月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説

災厄の神の落し子 第89話 重臣会議、みたいなもの

帝都第三層の歓楽街近く。小さな酒場にハティは来ている。昼間から酒を飲む為ではない。酒場の多くは昼は食堂。注文されれば酒も出すが、食事をメインで提供しているのだ。 ただ食事が目的でもない。イアールンヴィズ騎士団の仲間たち、本物のイアールンヴィ…

災厄の神の落し子 第88話 不満と不安

体育祭を目前に控えて各クラスは最後の調整に入っている。もっとも真剣に取り組んでいるのは騎馬戦。去年、一年ガンマ組が番狂わせを起こした競技だ。三年生は絶対に番狂わせは起こさせないという気持ちから。一年生と二年生はやりようによっては上級生に勝…

災厄の神の落し子 第87話 計算違い

体育祭の開催まで二か月をきったところで、騎士候補生たちは種目別の訓練を開始した。例年よりもかなり早くからの取り組み。そうなった理由は昨年の番狂わせにある。特に三年生の意気込みは凄い。彼らはあと半年で卒業する身。帝国騎士団に進む者は正団員と…

災厄の神の落し子 第86話 過保護

魔獣オリオンと一週間の時を過ごして帰宅したリルたち。戻ってすぐにリルは登城することになった。ルイミラ第三妃からのお召しを受けてのことだ。呼び出されたのはリルだけ。ローレルは一緒ではない。それに疑問を抱いていても登城しないわけにはいかない。…

災厄の神の落し子 第85話 新たな絆

エセリアル子爵屋敷に戻って半月。リルはまた帝都を離れることになった。正しくは帝都外壁の内側なので広義の帝都内ではある。怪我が完治したといえる状態ではないリルが帝都を離れたのは治療の為。怪我の治療に良いといわれる温泉に向かったのだ。治療が必…

災厄の神の落し子 第84話 明かされた真実

発見されたリルは、その場で応急処置を受けた上でエセリアル子爵屋敷に運ばれた。イザール侯爵家ではないのはリルの希望だ。特別な意味はない。リルが普段暮らしているのはエセリアル子爵屋敷。家に帰るとなれば、それはエセリアル子爵屋敷になるだけのこと…

災厄の神の落とし子 第83話 幸運なのか不運なのか、どっち?

何故こんなことになったのか。遥か上にわずかに見える光を見上げながらリルは考えている。帝国騎士団に同行しての課外授業の途中のことだった。希望者だけが参加する課外授業だったが、リルは悩むことなく参加を決めた。実戦経験を、それが魔獣相手のもので…

黒と白の動乱記 第14話 面倒ごとが増えていく予感

任務を終えた第十特務部隊。部隊として認められる戦功はなかったが、隊員である白夜の働きはかなり高い評価を得ることになった。これは白夜個人のことであっても、部隊として喜ぶべきことだ。喜ぶべきことであるはずなのだが、部隊にはそういう雰囲気はない…

黒と白の動乱記 第13話 ありがた迷惑という言葉を知ってほしい

任務を終えて、帝都に帰還した白夜。旅の汚れを落とし、腹ごしらえをし、銀子と音子と三人での談笑の時間を過ごしたあとは、早めの就寝。実際に寝たわけではない。音子を自分の部屋で寝かせ、銀子と二人の時間を楽しんだのだ。今回は二人にとって出会ってか…

黒と白の動乱記 第12話 かなり驚いています

戦いは帝国軍が呆気なく感じるほどに一気に終結を迎えた。当然、帝国軍の勝ちだ。帝国軍右翼の攻撃により対峙していた領主軍は崩壊、さらにそれは中央の部隊にも波及し、総崩れとなった。そうなると裏切って、帝国軍本陣と対峙していた領主軍は孤立。抗うこ…

黒と白の動乱記 第11話 これも成り行きというのだろうか

戦いは乱戦模様。そうなるように領主軍側は試みている。そうでなければ勝ち目はない。そう考えているのだ。正しい考えだ。陣形を整えている帝国軍に攻撃を仕掛けても跳ね返されるだけ。将兵の質が根本的に違っているのだ。 領主軍としては帝国軍の陣形を崩し…

黒と白の動乱記 第10話 想定外のことばかり

御剣(ミツルギ)瑛正(エイセイ)率いる第一軍派遣部隊に与えられた任務は領主間の争いを収めるというもの。争いは農業用水の配分を巡ってのものだ、今年は雨が少なく両領国が利用している治水池の水量が十分ではなくなった。双方、自領に必要な水量の確保…

黒と白の動乱記 第9話 仕事があるのは悪いことではない

白夜の怪我は完治している。出血や傷の深さの割に体の奥のダメージは少ない。そうなるように攻撃を受けたおかげではあるが、回復力の異常さも化物(ケモノ)の能力だ。生まれ持った力ではない。魔力の活用とそれを怪我からの回復に作用させる術を知っている…

黒と白の動乱記 第8話 これもすれ違いというのだろうか?

