月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-勇者の影で生まれた英雄

勇者の影で生まれた英雄 #44 一つの区切り

出陣式当日。騎士団は慌ただしく準備に追われていた。 国王を筆頭に王族が一同に会する式である。晴れ姿を披露しようと、騎士たちは自慢の鎧兜をピカピカに磨き上げて式に臨むのだ。 式が終われば直ぐに出陣となる。戦争に臨む前の最後の華やかな式典。戦争…

勇者の影で生まれた英雄 #43 触れ合う想い

国軍が王都から出陣した。中隊単位に分かれての密やかな出立だ。王都から少し離れた場所で集合して、ゼクソン国境の砦に向かうことになる。 密やかなと言っても見る人が見れば分かる。毎日のように王都から国軍部隊が幾つも出て行って戻らないとなれば、それ…

勇者の影で生まれた英雄 #42 王女殿下の贈り物

グレンたちの仕事の期限が近づいて来ていた。 グレンとしてはいささか不本意な状況ではある。やはり期限までには全てをやりきる事は出来そうもないからだ。それでも、自分たちなりに見つけた問題点をあげて、それの改善案を策定し、それに基づく行軍計画を粗…

勇者の影で生まれた英雄 #41 招かれざる訪問者

フローラが頻繁に訪れるようになったグレンの執務室は更に活気が溢れるようになった。グレンが望まない方向に。 今、グレンはそれを無視して、仕事を行っているところだ。 「資料の検証が一通り終わったところで気になるのは、やはり騎士団だな。行軍からし…

勇者の影で生まれた英雄 #40 胸に抱く想い

戦争の準備が本格化し、軍部は大わらわ。特に指揮官クラスは連日、朝から晩まで会議と演習を繰り返す毎日だ。 そんな中で唯一といっても良い例外が健太郎。勇者親衛隊の隊長である健太郎は指揮官ではあっても戦術を検討する会議に呼ばれることはなく、演習に…

勇者の影で生まれた英雄 #39 まさかの訪問者

アシュラム侵攻軍の編成が正式に決定された。正式と言っても表向きはゼクソン侵攻軍という名目になってはいるのだが。 侵攻軍は大きく三軍に分かれる。先鋒軍として全軍に先駆けて進むのが王国騎士団第一大隊および国軍第二軍の前備五大隊六千。率いる軍団長…

勇者の影で生まれた英雄 #38 新しい仕事

結衣との会話によってムカムカした気持ちを抱えながらも、グレンは顔見知りの侍女を見つけて伝言を頼んだ。結衣に頼んだ侍女への伝言だ。 結衣は伝えておくと言ったが、グレンはもう結衣の言葉を信じられなくなっている。 伝言の中身を聞いて少し驚いた顔を…

勇者の影で生まれた英雄 #37 せつなさと苛立ちと

グレンが勇者付騎士から外れる事が正式に通達された。 国王直々の通達。実際には署名だけにせよ、それを短期間で実現したゴードン大将軍の国王への影響力はかなりのものだと分かる。 それでもたかが準騎士一人のこと。勇者付という点で、多少の注目を集める…

勇者の影で生まれた英雄 #36 出所祝い

五日間の独房送りを終えて、グレンは宿屋に戻っていた。 真っ先に行ったのは体を洗うことだ。久しぶりの帰宅に抱きついてきてグレンをどぎまぎさせたフローラも、さすがに五日間の汗の匂いには辟易したようで、すぐに離れて水場への直行を命じた。 何度も水…

勇者の影で生まれた英雄 #35 グレンの価値

グレンの処分は翌日には決まった。こんなくだらない事件で、グレンの活動を長く止めておきたくないというトルーマン元帥と複数の将たちの意向からだ。 処罰は独房送り五日。ただの喧嘩としては厳しくはあるが、上職への反抗と捉えると軽い処分だ。折衷案を選…

勇者の影で生まれた英雄 #34 衝突

調練場に健太郎と親衛隊が現れた。 失敗に終わったと思った説得が功を奏したのかと思ったグレンであったが、それが誤りだとすぐに分かった。 彼等に鍛錬をするつもりはない。ただ冷やかしに現れただけだった。 「おい! 何だ、その振りは!? そんな剣で人を…

勇者の影で生まれた英雄 #33 空想の中で生きる人

城内の食事室は重苦しい雰囲気に包まれていた。 この場にいるのは、グレンとメアリー王女。そして健太郎と結衣の四人だ。 メアリー王女に呼び出されて食事室に来た健太郎は、隣の席にグレンが座っていたことで、何の用件か分かったのだろう。少しふてくされ…

勇者の影で生まれた英雄 #32 勇者の悪評

グレンの指導の下、従卒たちの厳しい調練は続いていた。 そんなある日。グレンに近づいてきたのは、いつもの通り、トルーマン元帥だった。 「調練はどうだ?」 「正直、思うようには進んでおりません」 「ほう。そう、うまくはいかんか」 グレンの泣き言を聞…

勇者の影で生まれた英雄 #31 従卒鍛錬

演習での戦功評価は、ほぼグレンの言った通りになった。それを覆せば、名を挙げられた部隊長たちが不満を感じるだろうという配慮からだ。 そして健太郎が将として軍を率いることもなくなった。具体的に話があったわけではない。だが、新たに新設された部隊が…

勇者の影で生まれた英雄 #30 将の資質

眼下には両軍合わせて一万を超える軍勢が、東西に分かれて陣を組み始めている。 東軍は勇者である健太郎率いる第三軍、西軍はアシュリー・カー千人将率いる第二軍。健太郎はともかくとして、今回も千人将が軍を率いる形だ。 軍部の若返り。組織としては、決…

勇者の影で生まれた英雄 #29 女性たちの想い

健太郎たちが出て行った食事の間。しばらく何かを考えていたグレンだったが、不意に顔をあげてメアリー王女に視線を向けた。 「……何か怒らせましたか?」 健太郎の態度が腑に落ちなくて、グレンはメアリー王女に尋ねてみる。何となくメアリー王女には分かっ…

勇者の影で生まれた英雄 #28 勇者にも試験?

