月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

勇者の影で生まれた英雄 #112 城砦の旗

全軍での総攻撃を決めた翌日。勇者軍は早朝からその準備に入っていた。本陣では総攻撃にあたっての戦法の確認を行うために大隊長以上の将官が集まっている。 それを率いる健太郎はといえば、上座に座ったままテーブルに突っ伏していた。 「ケン様、全員集ま…

勇者の影で生まれた英雄 #111 国境の攻防

ウェヌス王国とアシュラム王国との国境にある城砦。その城砦に向かって大小様々な石が大量に降り注いでいく。勇者軍の投石器が発した石だ。 健太郎が考えに考えた自軍の強化策。それは結局、各種兵器を大量に運用するというものだった。大国ウェヌスの国力を…

勇者の影で生まれた英雄 #110 手の平の上

ランカスター侯爵屋敷の一室にレスリーは呼び出された。呼び出したのは兄であるランカスター宰相だ。会議の場で健太郎が発した「恩賞としてアシュラムを」という要求。ランカスター宰相はそれを入れ知恵したとすればレスリーだと疑っていたのだが。 「私は知…

勇者の影で生まれた英雄 #109 新たな戦い

ウェヌス王都。王城の大広間では今まさにアシュラム王国への侵攻が決定されようとしていた。居並ぶ重臣を前にランカスター宰相はジョシュア王に向かい合っている。 「アシュラム王国への侵攻を決定したいと思います」 「また戦争か。ゼクソンとの戦争が同盟…

勇者の影で生まれた英雄 #108 謀略

「行ったり来たり忙しい奴だな」 これがゼクソン王都に到着したグレンに向けてのヴィクトリアの第一声だった。それを聞いて、グレンは青筋の立て方を教えてもらいたくなった。グレンが忙しくしている原因の一端はヴィクトリアにもあるのだ。 「わざと怒らせ…

勇者の影で生まれた英雄 #107 攻勢

ルート王国の重臣会議。その進め方は以前とは変わっていた。グレンが全ての報告の相手をすることはなく、すぐに指示を返すこともない。重臣たちの間で議論した上で、その結果の判断を仰ぐという、どの国でも行われている進め方だ。 それが臣下を育てる意味を…

勇者の影で生まれた英雄 #106 初めて知る想い

グレンにとっての最大の問題は自分の体が一つしか無いこと。夜の話ではない。ルート王国とゼクソン王国の二つの国政をみるということが、かなり難しくなっている。どちらも安定には程遠い状況。やらなければならない事柄は山程あるのだ。 ゼクソン王都を離れ…

勇者の影で生まれた英雄 #105 愚者と大物は紙一重

アシュラム王国の使者を迎えた後は重要案件の進捗を確認する為の重臣会議。このようなイベントがなくてもグレンの毎日は忙しい。個別案件についてもグレンは一つ一つ状況を細かく確認している。時間がいくらあっても、体がいくつあっても足りないような状況…

勇者の影で生まれた英雄 #104 手探りの改革

ゼクソン王国とウェヌス王国の同盟締結の情報は瞬く間に広がっていった。両国の王が会しての同盟だ。周囲に知られないはずがない。 ウェヌス王国にとってはその影響はほとんどないといって良いものだが、ゼクソン王国にとってはそうはいかない。グレンがゼク…

勇者の影で生まれた英雄 #103 黒幕の動き

ウェヌス王国の王都にあるランカスター侯爵家の屋敷。その屋敷の食堂に普段は見れない人物の姿があった。当主であるランカスター侯爵その人だ。 普段は領地にいるランカスター侯爵が久しぶりに王都に出てきていた。食堂には長子でありウェヌス王国宰相である…

勇者の影で生まれた英雄 #102 同盟締結

グレンのゼクソン王都滞在は二か月で終わった。 私生活はヴィクトリアとメアリーの間を行き来するという傍目には羨ましい、グレン本人にとっては気恥ずかしさと気まずさを感じる毎日だった。ヴィクトリアとメアリーの方は王族らしく、互いの立場を尊重し合っ…

勇者の影で生まれた英雄 #101 妃二人

グレンはメアリーを連れてゼクソン王都に戻った。ウェヌス王国との交渉の詰めはこれからだ。最終的な調印式にはまだ時間が必要となるので、一旦エステスト城塞から引き上げることにしたのだ。本当はルーテイジに戻る方が近かったりするのだが、現時点ではメ…

勇者の影で生まれた英雄 #100 偽りの恋

会議が終わった健太郎を、いつもの様に結衣とレスリー・ランカスターは部屋で迎えた。 二人の前の椅子に座った健太郎。だが何も話をすることなく口を真一文字に結んだまま、じっと考え込んでいる。 その健太郎に焦れて結衣が文句を口にする。 「どうしたの?…

勇者の影で生まれた英雄 #99 覚悟

ウェヌス城内の会議室ではゼクソン王国との交渉結果についての報告が行われていた。それを聞いた出席者の誰もが思ってもみなかった内容に愕然としている。 ランカスター宰相にいたっては強く拳を握りしめて、あからさまに怒りを示している。 「もう一度、言…

勇者の影で生まれた英雄 #98 ハーレム?

