月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-四季は大地を駆け巡る

四季は大地を駆け巡る 第157話 皇帝の思い

ヴァイスハイト帝国の、帝国のというより皇帝を称した優斗の戦略は、東西南北各方面に軍を配置し、四方に領土を広げるというもの。南部平定は南部魔王の称号を与えたイエナの担当で、北部平定はライアンに命じた。現在、もっとも重要な西部はヴィーゼルを総…

四季は大地を駆け巡る #156 四季は大地を

アインシュリッツ王国。ドュンケルハイト大森林の外にあるヒューガの国。旧ダクセン王国領であったこと、それに大森林との関係性を秘匿する為もあって、表向きの国王は元ダクセン王国将軍であったカール・マックが務めている。つい先日までは。 カール元将軍…

四季は大地を駆け巡る #155 答えはまだ先

静まり返った大広間。玉座に座るアレックス王の足を揺する音だけが響いている。普段であれば聞こえるはずのない音。数百人が一同に会することが出来るほどの、パルス王国の王城以外にはない大規模な広間なのだ。どれだけ集まった人々が静粛にしているつもり…

四季は大地を駆け巡る #154 目指す先

ヒューガにアイントラハト王国の臣下として正式に認められて、柄にもなく感激しているユリウス。その柄にもない態度をグランがからかったことで、場の雰囲気は一気に和やかなものに変わった。ユリウスをからかうことが出来る滅多にない機会と、皆が様々な言…

四季は大地を駆け巡る #153 選択の時

ウエストエンド侯爵の戦死。この事実はパルス王国に衝撃を与えた。これまで何度も、まさかの事態が訪れ、その度に大いに揺れたパルス王国であったが、ウエストエンド侯爵戦死の報は、王国の崩壊を多くの人々に実感させるものだった。 南、東、西の三方での敗…

四季は大地を駆け巡る #152 もう一度

ユーロン双王国軍と対峙しているパルス王国軍に奇襲を仕掛けたライアンであるが、これまでの戦いのようにはいかなかった。奇襲といってもパルス王国軍は陣地内にいた。ユーロン双王国とは休戦状態にあるとはいえ、警戒を怠っていたわけではない。さらに想定…

四季は大地を駆け巡る #151 格の違い

ヒューガはレンベルク帝国の皇都に向かっている。レンベルク皇帝と会った後、何故かそういうことになったのだ。正直、ヒューガにとっては迷惑な誘い。やるべきことは沢山ある。国にとどまって執務に専念していたかったのだが、レンベルク皇帝に直接、帝国の…

四季は大地を駆け巡る #150 新たな道

ドュンケルハイト大森林内の旧都。その中の一際大きな建物の一室でヒューガとイーストエンド侯爵は向かい合っている。イーストエンド侯爵にとって待ちに待った話し合いの場が用意されたのだ。同席しているのはクラウディアとカルポだけ。国同士の正式な交渉…

四季は大地を駆け巡る #149 罪と罰

パルス王国と魔王軍との間で、また大きな戦いが行われた。イーストエンド侯爵領に向かっていたパルス王国軍に対して、イエナ率いる魔王軍が奇襲を仕掛けたのだ。戦闘が開始したばかりの時こそ、魔王軍が優勢に戦いを進めていたが、すぐに膠着状態に入る。あ…

四季は大地を駆け巡る #148 想いの強さ

クラウディアの日常において拘束される時間はイーストエンド侯爵と話し合う時間しかない。それ以外の時間は全て自由時間。やることがないという状況は、クラウディアに疎外感を覚えさせてしまうものであるが、今は仕方がない。公式には彼女は無役。仮に正式…

四季は大地を駆け巡る #147 欲望そのものに善悪はない

クラウディアの要求をヒューガは、彼女が拍子抜けするくらいに、あっさりと受け入れた。イーストエンド侯爵はクラウディアの側で活動する自由を得たのだ。 もっともその自由には当然、制限がある。イーストエンド侯爵は拠点間を自由に行き来することは出来な…

四季は大地を駆け巡る #146 何の、そして誰の為に

ライアン率いる魔族の部隊はパルス王国の中央部を大きく迂回する形で北部から西部に向かっている。ユーロン双王国と対峙しているパルス王国軍に奇襲をかけるという作戦はパルス王国も想定したものだが、現時点ではその動きは掴まれていない。 イーストエンド…

四季は大地を駆け巡る #145 正しい選択

東部が魔王軍によって占拠された。この情報が届いたパルス王国王都は大混乱に陥った。王国による情報統制などまったく意味を為さない。魔王軍を恐れて東部から逃げてきた人々が情報統制を不可能にしてしまっていた。 南部に続いて東部まで奪われた。この事実…

四季は大地を駆け巡る #144 再会の夜

ドュンケルハイト大森林に逃げ込んだイーストエンド侯爵家軍は百名を少し超える程度。イーストエンド侯爵を守っていた精鋭部隊が乱戦の中でもなんとか規律を維持し、アイントラハト王国軍に引き離されることなく退却を続け、魔王軍の追撃を振り切ったのだ。 …

四季は大地を駆け巡る #143 月の預言者

ヒューガが政務から遠ざかってしまうとその分の負担のほぼ全てをカルポが背負うことになってしまう。特に明確な定めはないのだが、アイントラハト王国において、王であるヒューガに次ぐ高位にあるのは季節の軍を任されている四人、エアル、カルポ、冬樹、夏…

