ファンタジー小説-継ぐ者たちの戦記
誘拐事件の犯人討伐依頼を終えて、勇者ギルドのハイランド王国支店では会議が行われている。犯人は全滅。生きて捕らえることは出来なかったが、それでも新たに分かったことがある。その得られた情報を共有する為の会議だ。 参加者はハイランド王国のアルファ…
魔族の犯罪組織。意外にも、その存在はこれまで確認されていない。数人で群れている魔族の犯罪者はこれまでもいた。だが、それは組織と呼べるようなものではない。ただの共犯者だ。種族を超えて魔族を統べることが出来るのは魔王という絶対的な強者のみ。そ…
エルギン王国は、一言でいうと、平凡な国。他国と比べて特別軍事力に優れているわけではない。商業が盛んなわけでも、特別な産業があるわけでもない。領土はどちらかといえば小国。土地が肥沃で農業生産力が高いということもない。森林資源、鉱物資源も他国…
ブレイブハートのサークル王国での指名依頼は、微妙な終わり方となった。ダンジョン開放のネックとなっていた魔馬種の魔獣は、結果、討伐されていない。危険がなくなったわけではないが、それを言うなら他の階層も同じ。もっと強い魔獣が生息している可能性…
指名依頼の仕事場はサークル王国の王都から、また翼竜を飛ばして五日ほど移動した場所。大陸でも有数の険しい山岳地帯で発見されたダンジョンだ。ここ数年、新たなダンジョンの発見数が飛躍的に増えている。それもこんな場所にあったのかと人々が驚くような…
サークル王国は翼竜を使ってもハイランド王国から一か月以上かかる。当然、その間の稼ぎはなし。先を急ぐ旅では鍛錬の時間も多くは取れない。しかも、そこまでの遠出はアークたちにとっては初めてのことで、空路なんて全然知らない。地図も、各国で重要機密…
魔族、もしくは魔人族、とひとくくりに呼ばれているが、実際はいくつもの種族が存在する。大きくは二つに分かれ、魔人種と獣人種に分けられる。 ただし、この分け方は学問的な分類というより、差別に近い。獣人種を半分は獣で亜人種、完全な人ではない種族に…
ハイランド王国の特別自治区での事件を受けて、勇者ギルド上層部の動きが慌ただしくなった。特別自治区が襲われたことそのものは、勇者ギルドにとっては、大きな問題ではない。これまで何度もあったことなのだ。上層部を慌てさせたのは自治区の責任者、ソニ…
襲撃者の追撃は断念した。激戦を終えたアークのダメージがそれを許さなかった。正確には、アークが自治区を出ようとするのをミラが許さなかった。いつものようには戦えない状態で追撃を行って、万一があっては大変だ。それに一晩明けてから追いかけて、はた…
味方の半数が討たれたところで襲撃してきた者たちは総崩れになった。遅すぎる決断だ。彼らは寄せ集め。指揮系統はあるようでない。指揮官役はいても、その男も将としての教育を受けているわけではない。彼らは勇者候補くずれ、さらには勇者候補経験もない野…
一対千の戦い。どう考えてもアークに勝ち目のない戦いが始まった。頭で考えても勝ち目のない戦い。アークは、具体的に考えているわけではないが、勝ち目がないとは思っていない。やってみなければ分からないというところだ。 群がる敵を次々と斬り倒していく…
改めて自己紹介をした後、アークとミラは自治区長のソニードから話を聞くことになった。依頼内容だけでなく、カテリナたちと何があったのかも合わせて聞いた。 二人は他国でダンジョン調査の依頼を行っていた。それを放り出してでも引き受けなければならない…
都市国家などの小国を除く各国には最低でも一カ所、魔人族の居留地が存在する。人族からの差別や偏見から魔人族を守り、安心して暮らせる場所を国の負担で確保しているのだ。 これは建前ではない。事実だ。だが事実であるにもかかわらず、多くの人族は建前だ…
カテリナたち、ポラリスのメンバーは各地を転々とする忙しい毎日を送っている。引き受けている仕事は全て指名依頼。依頼の詳細内容を聞く目的もあって依頼主に挨拶に行き、任務地に向かい、依頼を達成した後はまた、完了報告の為に依頼主に会いに行く。依頼…
王制の国がほとんどであるこの世界において、勇者ギルドの統治体制はややこしい。組織運営における指揮決定は理事会で行われることになっている。その長は理事長であるが、そのように呼ぶ者はまずおらず、ギルドマスターと呼ばれている。傭兵ギルド時代の呼…
