月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-勇者の影で生まれた英雄

勇者の影で生まれた英雄 #129 踏み出された一歩

ゼクソン王国の王城。その城内の謁見の間に文武の重臣が居並んでいる。玉座に座るのはヴィクトリア。本来の玉座の主であるヴィクトルは、そのヴィクトリアの腕の中だ。 銀色の髪は両親譲り。まだ幼くありながら思慮深さを感じさせる、その瞳は父親似だと、グ…

勇者の影で生まれた英雄 #128 密やかな再始動

他国への無断侵攻の責任を取って大将軍を辞め、一近衛騎士となった健太郎ではあるが、それはあくまでも軍部内での地位に限ってのこと。爵位はそのままになっている。 健太郎を処分する目的は軍部からランカスター侯爵家の影響力を排除する為。その目的が会議…

勇者の影で生まれた英雄 #127 三妃会議

ルート王国の都ルーテイジは賓客を迎えて、大騒ぎになっている。訪れたのはゼクソン王国の国王ヴィクトルとその母ヴィクトリア。幼いとはいえ、一国の王を迎え入れるのだ。それなりの形式を整えなければならない。なんといってもルート王国の人々が、それを…

勇者の影で生まれた英雄 #126 大切なものは何か

王位に就いてからエドワードは精力的に働いている。その勤勉さは部下たちが新王に期待していた通りか、それ以上のもの。そんな新王エドワードの動きは、これまで国政の場に漂っていた衰退の匂いを吹き飛ばし、人々に活気を取り戻させることになる。 なんて話…

勇者の影で生まれた英雄 #125 小さなズレ

王都に連行されたランカスター侯爵と次男のロイド。エドワード王はすぐに二人と話し合いの場をもった。それも余人を交えない、二人だけでのし合いだ。 ランカスター侯爵家の二人との話を、他の者には聞かせたくないのだ。その理由は。 「……嘘だ。父上がその…

勇者の影で生まれた英雄 #124 政変

ジョシュア国王の早過ぎる死。それはウェヌス王国に驚愕をもたらした。 だが、もたらしたのは驚愕だけだった。グレンを題材とした小説の影響によって、ジョシュア国王に好意を向けることとなった極々少数の国民の涙を除けば、悲しみも混乱も広がることはなく…

勇者の影で生まれた英雄 #123 異変

侯爵家といっても領内に大都市をいくつも抱えているわけではない。大都市といえるのは領主館がある街くらいで、それ以外は小さな街ばかりだ。 暴動が起きたバッカスもその一つ。ランカスター侯爵領の南東の外れにある街で、特別な産業も豊かな耕作地もない貧…

勇者の影で生まれた英雄 #122 まだ終わっていない

どうしてこうなった。今のランカスター侯爵の気持ちを言葉にするとこれだ。万全の準備を整えて、動き出したはずだった。アシュラム戦役で軍部の実権を握り、戦争を自由に行えるようにする。 その後、ゼクソン王国を滅ぼして、その地に王を据える。ランカスタ…

勇者の影で生まれた英雄 #121 変わらない人

第二次アシュラム戦役の影響は思わぬところにも出ている。ただ、それを気にする人はわずかな数でしかない。さらに本気で困っている人はたった一人だ。 城内の食堂では、久しぶりに夕食会が開かれている。結衣の強い要望で開かれた、その会の参加者は健太郎、…

勇者の影で生まれた英雄 #120 変わろうとする人

勇者軍を撃退し終えたあとも、ルート王国の人たちは忙しい日々を送っていた。都はほぼ無傷といっても投石の撤去や穴の空いた場所の修復など、戦後処理は決して少なくない。 それに忙しい理由はそれだけではない。付け入る隙を全く見せない完勝と言える内容で…

勇者の影で生まれた英雄 #119 揺れ動く大国

勇者軍によるストーケンド襲撃。たとえトキオという独自の駐屯地を持っているとしても、多くの犠牲者を出した戦いだ。それを秘匿しておくことは出来なかった。仮に犠牲が少なくても同じこと。襲撃の情報は間者を通じて、ジョシュア国王の耳に入ることになる…

勇者の影で生まれた英雄 #118 戦いの目的

ルート王国は勇者軍との戦いに向けて着々と準備を進めている。勇者軍も行軍を隠す段階ではなくなっていて、かなりの勢いでルーテイジに近づいていた。その情報は逐一グレンの下に届けられる。出動した勇者軍は五千。率いているのは健太郎。大量の攻城兵器と…

勇者の影で生まれた英雄 #117 銀鷹傭兵団襲撃

エリック・ハーリー千人将、アシュリー・カー千人将を筆頭にした騎士団の帰還は、ウェヌス王国に驚きを持って迎えられた。彼らはすでに忘れられた存在だったのだ。 早速にジョシュア国王臨席の下、帰還報告の場が設けられた。居並ぶ重臣の中、両名を先頭に四…

勇者の影で生まれた英雄 #116 グレンの国とは

ウェヌス王都にあるランカスター侯爵家の屋敷。ランカスター侯爵は冷たい目で列席者を見つめていた。それでもレスリーからの報告を受けた時よりは随分と落ち着いた様子だ。過ぎた失敗をいつまでも悔やんではいられない。それくらいの分別はウェヌス王国の大…

勇者の影で生まれた英雄 #115 勇者の誓い

アシュラム王国の都メイプルで二ヶ月の時を過ごすことになった健太郎。とはいっても健太郎が自由を許されているのは城内だけだ。それでさえ破格の待遇というものだが、健太郎にとっては不自由で仕方がない。 街に出ることが出来るのであれば、それなりの期間…

