月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

竜血の玉座 第73話 対竜王同盟

異世界ファンタジー 竜血の玉座

 ディートハルト率いる旧ナーゲリング王国軍の戦場は、ツヴァイセンファルケ公国領内。そう想定して動いている竜王軍だが、中々、旧王国軍を捕捉出来ないでいる。ディートハルトの側にツヴァイセンファルケ公国領内で積極的に戦うつもりはない。わざわざ敵地を戦場にする必要性など、あるはずがないのだ。
 ディートハルトは、とにかく味方と合流することを優先した。目指すのはツェンタルヒルシュ公国。そこに辿り着くまでは、出来るだけ味方の損耗を押さえなければならない。その為であれば敵に背を向けて逃げることも厭わない。意味のないプライドで、目的を見失うようなディートハルトではないのだ。
 それでも完璧に戦いを避けることは不可能。なんども小競り合いを繰り返すことになった。

「左翼を下げろ! 守備を固めるのだ!」

「敵が乱れている! 右翼! 攻勢に出ろ!」

 その戦いを隙のない指揮で乗り切ってきたディートハルト。彼一人の力ではない。ディートハルトと同じ王国五将のひとり、ヘルミュールの力もあってのことだ。
 二人はそれぞれ半数の五千を率いて、見事な連携で竜王軍の攻撃を退けてきたのだ。

「もうひと踏ん張りだ! この丘を抜ければ……ヘルミュール! 兵を後退させろ! 急げ!」

「後退!? 今この状況で!?」

 今は後退するタイミングではない。そんなことをすれば陣形は乱れ、敵に鋤を見せることになってしまう。ヘルミュールは、ディートハルトの判断を疑った。

「守りを固めろ! 守ることだけを考えろ!」

「サー・ディートハルト! もっと具体的な指示を! 状況が理解出来ない!」

 二人の将のやり取りを聞いて、すでに兵は混乱し始めている。これまでこんなことはなかった。二人の判断がズレることなどなかったのだ。

「敵左翼だ! 戦旗を見ろ!」

「戦旗……?」

 何故、ディートハルトはわざわざ旗を見ろなどと言ってきたのか。自分が求める具体的な支持を与えてくれないのか。それを疑問に思いながらも、ヘルミュールは言われた通りに、敵左翼は掲げている旗を見た。これまでは掲げられていなかった新たな旗を。

「……お、鬼王……鬼王なのか?」

 戦場で竜王旗を見たことは、ヘルミュールは一度もない。だから間違いなくそれが竜王の戦旗だとは思えない。思いたくなかった。

「来るぞ!」

 竜王旗を掲げた部隊は大軍とはいえない。せいぜい中隊程度の規模。その中隊規模の部隊が、敵陣から飛び出してきた。完全に突出して孤立。狙い撃つには絶好の機会だ。

「なっ!?」

 ディートハルトはそう判断し、大隊規模の部隊を突撃させた。だがその結果は、接触した瞬間に味方部隊の最前線が崩壊することになった。
 圧倒的な攻撃力。旧王国軍は初撃でそれを思い知らされることになった。

「ヘルミュール! 部隊をまとめて後退しろ!」

 ディートハルトの判断は早い。戦闘の継続は味方の犠牲を増やすだけと考え、後退を決断した。

「……間違った指示は出さないで頂きたい! 後退するのはサー・・ディートハルト! 貴方のほうだ!」

 ヘルミュールはディートハルトの意図を正確に読み取った。ただ後退するだけでは、それはすぐに敗走に変わる。敵の追撃を受けて、壊滅的な打撃を受けることになる。
 それを避けるには、敵を足止めする部隊、殿が必要だ。ディートハルトは自らその殿を努めようとしているのだ。

「突撃体勢! 敵前線中隊を殲滅する! 皆の者、続け!」

 それを知ったヘルミュールの動きも早い。ディートハルトからの次の指示を待つことなく、自部隊を率いて攻勢に出た。竜王がいるだろう敵中隊に突撃をかけた。

「ナーゲリング王国軍の意地を見せろ! 戦いはまだこれからだ! 最後に勝つのは我々だ!」

 たとえ自らはこの地で果てることになっても、最後は味方が勝つ。ヘルミュールは信じている。その為には王国最高の騎士であり、将であるディートハルトを生かさなければならない。決戦の地はここではない。ここであってはならないのだ。

「鬼王アルノルト! 我はナーゲリング王国五将の一人、ヘルミュール! この先は一歩も進ませない! 進みたければ私を倒してからにしろ!」

「その言や良し! 望み通り、勝負してやる! かかってこい、ヘルミュール!」

 足止めの為の挑発であることは明らかだが、アルノルトは勝負を受け入れた。戦えれば良いのだ。血沸き踊る、生死ぎりぎりの戦いであれば尚、良し。ディートハルトとの勝負はお預けになるかもしれないが、次の機会は必ずある。同じ五将の一人であるヘルミュール相手であれば、その時を待つことに抵抗もない。

