ファンタジー小説-勇者の影で生まれた英雄
モンタナ王国の内戦は三つ巴の戦い。そう見られているが、実際には国王軍だけが王弟派とクリスティーナ王女派の両方を相手に戦っている状況。数では両派に勝るモンタナ王国軍ではあるが、さすがにこの状況は厳しい。主戦場と定めている中央街道の東街道側に…
# 国王と王弟の争い、それにクリスティーナ王女派が加わったことでモンタナ王国の内乱は三つ巴の戦いになっている。最大の支配地域を有しているのは国王。王弟は支配地域こそ国王に比べると狭いが、ウェヌス王国軍を加えた軍勢の数では最大だ。支配地域の狭…
すぐにウェヌス王国も知ることになるが、エステスト城塞を放棄したゼクソン王国駐留軍は自国に戻ったのではない。エステスト城塞を出てゼクソン王国とは反対の西に少し移動、そこから南下して、ルート帝国が新たに構築した砦に移動していた。開戦に向けて配…
モンタナ王国の玉座を狙う王弟。ウェヌス王国を味方につけて、圧倒的に有利な状況であったのだが、ここにきて一気に雲行きが怪しくなってきた。王弟派と呼ばれる味方の結束が大いに揺らいでいるのだ。 南部に領地を持つ貴族家はまだ良い。南部は王弟派の支配…
エイトフォリウム帝国との開戦をエドワード王は決断した。まだ公式な決定にはなっていないが、その決断は城内で働く人々にはすぐに広まっていった。公式に決定する前にも色々と準備は必要だ。各部署には新たな戦争が始まることが、それがエイトフォリウム帝…
モンタナ王国における戦況が大きく動き始めた。事を急いでいたエドワード王にとっては喜ばしい報告であったのだが、詳細を知るにつれて、徐々に気持ちは暗くなっていった。銀鷹傭兵団の存在がモンタナ王国の人たちに知られてしまった。百歩譲って、まだそれ…
クリスティーナ王女を旗頭にした第三勢力。それに脅威を覚えているのは王弟よりもモンタナ国王だ。国王にとってはまさかの事態。謀略の道具として使い捨てるはずが、クリスティーナ王女はそれを利用して、まだ小さいとはいえ、自勢力を作り上げてしまった。…
モンタナ王国東部の街ニュールンでの戦いは大混戦の末、銀狼傭兵団の勝利という形で決着した。王弟派も国王軍も相手の不意を突くつもりでいたところに、想定になかった第三勢力から奇襲を受けて大混乱。その混乱から立ち直ることが出来ないままに三つ巴の戦…
モンタナ王国の西に連なる山々の麓を北に伸びる街道。主要街道ではないその道を、通常であえばあり得ない大人数が移動している。ニュールンの街が戦場になると聞いて、災禍を逃れようと移動している人々の群れだ。だがクリスティーナ王女にとっては、まった…
停滞状態にあったモンタナ王国における国王と王弟派の戦いが動き出そうとしている。戦場となりそうな場所は王国東部の街ニュールン。領土内を東西、南北に延びる中央街道のひとつ、中央部から東部に繋がる中央東街道の東端にある街だ。 王弟派としては、恭順…
国王と王弟の戦いが停滞していることは、クリスティーナ王女率いる義勇軍にとっては望ましい状況だ。本格的な戦いに備えて、若い騎士や義勇兵たちを鍛える時間が出来た。せっかく得られたその貴重な時間を無駄に過ごすことを許すほど、彼らを率いるクリステ…
権力を手に入れることで出来れば、すべてが上手く行くはずだった。自分が国王になれば国を正しい方向に導き、多いに発展させることが出来るはずだった。多くの人が自分の登壇を喜び、期待し、それに応えた自分は名君と称えられるはずだった。はずだった。は…
ゼクソン王国の西部。ウェヌス王国との国境に近いその場所に六千ほどの軍勢が集まっている。その多くはゼクソン王国最西部に造られた、移設された上で強化されたという表現が正確だが、防衛拠点の守りについているグスタフ・ゲイラー将軍率いるゼクソン王国…
国王と王弟との争いが本格化している中、クリスティーナ王女は第三勢力を作りあげた。作りあげたといってもその勢力は小さなものだ。活動を支える金銭や物資などは周辺貴族たちの支援のおかげで困ることはない状況であるが、肝心の戦力は銀狼傭兵団百名のみ…
貴族領をまるまる一つ制圧したクリスティーナ王女派。本人の決意は固まっていないのだが、事情を知らない周囲からはそう見られている。 その事実を知った国王はすぐに近隣の貴族家に討伐を命じた。クリスティーナ王女の下にいる兵力は数百、それも半分以上が…
