月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

悪役令嬢に恋をして 第84話 マリアの暗躍

アーノルド王太子の視線に気付いたマリアが近づいてくる。ランスロットに同行を頼むことなく一人でだ。 ランスロットの妻といってもマリア本人は無爵位。一人で王族の前に出るのは無礼なのだが、本人には全く気にする様子はない。実に嬉しそうな笑みを浮かべ…

悪役令嬢に恋をして 第83話 終わりの始まりの時

魔人との戦いが終結して四年の歳月が経つ。グランフラム国王にとっては、ずっと薄氷の上を歩いているような気持ちの四年間だった。それだけ魔人との戦いはグランフラム王国に深い傷跡を残していたという事だ。 実際に国王は、いくつもの問題に対処する必要が…

勇者の影で生まれた英雄 #129 踏み出された一歩

ゼクソン王国の王城。その城内の謁見の間に文武の重臣が居並んでいる。玉座に座るのはヴィクトリア。本来の玉座の主であるヴィクトルは、そのヴィクトリアの腕の中だ。 銀色の髪は両親譲り。まだ幼くありながら思慮深さを感じさせる、その瞳は父親似だと、グ…

逢魔が時に龍が舞う 第38話 洗脳

静寂の中、キーボードを叩く音だけが部屋に響いている。その音にまでオペレーターの緊張を感じ取ってしまうのは、恐らくは聞く側の気持ちのせい。感情を聞き取れるような鋭敏な耳を持っている人は、この場にはいない。 白衣を着た人々は精霊科学研究所の職員…

勇者の影で生まれた英雄 #128 密やかな再始動

他国への無断侵攻の責任を取って大将軍を辞め、一近衛騎士となった健太郎ではあるが、それはあくまでも軍部内での地位に限ってのこと。爵位はそのままになっている。 健太郎を処分する目的は軍部からランカスター侯爵家の影響力を排除する為。その目的が会議…

逢魔が時に龍が舞う 第37話 第X世代

元第七七四特務部隊である特殊戦術部隊の本部は、旧都西部にある湖近くに移された。かつて観光施設があった場所で、元の本部に比べれば、広大といえる敷地だ。 ただ今は、高い塀に囲まれた広い空き地の中に、ポツンと建物が一つあるだけの場所。とても軍の施…

勇者の影で生まれた英雄 #127 三妃会議

ルート王国の都ルーテイジは賓客を迎えて、大騒ぎになっている。訪れたのはゼクソン王国の国王ヴィクトルとその母ヴィクトリア。幼いとはいえ、一国の王を迎え入れるのだ。それなりの形式を整えなければならない。なんといってもルート王国の人々が、それを…

勇者の影で生まれた英雄 #126 大切なものは何か

王位に就いてからエドワードは精力的に働いている。その勤勉さは部下たちが新王に期待していた通りか、それ以上のもの。そんな新王エドワードの動きは、これまで国政の場に漂っていた衰退の匂いを吹き飛ばし、人々に活気を取り戻させることになる。 なんて話…

逢魔が時に龍が舞う 第36話 ゲームではない

灰色のコンクリートに囲まれた部屋。中央に置かれているのはテーブル、そしてそのテーブルを挟んで向かい合う形で置かれている二脚のパイプ椅子。その片方に両手両足を拘束されたまま、尊は座らされている。 ぼんやりとした表情の尊。ぼんやりとした様子を見…

勇者の影で生まれた英雄 #125 小さなズレ

王都に連行されたランカスター侯爵と次男のロイド。エドワード王はすぐに二人と話し合いの場をもった。それも余人を交えない、二人だけでのし合いだ。 ランカスター侯爵家の二人との話を、他の者には聞かせたくないのだ。その理由は。 「……嘘だ。父上がその…

逢魔が時に龍が舞う 第35話 解散

元大統領との交渉には成功した葛城陸将補だが、動きは相手のほうが早かった。ずっと前から動かれていたのだ。そうなるのも当然だ。元大統領の屋敷を訪れたことが知られ、相手の動きを加速させたという面もある。真っ昼間に屋敷に堂々と姿を現せば、知られる…

勇者の影で生まれた英雄 #124 政変

ジョシュア国王の早過ぎる死。それはウェヌス王国に驚愕をもたらした。 だが、もたらしたのは驚愕だけだった。グレンを題材とした小説の影響によって、ジョシュア国王に好意を向けることとなった極々少数の国民の涙を除けば、悲しみも混乱も広がることはなく…

勇者の影で生まれた英雄 #123 異変

侯爵家といっても領内に大都市をいくつも抱えているわけではない。大都市といえるのは領主館がある街くらいで、それ以外は小さな街ばかりだ。 暴動が起きたバッカスもその一つ。ランカスター侯爵領の南東の外れにある街で、特別な産業も豊かな耕作地もない貧…

逢魔が時に龍が舞う 第34話 政治

尊と約束した通り、葛城陸将補は行動を起こした。何の勝算もない行動だ。だが第七七四特務部隊の部隊長とはいえ、一軍人に過ぎない葛城陸将補には、それしか出来ることがないのだ。 久しぶりに訪れた新都心。高層ビルが立ち並ぶ新都心の道路を徒歩で進む葛城…

勇者の影で生まれた英雄 #122 まだ終わっていない

どうしてこうなった。今のランカスター侯爵の気持ちを言葉にするとこれだ。万全の準備を整えて、動き出したはずだった。アシュラム戦役で軍部の実権を握り、戦争を自由に行えるようにする。 その後、ゼクソン王国を滅ぼして、その地に王を据える。ランカスタ…

