月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-勇者の影で生まれた英雄

勇者の影で生まれた英雄 #31 従卒鍛錬

演習での戦功評価は、ほぼグレンの言った通りになった。それを覆せば、名を挙げられた部隊長たちが不満を感じるだろうという配慮からだ。 そして健太郎が将として軍を率いることもなくなった。具体的に話があったわけではない。だが、新たに新設された部隊が…

勇者の影で生まれた英雄 #30 将の資質

眼下には両軍合わせて一万を超える軍勢が、東西に分かれて陣を組み始めている。 東軍は勇者である健太郎率いる第三軍、西軍はアシュリー・カー千人将率いる第二軍。健太郎はともかくとして、今回も千人将が軍を率いる形だ。 軍部の若返り。組織としては、決…

勇者の影で生まれた英雄 #29 女性たちの想い

健太郎たちが出て行った食事の間。しばらく何かを考えていたグレンだったが、不意に顔をあげてメアリー王女に視線を向けた。 「……何か怒らせましたか?」 健太郎の態度が腑に落ちなくて、グレンはメアリー王女に尋ねてみる。何となくメアリー王女には分かっ…

勇者の影で生まれた英雄 #28 勇者にも試験?

以前であれば、任務終了後も数日は忙しい時を過ごしていたグレンであったが、軍籍にない今は特に何もすることはない。これは勇者である健太郎も同じだ。王都に帰還し、戦況報告会が終わった翌日には、日常に戻っていた。 今は調練の時間。あいかわらず、健太…

勇者の影で生まれた英雄 #27 任務達成

念の為程度のつもりで野営地の裏手にやってきたグレンだったが、暗闇に浮かぶ数え切れないほどの松明の火を見て茫然としてしまった。 ぱっと見ただけで百の単位の数であることが分かる。ある程度は予想していたが、正面の敵と合わせると確実に自軍より多数に…

勇者の影で生まれた英雄 #26 謀略の気配

健太郎たちの天幕にバレル千人将と各中隊長が集まっている。盗賊征伐についての打ち合わせを行う為だ。勇者付騎士であるグレンも当然、この場にいる。だからこそバレル千人将は打ち合わせ場所として選んだのだ。 「偵察隊からの報告ですと、アジトまでの道筋…

勇者の影で生まれた英雄 #25 説教

野営地に張られた天幕には、勇者と聖女である二人を一目見ようと、ひっきりなしに兵が、隊長たちが訪れていた。 そして彼らは実際に一目見ただけで二人から離れてしまう。彼らがその後に向かう先は、同じ天幕にいるグレンの所だ。 「それでですね。もうちょ…

勇者の影で生まれた英雄 #24 誘惑

グレンが城に出仕している間はフローラとローズは、ほとんどの時間を一緒に過ごしている。別々の時間はフローラが食堂の手伝いをしている時と、ローズが宿屋では話せない相手と色々と相談をしている時くらいだ。 最初の頃は他愛もない話で、それなりに盛り上…

勇者の影で生まれた英雄 #23 古巣

久しぶりに訪れた国軍調練場。グレンはじっと三一○一○中隊の調練の様子を眺めていた。行なわれているのは中隊を半分に分けての実戦形式の演習だ。きれいに隊列を組んで、ぶつかり合う二つの部隊。剣を振るタイミングも合っていた。 そこからは押し合いが続く…

勇者の影で生まれた英雄 #22 マナー教室

目の前に並ぶナイフをただ見つめているだけで、グレンの手は全く動かなかった。 しばらく、そうやっていたグレンだったが、やがてナイフを一つ一つ手に取ると、切れ味を確かめるように撫でてみたり、握ってみたりを繰り返している。 周りからクスクス笑いが…

勇者の影で生まれた英雄 #21 一途な想い

窓から見える空が、橙色から青紫色に変わって行く。晴れの日に時折見られる、夕闇迫る、このひと時の空の色の移り変わりを見るのがグレンは好きだった。一日の終わりを感じて、何となく気持ちが落ち着くのだ。 ぼんやりとそれを眺めているグレン、だったのだ…

勇者の影で生まれた英雄 #20 王女様のお相手

グレンの日常もかなり落ち着いたものになってきた。騎士団官舎にきて、健太郎の鍛錬に立ち会う。立ち会うといっても自分の鍛錬を行っているだけだが。 午前の鍛錬時間が終わると、嫌々ながら健太郎と結衣との昼食。 休憩時間は図書室だ。図書室といっても国…

勇者の影で生まれた英雄 #19 勇者付き騎士のお仕事

正式な勅命を受けて、グレンは国軍を退役し、勇者付の騎士となった。 新しい職場は、騎士団官舎に一室を設けられている。厚遇といっても良いが執務室を与えられたからといって、そこでは何もすることはない。勇者の鍛錬に付き合って、騎士団の調練場に居るこ…

勇者の影で生まれた英雄 #18 転落

グレンは三一○一○中隊の小隊長を集めて、定例のミーティングを開いていた。退役を望んでいるからといって仕事に手を抜くことはない。それどころか、今の内に出来ることは全て終わらせておこうと、以前よりも仕事に注力していた。 「体力向上訓練の方はどうで…

勇者の影で生まれた英雄 #17 高貴な人との出会い

今日もいつも通り、早朝から起きて裏庭で鍛錬を行っているグレン。いつもと異なるのはその動き。激しい動きは抑えて、ゆっくりと一つ一つの動きを確かめるようにして、それを行っていた。 「何だか自分の体じゃないみたいだ」 自分の体の違和感にかなり戸惑…

