月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

悪役令嬢に恋をして 第121話 第二幕の始まり

異世界ファンタジー 悪役令嬢に恋をして

 初戦こそ、グランフラム王国側の大勝という形で決着がついたが、その後の戦いは一進一退という状況だ。
 グレートアレクサンドロス帝国は、本来の戦法に戻して、グランフラム王国軍の陣地に、激しい砲撃を行った。だが、初めこそ、大いに混乱したグランフラム王国軍だったが、やがて落ち着きを取り戻すと、対帝国戦用の、魔法士部隊による防御陣形を構築。火属性防御魔法の同時展開により、砲撃の多くは、空中で爆発し、王国軍に被害を与える事が少なくなった。
 帝国側は、それに対して、これまで以上の砲撃を、王国軍に撃ち込んだのだが、壁のように展開する火属性防御魔法では、数を増やした意味はなく、ただ砲弾の消耗を増すだけだった。そうなると、帝国側も慎重に為らざるを得ない。砲弾には限りがある。ただ花火の様に、空に火花を散らす為だけに、使うわけにはいかないのだ。
 結局、大砲による攻撃は鳴りを潜め、初戦と同じような戦いが展開される事になる。それも、帝国側が慎重な為に、規模がかなり小さくなって。
 これでは、決定的な勝機など、どちらにも訪れない。ただただ、同じ様な、攻防を繰り返すだけだ。

「……動かないな」

 アーノルドの言葉は、帝国軍を指している訳ではない。不思議の国傭兵団の事だ。不思議の国傭兵団は、初戦以降、目立った動きを見せていない。この事も、戦闘が膠着している原因となっていた。

「アレクサンドロス側は、完全に待ち構えております。さすがに、難しいのではないでしょうか?」

 帝国側が、自軍の部隊を小出しにしているのは、不思議の国傭兵団を警戒しているからだ。大軍を前線に展開しては、混戦となって、不思議の国傭兵団に良いように、やられてしまう。
 そこで、すぐに撤退出来る様に、場合によっては、味方の犠牲に躊躇う事なく、銃による攻撃を行うつもりで、あまり多くない数を、前線に送る様にしているのだ。

「事態の打開は難しいか」

 アーノルドには少し焦りがある。オクス王国とハシウ王国の軍は、南部で帝国の行政府軍の足止めをしていたはず。それが、この戦場に居るという事は、帝国の行政府軍も、行動の自由を得たという事になる。帝国軍の兵数が、更に増すような事になれば、戦いは、王国にとって、益々厳しくなる。

「それは、帝国も同じです」

 帝国側にも膠着状態を打開する手はない。大砲の攻撃を防げている状況が、ランバートにこれを言わせた。

「南部からの援軍を心配しているのだ」

 ランバートは、自分の懸念を分かっていないと考えたアーノルドだったが。

「援軍が向かっているのであれば、不思議の国傭兵団が動くのではないですか?」

 ランバートは、分かっていて、その上で、不思議の国傭兵団が何とかするだろうと考えていた。無責任のようだが、この考えは正しい。南部の動きを、リオンが掴んでいないはずがない。帝国の行政府軍が、戦場に向かっているのであれば、各個撃破の絶好の機会と、迎撃に向かうはずだ。

「もしかして、それを待っているのか?」

 不思議の国傭兵団が動かないのは、南部から、帝国の援軍が近づくのを待っている可能性もある。ただ、これは間違いだ。リオンの目的は、帝国軍を打ち破る事ではない。マリアとランスロットを殺すことだ。それが出来る絶好の機会が来るのを、リオンは待っているだけ。それによって、グランフラム王国軍の犠牲が増えようが、知ったことではないのだ。