軽く口づけを交わした後のグレンとメアリー王女。二人とも少し照れた様子で顔を赤くして、それ以上何かをすることはなく、それでいて離れることには抵抗があるようで体を寄せ合ってソファに座っている。ソフィアとヴィクトリアがこの光景を見れば、何を純情…

勇者の影で生まれた英雄 #97 邂逅の時

グレンがルート王国に帰国したのは国政の状況を確認する為だけではない。ゼクソン王国とウェヌス王国との交渉の場であるエステスト城砦は、ゼクソン王都よりもルーテイジの方が近い位置にある。交渉の状況によってグレンの判断が必要になった時の為に、より…

勇者の影で生まれた英雄 #96 王の背中

ルート王国に戻った翌日。グレンはハインツたち三人を連れて軍の演習場に向かった。演習場といっても決められた場所があるわけではない。ルーテイジ周辺の空き地を利用して、調練は行われているのだ。 目的の場所に向かって、のんびりと騎馬を進ませるグレン…

異伝ブルーメンリッター戦記 #106 実家にご挨拶に、ということではない

アイネマンシャフト王国の都の名称はノイエーラに決まった。皆に求められてジグルスが名付けたのだ。新時代という意味の言葉を発音しやすく変えたもの。嫌々ながら、それでもそれなりに真剣に考えた名称であり、周囲の受けも悪くない。新時代という言葉は大…

異伝ブルーメンリッター戦記 #105 ただ待つしかない人

ローゼンガルテン王国の都。王城の一室でアルベルト王子は書類の束に目を通している。国王の座を継ぐ者として政務を行っているのではない。軟禁状態のアルベルト王子にはそんな権限は与えられていない。 手元の資料は特別に頼んで入手したもの。ブルーメンリ…

異伝ブルーメンリッター戦記 #104 さすがは元メインキャラたちってところか?

ゾンネブルーメ公国での戦いはその激しさを増していた。ローゼンガルテン王国がこれまで以上の攻勢に出たのだ。 エカードがそれを決断した理由は三つ。一つは増援として到着したラヴェンデル公国軍、タバートが率いる軍勢が期待していた以上に強力であったこ…

悪役令嬢に恋をして #82 エアリエルの決意

王太子の婚姻は、当人たちの同意だけで決められるものではない。これは、偽装でなくても同じだ。そもそも、王族や貴族の結婚に、本人たちの意思など関係ないのだ。 シャルロットとの結婚について、アーノルド王太子が了承とまではいかないまでも、前向きに考…

悪役令嬢に恋をして #81 シャルロット・ランチェスターの決意

ソルがエアリエルの部屋の前に辿り着いた時は、事態は少し落ち着いていた。そうは言っても、ただ刃物がしまわれているというだけで、扉の前に陣取る近衛侍女と、王国の近衛騎士たちの間には、睨み合いが続いている。 それを、騒動を引き起こした張本人である…

悪役令嬢に恋をして #80 ソル・アリステスの決意

バンドゥへの行軍を急いでいたアーノルド王太子たちではあるが、当然と言うべきか、救援には間に合わなかった。行程を半ばも行かないうちに戦いが終わったとの情報を聞き、更に先に進んだ所で戦闘に参加したバンドゥ領軍のかなりの人数が討ち死にしたと聞き…

悪役令嬢に恋をして #79 結局、これはバッドエンドなのかハッピーエンドなのか?

魔神がその全容を現すまでに、そう時間が掛からなかった。もっとも、じっと魔神の様子を見ていた者も、何が全容なのかは分からない。それだけ異質な存在なのだ。 パッと見た感じは動物というよりは巨大な植物だ。もしくは、とてつもなく大きなミミズが何百匹…

悪役令嬢に恋をして #78 イベント:最終決戦その三

地下通路を進み、奥に進むとすでに魔人が待ち構えていた。いつもの事だ。何らかの方法で、グランフラム王国側の動向を監視しているのだ。 前に進み出たのは、マリアとアーノルド王太子、そしてエルウィンだった。マリアの希望を飲んでのことだ。 カシスたち…

悪役令嬢に恋をして #77 イベント:最終決戦その二

早朝のカマークの街に、耳をつんざくような鐘の音が鳴り響いている。非常事態の発生を告げる鐘の音だ。これは、カマークの住民たちに聞かせるというものではなく、バンドゥ領全土に知らしめる為のもので、カマークの鐘を受けて、周囲の村でもすでに鐘が鳴ら…

悪役令嬢に恋をして #76 イベント:最終決戦その一

バンドゥに戻って、これからの事をゆっくりと考えるつもりだったリオンだが、周囲がそれを許してくれなかった。リオンが行方不明だった王子だったという噂は、あっという間に広まっていた。もちろん、あくまでも噂としてであり、広まる先も貴族たちに限って…

悪役令嬢に恋をして #75 動き出す者、動けない者

魔人との決戦に向けた準備は着々と進められている。やるべき事がはっきりとしたのだ。こうなれば、グランフラム王国の文武官には、それを着実に進める力はある。 ただ、この事と、決戦までにはまだ時間が掛かるという状況が、別の問題を人々の意識に上らせる…

悪役令嬢に恋をして #74 揺れる気持ち、変わらぬ気持ち

リオンが去った後の謁見の間は、国王夫妻がその場に居るにも関わらず、大騒ぎになった。行方不明だった王族が見つかった。しかも王女ではなく王子であったとなれば、騒がずには居られない。これがリオンでなければ、この場に居る者たちも、もう少し落ち着い…

悪役令嬢に恋をして #73 明らかになった真実

グランフラム王城の謁見の間は、異様な雰囲気に包まれている。反乱を噂されていたリオンが、近衛騎士団長を派遣するという異例な対応の甲斐があって、ようやく召喚に応じて王都にやってきたのだ。しかも、国王と王妃が揃って謁見するという、厚遇とも受け取…