アークたちの新しい任務地はターコネル。ハイランド王国東部、国境近くにある町だ。クリテリオン同様、新たに見つかったダンジョンがあり、勇者ギルドの出張所が設けられることになった。アークたち、ブレイブハートの仕事もクリテリオンと同じ。解放前のダ…
近くの洞窟が閉鎖されたことで勇者ギルド、ハイランド王国支店は少し活気を失っている。特に駆け出しのCランク勇者候補への影響が大きい。Cランクの常時依頼を引き受けられないとなると、リスクのある通常依頼を引き受けるしかなくなる。もちろん問題なく…
キングスアーマーベアは魔熊種の中でも最上位種。その大きさは熊というより象。体の大きさだけでも人族が一人で挑むような相手ではない。体の大きさ以外の身体的特徴は他の魔熊種とほぼ同じ。固い体毛は魔獣の中でも一段抜けた防御力を持たせている。攻撃は…
クリテリオンのダンジョンは入口だけを見ると普通の洞窟と変わらない。切り立った断崖に裂け目のような穴が開いているだけだ。裂け目の大きさはグレンオードの洞窟に比べると。かなり大きい。アークの背丈の十倍はあろうかという高さで、横幅も十人が並んで…
クリテリオンの町の近くにあるダンジョンは、アークたちが潜っていたグレンオードの洞窟とはまったく違っている。魔王軍の地下砦として使われていたのは間違いないと断言できるほど、人工的な造りになっているのだ。発見されたのは三年前。実際に魔王軍の地…
カテリナたち、ポラリスは相変わらず忙しい毎日を送っている。さらに忙しくなったと言える。魔人族と戦い、それを倒したという話が広がった結果だ。魔人族と戦ったAランクパーティーなど滅多にいない。というのは魔人族が絡む事件は全て指名依頼になり、情…
ブレイブハートにはいくつかの課題がある。ひとつは遠距離攻撃能力がないこと。その能力を持った仲間を増やすことが一番だが、アークとミラにはそのつもりがない。そうなると方法はひとつ。二人のいずれかが遠距離攻撃が出来るようになることだ。だが、ミラ…
想定外の結果に終わった盗賊討伐依頼。依頼達成の報告と、若干の不満を伝える為にカテリナたちポラリスのメンバーは依頼主の屋敷を訪れた。 指名依頼は一般の依頼に比べて信頼性が高い。そうであるはずなのに今回、ただの盗賊討伐のはずが、相手は魔法を使う…
指名依頼の内容は盗賊討伐。十人ほどの盗賊が森の中にアジトを築いて、近隣の村を襲っている。その盗賊の討伐を行うというものだ。人族を殺すという点については不安があったカテリナだが、逆に言えば、その点にしか不安を覚えていなかった。倍の数とはいえ…
洞窟調査の依頼を終えたアークとミラだが、すぐにまた仕事に入っている。また指名依頼だ。ただし、今度は二人だけ。ブレイブハートとして引き受けることになった。二人だけで任せても問題ない。モードラック支店長がこう判断した結果だ。 依頼の内容は洞窟に…
ハイランド王国軍の大将軍は二人いる。一人はアークの父、ベクルックス=ウィザム。将爵の爵位を持つ貴族でもある。もう一人はラードガ=スペイサイド。スペイサイド家は人魔大戦前からハイランド王国に仕える騎士家で、幾人もの将、そして大将軍を排出して…
地中とは思えない明るさ、広大な空間。妖魔の気配を察知して、ここまで追いかけてきたアークだったが、目の前に広がる光景に驚き、足を止めてしまった。追っていた妖魔の姿も光に照らされて、はっきりと見える。 ゴブリンだ、ただ、そのゴブリンは馬ではない…
洞窟調査の指名依頼に参加することになったアークたちだが、実際に洞窟に向かったのはホープから話を聞かされてから半月が経ってからになった。その間は勇者ギルドの訓練場で、五人での連携を主に、訓練を行っていた。初めて組むメンバー。さらにメンバーの…
カテリナたちポラリスのメンバーは交流戦が終わった後も、王都とグレンオードを何度も行き来している。交流戦での活躍によって、ある点では、カテリナが願っていた通りの効果がもたらされたのだ。注目を集め、名を売るという点だ。 輝くばかりの美貌の、稀有…
王都からグレンオードに戻ったアークとミラは鍛錬の毎日を過ごしている。新しく仲間に加わった従魔獣、クッキーとの連携を鍛える為だ。クッキーの役目はミラの護衛役。常にミラの側にいて、近づく危険を察知して、その脅威からミラを守ることだ。 これが中々…