「分かりません。ただ、八万が九万になっても、そう気にしないのではないでしょうか?」

「確かにそうだな。しかし、そうなると、どう戦況を動かすかだ。何か、きっかけが欲しいな」

「無理は禁物です。持久戦は、けっして、我が方に不利にはなりません」

「そうだな」

 戦場では焦りは禁物。二人の考えは正しい。ただ、それとは別に、二人には間違っている考えがある。きっかけは、待つものではなく、作るものなのだ。
 その作られた、きっかけが、やってくる。

 

◇◇◇

 「左翼の再編を急げ! 陣形を固めろ!」

 帝国軍の指揮官が、焦った様子で、左翼の陣形の再構築を命じている。実は、それは、グランフラム王国軍も同じだ。
 新たな軍勢は、南部ではなく、北部から現れた。北部に領地を持つ貴族家軍だ。帝国にとって、援軍であるはずの軍勢だが、帝国は、貴族家軍の来着を喜んではいない。そんな命令を発した覚えはなく、貴族家の勝手な行動だ。
 それだけではない。今も、帝国に臣従しているのかは、かなり怪しい状況だ。人質とした家族が、リオンの組織の手にある事は、すでに分かっているのだ。
 グランフラム王国に寝返っているのであれば、帝国にとって敵の増援となる。それも三万を超える軍だ。帝国は無防備に、側面を晒す事を恐れて、慌てて、陣形の再編を行っているのだ。
 貴族家軍が現れた方向、北へ備える為に、兵を回して、左翼の守りを厚くする。グランフラム王国が居る正面にも備える必要があるので、全体的にかなり左翼へ偏った陣形だ。
 その分、薄くなった右翼へ、不思議の国傭兵団が攻勢をかけた。しかも、陣形の再編中という最悪のタイミングで。

「左翼から兵を戻して! 銃兵隊はどうしたの!?」

 右翼で、マリアが取り乱している。それだけ、不思議の国傭兵団の突撃が凄まじいという事だ。
 初戦は、五万対二千の戦いだった。だが、初戦で多くの犠牲を出し、更に、左翼に多くの兵を割いた今は、二万五千対二千。まだ十倍以上の差があるとはいえ、半分に縮まっている。
 しかも、不思議の国傭兵団の攻勢は、初戦とは違い、マリアを討ち取る為の本気の突撃だ。

「敵の足を止めろ! 本陣への接近を許すな!」

 親衛隊長であるギルが激を飛ばしているが、こんな命令を出されても、本陣となる親衛隊を除けば、足止めに回るのは、二万の兵だ。しかも、親衛隊よりも遥かに劣る一般兵。不思議の国傭兵団に抗えるはずがない。

「決死隊だ! 他の兵を下げて、決死隊を前に出せ!」

 爆弾を抱えての突撃。これも、せいぜい時間稼ぎにしかならない。不思議の国傭兵団に届く前に、リオンの魔法で、吹き飛ぶだけだ。
 ただ、今、右翼の帝国軍に必要なのは、その時間だ。左翼に割いた兵が戻ってくる時間を求めていた。
 右翼の前線で、いくつかの爆発が巻き起こる。虚しい突撃が、為された証だ。

「左翼からの兵はまだなの!?」

「マリア様! 左翼への移動を! こうなれば、傭兵団を引き込みましょう!」

 アランが作戦の提案をしてきた。左翼からの兵が来ないなら、こちらから左翼に移動すれば良い。うまくすれば、不思議の国傭兵団を、自軍の懐深くに、引き込む事が出来る。逆に包囲殲滅が出来るかもしれない絶好のチャンスだ。

「そうね! そうしましょう!」

「では、移動を!」

「ケリをつけるわ! 合図を出して! 一気に包囲よ!」

「はっ、はい!」

 アランの作戦に勝機を見て、マリアが息を吹き返した。リオンを討ち取る事が、今回の戦いでのマリアの目標だ。それを果たす絶好の機会が訪れたと考えたマリアは、勝負をかけることにした。
 マリアが命じた合図。宙に、これは本当の花火が舞い上がった。ただ火花を散らすだけの花火が、続けて三発。
 それに続いて、銃の音が、周囲に鳴り響く。それはグランフラム王国軍の陣地から聞こえてきた。
 不思議の国傭兵団の先頭をかけていたリオンが、騎獣から転がり落ちる。背後からの不意打ちを受けて、避ける事が出来なかったのだろう。

