ファンタジー小説-奪うだけの世界など壊れてしまえば良い
◇◆◇ エミリー ◇◆◇ 私は何を間違ったのか。思いつくことは多い。そもそも久住が美玲を殺した、は最初から本気でそうは思っていない。久住がストーカーで、彼から逃げる為に美玲は事故にあったが、私が事実だと思っていたこと。でもそれは、かなりの確率で、間…
◇◆◇ ウイリアム ◇◆◇ 兄上が亡くなった。あまりに突然で、信じがたい話。だが近衛騎士が嘘の報告で我々を驚かそうとするはずがない。これは事実なのだ。兄上は亡くなった。でも、何故? 「死因は?」 「恐らくは……殺されたものと」 騎士団長の問いに、これも…
◇◆◇ ウイリアム ◇◆◇ 謎をいくつも残して、カイトは消えた。だが落ち着いて考えてみれば、今までは見えなかったものが垣間見えたのだ。カイトが見せてくれたのだ。見えたものであれば、それを解明出来る。絶対とは言えないが、少なくとも解明を試みることは出…
◇◆◇ ウイリアム ◇◆◇ 大広間に多くの人が集まっている。少し多すぎだと私は思う。和解の場にするのであれば、もっと気安く、寛げる場を設けるべき。今のこの場は仰々しい。緊張感まで漂っている。 対応をまったく理解出来ないわけではない。退魔兵団は敵か味…
◇◆◇ エミリー ◇◆◇ カイトが王都に召喚された。応じるはずがないと私は思っていた。他の皆がどう考えているは分からない。あの日からずっと皆とは気まずいまま。ほとんど話をしていない。それはどちらかというと私のせい。アントンを、榊を信用しきれない。カ…
◇◆◇ ウイリアム ◇◆◇ 王都に帰還した。すぐに緊急会議の開催だ。王国にとって退魔兵団は、蔑視していながらも、重要な存在。その退魔兵団で異変が起きた。それも王国にとって、どう考えても最悪の結果だ。父上も焦るだろう。 会議の参加者は父上と宰相、王国…
◇◆◇ カイト ◇◆◇ 悲しいことがあった時は、それを考える余裕がなくなるくらい他のことに没頭すること。失恋の痛みは新たな恋で癒す、は選ばない。そんな気分にはなれない。癒せる相手もいない。 ということで仕事に没頭中。実際、無理に忙しくする必要がない…
◇◆◇ ウイリアム ◇◆◇ 退魔兵団本部を離れて、元々泊まる予定だった近くの村に戻った。ここで一泊して、明日の早朝には王都に向けて出発する予定だ。退魔兵団が気がかりではあるが、我々だけでどうにか出来ることではない。兵団長となっていたカイトは我々との…
◇◆◇ カイト ◇◆◇ 後悔しても元には戻せない。それはこれ以上ないほど思い知っていたはずだった。それなのに俺はまた同じ過ちを犯してしまった。どうしてなのか? どうしてこいつらを殺してしまわなかったのか? 正面から戦うのでは勝てなくても、殺す手段なら…
◇◆◇ ウイリアム ◇◆◇ 想定よりも遥かに早く退魔兵団本部行きが許可された。下手すれば許されない可能性も考えていたくらいなので、嬉しい誤算だ。それでも逸る気持ちは抑えられない。クリスティーナたちを追跡していた者たちは、王都を出てすぐにその行方を見…
◇◆◇ クリスティーナ ◇◆◇ 王国各地に散っていた兵士の人たちが次々と戻ってきている。彼らが真っ先に行うことは従属魔法を解除すること。実際に行うのはカイトだ。最初にそれを見た時は驚いた。あまりにも簡単に解除出来てしまうから。 どうしてこれまで同じ…
◇◆◇ ミネラウヴァ国王 ◇◆◇ 多くの課題を抱えている中で、更なる難題。まだ難題となるかは分からないが、アッシュビー公爵家の一件は放置出来ない状況だ。そこに退魔兵団が絡んでいるとなれば、尚更。退魔兵団はカンバリア魔王国との戦いの最前線に立つはずの…
◇◆◇ パトリオット ◇◆◇ 自分の立場を考えてみる。知らないところで父親が勝手に私を退魔兵団の兵士にした。父親から愛情を注がれた記憶はない。父親への愛情なんてとっくに失われている。それでも、ここまで酷いことが出来るのかと驚いた。 ただ最悪の感情は…
◇◆◇ ミユウ ◇◆◇ 自分はどうして不幸なのだろうって、ずっと思っていた。生まれた家は貧乏だった。でも、これはどうでも良い。出来れば裕福な家に生まれたかったとは思っていたけど、周りも皆、貧乏だったから自分だけが不幸だなんて思わなかった。 私が自分…
◇◆◇ クリスティーナ ◇◆◇ 退魔兵団の拠点までの道のりはかなり厳しいものとなった。王都を出てすぐに全力での移動。そうは言っても全力なのは私と兄上だけ。他の人たちには余裕があった。私たちは完全な足手まといだった。 急ぎたいという思いは私にもあった…