四季は大地を駆け巡る #142 止まらない歩み

優斗率いる魔王軍によるイーストエンド侯爵家軍殲滅作戦は、成功と言える結果で終わった。たとえイーストエンド侯爵家軍に止めをさした最大の要因が、ルナの極限魔法による被害だったとしても。 ルナの極限魔法により甚大な被害を受けたのはイーストエンド侯…

四季は大地を駆け巡る #141 招いた悲劇

逃げるヒューガたちを追いかける優斗の前に立ち塞がったのはギゼン。戦場に現れたのは彼だけではない、ホーホーに騎乗した春の軍、そして秋の軍の一部が、ヒューガたちの脱出ルートを切り開く為に動き回っている。彼らにとって魔王軍もイーストエンド侯爵家…

四季は大地を駆け巡る #140 宣言

激しい戦いが行われていた戦場に静けさが広がっていく。優斗のやり様に呆れた多くの魔族が、成り行きを気にして戦いの手を止めた結果だ。劣勢であったイーストエンド侯爵家軍もその隙をついて反撃に出るような真似はしない。一時、優勢になってもすぐに戦況…

四季は大地を駆け巡る #139 望まない再会

イーストエンド侯爵家本軍の救援の為に編制された軍勢は、魔王である優斗が自ら率いる軍勢による奇襲を受けて、崩壊した。指揮官であるチャールズの安否は不明。陣を逃れたのは間違いないが、その後の消息は、現時点においては、明らかになっていない。 この…

四季は大地を駆け巡る #138 外れた枷

パルス王国軍による南部奪回作戦は三方向からの同時侵攻を行うというもの。それによりもともと数は少ないはずの敵戦力を分散させて戦いを有利にする。もしくは一か所に敵を集中させて、その間に他の二方面軍が南部に深く攻め入り、サウスエンド伯爵家の本拠…

四季は大地を駆け巡る #137 意外な策士

ヒューガの失踪は翌日の早朝には明らかになった。毎日、早朝から夜遅くまで鍛錬や仕事やらで忙しくしているヒューガだ。その姿が見えないとなれば、すぐに何かあったと周囲の人は気付く。まして前日の出来事を考えれば。 行く先は明らか。アイントラハト王国…

四季は大地を駆け巡る #136 明らかになったズレ

アインシュリッツ王国。これが旧ダクセン王国領に新たに建国された国の名だ。その領土はダクセン王国であった時とほとんど変わらない。変わったのは東方争乱当初にマンセル王国が奪った部分で、それ以外は元のままだ。レンベルク帝国との国境は元のまま、そ…

四季は大地を駆け巡る #135 動き出す悪意

イーストエンド侯爵の領主館では、普段とは異なる緊迫した雰囲気の中で打ち合わせが行われていた。パルス王国南部を占拠した魔族と裏切った南部貴族たちの討伐にイーストエンド侯爵家からも軍を出すことが王都で決まった。それを受けた軍事会議が開かれてい…

四季は大地を駆け巡る #134 落としどころ

傭兵王が敗北を認めたことでマーセナリー王国の情勢は一気に変化した。相変わらず各地に割拠している勢力は存在しているが、どれもそう遠くないうちにマリ王国に吸収されるか、奪えるだけ奪って解散するかのいずれかを選択することになる。それ以外の選択肢…

四季は大地を駆け巡る #133 人、物、土地。求めるものはそれぞれ

サウスエンド伯爵家の居城があるエルツシュロスは、当然だが、南部最大都市。サウスエンド伯爵家の家風もあって華やかさにはやや欠けるものの、南部経済の中心地として多くの人々が行き交う賑やかな街だ。本来は。 今現在、エルツシュロスを訪れる商人や旅人…

四季は大地を駆け巡る #132 二つの動き

夜の陣地は静寂に包まれている。傭兵王は、まるで広い陣地にたった一人でいるような気分だった。そんなはずはない。陣地には四千を超える騎士や兵士がいる。今この瞬間にも減っているかもしれないが。 自軍はずっと負け続けている。一騎打ちで負け、五十人と…

四季は大地を駆け巡る #131 破壊と創造

レンベルク帝国の帝都。城の面会室でレンベルク皇帝はグランと向き合っていた。アイントラハト王国の外交担当としてグランは定期的にレンベルク帝国を訪れている。交易の話、軍事協力についてなど話し合うことはいくつもあるのだ。 ただ帝都まで来るのは久し…

四季は大地を駆け巡る #130 よろず相談承ります

旧ダクセン王国領にある村。長く続く戦乱で男手を失い、土地が荒れ果て、なんの収穫も得られることが出来なくなっていたところに、さらに野盗と化した元マーセナリ―王国軍の騎士や兵士による襲撃を受けて、蓄えまで奪われてしまった。 明日食べるものにも困…

四季は大地を駆け巡る #129 踏み出された一歩が次の一歩に繋がる

ヒューガとメルキオル王太子の会談は二刻に渡って行われた。最初はメルキオル王太子がアイントラハト王国についての質問を投げ、それにヒューガが答えるというものだったのだが、詳細については答えられないことが沢山ある。それは質問するメルキオル王太子…

四季は大地を駆け巡る #128 知る者、知らない者

サウスエンド伯爵領を奪う。この優斗の企みは一歩一歩確実に進んでいる。優斗一人の手柄ではない。もちろん南部に領地を持つ貴族を味方にする為の交渉では、優斗の存在は良い影響を与えている。勇者が味方にいるということだけで、反乱が成功する確率はあが…