「いざ、参る!」

「相手をしてやるのだ! 退屈させるなよ!」

 ヘルミュールとアルノルトの一騎打ちが始まる。その時には、ディートハルトは部隊をまとめて退却に移っていた。ヘルミュールが五千を率いて、前に出てしまったとなれば、残りの五千。自らが率いる部隊を引かせるしかない。この判断に躊躇いはない。ヘルミュールの勝利を願う気持ちはあっても、置き去りすることを躊躇っては、それだけ味方の犠牲が増えることを理解しているのだ。
 ツヴァイセンファルケ公国領内での戦いは、結果として、これが最後となった。

 

 

◆◆◆

 王国中央の情報は、さすがにオスティンゲル公国にも、その詳細が届くようになった。いくらアルノルトの配下が情報伝達を防ごうとしても完璧にそれを行うのは不可能。まして、誰が敵か明らかになった今は、公国の諜報組織間の争いは治まっている。アルノルトの配下だけでは公国の諜報組織全ての動きを止めることなど出来るはずがない。
 事態は急を要している。すぐにノルデンヴォルフ公国との戦いを終わらせ、ヴェストフックス公国、もしくはツヴァイセンファルケ公国との戦いに向かわなければならない。ヴィクトールはこう考え、ノルデンヴォルフ公国との交渉をまとめようとしている。竜王アルノルトの生存は未だ、彼には伝わっていないということだ。

「交渉の引き延ばしは止めてもらおう。そちらもすでに王国の状況は分かっているはずだ」

「分かっている。兄はどうやら討たれたようだ」

 交渉はトップ会談となっている。ヴィクトールが望んだことだ。家臣同士で話をまとめて、それから公国主が同意する。そんな普通の段取りを行う時間も惜しいのだ。

「であれば、どうしなければならないかも分かっているはず。負けを認めてもらおう」

「それは違う。私はまだ負けていない。だが、停戦には賛成だ。お互いに軍を引くことを拒否はしない」

「それが無駄な引き延ばしだと言っている。貴国は負けたのだ。こちらに領土を明け渡すか、臣従を誓うか。選択はこの二つだけだ」

 ヴィクトールも無条件で戦いを止めるつもりはない。侵攻してきたノルデンヴォルフ公国には、その報いを受けさせなければならない。最低でも領土の割譲。最高な結果はノルデンヴォルフ公国を配下に組み入れることだ。それで次の戦いが楽になる。

「だから、我々は負けていないと言っている。負けていないが、停戦は受け入れてやると譲歩しているのだ」

「ならば、最後まで決着をつけるか?」

「……そちらが望むなら、それでもかまわない」

 エルヴィンにとっては、ほぼチキンレース。強気な態度を崩すことなく、ヴィクトール側の譲歩を引き出すつもりだ。オスティンゲル公国が停戦を急いでいることは分かっている。はったりをかます意味はあると考えているのだ。

「まさかと思うが、次のナーゲリング王は自分だと考えているのではないだろうな?」

「……それが何故、まさか、なのだ?」

 兄のユーリウスが死んだのであれば、次のナーゲリング王は次男の自分。エルヴィンはこう考えている。妻のアンネリーゼと彼女に同調する家臣たちにそう考えさせられているのだ。

「ナーゲリング王国はすでに滅びた。貴公が座る玉座はない」

「それを決めるのはオスティンゲル公ではない」

「では今ここでナーゲリング王となれば良い。ただ我々は貴公に忠誠を誓うつもりはない。王国からは完全に独立する」

 エルヴィンがナーゲリング王を名乗りたければ名乗れば良い。オスティンゲル公国には何の影響も与えない。万が一、エルヴィンがヴェストフックス公国との戦いに勝利することになったとしても、その時はオスティンゲル公国がナーゲリング王国を滅ぼすだけだ。

「……即位はしかるべき場所と時期を選んで行う」

「そうか。その為にはまず我々との戦いを終わらせることだな。敗北を認めて領土を明け渡せ。貴国は我が国を侵略しようとした。その罪に見合った賠償を払わなければならない」

「それは受け入れられない」

 交渉はずっとこのようなやり取りの繰り返しだ。一方の当事者であるヴィクトールには、エルヴィンの対応が理解出来ない。時間の経過はノルデンヴォルフ公国に不利に働くだけのはずなのだ。

「公主。少しよろしいですか?」

「……何かあったのか?」

 ヴァイスが話に割って入ってきた。ヴィクトールは躊躇うことなく、彼に耳を貸す。どのような用件であろうと、不毛なエルヴィンとのやり取りよりは重要であることは間違いないのだ。
 エルヴィンに聞こえないように、ヴィクトールの耳元に口を寄せて、小声で話すヴァイス。

