月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-四季は大地を駆け巡る

四季は大地を駆け巡る #82 裏の顔

夏たちと別れて城に向かうクラウディア。その足取りは重い。ジュンに言われたことに胸を痛めているのだ。 自分はヒューガと別れてから何も変わっていない。クラウディアにはその自覚があった。だが、変わる為に何もしていないと他人から言われると、ここまで…

四季は大地を駆け巡る #81 期待

夏が生活費を節約する為に自炊することにして、随分と経つ。宿の主人が調理場を自由に使って良いと言って貰えたのは夏にとって大助かりだった。ギルドで聞いた通り、無愛想な主人であるが、他にも何かと便宜を図ってくる。良い宿を見つけることが出来たと夏…

四季は大地を駆け巡る #80 建国の苦労

グランはドュンケルハイト大森林に入ってすぐにエルフの集団に捕まった。ゆっくりと大森林の景色を眺める時間もない。あっという間の拘束だった。 ただそれはグランにとって悪いことではない。少なくとも、魔獣に襲われて死ぬという結末は免れた。あくまでも…

四季は大地を駆け巡る #79 帰還

眼前には青々とした草原が広がっている。その向こうには遙か先まで連なる密集した木々。他の地域にある大森林とは似て非なる場所。それが精霊の地ドュンケルハイト大森林だ。 帰ってきた。その光景を見た瞬間、ヒューガはそう感じた。ここが自分の戻る場所。…

四季は大地を駆け巡る #78 悪魔の所業

目の前で燃え盛る炎。魔法を使っての、懸命の消火活動が続いているが、その勢いが衰える様子はない。燃え盛る炎の中には大勢の味方がいる。早く火を消して、彼等を助けなければならない。美理愛も、そんな焦る気持ちをどうにか落ち着かせて、魔法を唱える。 …

四季は大地を駆け巡る #77 大国のジレンマ

パルス王国と魔族の戦いが本格化しようとしている。戦況は逐一、ノースエンド伯爵を通じて、領地に戻っているイーストエンド侯爵にも届けられているが、その中身はパルス王国にとって決して良いものではない。 届けられた報告を聞いて執務室に戻ってきたイー…

四季は大地を駆け巡る #76 戦いが始まる

ヒューガから詳しい事情を聞かされた美理愛は、頼み事を聞くことにした。奴隷にされていたエルフを助ける為、しかもそれがかなり命懸けの行動だと知ってしまっては、美理愛が断れるはずがない。それが分かっているからヒューガは美理愛にお願いしたのだ。 美…

四季は大地を駆け巡る #75 息抜き

パルス王国のノースエンド伯爵領から北に進んだ、魔族の領土にかなり近づいている場所。平時であれば人気のないその平原に今は数え切れないほど多くの天幕が立てられている。その間を動き回っているのは武装した人たち。パルス王国の魔族領侵攻軍の陣地だ。 …

四季は大地を駆け巡る #74 新生活の始まり

城に続く大通りを馬車の行列が進んでいる。もうすぐ領主であるイーストエンド侯爵の到着。それを迎える為に城門の前には多くの騎士が並んでいる。クラウディアもその迎えの列に加わって、チャールズの隣に立っている。ただ彼女の気持ちは、イーストエンド侯…

四季は大地を駆け巡る #73 見えない未来

イーストエンド侯爵一行は領地へ続く街道を東に向かって急いでいる。本来はこれほど急ぐ道程ではなかったのだが、今は事情が出来た。先行する集団に追いつこうとしているのだ。 それも最初はここまでとは思っていなかった。追いかけている集団には子供もいる…

四季は大地を駆け巡る #72 うねり

イーストエンド侯爵家の領主館。その執務室で今日も、チャールズとクラウディアは各地から届けられる報告書や決裁書に目を通している。 クラウディアはこういった仕事が得意だ。王家に生まれた彼女。王女であっても、きちんとした帝王教育を受けている。パル…

四季は大地を駆け巡る #71 分かり合えない人たち

「話って、どこでするの?」 武器屋を出て少し歩いた所で、夏が美理愛に話しかけてきた。一秒でも速く、美理愛と離れたい夏。話をしたいのは美理愛であるのに、何も言ってこないことに焦れた結果だ。 「あっ、そうね。じゃあ、お城に戻りましょうか」 「冗談…

四季は大地を駆け巡る #70 転機

真夜中の貧民区。夜の闇に覆われているはずの貧民区は今、赤々とした光に照らされている。自然の光ではない。何者かが火をつけたのだ。 その何者かたちの姿は今も貧民区にある。いかにもという感じの黒装束の男たちが、あちこちで駆け回っている。顔は見えな…

四季は大地を駆け巡る #69 王国を守る盾

勇者が帰還し、いよいよ魔族領侵攻作戦の開始が間近に迫っている。そんな状況であるのに、アレックスはエリザベートの下へ日参する羽目に陥っている。 大事な時期だ。疑いを持たれるような行動は取りたくないのだが、それがエリザベートには通じない。毎日、…

四季は大地を駆け巡る #68 残酷な運命

ネロは地下室へ続く長い階段を降りている。彼一人ではない。彼と淫魔の間に出来た子供たちも一緒だ。 子供たちを母親に会わせてやろうなんて優しさから連れてきたわけではない。そんなことが出来るはずがない。子供たちの母親は鎖に繋がれているのだ。そんな…