「よし! 一気に討ち取るわよ! 逃がさないように包囲して!」

 リオンが討たれる様子を見たマリアは、大喜びで指示を出す。移動しかけていた親衛隊を引き止め、他の部隊にも命令して、不思議の国傭兵団の包囲に移った。
 その包囲の輪に、陣地を飛び出した、グランフラム王国の兵士も加わっていく。

◇◇◇

 左翼で起きた出来事に、グランフラム王国の本陣は、大混乱に陥った。不思議の国傭兵団が、帝国の陣形が乱れた隙をついて、一気に攻勢をかけた。帝国右翼は、その攻勢を防ぎ切れずに、押し込まれていく。
 そこで、まさかの瞬間だ。自軍の第一陣から、銃を放つ音が聞こえ、不思議の国傭兵団の兵士が何人か、騎獣から転げ落ちた。どうやら、その中の一人はリオンだ。
 その瞬間に、アーノルドの頭は真っ白になり、何が起こったのか、理解出来なくなった。

「……裏切り?」

 ランバートの口から漏れた言葉。アーノルドの頭にも同じ言葉が、浮かんでいたのだが、それを認めたくなくて、思考を停止させたのだ。

「……そんな馬鹿な」

 動揺は消えていないが、言葉を発する事は出来るようになった。何の解決にもならないが。

「かなりの兵士が、アレクサンドロスに合流して行きます。一万にもなるのではないでしょうか?」

 いくつもの陣地から兵士が飛び出して、前線に向かっていく。それが不思議の国傭兵団への援護であるとは思えない。残った兵や、指揮官の制止の声が、そうでない事を示している。

「陛下、急ぎ、ご命令を! 裏切った兵士を討てと!」

「それをすれば、軍は崩壊する。誰が裏切っているか、分からないのだ」

 味方の裏切りを吹聴して、敵を混乱させる策だってある。誰が敵か味方か、はっきりしない状況で、討てといっても、大混乱に陥るだけだ。

「それは分かります。しかし、このままでは傭兵団を見捨てる事になりませんか?」

「見捨てる事などしない。出陣の準備をしろ。前線に向かう!」

「……はっ」

 誰が裏切っているか分からない状況で、前線に出るのも、危険であると思うが、それが事態の収集に繋がる可能性もある。ランバートは、それに賭けることにした。
 グランフラム王国の近衛騎士団は、速やかに出陣の準備を整えると、前線に向かって、動き出した。

 

◇◇◇

 不思議の国傭兵団の周囲を、帝国軍の兵士が囲んでいく。その数は、時間の経過と共に、どんどん増えていった。裏切ったグランフラム王国軍の兵士、そして、リオンを討つ好機が訪れたと知ったランスロットが、左翼から兵を送り込んでいるのだ。
 逃がさないようにと、急いで包囲に厚みを持たせようと、焦っている帝国軍。その焦りの甲斐があって、包囲網は完成仕掛けている。
 後は、逃がさないように、リオンを討ち取るだけ。

