月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-四季は大地を駆け巡る

四季は大地を駆け巡る #58 新時代の到来

エアルは毎日、ヒューガの部屋に通っている。特に何か用があるわけではないが、忙しい中、少しでも時間が空くとヒューガに会いに行くのだ。 ほんのわずかな時間、顔を見せるだけのこともあるので、ヒューガからさすがにそれは止めろと言われたのだが、エアル…

四季は大地を駆け巡る #57 決断の時

手元にある資料にヒューガは何度も目を通す。それほど難しい内容が書かれているわけではない。数分で読み終えられるものだ。それでもヒューガは、その資料を何度も見返さざるを得なかった。 そうしている間に、皆が会議室に集まってくる。エアル、カルポ、ハ…

四季は大地を駆け巡る #56 喜びのない帰還

エアルたちが大森林に帰ってきた。まっすぐに拠点に戻ってくるものだとヒューガは思っていたのだが、彼女たちは大森林の外縁部に留まったまま。逆にヒューガに来て欲しいと伝えてきた。 何か問題が起きたと考えて、急いでやってきたヒューガ。エアルたちから…

四季は大地を駆け巡る #55 第五百回くらい精霊会議

ドュンケルハイト大森林の外縁も外縁。出口にあたる場所にヒューガたちは立っている。今日はいよいよエアルたちが出立する日なのだ。 旅支度を整えたエアル、ハンゾウたち十一人は彼等が大森林に入るときに使った隠し通路から外に出て行くことになっている。…

四季は大地を駆け巡る #54 大きな一歩

先生が拠点から姿を消した後も、ヒューガたちは厳しい鍛錬を続けている。寂しさを感じていないわけではないが、鍛錬に限っては、以前よりも気合が入っているくらいだ。先生が戻ってくることがあった時、情けない姿を見せるわけにはいかない。皆がこんな思い…

四季は大地を駆け巡る #53 師との別れ

まだわずかに雪が残る草原をホーホーの群れが駆けている。その先頭に立つのはコクオウ。一際大きな黒い馬体が陽の光に輝いていて、とても綺麗だ。 コクオウたちはある日突然この草原に現れた。何故、ヒューガたちのいる場所が分かったのか。それはルナの「ん…

四季は大地を駆け巡る #52 生まれた格差

東の拠点見学会が開催された。ヒューガが想像していた以上に見学会は盛況。多くの西の拠点のエルフが参加している。それだけ東の拠点が気になっていたということだ。 まずは拠点内の見学。想像していたのとは違う荒れた建物を見て、見学者たちはかなり驚いて…

四季は大地を駆け巡る #51 新居へのお引っ越し

いよいよ新しい拠点への引っ越しの日。といっても荷物はほとんど運び終わっていて、エアルやハンゾウたち、ブロンテースはとっくに新拠点での生活を始めている。当然、先生も一緒。引っ越しの為に長く鍛錬を休むわけにはいかない。ヒューガも当然、鍛錬につ…

四季は大地を駆け巡る #50 複雑な思い

セレネ様たちを迎えにいったエルフ。結果はヒューガの予想通り。あのエルフはヒューガを害しようと考えていた集団の一員だった。きっと仲間を集めて、扉を使ってここに攻め込むつもりだったのでしょうね。ただこれは想像。実際のところは分からない。 何故な…

四季は大地を駆け巡る #49 加速する変化

「不自由な思いをさせるけど、それに文句は言うなよ。お前たちを全面的に信用しているわけじゃない」 「はい。それは仕方がないことです」 ヒューガの目の前にいるのは草原にいたエルフの代表者一人。他のエルフは何部屋かに分散させて、閉じ込めている。ハ…

四季は大地を駆け巡る #48 大森林の向かう先

ヒューガたちは空がまだ暗いうちからブロンテースが作った鍛冶場に集合した。 いよいよ今日が火入れの日。初めての火入れは日の出と同時に行うのが決まり事とされているのだ。といっても古来からのやり方ではなくイフリートの魔法を使うのだが、儀式としては…

四季は大地を駆け巡る #47 主従の形

大森林の草原は一面の雪景色。積もった雪で真っ白に染まっている。昨晩から降り続いていた雪も今は止み、空には青空が広がっている。その空にぽっかりと浮かぶ雪と同じように真っ白な雲。 青い空と白い雪の美しいコントラスト。その光景を眺めていると、草原…

四季は大地を駆け巡る #46 光と影

全員が一同に会するのは久しぶりだ。とくにヒューガが何か指示を出したわけではないが、とにかく皆忙しいのだ。中でもハンゾウたち。毎日毎日、ぼろぼろになるまで鍛錬を続けている。先生は彼等に告げた通り、限界を超える鍛錬を行っていた。 エアルもカルポ…

四季は大地を駆け巡る #45 可能性

普段であれば子供たちの剣戟の音が辺りを賑わしている時間。でも今日に限っては、貧民区はひっそりと静まり返っている。 中央でじっと立ったまま動かないバーバ。その姿を、息をひそめて皆が見つめている。 周囲を見回してみると良く分かる。大人しくバーバ…

四季は大地を駆け巡る #44 世界でもっとも小さな王国

ヒューガの前に、先生を除く全員が跪いている。予想外の状況に困惑顔のヒューガ。先生はそんな彼を見て、何やら嬉しそうな表情だ。先生にとってはまったくの予想外という状況ではなく、実現することへの確信はわずかではあったとしても、期待していた通りの…

