月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-四季は大地を駆け巡る

四季は大地を駆け巡る #30 心の傷

陽もすっかり落ち、いつもであれば静けさに覆われているはずの野営の地も、今日に限っては喧噪があたりに響いている。そこかしこに篝火がたかれ、その周りに集まった兵たちが祝宴を楽しんでいるのだ。 自分の手柄を声高々に自慢している者、仲間と共に戦いを…

四季は大地を駆け巡る #29 いつか来る日の為に

「「「「せい! やっ!」」」」 貧民区に子供たちの掛け声が響いている。 「最後!」 「「「「せい!」」」」 「よし、今日はここまで!」 「「「「はい!」」」」 ギゼンから終了の声がかかったところで子供たちは木剣を腰に差して、駆け足で彼の前に集まっ…

四季は大地を駆け巡る #28 精霊たちとの繋がり

体が回復してきたところでヒューガはセレに外出の許可を取った。外出といっても遠くまで出かけられるはずはなく、出歩いて良いのはエルフの都を囲む結界の中だけだ。 まったく問題ない。ヒューガが寝ている間に大森林の季節は冬に変わっていた。許可の有無に…

四季は大地を駆け巡る #27 ドュンケルハイト大森林

ヒューガは深い森の中をセレの先導で歩いている。この場所に来て、すでにどれだけの日数が経っているのか。それを忘れてしまうほど、連れられてきたここはとんでもない場所だった。 最初に大森林を見た時はその光景に圧倒された。深い崖のすぐ下には緑の草原…

四季は大地を駆け巡る #26 それぞれの想い:ヒューガとクラウディア

目が覚めた頃には日がすっかり昇っていた。こんな時間まで寝ていたのは久しぶりだ。慣れない長旅でさすがに疲れていたのかもしれない。 王都を出て一カ月。かなりパルス王国の東のはずれに近づいてきている。乗合馬車など、出来るだけ速く移動できる手段を使…

四季は大地を駆け巡る #25 影の支え

クラウディア第一王女の部屋の隣。そこに小さな隠し部屋がある。本来の目的は刺客などから逃れるために一時的に隠れる為の場所だが、今は別の目的で使われていた。 彼女を監視するための部屋だ。その部屋で今、小さな騒ぎが起きている。見張り役たちはクラウ…

四季は大地を駆け巡る #24 別れの時

ギルド長が自分の執務室に戻ると、セレがソファーに座って、ゆったりとお茶を飲んでいた。何を勝手に、なんてことをギルド長は言わない。こうしたことはこれが始めてではないのだ。 とはいえ、セレがギルドを訪ねてくるのは久しぶりのこと。その久しぶりの訪…

四季は大地を駆け巡る #23 すれ違う想い

ヒューガは、物事が一気に慌ただしく動き出しているのを感じていた。 冬樹は貧民区に行ったきり。ギゼンの下で鍛錬に明け暮れている。かなり厳しい鍛錬であることは、すっかりやつれた冬樹の姿で分かる。それでも冬樹自身は充実感を覚えているようで、会うた…

四季は大地を駆け巡る #22 お父様にご挨拶をすることになりました

勇者の呼び出しを受けたと思ったら、今度は国王。ヒューガは騎士に案内されて謁見の場に向かっている。 このタイミングで何故、国王に呼ばれたのか。もしかするとディアとのことがバレたのかもしれないと考えて、ヒューガはかなり緊張している。 案内された…

四季は大地を駆け巡る #21 これがものを頼む態度だろうか?

ヒューガは勇者から呼び出しを受けた。無視したいところだったが、それを伝えに来たのはローズマリー王女の侍女。誘いを無視すれば、それはローズマリー王女に無礼を働くことになる。 今更、彼女に嫌われることを恐れているわけではない。今は大事な時期。必…

四季は大地を駆け巡る #20 ご都合主義ってこういうことか

「やっとだ。やっと、この日が……きたぁーっ!!」 「どこの芸人だ、お前は?」 貧民区に着いたところで冬樹が雄叫びをあげている。冬樹がはりきっているのは、今日がいよいよジャンたちに剣術を教える日だからだ。 盗賊討伐任務で王都を離れて、それから戻っ…

四季は大地を駆け巡る #19 再会の時

グレゴリー大隊長のもとで行われる鍛錬は、盗賊討伐任務を最後に終わることになった。ヒューガはともかく、冬樹と夏のことを考えて、本当はもう一度か二度、任務に同行させようとグレゴリー大隊長は考えていたのだが、盗賊討伐任務の内容の濃さを考えて、無…

四季は大地を駆け巡る #18 初めて会ったエルフはエロかった

盗賊たちに囚われていたであろう女性を助け出したヒューガ。その女性の姿があまりに卑猥で困惑している。 胸の周りの布はほぼ先端だけを隠している状態。胸の谷間は丸見えだ。おまけに腰の布も、ちょっとしたはずみで奥の方まで見えてしまいそう。 そのまま…

四季は大地を駆け巡る #17 実戦を経験した

剣と剣が打ち合わされた音が響く。ヒューガが振り下ろした剣は、グレゴリー大隊長の剣に阻まれた。慌ててバックステップで間合いをとる。その空間にグレゴリー大隊長の脚が伸びてきた。組み合ったところでヒューガの腹を蹴り飛ばそうとしたのだ。 「ふん。避…

四季は大地を駆け巡る #16 周囲の思惑

王都を出て、近くの森に入る。夏が一人でギルドの依頼をこなすのはこれが初めてのことだ。その表情からは強い緊張が見て取れる。 夏はこの世界に来てから、寝るとき以外はいつも誰かと一緒にいる。元の世界ではそんなことはなかった。家に帰っても誰もいない…

四季は大地を駆け巡る #15 巻き込まれは誰のせい?