以前であれば、任務終了後も数日は忙しい時を過ごしていたグレンであったが、軍籍にない今は特に何もすることはない。これは勇者である健太郎も同じだ。王都に帰還し、戦況報告会が終わった翌日には、日常に戻っていた。 今は調練の時間。あいかわらず、健太…

勇者の影で生まれた英雄 #27 任務達成

念の為程度のつもりで野営地の裏手にやってきたグレンだったが、暗闇に浮かぶ数え切れないほどの松明の火を見て茫然としてしまった。 ぱっと見ただけで百の単位の数であることが分かる。ある程度は予想していたが、正面の敵と合わせると確実に自軍より多数に…

勇者の影で生まれた英雄 #26 謀略の気配

健太郎たちの天幕にバレル千人将と各中隊長が集まっている。盗賊征伐についての打ち合わせを行う為だ。勇者付騎士であるグレンも当然、この場にいる。だからこそバレル千人将は打ち合わせ場所として選んだのだ。 「偵察隊からの報告ですと、アジトまでの道筋…

勇者の影で生まれた英雄 #25 説教

野営地に張られた天幕には、勇者と聖女である二人を一目見ようと、ひっきりなしに兵が、隊長たちが訪れていた。 そして彼らは実際に一目見ただけで二人から離れてしまう。彼らがその後に向かう先は、同じ天幕にいるグレンの所だ。 「それでですね。もうちょ…

勇者の影で生まれた英雄 #24 誘惑

グレンが城に出仕している間はフローラとローズは、ほとんどの時間を一緒に過ごしている。別々の時間はフローラが食堂の手伝いをしている時と、ローズが宿屋では話せない相手と色々と相談をしている時くらいだ。 最初の頃は他愛もない話で、それなりに盛り上…

勇者の影で生まれた英雄 #23 古巣

久しぶりに訪れた国軍調練場。グレンはじっと三一○一○中隊の調練の様子を眺めていた。行なわれているのは中隊を半分に分けての実戦形式の演習だ。きれいに隊列を組んで、ぶつかり合う二つの部隊。剣を振るタイミングも合っていた。 そこからは押し合いが続く…

勇者の影で生まれた英雄 #22 マナー教室

目の前に並ぶナイフをただ見つめているだけで、グレンの手は全く動かなかった。 しばらく、そうやっていたグレンだったが、やがてナイフを一つ一つ手に取ると、切れ味を確かめるように撫でてみたり、握ってみたりを繰り返している。 周りからクスクス笑いが…

勇者の影で生まれた英雄 #21 一途な想い

窓から見える空が、橙色から青紫色に変わって行く。晴れの日に時折見られる、夕闇迫る、このひと時の空の色の移り変わりを見るのがグレンは好きだった。一日の終わりを感じて、何となく気持ちが落ち着くのだ。 ぼんやりとそれを眺めているグレン、だったのだ…

勇者の影で生まれた英雄 #20 王女様のお相手

グレンの日常もかなり落ち着いたものになってきた。騎士団官舎にきて、健太郎の鍛錬に立ち会う。立ち会うといっても自分の鍛錬を行っているだけだが。 午前の鍛錬時間が終わると、嫌々ながら健太郎と結衣との昼食。 休憩時間は図書室だ。図書室といっても国…

勇者の影で生まれた英雄 #19 勇者付き騎士のお仕事

正式な勅命を受けて、グレンは国軍を退役し、勇者付の騎士となった。 新しい職場は、騎士団官舎に一室を設けられている。厚遇といっても良いが執務室を与えられたからといって、そこでは何もすることはない。勇者の鍛錬に付き合って、騎士団の調練場に居るこ…

勇者の影で生まれた英雄 #18 転落

グレンは三一○一○中隊の小隊長を集めて、定例のミーティングを開いていた。退役を望んでいるからといって仕事に手を抜くことはない。それどころか、今の内に出来ることは全て終わらせておこうと、以前よりも仕事に注力していた。 「体力向上訓練の方はどうで…

勇者の影で生まれた英雄 #17 高貴な人との出会い

今日もいつも通り、早朝から起きて裏庭で鍛錬を行っているグレン。いつもと異なるのはその動き。激しい動きは抑えて、ゆっくりと一つ一つの動きを確かめるようにして、それを行っていた。 「何だか自分の体じゃないみたいだ」 自分の体の違和感にかなり戸惑…

勇者の影で生まれた英雄 #16 勇者との立ち合い

「僕と勝負しろ!」 「……はあっ!?」 突然、勇者に勝負を申し込まれたグレンは、惚けた声を出した後、その場に固まってしまった。 グレンもこの展開は予想していなかった。出来るわけがない。勇者の存在など眼中になかったのだ。 「僕と勝負しろ。僕に勝っ…

勇者の影で生まれた英雄 #15 直談判

王国騎士団の調練場は、官舎のすぐ横にある。国軍のそれよりも遥かに広大な敷地だ。騎士団が国軍より格上だからという理由もあるが、それだけでもない。王国騎士団が保有する騎馬部隊の調練をするには、広い敷地が必要だという事だ。 この広大な調練場は、今…