていた。よく一晩待っていられたなと思うくらいの勢いで。 隣で話を聞いている立花分隊指揮官は、その勢いにハラハラしている。 「彼は『YOMI』と繋がりがあります…

四季は大地を駆け巡る #87 見えていない国の未来

早朝の鍛錬を終えて、ヒューガはいつもの会議室に向かう。会議の参加者はエアルとカルポとグラン、それにギゼンとタムも参加することになっている。 急いで向かったつもりだったのだが、ヒューガが会議室に着いた時には、すでに全員が揃っていた。今日から新…

逢魔が時に龍が舞う #16 敵味方

尊たちは精霊科学研究所を出て、帰路についた。すっかり日は暮れている。樹海の間を縫うように走る暗い夜道を尊たちが乗った装甲車は進んでいた。 車内の雰囲気は複雑だ。尊は珍しく顔に笑みを浮かべている。妹の桜に会えた嬉しさがまだ残っているのだ。 そ…

四季は大地を駆け巡る #86 叶えられた約束

ヒューガは気を失った夏と冬樹の二人が用意していた部屋に運ばれたのを確認した後、バーバが待っている部屋に向かった。 待っていたのはバーバとギゼン、ともうひとりはタム。顔を知っているだけでヒューガは話したことがない。バーバが必要だと考えて同席さ…

四季は大地を駆け巡る #85 合流

パルス王国の王城よりも一層古めかしい雰囲気のこの場所は、かつてエルフの国の城だった。今その城の主はエルフではなく、異世界からやってきた人間。 初めて見るドュンケルハイト大森林はとても美しかった。とてもこの世界で最も危険な場所と言われていると…

逢魔が時に龍が舞う #15 死者との出会い

精霊科学研究所は富士山のふもとに広がる樹海の中にある。樹海の中を走る道路から少し奥に入ったところ。高い木々に囲まれた五階建ての雑居ビルのような建物だ。もちろんそれは偽装で本当の精霊研究所はその建物の地下深くにある。 建物の中に入って、どこに…

四季は大地を駆け巡る #84 過小評価、過大評価

会議室にイーストエンド侯爵家の主だった者たちが集まっている。定期的に開催されている全体会議の為であるが、今日の主要議題はいつもとは違う。 同時に現れた盗賊手段のこと、そして忽然と消えてしまったヒューガの仲間たちに関する調査報告がメインだ。 …

逢魔が時に龍が舞う #14 働く理由

第七七四特務部隊の本部には陸士たちの机もある。ほとんど使われることのないその机だが、今はそこに尊が座っていた。教科書を開いて熱心に勉強をしている尊。だが熱心さと勉強の進みは必ずしも比例するわけではないようだ。腕を組んで「うんうん」唸ってい…

四季は大地を駆け巡る #83 広がる溝

クラウディアは仲間たちと共に森の奥に向かって進んでいる。全体で五十人のパーティ。当初予想していたよりも少ない数だ。パーティの中にはイーストエンド侯爵の配下の人も多くいる。それを考えると予定の三分の二程度しか集まらなかったことになる。 それで…

逢魔が時に龍が舞う #13 見捨てられた土地

湾岸地区は国から見捨てられた場所。こんな風に言われるくらい、震災後の復旧が進んでいない。被害が甚大であった湾岸地区を復旧するには、ただ元に戻すだけでなく、津波も含めた地震対策を施すことも必要で、それには莫大な費用がかかる。それよりも新都心…

四季は大地を駆け巡る #82 裏の顔

夏たちと別れて城に向かうクラウディア。その足取りは重い。ジュンに言われたことに胸を痛めているのだ。 自分はヒューガと別れてから何も変わっていない。クラウディアにはその自覚があった。だが、変わる為に何もしていないと他人から言われると、ここまで…

逢魔が時に龍が舞う #12 年齢詐称?

第七七四特務部隊の臨時会議。定例会議では見ない顔まで揃っている。前回任務の内容はこれまでの考えを大きく変えてしまうもの。その異常事態に関係部署の責任者が全て集められているのだ。今、報告に立っているのは公安調査局。 「鬼が組織を形成していると…

四季は大地を駆け巡る #81 期待

夏が生活費を節約する為に自炊することにして、随分と経つ。宿の主人が調理場を自由に使って良いと言って貰えたのは夏にとって大助かりだった。ギルドで聞いた通り、無愛想な主人であるが、他にも何かと便宜を図ってくる。良い宿を見つけることが出来たと夏…

四季は大地を駆け巡る #80 建国の苦労

グランはドュンケルハイト大森林に入ってすぐにエルフの集団に捕まった。ゆっくりと大森林の景色を眺める時間もない。あっという間の拘束だった。 ただそれはグランにとって悪いことではない。少なくとも、魔獣に襲われて死ぬという結末は免れた。あくまでも…

四季は大地を駆け巡る #79 帰還

眼前には青々とした草原が広がっている。その向こうには遙か先まで連なる密集した木々。他の地域にある大森林とは似て非なる場所。それが精霊の地ドュンケルハイト大森林だ。 帰ってきた。その光景を見た瞬間、ヒューガはそう感じた。ここが自分の戻る場所。…