「……なんだと?」

 すぐにヴィクトールは驚きの声をあげた。

「間違いありません。ブラオの耳でも確認が取れました」

 そのブラオはヴァイスのすぐ後ろに控えていた。ヴィクトールの視線に頷きを返すブラオ。頷きは。得た情報に間違いはないという自信を示している。

「……引き延ばしは、これを待っていたのか?」

 ヴィクトールが問いを向けたのはヴァイスではなく、エルヴィンだった。

「……そうだとしたら?」

「おそらく嘘です」

 ここでブラオは自らの能力を明かすような発言をした。彼女は交渉の間ずっと、エルヴィンの声の調子で話した内容の真偽を判断していたのだ。

「そうか……どうやら本人と直接話すのが早そうだ」

「……それは失礼ではないか?」

 自分との交渉をほったらかしにして、別の用件を優先する。それは失礼だとエルヴィンは言っているのだが、これも本心ではない。交渉の中断は望むところ。それだけ時間が稼げると考えている。

「そんなことはない。今こちらに向かっているのはイグナーツ・シュバルツァー。シュバルツァー家の人間だ。貴公との交渉に関係がある可能性のほうが高い」

「イグナーツ? 彼は死んだ」

「……生きている事を知らない。貴公は本当にノルデンヴォルフ公なのか?」

 イグナーツの生死は、ノルデンヴォルフ公国にとっての重要事項。それを知らないエルヴィンにヴィクトールは呆れた。ただこれは仕方のないことだ。

「仕方がないでしょう? エルヴィン殿は王都にいなかった」

「お早い到着だ」

 ソルの言う通り、エルヴィンは王都にいなかったのだ。情報が伝わっていなくてもおかしくはない。バルドルが伝えなかったという事実を除けば。

「急いで来ましたので」

「急がなければならない用件ということか。すぐに話してもらえるのかな?」

「もちろん。終戦交渉に来ました。それと同盟交渉も」

「それはもう進めている。ノルデンヴォルフ公が受け入れてくれないだけだ」

 そうであることはソルも分かっているはず。シュバルツァー家から送り出されてきたのであれば、という条件だが。

「ですので、交渉担当を交代します。これ以後は私が交渉窓口です」

「なんだと!? そんなことは許さない! 誰の指示だ!」

 ソルが交渉窓口になることを拒否したのはエルヴィン。それはそうだ。彼はそんなことは許していない。これから先も許すつもりはない。

「あえて誰かを言えば、ルシェル殿です」

「姉上にそんな権限はない!」

「権限がないのは貴方です。ルシェル殿は王国軍を率いてノルデンヴォルフ公国に入りました。王国軍の支持はルシェル殿にあります。またシュバルツァー家も、貴方を除いて、ルシェル殿を支持します」

 エルヴィンが交渉窓口の交代を受け入れないことは分かっていた。受け入れざるを得ない、受け入れなくてもオスティンゲル公国と交渉が出来る準備をしてきているのだ。

「……馬鹿な」

「ああ、一応、伝えておきます。どうやら私とは書類上だけの兄弟ではなく、叔父だったらしくて、継承権は貴方と同等です」

「そ、そんな……」

 ソルの説明に動揺するエルヴィン。嘘に騙されているのだ。実際にはベルムントの子であるユーリウスが後を継いだ時点で、ソルの継承権はエルヴィンより下になっている。
 継承権などソルにとってはどうでも良いこと。エルヴィンに、自分が上位者ではないと分からせることが目的なのだ。

「あくまでも認めないというのでしたら、どうぞご自由に。こちらはこちらでオスティンゲル公国と交渉します」

「ノルデンヴォルフ公は私だ!」

「ですから、私は貴方のノルデンヴォルフ公国の交渉担当ではなく、今頃、ルシェル殿の下でまとまっている新ノルデンヴォルフ公国の依頼を受けて仕事をしに来たと言っているのです」

 エルヴィンが受け入れようと受け入れまいと、最終的にはどうでも良いのだ。エルヴィンに従って、オスティンゲル公国に侵攻した軍もどうでも良い。まったく関係ないものとして交渉をまとめるだけだ。

「……嘘だ」

「貴方との話し合いは時間の無駄ですので、納得できないのなら出て行ってください。ヴィクトール公もよろしいですか?」

「まったく問題ない。ただ……叔父? それはつまり」

 ルシェルは、彼女に従うノルデンヴォルフ公国はエルヴィンを見捨てた。ヴィクトールにとって、望ましい状況だ。ルシェルのほうが交渉が上手くまとまることは分かりきっている。少しくらいの譲歩も問題ない。彼女は信頼出来る相手なのだ。