鳳凰国皇帝が住まう帝城のすぐ近くに帝国軍施設はある。帝城を中心に、東に位置するのが第一軍の施設。西が第二軍で南が第三軍といった配置だ。北にも、帝国軍移設に比べるとかなり規模は小さいが、皇帝の護衛を務める近衛武士団の施設があり、帝城の四方を…

黒と白の動乱記 第7話 鍛え直すことになった

鳳凰国の軍、帝国軍の統帥権は皇帝にある。実際に皇帝が軍を率いて出陣したことなど、今の時代の人では答えがすぐに浮かばないほど、遠い昔のことだが、建国以来、それは変わっていない。軍の統帥権だけでなく、すべての最高権限は皇帝が持っている。政治も…

黒と白の動乱記 第6話 DIYを始めてみた

白夜は翌日から早速、部屋の改装に取り掛かった。軍の仕事は休み。さぼりではない。任務中の負傷ということで公傷扱い。治るまで休みをもらえるのだ。 改装は思いつきで始めるには大変な作業だった。まず材木屋に行って、大きな板を購入。それを家まで運ぶだ…

黒と白の動乱記 第5話 同居人が増えました

任務の帰り道は行きとは別ルート。里がある小さな盆地から西に向かって、山を三つ超える。行きよりもかなり険しい道のりを進むことになったが、山を超えてからは楽だった。行きに下った川の上流に出て、船で下れば、そこは帝都のすぐ近く。日数としても短か…

黒と白の動乱記 第4話 初仕事も大変でした

第十特務部隊は任務の為に帝都を発った。白夜にとっては初任務。入隊して一週間での出動だ。怪しまれる何かがあったわけではない。新入隊員も同行させるように、という命令が発せられた結果だ。白夜の知ったことではないが。 任務地へは船で川を下って海に出…

黒と白の動乱記 第3話 初出勤は少し緊張します

鳳凰国の軍は三軍で構成されている。一軍一万、三軍で三万。これは平時の数で、戦時は徴兵が増え、数は倍にも三倍にも、それ以上にもなる。ただ徴兵は人手を奪い、国の生産能力を低下させることになるので、むやみやたらと数を増やすことなどない。それを行…

黒と白の動乱記 第2話 世の中は不公平、だから?

六百年を超える陽皇家による支配体制も揺らぎを見せ始めている。原因は地方が力を持ったこと。拡大し続けてきた支配領域を皇帝自らが直接統治することなど不可能。国司と呼ばれる、皇帝に代わって行政を行う官僚を送り込むjことで地方を治めるようになった…

災厄の神の落し子 第82話 心の強さ

ワイズマン帝国騎士団長は忙しい。今に始まったことではないのだが、これまでとは少し変化がある。帝国騎士養成学校の運営に関わる打合せの時間が、以前よりも、増えたのだ。今年度から授業内容を変更した影響だ。毎年、決まった内容をこなしていく前年度ま…

災厄の神の落し子 第81話 高く跳ぶには一度しゃがまなければならない

本日、帝国騎士養成学校では課外授業が行われている。二、三年生が参加する課外授業だ。昨年度まではなかったもので「基礎を固めるだけでなく、より実戦的な内容も」という方針変更の結果、行われることになったのだ。 それでも、本格的な戦闘訓練を半年も経…

災厄の神の落し子 第80話 依頼達成

イザール侯がエセリアル子爵屋敷を訪れた。彼なりに 長男アイビスの事件について整理をつけたつもりで、その結果を話しに来たのだ。ローレルではなく、リルに。 イザール候はリルに息子であるローレルに伝えている以上のことを話している。リルが先に事態を…

災厄の神の落し子 第79話 策破れ

イザール侯爵家のアイビスが、成人式の最中に亡くなった事件の影響は、意外なところにも波及した。トゥレイス第二皇子の嘘がバレるきっかけになったのだ。嘘がばれることは想定内のこと。トゥレイス第二皇子は嘘がばれ、自分への無用な期待が消え、兄のフォ…

黒と白の動乱記 第1話 終わりと始まりの時

四方を山に囲われた盆地にその里はある。今は「あった」と過去形を使うべきかもしれない。里の建物は、そのほとんどが燃え尽き、あちこちから白い煙があがっている。地面に転がるいくつもの死体。多くが子供で、手を、足を切り取られ、無残な姿を晒している…

災厄の神の落し子 第78話 余波

アイビスの死は帝国に衝撃を与えた。少なくとも、この百年間、成人式は形式的なものだった。成人式を終えた人たちも、式の前と後で何が変ったか分かる人はほとんどいない。変ったと思う人もなんとなくそう感じるだけという、周囲からはまったく認識出来ない…

災厄の神の落し子 第77話 加護と罰

帝国騎士養成学校の昼休み。クラスの仲間たちと授業の話や養成学校とは全然関係ない雑談で過ごす時間だったのだが、それが変わってしまった。まさかの事態によって。 トゥレイス第二皇子が同じテーブルに座ってきたのだ。ローレルはまだしも、他の二年ガンマ…

災厄の神の落し子 第76話 偽りと真実

帝国騎士養成学校が騒がしい。その原因はトゥレイス第二皇子。前日の模擬戦で人々を驚かせたトゥレイス第二皇子が、今日も養成学校を訪れているのだ。しかも昼休みの食堂に。 食堂にいた騎士候補生たちは突然現れたトゥレイス第二皇子に驚いた。驚くだけでな…

災厄の神の落し子 第75話 示された力

本日の授業は全学年合同となった。といっても騎士候補生たちはただ見ているだけ。帝国騎士団の模擬戦を見学するという授業だ。 これには騎士候補生の多くが戸惑いを覚えている。この授業は前から決まっていたものではない。前日になって急に伝えられたのだ。…

災厄の神の落し子 第74話 わだかまり

帝国騎士養成学校の授業は日々、帝国騎士団との合同訓練のようになった。と言っても、まったく同じ訓練を行っているわけではない。帝国騎士団の団員たちは、従士を除けば、基本、教える側。一人の教師役が教える騎士候補生の数を大きく減らすことが目的だ。…