勇者の影で生まれた英雄 #16 勇者との立ち合い

「僕と勝負しろ!」 「……はあっ!?」 突然、勇者に勝負を申し込まれたグレンは、惚けた声を出した後、その場に固まってしまった。 グレンもこの展開は予想していなかった。出来るわけがない。勇者の存在など眼中になかったのだ。 「僕と勝負しろ。僕に勝っ…

勇者の影で生まれた英雄 #15 直談判

王国騎士団の調練場は、官舎のすぐ横にある。国軍のそれよりも遥かに広大な敷地だ。騎士団が国軍より格上だからという理由もあるが、それだけでもない。王国騎士団が保有する騎馬部隊の調練をするには、広い敷地が必要だという事だ。 この広大な調練場は、今…

勇者の影で生まれた英雄 #14 動き出した何か

宿屋にローズが戻ってみると、食堂にグレンが一人で座っていた。フローラの姿はない。何となく嫌な予感がして、素知らぬ顔で階段に向かおうとしたローズだったが。 「座れ」 グレンの、この一言で動きを止められた。 「……えっと、フローラちゃんは?」 「部…

勇者の影で生まれた英雄 #13 まさかのデートのお相手は

今日は国軍の休養日だというのに、グレンは騎士団官舎を訪れていた。バレル千人将の侍女サラとの待ち合わせの為だ。 約束の時間はもうとっくに過ぎている。どうやらすっぽかされたようだとグレンは判断した。軍を退役しようとしている話は当然、侍女は知って…

勇者の影で生まれた英雄 #12 女性たちの密約

ドーン元中隊長の家を出て、宿屋に戻るグレンの足取りは重い。表には出さなかったが、心の中では大きく動揺していたのだ。 地方貴族から逃げているグレン。だが逃げなければいけない相手は、地方貴族どころか国そのものであったのだから動揺するのは当たり前…

勇者の影で生まれた英雄 #11 両親の秘密

監察官が期限をむかえて、すごすごと帰って行った翌日。グレンは,ドーン元中隊長の家を訪れていた。監察の結果の報告と、その成功報酬を受け取るためだ。 「いくつか指摘はされましたが、それで中隊長が罪に問われることはないはずです。よくある計算ミス、…

勇者の影で生まれた英雄 #10 中隊長就任

合同演習からしばらくして、グレンは三一○大隊長であるバレル千人将に呼び出された。 千人将ともなると国軍の兵舎には居ない。王城の直ぐ脇にある王国騎士団の官舎に執務室を持っているのだ。 バレル千人将の部屋に向かうグレンには微妙な視線が向けられてい…

勇者の影で生まれた英雄 #9 合同演習会

グレンの小隊が参加する合同演習の日がやってきた。 演習に参加するのは第二軍、第三軍から選ばれた部隊。歩兵部隊三千、弓兵部隊千、騎馬部隊千、そして本陣の五百の五千五百を一軍として敵味方に分かれて争うことになる。 合同演習の視察に現れた高官はそ…

勇者の影で生まれた英雄 #8 協力者が現る

退役が決まったとはいえ、まだ先の話。三一○一○中隊を任されているドーンにはまだまだやることがある……はずなのだが。 このところのドーン中隊長は調練の時間以外は暇を持て余していた。それなりにある事務仕事のほとんどを、グレンが行っているからだ。 グ…

勇者の影で生まれた英雄 #7 もうひとつの顔

いつもの様に暗いうちに起きて、裏庭で鍛錬を始めていたグレン。 ふと気配を感じて剣を振る手を止める。振り向いた先には、ローズが壁に寄り掛かる様にして立っていた。 「早起きですね?」 「君が物音を立てるからよ。お蔭で起きてしまったわ」 「フローラ…

勇者の影で生まれた英雄 #6 小隊の宴会

盗賊討伐の任務を終えて、三一○一○中隊は王都に帰還した。 まずは国軍兵舎に入って軍政局に任務完了の報告を行う。報告を終えて、軍政局から任務終了の承認を得て初めて解散となるのだ。 救出された女性たちは軍政局に引き渡された。彼女たちを元の家に戻す…

勇者の影で生まれた英雄 #5 小隊長裏試験

グレンが出て行った天幕の中では、ドーン中隊長が腕を組んだまま、じっと身じろぎもしないで居た。しばらく、そうしていた中隊長であったが、その口がゆっくりと開いた。 「もう良いぞ」 中隊長の声に反応して出てきたのは、グレンを除いた小隊長の面々だっ…

勇者の影で生まれた英雄 #4 盗賊討伐任務

ウェヌス王国軍には三軍の他にも軍組織がある。地方軍と呼ばれているのが、それだ。 三軍が対外戦、外国との戦いを担っているのに対し、地方軍は国内治安維持を担当している。主な役割は盗賊退治や、何十年も起こっていないが地方領主の反乱鎮圧などだ。 だ…

勇者の影で生まれた英雄 #3 元帥の講義

グレンの毎日のスケジュールが、かなり固定されてきた。 二と半刻に起き出して、宿の裏庭での鍛錬。裏庭の散らかりようは相変わらずだが、グレンは毎日、廃材の位置を変える事にした。規則性はない。適当にばらまくだけだ。 乱雑といっても毎日決まった場所…

勇者の影で生まれた英雄 #2 小隊長修行

まだ夜明けまでには少し時間がある。 薄暗い部屋の中で、グレンはフローラを起こさないように、そっと身を起こした。着替えはしない。昨晩の内に直ぐに部屋を出られるようにと準備しておいたのだ。 音を立てないように鍵を開ける。普段は気にならない音がや…