「もう逃さないわよ! ここで決着を付けてあげるわ!」

 銃に撃たれて、地面に座り込んだままのリオン。そのリオンに向かって、マリアが、少し離れた位置から叫んでいる。

「それとも大人しく降伏する!? 私に忠誠を誓うというなら、考えてあげても良いわ!」

 すっかり、勝利を確信しているマリア。喜悦を隠し切れない様子で、降伏を促している。

「……お前、馬鹿か!? お前みたいな馬鹿な女に、忠誠なんて誓える訳ないだろ!?」

 そのマリアに向かって、リオンが嘲る言葉を発した。

「何ですって!? 強がりもいい加減にしなさい!」

 リオンの言葉に、怒気を発したマリアだが、それでも、まだ余裕はある。すぐに消える事になる余裕だが。

「取り敢えず、仕分けは終わった。一万ってところか。思っていたより少なかったな」

「……何ですって?」

「聞こえなかったのか!? 敵味方の仕分けは終わったと言った! マーカスに従って、グランフラム王国を裏切ったのは一万ってところだ!」

「……まさか、知っていたの?」

 マーカス騎士兵団長の裏切り。これは、マリアのとっておきの切り札だ。親衛隊の面々にも知らせずにいた、秘中の秘のはずだった。

「お前は隠しているつもりでも、裏切った側が隠しきれていない。グランフラム王国への背信行為をしていれば、それはグレートアレクサンドロス帝国側の人間って事だろ?」

 マリアは秘密にしているつもりでも、マーカスの行動が裏切りを示していた。誰にも言わなければ秘密を守れる訳ではない。最後の最後まで秘密にしておきたければ、それまでは裏切り行為などさせてはいけないのだ。

「今更、分かったからって、それが何よ! どうせ、貴方はここで死ぬの!」

「死ぬのはお前だ! 俺が何故、ここまで殺すのを待ったと思っている!?」

「待ったですって!?」

「ああ、そうだ! 殺すだけなら、いつでも出来た! それをしなかったのは、お前は大勢の人間が見守る中で殺すべきだと思ったからだ! ここがお前の処刑場! 公開処刑の場だ!」

 暗殺などの手段を使って殺す事も出来た。だがリオンは、それでは納得出来ない。マリアだけは、ヴィンセント以上の苦しみを与えて殺したかったのだ。
 皇后という、頂点といえる地位から奈落の底へ。大勢の人々が見ている中で、自分の無力さに絶望させて。これがリオンが考えた復讐の手段だった。

「私を殺せると思っているの!? それこそ馬鹿じゃない!?」

 自分は死なない。全く根拠のない思い込みを、まだマリアは持っている。

「お前、もしかして、まだ自分が主人公だと思っているのか?」

 やや踏み込んだ質問の仕方を、リオンは行なった。

「当たり前じゃない! 私は、異世界から召喚された勇者なのよ!」

 頭に血が上っているマリアは、リオンの質問に込められた意味に気付かなかったようだ。そうであれば、別にリオンは構わない。どうしても自分の正体を教えたいわけではない。

「勇者を名乗る力もないくせに! それだけの大口を叩くのであれば、俺と一対一で勝負してみろ!」

「何ですって!?」

「勇者なんだろ!? だったら、その力を証明してみせろ!」

 マリアを挑発するリオン。自分は勇者だと、未だに思い上がった事を言っているマリアに思い知らせるには、この方法が一番だと思っての事だ。

「後悔するんじゃないわよ!?」

 まんまとリオンの挑発に乗ったマリアは、それでも、いきなり斬りかかるような真似はせず魔法の詠唱を始めた。マリアが保有する魔法の中でも最上級の、究極魔法フュージョンだ。
 保有といってもリオンやアリスと違って、マリア自身が複数属性魔法を扱う訳ではない。他人の魔法を融合させて、新たな属性を生み出す技だ。
 親衛隊の隊員から火属性と、風属性の魔法が発せられる。それはマリアの頭上で渦を巻き、そして――消えた。

「えっ!?」

 マリアの口から驚きの声が漏れる。魔法は失敗に終わったのだ。

「勇者が聞いて呆れる! まさか、魔法も扱えないのか!?」

 リオンの口から嘲笑の声が発せられる。

「そんな訳ないでしょ! 見てなさい!」

 自分を攻撃する為の魔法が詠唱されるのを、ただ見てろというのは随分と勝手な話だが、リオンは言われた通りに、何もせずに詠唱が終わるのを待った。
 マリアが唱えているのは水属性魔法、マリア自身の属性魔法だ。だが、結果は同じようなものだ。魔法が発動する事はなかった。