勇者の影で生まれた英雄 #114 信じられる人

健太郎をなんとしても中央に戻す。そのために動き出したランカスター侯爵家の最初の一手はレスリーを健太郎のもとに送り込むというものだった。状況把握と健太郎の説得、それがレスリーの役割だ。事態を解決する為の使者という名目でゼクソン王国にも正式に…

勇者の影で生まれた英雄 #113 アシュラム戦役の後で

エステスト城砦の一室にゼクソン王国とウェヌス王国の外交担当者が集まっていた。アシュラム王国との戦いの後処理が会談における議題だ。 ゼクソン王国側の代表者はエルンスト伯爵。ウェヌス王国側はランカスター宰相だ。ランカスター宰相は事態が予想外の方…

勇者の影で生まれた英雄 #112 城砦の旗

全軍での総攻撃を決めた翌日。勇者軍は早朝からその準備に入っていた。本陣では総攻撃にあたっての戦法の確認を行うために大隊長以上の将官が集まっている。 それを率いる健太郎はといえば、上座に座ったままテーブルに突っ伏していた。 「ケン様、全員集ま…

勇者の影で生まれた英雄 #111 国境の攻防

ウェヌス王国とアシュラム王国との国境にある城砦。その城砦に向かって大小様々な石が大量に降り注いでいく。勇者軍の投石器が発した石だ。 健太郎が考えに考えた自軍の強化策。それは結局、各種兵器を大量に運用するというものだった。大国ウェヌスの国力を…

勇者の影で生まれた英雄 #110 手の平の上

ランカスター侯爵屋敷の一室にレスリーは呼び出された。呼び出したのは兄であるランカスター宰相だ。会議の場で健太郎が発した「恩賞としてアシュラムを」という要求。ランカスター宰相はそれを入れ知恵したとすればレスリーだと疑っていたのだが。 「私は知…

勇者の影で生まれた英雄 #109 新たな戦い

ウェヌス王都。王城の大広間では今まさにアシュラム王国への侵攻が決定されようとしていた。居並ぶ重臣を前にランカスター宰相はジョシュア王に向かい合っている。 「アシュラム王国への侵攻を決定したいと思います」 「また戦争か。ゼクソンとの戦争が同盟…

勇者の影で生まれた英雄 #108 謀略

「行ったり来たり忙しい奴だな」 これがゼクソン王都に到着したグレンに向けてのヴィクトリアの第一声だった。それを聞いて、グレンは青筋の立て方を教えてもらいたくなった。グレンが忙しくしている原因の一端はヴィクトリアにもあるのだ。 「わざと怒らせ…

勇者の影で生まれた英雄 #107 攻勢

ルート王国の重臣会議。その進め方は以前とは変わっていた。グレンが全ての報告の相手をすることはなく、すぐに指示を返すこともない。重臣たちの間で議論した上で、その結果の判断を仰ぐという、どの国でも行われている進め方だ。 それが臣下を育てる意味を…

勇者の影で生まれた英雄 #106 初めて知る想い

グレンにとっての最大の問題は自分の体が一つしか無いこと。夜の話ではない。ルート王国とゼクソン王国の二つの国政をみるということが、かなり難しくなっている。どちらも安定には程遠い状況。やらなければならない事柄は山程あるのだ。 ゼクソン王都を離れ…

勇者の影で生まれた英雄 #105 愚者と大物は紙一重

アシュラム王国の使者を迎えた後は重要案件の進捗を確認する為の重臣会議。このようなイベントがなくてもグレンの毎日は忙しい。個別案件についてもグレンは一つ一つ状況を細かく確認している。時間がいくらあっても、体がいくつあっても足りないような状況…

勇者の影で生まれた英雄 #104 手探りの改革

ゼクソン王国とウェヌス王国の同盟締結の情報は瞬く間に広がっていった。両国の王が会しての同盟だ。周囲に知られないはずがない。 ウェヌス王国にとってはその影響はほとんどないといって良いものだが、ゼクソン王国にとってはそうはいかない。グレンがゼク…

勇者の影で生まれた英雄 #103 黒幕の動き

ウェヌス王国の王都にあるランカスター侯爵家の屋敷。その屋敷の食堂に普段は見れない人物の姿があった。当主であるランカスター侯爵その人だ。 普段は領地にいるランカスター侯爵が久しぶりに王都に出てきていた。食堂には長子でありウェヌス王国宰相である…

勇者の影で生まれた英雄 #102 同盟締結

グレンのゼクソン王都滞在は二か月で終わった。 私生活はヴィクトリアとメアリーの間を行き来するという傍目には羨ましい、グレン本人にとっては気恥ずかしさと気まずさを感じる毎日だった。ヴィクトリアとメアリーの方は王族らしく、互いの立場を尊重し合っ…

勇者の影で生まれた英雄 #101 妃二人

グレンはメアリーを連れてゼクソン王都に戻った。ウェヌス王国との交渉の詰めはこれからだ。最終的な調印式にはまだ時間が必要となるので、一旦エステスト城塞から引き上げることにしたのだ。本当はルーテイジに戻る方が近かったりするのだが、現時点ではメ…

勇者の影で生まれた英雄 #100 偽りの恋

会議が終わった健太郎を、いつもの様に結衣とレスリー・ランカスターは部屋で迎えた。 二人の前の椅子に座った健太郎。だが何も話をすることなく口を真一文字に結んだまま、じっと考え込んでいる。 その健太郎に焦れて結衣が文句を口にする。 「どうしたの?…