四季は大地を駆け巡る #67 種まき

都市連盟の南の外れにある街。そこにある商業ギルドは閑散としている。商業ギルドの職員は忙しい毎日を過ごしているのが一般的であるのだが、この場所は例外だ。 ドワーフの国であるアイオン共和国との国境であるというだけで商業ギルドの支店が設けてあるの…

四季は大地を駆け巡る #66 策士、策に溺れる

魔族討伐を終えての久しぶりの王都への帰還。王都の住民たちは熱狂的に勇者の凱旋を迎えた。大通りの沿道を埋め尽くす人々。その人たちの歓声に、にこやかな笑みを浮かべながら手を振って応える優斗。その姿はここを出て行った頃の優斗と変わらない。 素直に…

四季は大地を駆け巡る #65 先の可能性

街の路地裏にひっそりと佇む建物。外から見れば粗末な建物だが中に足を踏み入れると、外観からは想像出来ない豪華な内装になっている。特にこの執務室は家具もかなり立派な物が置いてある。普通の仕事をしていては、決して手に入れられない高価な家具だ。 街…

四季は大地を駆け巡る #64 ドワーフ族

目の前に立っている息子を見つめる彼の表情には苦いものが浮かんでいる。おどおどした様子で、威厳など欠片も感じられない。ドワーフの王である彼にとっては表情そのまま、苦々しいものだ。 ドワーフの王は各部族の長の中からもっとも相応しい者が選ばれる。…

四季は大地を駆け巡る #63 野心

野営地はひっそりと静まり返っている。戦いが終わるたびに優斗は不機嫌になる。それがあまりにも続いた為、いつしか戦勝の宴を行うことはなくなった。戦勝の喜びは、多くの人にとっては勝利よりも生への喜びが強いだろうが、とにかくそれぞれが胸の中で噛み…

四季は大地を駆け巡る #62 非道

王城の奥にひっそりと立つ離れの塔。行き交う人はほとんどいない。その塔の中に豪奢な家具で彩られた一室がある。国王の妃であるエリザベートの寝室だ。 本来であれば男子禁制であるその場所にアレックスはもう何度も通っている。この事実が表沙汰になれば間…

四季は大地を駆け巡る #61 それぞれの縁

月に一度、傭兵ギルド本部に送られてくる営業報告の資料。各支部から送られてきたそれに、ギルド長は順番に目を通している。常であれば、大まかな数字と特別に報告されてきた事項のみを確認して終わる作業に、今回は朝からかかりっきりだ。それも自分一人で…

四季は大地を駆け巡る #60 真の建国の日

ヒューガの目の前に東の拠点で暮らす全員が並んでいる。その中にはブロンテースと無名の人族の顔も見える。そして南の拠点で療養していた三人のエルフたちの姿まで。 人々が集まっているのはヒューガたちの出立を見送る為だ。 こういった大袈裟なことは不要…

四季は大地を駆け巡る #59 第五百四回精霊会議

結界の目途が立ったことで、ヒューガは早速、都を使うことについてセレネに話を通すこととした。扉を抜けて、西の拠点に着く。この場所に来るのも久しぶりだ。 セレネとだけ話をして、すぐに東の拠点に戻るつもりだったのだが、彼女は部屋にいなかった。仕方…

四季は大地を駆け巡る #58 新時代の到来

エアルは毎日、ヒューガの部屋に通っている。特に何か用があるわけではないが、忙しい中、少しでも時間が空くとヒューガに会いに行くのだ。 ほんのわずかな時間、顔を見せるだけのこともあるので、ヒューガからさすがにそれは止めろと言われたのだが、エアル…

四季は大地を駆け巡る #57 決断の時

手元にある資料にヒューガは何度も目を通す。それほど難しい内容が書かれているわけではない。数分で読み終えられるものだ。それでもヒューガは、その資料を何度も見返さざるを得なかった。 そうしている間に、皆が会議室に集まってくる。エアル、カルポ、ハ…

四季は大地を駆け巡る #56 喜びのない帰還

エアルたちが大森林に帰ってきた。まっすぐに拠点に戻ってくるものだとヒューガは思っていたのだが、彼女たちは大森林の外縁部に留まったまま。逆にヒューガに来て欲しいと伝えてきた。 何か問題が起きたと考えて、急いでやってきたヒューガ。エアルたちから…

四季は大地を駆け巡る #55 第五百回くらい精霊会議

ドュンケルハイト大森林の外縁も外縁。出口にあたる場所にヒューガたちは立っている。今日はいよいよエアルたちが出立する日なのだ。 旅支度を整えたエアル、ハンゾウたち十一人は彼等が大森林に入るときに使った隠し通路から外に出て行くことになっている。…

四季は大地を駆け巡る #54 大きな一歩

先生が拠点から姿を消した後も、ヒューガたちは厳しい鍛錬を続けている。寂しさを感じていないわけではないが、鍛錬に限っては、以前よりも気合が入っているくらいだ。先生が戻ってくることがあった時、情けない姿を見せるわけにはいかない。皆がこんな思い…

四季は大地を駆け巡る #53 師との別れ

まだわずかに雪が残る草原をホーホーの群れが駆けている。その先頭に立つのはコクオウ。一際大きな黒い馬体が陽の光に輝いていて、とても綺麗だ。 コクオウたちはある日突然この草原に現れた。何故、ヒューガたちのいる場所が分かったのか。それはルナの「ん…