ギルバート宰相は忙しい時間の中、エドワード王との打ち合わせの時間をもうけた。エドワード王との会議は頻繁に行われている。だが今日話し合う内容は他の人がいる会議の場で話すべきことではない。そう考えてエドワード王に個別に時間をとってもらったのだ…
西の大国ウェストミンシア王国の都。いうまでもなく西方最大の城郭都市であるその場所に、遠征を終えた将兵たちが帰還してきた。それを迎える王都の住民たちは大騒ぎ。勝敗に関係なく、とにかく家族が無事に帰ってきてくれた事実だけを喜んでいる人々も多い…
王都での軍事会議。すでに事が動いている今となっては各地の状況が計画通りに進んでいるかを確認し、問題があればその解決策を検討することが主、であるべきなのだが今日の会議はそういうものではなくなっている。 その理由はカー大将軍を通じて伝えられたア…
憧れていたグレンの成り上がり英雄譚。それが自分の思っていたようなものではなかったことをクリスティーナ王女は思い知らされた。勝者の反対側には敗者がいる。勝者側の英雄は敗者の側から見れば大悪人だということを彼女は知った。 クリスティーナ王女が決…
フローラが街に出られる機会が増えている。今の段階で正式に王妃にするという決断はエドワード王には出来ない。そうであってもフローラの魅力を無駄にすることはない。多くの護衛を従え、王家の紋章が記された馬車に乗っていれば人々は勝手にそういう立場の…
第三軍の出撃は見送られている。中央を空にするわけにはいかない、というだけでなく訓練不足もその理由だ。トリプルテンの影響で多くの部隊でかなり厳しい訓練が行われるようになっているが、その成果が現れるにはまだ時間がかかる。ある程度、形になったと…
虐殺の舞台として選ばれた村はレジス。三百人ほどの人々が住む、モンタナ王国では比較的大きな村だ。 その村が選ばれたのには一応は理由がある。領政への不満から過去に何度か騒動を起こしたことがあるからだ。不満を持たせるような政治を行うのが悪い、なん…
この先、クリスティーナ王女に対する策略はもっと分かりやすい形で動き出す。こう予想していたグレンではあったが、実際に起きた動きは意外なものだった。大勢の義勇兵が駐留していたハムスの街から消えたのだ。もっとも消えたと思っているのはクリスティー…
ウェヌス王国軍が国境を侵犯した情報がモンタナ王国に届いた。初めはその意図が分からず、王弟に休戦を申し込むなどした国王ではあったが、その答えが拒否、それも王弟派の積極攻勢という形で返されたことで、ようやく事態を理解した。 そうなると国王側の危…
ウェヌス王国軍が出陣した。第一軍と第二軍合わせて二万。ただ目的地は一つではない。主目的であるモンタナ王国で起きている内乱の王弟派支援にエリック・ハーリー大将軍率いる第一軍五千。残りの五千は後備も兼ねてアシュラム王国との国境近くへ、そしてア…
当面、実戦の予定はなかったはずの義勇軍。だが国からもたらされた情報がその予定を変えることになった。ハムスの街からそう遠くない位置にある村が、頻繁に盗賊の襲撃を受けているという情報だ。それを受けたクリスティーナ王女は討伐に出ることを決断した…
モンタナ王国内で国王派と王弟派の戦いが始まった。そうはいってもまだ局地戦。領地を並べている双方の派閥に属する貴族家が衝突したのだ。その衝突が全国に広がる気配は、今のところは、強くない。旗幟を鮮明にしていない貴族家はまだまだ多い。国王派はそ…
グレンたち銀狼傭兵団はモンタナ王国王女クリスティーナ率いる義勇軍に残ることにした。複雑な立場であるクリスティーナの軍にいることは、無駄な厄介事に巻き込まれる可能性がある。だが今現在それは可能性であり、問題が顕在化しているわけではない。なに…
戦争の噂が王都内で広がっている。相手がどこかなど具体的な情報はない。出撃の時が近いようだというだけの漠然とした噂だ。それは仕方がない。噂を流した人たちが、それ以上のことを知らないのだから。噂の出所はトリプルテン、を教えている教官たち。軍事…
第三軍の訓練場に活気が溢れている、というのは大袈裟だ。全体としては普段と変わらぬ熱意で兵士たちは訓練に取り組んでいる。それはそれで活気があるというべきだが、それを遙かに超える熱意ある訓練を行っている部隊がある。第十大隊第十中隊第十小隊、ト…