月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-四季は大地を駆け巡る

四季は大地を駆け巡る #43 世界でもっとも小さな王国

ヒューガの前に、先生を除く全員が跪いている。予想外の状況に困惑顔のヒューガ。先生はそんな彼を見て、何やら嬉しそうな表情だ。先生にとってはまったくの予想外という状況ではなく、実現することへの確信はわずかではあったとしても、期待していた通りの…

四季は大地を駆け巡る #43 光り立つ

廊下を走る足音が近づいてくる。それは部屋の扉の前で止まり、次の瞬間には勢いよく扉が開かれた。部屋の入口に立っているのはエアルが予想していた通り、ヒューガ。 だが急いで来たはずのヒューガは、扉のところで立ち尽くしたまま、動かないでいた。 「………

四季は大地を駆け巡る #42 強く願う

様々な可能性を考えてみる。だがこれといった答えが出てこない。何かが足りていない。それは分かっている。何か見落としていることがあるのではないか。そう考えて、始めから思い返してみる。 彼女に何があったのか。彼女は何を言っていた。その中に答えが必…

四季は大地を駆け巡る #41 叶わぬ想い

草原を駆ける魔獣の群れ。その周囲をそれよりも一回り小さな人影がいくつも動き回っている。ヒューガたちが鍛錬を行っているのだ。 「左翼遅い!」 「すみません!」 「謝っている間があったら体を動かせ! 進路を塞ぐんだ!」 「はっ!」 響き渡る声はヒュ…

四季は大地を駆け巡る #40 崩壊の兆し

わずかな灯りを頼りに皆が寝ている部屋に向かう。すれ違う人は誰もいない。この館に残っている人は少ない。更に今は誰もが寝静まっている時間。だからこそ、こうして廊下を歩いているのだ。 静寂の中を、大きな音をたてないようにゆっくりと廊下を歩く。やが…

四季は大地を駆け巡る #39 本当の想い

朝からずっと待っているのにあいつは現れない。もう来るなって言ったのは私なのにね。 来ないかな……来るわね。あいつはそういう奴よ。筋金入りの偽善者。でも……怒らせたかな。 あいつが悪いのよ。せっかく私が女を教えてやろうと思ったのに、別の女の話を出…

四季は大地を駆け巡る #38 求められるものが分からない

「「「うわぁああああっ!!」」」 大森林に絶叫が響き渡る。叫び声の主はヒューガの拠点で一緒に生活することになった人族たち。今日もいつものように外縁までやって来て鍛錬を行っていたのだが、この有様だ。 「まったく情けないですね。あの程度の魔獣相…

四季は大地を駆け巡る #37 お人好し

ヒューガは助けたエルフとの話を終えて、人族が捕らえられている部屋に向かう。その表情には疲労の色が浮かんでいる。彼女が受けた仕打ちを考えれば、正気でいられるだけで大変なこと。正気でいるほうが辛いのかもしれない。同情の気持ちが湧くが、胸に残っ…

四季は大地を駆け巡る #36 侵入者

エルフの都での騒動から一ヶ月は過ぎているが、特に何事もなく毎日が過ぎている。 カルポは結局ここに残ることになった。しかも僕を正式な主として仕えるとまで言ってきて。 ゲノムスと相談して決めたと言われたので、この場所に残ることについては文句はな…

四季は大地を駆け巡る #35 エルフたちの選択

拠点の扉が開いた。そんなものがどこにあるのかと思っていたら、寝泊りしている一番大きな建物に地下に通じる隠し階段があった。ルナは良くこんなの知ってたな。 早速、それを使ってエルフの都に行ってみることにした。行くのは僕とルナ。カルポは……先生から…

四季は大地を駆け巡る #34 魔族の視点

ヒューガくんの鍛錬を始めて一週間。鍛錬の内容は変えていません。土台をしっかり作らないと本当の意味での強さなど手に入りませんからね。 ヒューガくんは文句を言いながらも、地味な鍛錬を黙々とこなしている。本質的に努力というものが好きなのかもしれま…

四季は大地を駆け巡る #33 鍛錬が始まる

ヒューガは待ち合わせ場所で魔族、先生と合流した後、すぐに転移で鍛錬場とした場所に跳んだ。そこはかつてエルフの拠点だった場所。はじめにヒューガがイメージした通り、砦と呼ぶに相応しい造りをしている。 パルス王国との戦い以後、百年は放置されたまま…

四季は大地を駆け巡る #32 精霊たちの意思

目の前には腰に手を当てて仁王立ちのセレ。最近、何度も見ている光景だ。正直、何故ここまでセレに怒られなければならないのかヒューガには分からない。本人は特別、悪いことを行っているつもりはなく、ただ流れに身を任せているだけなのだ。その流れが異常…

四季は大地を駆け巡る #31 意外な巡り会い

目の前に立っているのは得体のしれない人間。人間といって良いのだろうか。その人の顔はヒューガには何故かぼやけて良く見えない。 ルナたちが強い人を見つけたとヒューガに告げてきた。大森林にそんな人がいるのかと驚いたが、鍛錬に行き詰っているヒューガ…

四季は大地を駆け巡る #30 心の傷

陽もすっかり落ち、いつもであれば静けさに覆われているはずの野営の地も、今日に限っては喧噪があたりに響いている。そこかしこに篝火がたかれ、その周りに集まった兵たちが祝宴を楽しんでいるのだ。 自分の手柄を声高々に自慢している者、仲間と共に戦いを…

