月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説

四季は大地を駆け巡る #43 世界でもっとも小さな王国

ヒューガの前に、先生を除く全員が跪いている。予想外の状況に困惑顔のヒューガ。先生はそんな彼を見て、何やら嬉しそうな表情だ。先生にとってはまったくの予想外という状況ではなく、実現することへの確信はわずかではあったとしても、期待していた通りの…

勇者の影で生まれた英雄 #31 従卒鍛錬

演習での戦功評価は、ほぼグレンの言った通りになった。それを覆せば、名を挙げられた部隊長たちが不満を感じるだろうという配慮からだ。 そして健太郎が将として軍を率いることもなくなった。具体的に話があったわけではない。だが、新たに新設された部隊が…

異伝ブルーメンリッター戦記 #15 主人公の逆襲

すぐ隣の椅子に座り自分を見つめている黒目黒髪の美人。好みのタイプの女性であったはずが、今はその容姿にまったく心が動くことはない。動くとしてもそれは嫌悪感、そして警戒感。悪感情を生むだけだ。 何故、主人公が自分に接触してきたのか。まったく可能…

勇者の影で生まれた英雄 #30 将の資質

眼下には両軍合わせて一万を超える軍勢が、東西に分かれて陣を組み始めている。 東軍は勇者である健太郎率いる第三軍、西軍はアシュリー・カー千人将率いる第二軍。健太郎はともかくとして、今回も千人将が軍を率いる形だ。 軍部の若返り。組織としては、決…

異伝ブルーメンリッター戦記 #14 主要キャラの葛藤

今は二年生の合同授業の時間。これまで何度も行われている授業であるが、訓練場に漂う雰囲気はいつもとは異なっている。多くの生徒たちが、授業に集中出来ていないのだ。 そうなっている原因はリーゼロッテとジグルスを含む取り巻き所生徒たち。そして、その…

勇者の影で生まれた英雄 #29 女性たちの想い

健太郎たちが出て行った食事の間。しばらく何かを考えていたグレンだったが、不意に顔をあげてメアリー王女に視線を向けた。 「……何か怒らせましたか?」 健太郎の態度が腑に落ちなくて、グレンはメアリー王女に尋ねてみる。何となくメアリー王女には分かっ…

異伝ブルーメンリッター戦記 #13 敵キャラの密約、ではない

リーゼロッテたちが使っている部室。かつては目的があってそこに集まっているわけではなく、ただ雑談をする、それもリーゼロッテをひたすら持ち上げるだけの話を取り巻きたちがしているか、リーゼロッテが誰かの文句を言っているかだけの時間だったのだが、…

勇者の影で生まれた英雄 #28 勇者にも試験?

以前であれば、任務終了後も数日は忙しい時を過ごしていたグレンであったが、軍籍にない今は特に何もすることはない。これは勇者である健太郎も同じだ。王都に帰還し、戦況報告会が終わった翌日には、日常に戻っていた。 今は調練の時間。あいかわらず、健太…

四季は大地を駆け巡る #43 光り立つ

廊下を走る足音が近づいてくる。それは部屋の扉の前で止まり、次の瞬間には勢いよく扉が開かれた。部屋の入口に立っているのはエアルが予想していた通り、ヒューガ。 だが急いで来たはずのヒューガは、扉のところで立ち尽くしたまま、動かないでいた。 「………

勇者の影で生まれた英雄 #27 任務達成

念の為程度のつもりで野営地の裏手にやってきたグレンだったが、暗闇に浮かぶ数え切れないほどの松明の火を見て茫然としてしまった。 ぱっと見ただけで百の単位の数であることが分かる。ある程度は予想していたが、正面の敵と合わせると確実に自軍より多数に…

四季は大地を駆け巡る #42 強く願う

様々な可能性を考えてみる。だがこれといった答えが出てこない。何かが足りていない。それは分かっている。何か見落としていることがあるのではないか。そう考えて、始めから思い返してみる。 彼女に何があったのか。彼女は何を言っていた。その中に答えが必…

勇者の影で生まれた英雄 #26 謀略の気配

健太郎たちの天幕にバレル千人将と各中隊長が集まっている。盗賊征伐についての打ち合わせを行う為だ。勇者付騎士であるグレンも当然、この場にいる。だからこそバレル千人将は打ち合わせ場所として選んだのだ。 「偵察隊からの報告ですと、アジトまでの道筋…

四季は大地を駆け巡る #41 叶わぬ想い

草原を駆ける魔獣の群れ。その周囲をそれよりも一回り小さな人影がいくつも動き回っている。ヒューガたちが鍛錬を行っているのだ。 「左翼遅い!」 「すみません!」 「謝っている間があったら体を動かせ! 進路を塞ぐんだ!」 「はっ!」 響き渡る声はヒュ…

勇者の影で生まれた英雄 #25 説教

野営地に張られた天幕には、勇者と聖女である二人を一目見ようと、ひっきりなしに兵が、隊長たちが訪れていた。 そして彼らは実際に一目見ただけで二人から離れてしまう。彼らがその後に向かう先は、同じ天幕にいるグレンの所だ。 「それでですね。もうちょ…

四季は大地を駆け巡る #40 崩壊の兆し

わずかな灯りを頼りに皆が寝ている部屋に向かう。すれ違う人は誰もいない。この館に残っている人は少ない。更に今は誰もが寝静まっている時間。だからこそ、こうして廊下を歩いているのだ。 静寂の中を、大きな音をたてないようにゆっくりと廊下を歩く。やが…