「……どうして? 何が起きているのよ!?」

 まさかの事態に、マリアが焦った様子で叫んでいる。この世界で一番の魔法の使い手だったはずの自分が魔法を使えないなど、マリアには信じられない。

「だから馬鹿だと言ったんだ! 火薬ばかりに頼って、水を避けていたお前に、どうして水属性魔法が扱える!? 嫌われている相手の手助けをする程、世界は優しくない!」

「嘘……」

 嘘である。マリアが精霊に嫌われており、その為に魔法の力が著しく衰えているのは事実だが、それは火薬のせいではない。鉄の算出、製造の為に自然を破壊した事を恨まれているのだ。
 更に精霊に愛されているリオンを攻撃しようとした事で、精霊たちは、完全にマリアに従う事を拒否、これで魔法が一切発動しなくなっている。
 火薬のせいだと、リオンが嘘を言っているのは、銃火器を使う事への拒否感を人々に植え付ける為だ。

「魔法が使えないなら剣で戦うか? 俺は一向に構わない」

「…………」

 剣であれば勝てるのか。マリアは頭の中で、懸命に考えている。数少ないリオンの戦いの様子を頭に浮かべた時、マリアはようやく冷静になれた。リオンが、どれほど強いのか、今更ながら思い出したのだ。

「今がチャンスよ! 撃ち殺しなさい!」

 マリアの口から、自軍の兵に対する命令が発せられた。あまりの卑劣さに、兵士たちが咄嗟に反応出来なかった程の内容だ。

「早くしなさい! 全員を撃ち殺すのよ!」

 重ねてマリアが命令を発する。これでようやく兵士たちも反応し、動き出したのだが、この空いた時間をリオンが見逃すはずがない。
 目がくらむほどの閃光が空を切り裂く。それと同時に、腹の奥まで震わすような雷鳴が、辺りに響き渡った。

「……嘘でしょ?」

 それが収まった時。不思議の国傭兵団を囲んでいた帝国軍の銃兵、数百人が、地面に倒れ伏して動かなくなっていた。
 マリアは知らない。東方で、リオンが畏敬の念を込めて呼ばれている【雷帝】という通称を。その意味を。

「恐れるな! 敵はたった二千だ! 取り囲んで、一斉に攻撃しろ!」

 呆然としているマリアに代わって、ギルが激を発する。不思議の国傭兵団は二千。それを取り囲んでいる帝国軍は四万から、更に増えようとしている。
 どれだけリオンが強くても、数の力で押しきれないはずはない、とギルは考えたのだが。

「出し惜しみは無しだ! リミッターを解除しろ!」

 リオンの放った命令のリミッターという言葉の意味を、帝国軍で分かったのはマリアくらいだ。だが、その意味は、不思議の国傭兵団の行動で、他の帝国軍の者たちにも分かるようになる。
 魔法の詠唱のような呟きの声が辺りに響き渡る。一人一人の声は小さくても、千人の声だ。何を呟いているのかマリアには分かった。

「……気をつけて! バンドゥ党の切り札よ!」

 マリアは一度、これと似た詠唱を聞いたことがある。魔人との戦いに挑むバンドゥ党の党首たちが唱えたものだ。その後のバンドゥ党の党首たちの動きは凄まじく、マリアたちが倒せなかった魔人を見事に圧倒してみせた。
 今、目の前では千人が唱えている。これが、どれほどの戦闘力となるのか、全く想像が付かない。

『うぉおおおおおおおおっ!!』

 不思議の国傭兵団の雄叫びは、彼らを囲む帝国軍兵士を震え上がらせる。その雄叫びが消えた瞬間、千人の傭兵団員は、閃光になった。