「その話はあとで。長くなりますので。まずは交渉の話です。これはすぐに終わるはずです」

「そういう内容なのかな?」

 ルシェルはかなり不利な条件でも受け入れる用意がある。こういうことだとヴィクトールは、ソルの言葉を受け取った。完全に間違ってはいないが、正しくもない。

「これを聞けば長引かせることは出来ないということです。竜王様は生きています。一連の出来事は、すべて竜王様の策略。ヴェストフックス公国もツヴァイセンファルケ公国も竜王様の命令で動いています」

「……そういうことか」

「納得するのは早いです。一連の出来事は竜王様暗殺計画も含めてのこと。皆、踊らされていたのです」

「…………」

 その踊らされた中にはヴィクトールの父親もいる。踊らされ、正気を失い。息子であるヴィクトールに殺されることになった父親もその一人なのだ。

「即時、終戦を。そして竜王様の軍と戦う準備を。王国軍も、まだ領土に残っているノルデンヴォルフ公国の軍も行動を共にします。まだ無事であれば、ツェンタルヒルシュ公国軍もです」

「分かった。すぐに言う通りにする」

 終戦条件などどうでも良い。竜王と戦うとなれば、少しでも味方は多い方が良い。自国だけで闘えると考えるほど、ヴィクトールは思い上がっていない。

「さて、こちらの交渉はまとまりました。貴方はどうしますか? ルシェル殿の考えに従えないのであれば、敵ということになります。こちらはそれでもかまいません」

「……私は……私は……」

 事態の重大さは十分以上に理解している。だが、エルヴィンは決断出来ない。一人で決断することが出来なくなっていた。

「ああ、奥方には別に使者が向かっております。早く決断して援軍を向かわせないと、ツェンタルヒルシュ公国は滅ぼされてしまいますから」

 その理由はソルには分かっている。

「……分かった。軍を引く」

「軍を引く、ですか?」

「……姉上に従う。引き連れた者たちも同じだ」

 この瞬間にノルデンヴォルフ公国の実権はルシェルに移ることになった。エルヴィンの考えに背く者などいない。そんな真似をすれば、帰る家を失ってしまうのだ。

「結構です。では、すぐにそうしてください」

 返事をすることなく、そそくさとこの場から離れて行くエルヴィン。

「……ソル殿はこの先、どうされるおつもりですか?」

 これを聞いてきたのはブラオ。彼女はこれまでのソルの発言に不穏なものを感じていた。シュバルツァー家の人間と言いながら、依頼を受けてここにいると言う。それ以上に「竜王様」という呼び方が気になった。

「……決めていません。この役目を終えてから考えるつもりでしたけど、結論が出るのか……」

「竜王に従う可能性もあるのですね?」

「それが竜王様の下で貴方たちと戦うことを言っているのであれば、それはありません。私は竜王様のやり方に、まったく納得していません。協力する気にはなれません」

 アルノルトは無用な戦乱を引き起こした。それによって多くの人が命を失った。死ぬ必要などなかった多くの人だ。さらに多くの人を殺す策略に、ソルは加担する気にはなれない。

「でも、敵にもなれない?」

「……家族だという思いは消えていませんので」

「家族……ですか……」

 この想いはソル以外には分からないことだ。バラウル家には、仕えていた人たちも恐怖を感じていた。恐怖に縛られて、仕えていたのだ。親しみなんて感情は、まったく持っていない。

「ブラオ、そこまでだ。今、彼に何を話しても気持ちは変わらない。これで変わるようなら、悩むことなどないはずだ」

 ヴィクトールはこれ以上の説得を止めさせた。今、ソルに何を話しても気が変わることはない。下手な話をして、決裂を決定的にするリスクを負う必要はないと考えたのだ。

「……分かりました」

「今後については?」

「公都に戻られる必要があるのでしたら、ご自由に。ノルデンヴォルフ公国との条約が成立するまで戦う準備をしないのは愚かなことですから。ここでの話はすぐに伝えますので、ノルデンヴォルフ公国側から使者を送ることになるでしょう」

 すぐに竜王軍との戦いの準備を進めなければならない。オスティンゲル公であるヴィクトールは、かなり忙しくなるのは、ソルにも分かる。無駄な待ち時間など作るべきではない。

「……分かった。そうさせてもらう。ちなみに中央の情勢についてはどこまで把握しているのかな?」

「知っていることは全てお伝えします。そこまでがこの任務だと思っていますので」

「では、頼む」

 アルノルトの軍が不利になるかもしれない情報を伝えることは、ソルの中では出来ないことではない。ノルデンヴォルフ公国の使者として、ここに来たということで、それは分かっている、とはヴィクトールは思わない。ソルの線引きはそんな単純ではないだろうと考えている。
 それを知ることが、もしかしたらこの先、役に立つかもしれない。これもヴィクトールにとっては戦いの準備なのだ。

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