勇者の影で生まれた英雄 #24 誘惑

グレンが城に出仕している間はフローラとローズは、ほとんどの時間を一緒に過ごしている。別々の時間はフローラが食堂の手伝いをしている時と、ローズが宿屋では話せない相手と色々と相談をしている時くらいだ。 最初の頃は他愛もない話で、それなりに盛り上…

四季は大地を駆け巡る #39 本当の想い

朝からずっと待っているのにあいつは現れない。もう来るなって言ったのは私なのにね。 来ないかな……来るわね。あいつはそういう奴よ。筋金入りの偽善者。でも……怒らせたかな。 あいつが悪いのよ。せっかく私が女を教えてやろうと思ったのに、別の女の話を出…

勇者の影で生まれた英雄 #23 古巣

久しぶりに訪れた国軍調練場。グレンはじっと三一○一○中隊の調練の様子を眺めていた。行なわれているのは中隊を半分に分けての実戦形式の演習だ。きれいに隊列を組んで、ぶつかり合う二つの部隊。剣を振るタイミングも合っていた。 そこからは押し合いが続く…

四季は大地を駆け巡る #38 求められるものが分からない

「「「うわぁああああっ!!」」」 大森林に絶叫が響き渡る。叫び声の主はヒューガの拠点で一緒に生活することになった人族たち。今日もいつものように外縁までやって来て鍛錬を行っていたのだが、この有様だ。 「まったく情けないですね。あの程度の魔獣相…

勇者の影で生まれた英雄 #22 マナー教室

目の前に並ぶナイフをただ見つめているだけで、グレンの手は全く動かなかった。 しばらく、そうやっていたグレンだったが、やがてナイフを一つ一つ手に取ると、切れ味を確かめるように撫でてみたり、握ってみたりを繰り返している。 周りからクスクス笑いが…

異伝ブルーメンリッター戦記 #12 お祭りは皆が主役

イベントのメインであるダンスパーティー。ミス・ミスターである自分たちはその時間を一緒に過ごさなければならないのだと分かって、檀上で呆然と立ち尽くすジグルスとユリアーナの二人。最初に立ち直ったのはジグルスだった。 「はい、提案があります」 「…

異伝ブルーメンリッター戦記 #11 イベントの主役

「残念。今日は貴方の騎士はいないのね?」 部室に入ってきたマリアンネの第一声はこれだった。リーゼロッテと仲が良い彼女ではあるが、この部室を訪れるのは初めてのこと。「くだらない取り巻きの顔なんて見たくない」、こう言って部室に近づこうともしなか…

勇者の影で生まれた英雄 #21 一途な想い

窓から見える空が、橙色から青紫色に変わって行く。晴れの日に時折見られる、夕闇迫る、このひと時の空の色の移り変わりを見るのがグレンは好きだった。一日の終わりを感じて、何となく気持ちが落ち着くのだ。 ぼんやりとそれを眺めているグレン、だったのだ…

四季は大地を駆け巡る #37 お人好し

ヒューガは助けたエルフとの話を終えて、人族が捕らえられている部屋に向かう。その表情には疲労の色が浮かんでいる。彼女が受けた仕打ちを考えれば、正気でいられるだけで大変なこと。正気でいるほうが辛いのかもしれない。同情の気持ちが湧くが、胸に残っ…

勇者の影で生まれた英雄 #20 王女様のお相手

グレンの日常もかなり落ち着いたものになってきた。騎士団官舎にきて、健太郎の鍛錬に立ち会う。立ち会うといっても自分の鍛錬を行っているだけだが。 午前の鍛錬時間が終わると、嫌々ながら健太郎と結衣との昼食。 休憩時間は図書室だ。図書室といっても国…

四季は大地を駆け巡る #36 侵入者

エルフの都での騒動から一ヶ月は過ぎているが、特に何事もなく毎日が過ぎている。 カルポは結局ここに残ることになった。しかも僕を正式な主として仕えるとまで言ってきて。 ゲノムスと相談して決めたと言われたので、この場所に残ることについては文句はな…

勇者の影で生まれた英雄 #19 勇者付き騎士のお仕事

正式な勅命を受けて、グレンは国軍を退役し、勇者付の騎士となった。 新しい職場は、騎士団官舎に一室を設けられている。厚遇といっても良いが執務室を与えられたからといって、そこでは何もすることはない。勇者の鍛錬に付き合って、騎士団の調練場に居るこ…

異伝ブルーメンリッター戦記 #10 モブキャラの強さ

学院の強化合宿は、合宿所までの往復の行程を除いて、わずか一日で終了した。リーゼロッテのグループを襲った魔物襲撃事件の影響だ。 合宿地は一般の人が登山を楽しむ行楽地でもある。そんな場所に魔物の集団が出現したのだ。事は学院内で処理出来るような問…

勇者の影で生まれた英雄 #18 転落

グレンは三一○一○中隊の小隊長を集めて、定例のミーティングを開いていた。退役を望んでいるからといって仕事に手を抜くことはない。それどころか、今の内に出来ることは全て終わらせておこうと、以前よりも仕事に注力していた。 「体力向上訓練の方はどうで…

四季は大地を駆け巡る #35 エルフたちの選択

拠点の扉が開いた。そんなものがどこにあるのかと思っていたら、寝泊りしている一番大きな建物に地下に通じる隠し階段があった。ルナは良くこんなの知ってたな。 早速、それを使ってエルフの都に行ってみることにした。行くのは僕とルナ。カルポは……先生から…