四季は大地を駆け巡る #43 光り立つ

廊下を走る足音が近づいてくる。それは部屋の扉の前で止まり、次の瞬間には勢いよく扉が開かれた。部屋の入口に立っているのはエアルが予想していた通り、ヒューガ。 だが急いで来たはずのヒューガは、扉のところで立ち尽くしたまま、動かないでいた。 「………

四季は大地を駆け巡る #42 強く願う

様々な可能性を考えてみる。だがこれといった答えが出てこない。何かが足りていない。それは分かっている。何か見落としていることがあるのではないか。そう考えて、始めから思い返してみる。 彼女に何があったのか。彼女は何を言っていた。その中に答えが必…

四季は大地を駆け巡る #41 叶わぬ想い

草原を駆ける魔獣の群れ。その周囲をそれよりも一回り小さな人影がいくつも動き回っている。ヒューガたちが鍛錬を行っているのだ。 「左翼遅い!」 「すみません!」 「謝っている間があったら体を動かせ! 進路を塞ぐんだ!」 「はっ!」 響き渡る声はヒュ…

四季は大地を駆け巡る #40 崩壊の兆し

わずかな灯りを頼りに皆が寝ている部屋に向かう。すれ違う人は誰もいない。この館に残っている人は少ない。更に今は誰もが寝静まっている時間。だからこそ、こうして廊下を歩いているのだ。 静寂の中を、大きな音をたてないようにゆっくりと廊下を歩く。やが…

四季は大地を駆け巡る #39 本当の想い

朝からずっと待っているのにあいつは現れない。もう来るなって言ったのは私なのにね。 来ないかな……来るわね。あいつはそういう奴よ。筋金入りの偽善者。でも……怒らせたかな。 あいつが悪いのよ。せっかく私が女を教えてやろうと思ったのに、別の女の話を出…

四季は大地を駆け巡る #38 求められるものが分からない

「「「うわぁああああっ!!」」」 大森林に絶叫が響き渡る。叫び声の主はヒューガの拠点で一緒に生活することになった人族たち。今日もいつものように外縁までやって来て鍛錬を行っていたのだが、この有様だ。 「まったく情けないですね。あの程度の魔獣相…

四季は大地を駆け巡る #37 お人好し

ヒューガは助けたエルフとの話を終えて、人族が捕らえられている部屋に向かう。その表情には疲労の色が浮かんでいる。彼女が受けた仕打ちを考えれば、正気でいられるだけで大変なこと。正気でいるほうが辛いのかもしれない。同情の気持ちが湧くが、胸に残っ…

四季は大地を駆け巡る #36 侵入者

エルフの都での騒動から一ヶ月は過ぎているが、特に何事もなく毎日が過ぎている。 カルポは結局ここに残ることになった。しかも僕を正式な主として仕えるとまで言ってきて。 ゲノムスと相談して決めたと言われたので、この場所に残ることについては文句はな…

四季は大地を駆け巡る #35 エルフたちの選択

拠点の扉が開いた。そんなものがどこにあるのかと思っていたら、寝泊りしている一番大きな建物に地下に通じる隠し階段があった。ルナは良くこんなの知ってたな。 早速、それを使ってエルフの都に行ってみることにした。行くのは僕とルナ。カルポは……先生から…

四季は大地を駆け巡る #34 魔族の視点

ヒューガくんの鍛錬を始めて一週間。鍛錬の内容は変えていません。土台をしっかり作らないと本当の意味での強さなど手に入りませんからね。 ヒューガくんは文句を言いながらも、地味な鍛錬を黙々とこなしている。本質的に努力というものが好きなのかもしれま…

四季は大地を駆け巡る #33 鍛錬が始まる

ヒューガは待ち合わせ場所で魔族、先生と合流した後、すぐに転移で鍛錬場とした場所に跳んだ。そこはかつてエルフの拠点だった場所。はじめにヒューガがイメージした通り、砦と呼ぶに相応しい造りをしている。 パルス王国との戦い以後、百年は放置されたまま…

四季は大地を駆け巡る #32 精霊たちの意思

目の前には腰に手を当てて仁王立ちのセレ。最近、何度も見ている光景だ。正直、何故ここまでセレに怒られなければならないのかヒューガには分からない。本人は特別、悪いことを行っているつもりはなく、ただ流れに身を任せているだけなのだ。その流れが異常…

四季は大地を駆け巡る #31 意外な巡り会い

目の前に立っているのは得体のしれない人間。人間といって良いのだろうか。その人の顔はヒューガには何故かぼやけて良く見えない。 ルナたちが強い人を見つけたとヒューガに告げてきた。大森林にそんな人がいるのかと驚いたが、鍛錬に行き詰っているヒューガ…

四季は大地を駆け巡る #30 心の傷

陽もすっかり落ち、いつもであれば静けさに覆われているはずの野営の地も、今日に限っては喧噪があたりに響いている。そこかしこに篝火がたかれ、その周りに集まった兵たちが祝宴を楽しんでいるのだ。 自分の手柄を声高々に自慢している者、仲間と共に戦いを…

四季は大地を駆け巡る #29 いつか来る日の為に

「「「「せい! やっ!」」」」 貧民区に子供たちの掛け声が響いている。 「最後!」 「「「「せい!」」」」 「よし、今日はここまで!」 「「「「はい!」」」」 ギゼンから終了の声がかかったところで子供たちは木剣を腰に差して、駆け足で彼の前に集まっ…