ヒューガは早めにギルドの依頼を切り上げて貧民区に向かうことにした。夏と冬樹も一緒。今日は二人を子供たちに紹介する予定なのだ。 いつもの細い路地を通り抜け、三人は貧民区にたどり着く。 「ええー! ここっ?」「うわっ!」 夏も冬樹も周囲の様子を見…

四季は大地を駆け巡る #14 クラリスの秘密

朝食を終えた後は剣術の鍛錬の時間。いつも通り、ヒューガたちはグレゴリー大隊長が待つ城の外縁にある演習場に向かった。 ただ今日の鍛錬はいつもと少し趣向が違っていた。ヒューガたちが並ぶ向こう側、約五十メートル先に三十人の兵が隊列を組んで並んでい…

四季は大地を駆け巡る #13 囚われの勇者

ヒューガが早朝の自主練を終えて部屋に戻ると、すでにクラリスが中で待っていた。部屋の中に漂う良い香り。お茶の香りだとすぐにヒューガにも分かる。クラリスが用意したものだ。 「お疲れ様でした」 部屋の中央にあるテーブルに、入れたお茶を置くクラリス…

四季は大地を駆け巡る #12 ギルド長に会った

ヒューガたちは無事にグレゴリー大隊長から傭兵ギルドの依頼を受けることを許可してもらえた。 最初はアインも同行。といっても別に危険な依頼ではない。そもそも、Fランクの彼等が受けられる依頼は雑用かせいぜい薬草採取くらいのものだからだ。 その程度…

四季は大地を駆け巡る #11 それぞれの視点:グランとヒューガ

「信じられないわ。あの日向って子は何を考えているのでしょう?」 「美理愛、少し落ち着きなよ」 「落ち着いていられないわよ。せっかく私たちが貧しい人の為に一生懸命頑張っているのに。優斗は何とも思わないの?」 ミリア殿がめずらしく声を荒らげておる…

四季は大地を駆け巡る #10 それぞれの視点:美理愛とヒューガ

私たちの召喚が公にされてから頻繁に街の視察に出るようになった。勧めてくれたのは師匠であるグランさんとアレックスさん。 勇者の活動は民によって支えられている。その民の心を掴むのは今後の為にも大切なことだという話だった。確かにそうだと思う。私た…

四季は大地を駆け巡る #9 ようやくギルド訪問が実現しました

勇者召喚の事実が正式にパルス国内外に発表された。つまり外に出しても恥ずかしくないだけの実力を勇者たちが身につけたということだ。 日向たち三人は、クラリスとグレゴリー大隊長からそれぞれ魔法と剣を教わるようになってから、二人とはまったく顔を合わ…

四季は大地を駆け巡る #8 違いは比べなければ分からない。

王城の敷地の外れにある林の奥。三人の為にクラリスが魔法の鍛錬場として見つけてくれた場所だ。三人も薄々気が付いているが、日向たちが行っている鍛錬は特殊な内容。それを人に知られないようにしようと思えば、周りを木々に囲まれたこの場所は持ってこい…

四季は大地を駆け巡る #7 救いの女神、現る

日向は次の日も、また次の日も図書室に行ったがディアと会うことは出来なかった。それでも諦めずに図書室に通い続け、彼女が現れるのを待ちながら書物を読みあさる。 これが毎日のトレーニングと同じく、日向の日課となった。 始めの数日こそトレーニングに…

四季は大地を駆け巡る #6 目指す場所は遙か遠く

窓から差し込む朝の光で目を覚ました。日向にとってはいつもの目覚めだ。ただ目覚めてからの行動はこれまでとは違っている。 ベッドから降りて用意しておいたトレーニングウエアに着替える。水で洗ったそれはまだ少し湿っていたが、他に運動に適した服はない…

四季は大地を駆け巡る #5 落ちこぼれたち始動

剣術の鍛錬は午前中で終わり。今は日向が楽しみにしていたディアから魔法を教わる時間だ。だがせっかくの機会を日向は楽しめていない。難しい顔をして何かを考え込んでいる。 日向がそんな様子だと当然、ディアは心配になる。 「どうしたの? 難しい顔して」…

四季は大地を駆け巡る #4 世界の片隅で行われた戦いが世界を変える

情報収集活動を開始してわずか一日。それだけでパルス王国に問題があることが分かってしまった。まだまだ上っ面の情報だけだろうが、さらに深く調べてもその分だけ不安が大きくなるだけと分かっている。 生活の目処がまったく立っていない状況でこれだ。巻き…

四季は大地を駆け巡る #3 A boy meets a girl.

日向たちは次の日には王に図書館への入館の許可を求めた。王との謁見が許されたわけではない。食事を運んでくれた侍女と思われる人に伝えてくれるように頼んだのだ。 半日程待たされて、ようやく許可が出た。王城内の第一図書室への入館を許可するというもの…

四季は大地を駆け巡る #2 選別の時

国王との謁見を終えた日向たち五人が案内された部屋には、黒いローブをまとった男性が待ち構えていた。杖を持ったその姿は誰が見ても魔法使いだ。 「よくまいられた異世界の方々。儂はパルス王国の宮廷筆頭魔法士を務めるグランという」 見た目の通り、その…

四季は大地を駆け巡る #1 テンプレ召喚

気が付くと見慣れない部屋に立っている自分がいた。窓ひとつない部屋は薄暗く、最初の内は中の様子がまったく分からなかった。分かっているのは自分がいたのは公園で、建物の中ではなかったという事実。何故、このようなことになっているのか彼には理解出来…