勇者の影で生まれた英雄 #121 変わらない人

第二次アシュラム戦役の影響は思わぬところにも出ている。ただ、それを気にする人はわずかな数でしかない。さらに本気で困っている人はたった一人だ。 城内の食堂では、久しぶりに夕食会が開かれている。結衣の強い要望で開かれた、その会の参加者は健太郎、…

逢魔が時に龍が舞う 第33話 裏切り

桜木学園襲撃。場所でいえば、それは第七七四特務部隊本部への襲撃と同じ。それを桜木学園襲撃とするのは、特務部隊の戦闘員のほぼ全員が別の場所にいた為に、襲われたのは隊員ではなく候補生だけだったこと。桜木学院生徒が襲撃されたということだ。 その結…

勇者の影で生まれた英雄 #120 変わろうとする人

勇者軍を撃退し終えたあとも、ルート王国の人たちは忙しい日々を送っていた。都はほぼ無傷といっても投石の撤去や穴の空いた場所の修復など、戦後処理は決して少なくない。 それに忙しい理由はそれだけではない。付け入る隙を全く見せない完勝と言える内容で…

逢魔が時に龍が舞う 第32話 見えてきたもの

尊が桜に会っている間、精霊科学研究所内にある訓練室で汗を流していた天宮。訓練で時間を潰すだけであれば、そもそも研究所まで付いてこなければ良いのだが、天宮はそう考えない。何故、そう考えないかも考えないほど、鈍感なのだ。 一応、それらしい理由は…

勇者の影で生まれた英雄 #119 揺れ動く大国

勇者軍によるストーケンド襲撃。たとえトキオという独自の駐屯地を持っているとしても、多くの犠牲者を出した戦いだ。それを秘匿しておくことは出来なかった。仮に犠牲が少なくても同じこと。襲撃の情報は間者を通じて、ジョシュア国王の耳に入ることになる…

異伝ブルーメンリッター #113 敗戦の中から生まれてくるもの

アーベントゾンネの街を囲む防壁の上。元ブルーメンリッターの騎士でユリアーナと共に魔王側に寝返った騎士たちは、その場所で戦場の様子を眺めている。ユリアーナを囮にした策は成功。多くのブルーメンリッターの騎士が投石の下敷きとなっている。 ただ戦い…

逢魔が時に龍が舞う 第31話 黒幕

低いモーター音が部屋の中に響いている。それほど大きな音ではないのだが、地下にあるこの部屋の作りが、そこにいる人々の沈黙が、それを彼等の耳に届けてしまうのだ。 ここは、いくつもある『YOMI』のアジトの一つ。その中でも幹部だけが知る特別なアジ…

異伝ブルーメンリッター #112 正義の味方はピンチを乗り越えて勝利を得るものだ……けど

新大魔将軍ブラギ率いる魔王軍に対峙しているアイネマンシャフト王国軍。その編成は、ジグルスの直率で、セントール族とエルフ族の混合部隊である近衛機動部隊が二中隊二百騎、熊人族を中心とした重装歩兵部隊が一大隊一千名、犬人族を中心とした機動歩兵部…

逢魔が時に龍が舞う 第30話 今度こそデート

第七七四特務部隊に休日の定めはない。鬼が出現し、出動の要請があれば、いつでも現場に向かうことになる。とはいえ、日ごとに分隊の出動優先順が決められていて、それが最下位の分隊員は、割と自由にその日を過ごしている。外出も許可されるのだ。 今日は遊…

異伝ブルーメンリッター #111 過去の為に戦う人と未来の為に戦う人

ユリアーナ率いる魔王軍の物量作戦に対抗するには味方もそれに負けない物量で。ローゼンガルテン王国軍はその方針で反撃の準備を進めた。王都から送られた増援軍により総兵力を増加させただけではない。味方を悩ませている魔王軍による遠距離攻撃。それに負…

逢魔が時に龍が舞う 第29話 こんなはずでは

第七七四特務部隊の次の任務は、その難度を増している。今回の作戦も『YOMI』のアジトの襲撃。それを一分隊だけで実施しようというのだ。もちろん、前回よりも敵の数は少ない。確認されている敵の数は二人。それに対して一分隊を当てるのだから、数の優…

逢魔が時に龍が舞う 第28話 影

湾岸南地区にある『YOMI』のアジト。以前、国防軍に襲撃されたアジトとは別のものだ。多くのメンバーにとって、アジトなんて特別なものではない。仲間が集まっていて、そこで寝起きしていれば、そこがアジト。そういうことだ。 「そう……ミコトくんが、そ…

異伝ブルーメンリッター戦記 #110 戦いはこれからだ

ブルーメンリッターを主力とするローゼンガルテン王国軍とユリアーナ率いる魔王軍が対峙したゾンネンブルーメ公国西部の街アーベントゾンネを巡る攻防戦は、その激しさを増している。ローゼンガルテン王国軍側が苦戦を強いられる形で。 まずはアーベントゾン…

異伝ブルーメンリッター戦記 #109 まずは肩書きを捨てるところから

慎重に進められるはずであったブルーメンリッターによるアーベントゾンネ攻略戦だが、エカードたちの思惑から外れ、戦闘開始からいきなり激戦になった。攻められる側の魔王軍が想定外の構成を仕掛けてきたのだ。 アーベントゾンネの壁を超えてくる地を影らす…

異伝ブルーメンリッター戦記 #108 物語にはなかった主要キャラたちの戦いが始まろうとしている

ラヴェンデル公国の領境近く、リリエンベルク公国を囲む山脈まで続く深い森の入り口にその砦はある。ローゼンガルテン王国軍の訓練地に設けられたその砦は、実際には訓練に参加する騎士や兵士の宿泊場所として使われていて、実戦を想定したものではないのだ…