◇◆◇ ウイリアム ◇◆◇ 側近が調べた限り、尋問の回数はかなり減ったようだ。当たり前だが、クリスティーナが魔王国に協力していたという証拠はない。本人たちは、これも当たり前だが、疑惑を否定している。有罪とする決め手は一切ないのだ。 そうであれば速や…
◇◆◇ カイト ◇◆◇ こちらの計画はまさかのクズ団長の介入で台無しになった。クズ団長のことを過小評価し過ぎていたのだろうか。ただ、あまりにも対応が早過ぎる。自分が捕まったことを知って、送還役が送られてくるまで、たった一週間。クズ団長がいる退魔兵団…
◇◆◇ ミネラウヴァ国王 ◇◆◇ どうしてだろう。クリスティーナ・アッシュビーが絡むことになると必ず誤算が生まれているように思える。今回の件はその最たるものだ。事もあろうに騎士養成学校に乗り込んでクリスティーナとパトリオットの二人を拘束した。そのよ…
◇◆◇ パトリオット ◇◆◇ 妹が何をしたというのか。私が何をしたというのか。あまりの理不尽な仕打ちに、さすがに王国に対する怒りが抑えられない。確かに妹は悪魔と契約している。だからといって、それが何の罪になるのか。魔獣召喚術というものがある。妹と悪…
◇◆◇ カイト ◇◆◇ ようやく王子様の護衛任務が終わり、王都に戻ってきた。解放された気分というのはこういうものなのだろう。王子様は別として、何もしていなくても性悪女とその仲間たちとは常に一緒にいるというだけで疲労感を覚える。実際は何もしていないわ…
◇◆◇ アッシュビー公爵 ◇◆◇ ウイリアム殿下とクリスティーナの婚約解消は痛い。兄を差し置いて、次期国王候補と見られているウイリアム王子の妃となれば、後々は王妃となるかもしれない。私は王妃の父、外戚ということになるのだ。 聡明さを謳われるウイリア…
◇◆◇ ミネラウヴァ国王 ◇◆◇ 懸案事項となっていた課題のひとつがようやく解決しようとしている。それを喜ぶ気には正直なれない。そう遠くない時期に始まるカンバリア魔王国との戦いに備えて、解決しておかなければならなかった問題であることは理解しているつ…
◇◆◇ カイト ◇◆◇ もしかすると<成長補正>なんてスキルが勇者様とその仲間たちには与えられているのだろうか。それとも勇者様とその仲間たちは特別に敵を倒すと経験値が得られ、そのおかげで戦う度に確実に、結果びっくりするような速さで、成長出来るのか。…
◇◆◇ コルテス ◇◆◇ 野外授業を終えて王都に戻った。魔族との戦いを終えてから、ずっと気持ちは沈んだまま。どう気持ちを整理して良いか分からない。魔族に自分の力はまったく通用しなかった。自分だけではない。自分よりも攻撃力に勝るマイルズでも同じで、魔…
◇◆◇ カイト ◇◆◇ 考えてみれば勇者パーティーというのは定員は何人なのだろう。今の有力候補は勇者である王子様と聖女という呼称がまったく似合わない性悪女。性悪女のお仲間で、人でなしの二人。この四人だ。 たった四人でカンバリア魔王国に攻め込み、魔王…
◇◆◇ パトリオット ◇◆◇ どうしてこのようなことになるのか。「狙う相手を間違えていませんか?」と言いたいところだが、これを言っても事態の解決にならないことは分かっている。実際に間違いであっても、「そうでした。では失礼」なんて言って、相手が去って…
◇◆◇ カイト ◇◆◇ 悪魔を見逃してしまった。どうしてそんなことになったのか。自分でも良く分からない。やってはいけないことだという思いは勿論あって、そうであるのに実際の行動はそれに反するものを選んでしまったのだ。 以前であれば、考えられない行動だ…
◇◆◇ カイト ◇◆◇ 少し話は聞いていたけど、これが勇者パーティーにとっては騎士学校の野外授業らしい。正直、「これで良いのか?」と思う。勇者と聖女の存在を国民に広く知らしめることには意味がある。こう言うけど本当に意味があるのか、自分には疑問だ。国…
◇◆◇ ミネラウヴァ国王 ◇◆◇ ウォーリック公爵の領地は王国北部にある。カンバリア魔王国との国境がある北に領地を持つ意味。それは王国の盾として頼りにしているということだ。元は王家に繋がる血筋のウォーリック公爵家。王国、国王から信頼を預けられる家だ…
◇◆◇ アントン ◇◆◇ ウイリアムとの間に出来た溝が一向に埋まらない。騎士学校の二年目になってからは、誰よりも共に過ごす時間が長くなっているというのに、それは関係改善にまったく役立っていない。「なにを意地になっているのか」と怒りを覚えていた時期も…