四季は大地を駆け巡る #29 いつか来る日の為に

「「「「せい! やっ!」」」」 貧民区に子供たちの掛け声が響いている。 「最後!」 「「「「せい!」」」」 「よし、今日はここまで!」 「「「「はい!」」」」 ギゼンから終了の声がかかったところで子供たちは木剣を腰に差して、駆け足で彼の前に集まっ…

四季は大地を駆け巡る #28 精霊たちとの繋がり

体が回復してきたところでヒューガはセレに外出の許可を取った。外出といっても遠くまで出かけられるはずはなく、出歩いて良いのはエルフの都を囲む結界の中だけだ。 まったく問題ない。ヒューガが寝ている間に大森林の季節は冬に変わっていた。許可の有無に…

四季は大地を駆け巡る #27 ドュンケルハイト大森林

ヒューガは深い森の中をセレの先導で歩いている。この場所に来て、すでにどれだけの日数が経っているのか。それを忘れてしまうほど、連れられてきたここはとんでもない場所だった。 最初に大森林を見た時はその光景に圧倒された。深い崖のすぐ下には緑の草原…

四季は大地を駆け巡る #26 それぞれの想い:ヒューガとクラウディア

目が覚めた頃には日がすっかり昇っていた。こんな時間まで寝ていたのは久しぶりだ。慣れない長旅でさすがに疲れていたのかもしれない。 王都を出て一カ月。かなりパルス王国の東のはずれに近づいてきている。乗合馬車など、出来るだけ速く移動できる手段を使…

四季は大地を駆け巡る #25 影の支え

クラウディア第一王女の部屋の隣。そこに小さな隠し部屋がある。本来の目的は刺客などから逃れるために一時的に隠れる為の場所だが、今は別の目的で使われていた。 彼女を監視するための部屋だ。その部屋で今、小さな騒ぎが起きている。見張り役たちはクラウ…

四季は大地を駆け巡る #24 別れの時

ギルド長が自分の執務室に戻ると、セレがソファーに座って、ゆったりとお茶を飲んでいた。何を勝手に、なんてことをギルド長は言わない。こうしたことはこれが始めてではないのだ。 とはいえ、セレがギルドを訪ねてくるのは久しぶりのこと。その久しぶりの訪…

四季は大地を駆け巡る #23 すれ違う想い

ヒューガは、物事が一気に慌ただしく動き出しているのを感じていた。 冬樹は貧民区に行ったきり。ギゼンの下で鍛錬に明け暮れている。かなり厳しい鍛錬であることは、すっかりやつれた冬樹の姿で分かる。それでも冬樹自身は充実感を覚えているようで、会うた…

四季は大地を駆け巡る #22 お父様にご挨拶をすることになりました

勇者の呼び出しを受けたと思ったら、今度は国王。ヒューガは騎士に案内されて謁見の場に向かっている。 このタイミングで何故、国王に呼ばれたのか。もしかするとディアとのことがバレたのかもしれないと考えて、ヒューガはかなり緊張している。 案内された…

四季は大地を駆け巡る #21 これがものを頼む態度だろうか?

ヒューガは勇者から呼び出しを受けた。無視したいところだったが、それを伝えに来たのはローズマリー王女の侍女。誘いを無視すれば、それはローズマリー王女に無礼を働くことになる。 今更、彼女に嫌われることを恐れているわけではない。今は大事な時期。必…

四季は大地を駆け巡る #20 ご都合主義ってこういうことか

「やっとだ。やっと、この日が……きたぁーっ!!」 「どこの芸人だ、お前は?」 貧民区に着いたところで冬樹が雄叫びをあげている。冬樹がはりきっているのは、今日がいよいよジャンたちに剣術を教える日だからだ。 盗賊討伐任務で王都を離れて、それから戻っ…

四季は大地を駆け巡る #19 再会の時

グレゴリー大隊長のもとで行われる鍛錬は、盗賊討伐任務を最後に終わることになった。ヒューガはともかく、冬樹と夏のことを考えて、本当はもう一度か二度、任務に同行させようとグレゴリー大隊長は考えていたのだが、盗賊討伐任務の内容の濃さを考えて、無…

四季は大地を駆け巡る #18 初めて会ったエルフはエロかった

盗賊たちに囚われていたであろう女性を助け出したヒューガ。その女性の姿があまりに卑猥で困惑している。 胸の周りの布はほぼ先端だけを隠している状態。胸の谷間は丸見えだ。おまけに腰の布も、ちょっとしたはずみで奥の方まで見えてしまいそう。 そのまま…

四季は大地を駆け巡る #17 実戦を経験した

剣と剣が打ち合わされた音が響く。ヒューガが振り下ろした剣は、グレゴリー大隊長の剣に阻まれた。慌ててバックステップで間合いをとる。その空間にグレゴリー大隊長の脚が伸びてきた。組み合ったところでヒューガの腹を蹴り飛ばそうとしたのだ。 「ふん。避…

四季は大地を駆け巡る #16 周囲の思惑

王都を出て、近くの森に入る。夏が一人でギルドの依頼をこなすのはこれが初めてのことだ。その表情からは強い緊張が見て取れる。 夏はこの世界に来てから、寝るとき以外はいつも誰かと一緒にいる。元の世界ではそんなことはなかった。家に帰っても誰もいない…

四季は大地を駆け巡る #15 巻き込まれは誰のせい?

ヒューガは早めにギルドの依頼を切り上げて貧民区に向かうことにした。夏と冬樹も一緒。今日は二人を子供たちに紹介する予定なのだ。 いつもの細い路地を通り抜け、三人は貧民区にたどり着く。 「ええー! ここっ?」「うわっ!」 夏も冬樹も周囲の様子を見…