ファンタジー小説-悪役令嬢に恋をして
ラング宰相の身の安全を保証したところで、いよいよ本格的な交渉に入る、とはいかずにグランフラム王国側は、更にウィンヒール王国に対して揺さぶりをかけた。ラング宰相には知られないように、他の交渉担当に対してエルウィンの出生に疑義がある事を伝えた…
もう後は滅びるだけと思われていたグランフラム王国が息を吹き返した。ウィンヒール王国との戦いは、グランフラム王国が圧倒的に優勢な状況で進んでいるのだ。 ただこれは当然の結果で、冷静になって戦力分析を行えば、グランフラム王国側の有利は明らかだっ…
グレートアレクサンドロス帝国によるファティラース王国への攻勢。ウィンヒール王国によるグランフラム王国への侵攻。この二つは同日に開始された。両国で日にちを示し合わせての事だ。 グレートアレクサンドロス帝国は、一時的にとはいえ、旧グランフラム王…
グランフラム王国は西部がアレクサンドロス王国、北部と王都周辺がウィンヒール王国、南部はファティラース王国、そして東部がグランフラム王国という形となった。だがこの構図は、ほんの数ヶ月で崩れる事になる。 ウィンヒール王国軍は王都から撤退。代わり…
グランフラム王国に、いよいよ大動乱の波が押し寄せてきた。ランスロットが遂に積極的に動き始めたのだ。 アクスミア侯家の従属貴族の過半数が自陣営に流れたところで、ランスロットは強引な手段を取り始めた。従わない従属貴族の討伐に動いたのだ。 強硬姿…
ローランド王国の侵攻はメリカ王国軍に大いに衝撃を与えた。だがリオンの望むように、戦いを止めて撤退という事にはならなかった。 そうしたくても東方諸国連合軍が追撃してくるのは間違いない。撤退戦の困難さをメリカ王国軍はよく理解しているのだ。敵国か…
イリア王国とタリア王国は元々一つの国だった。だがある時、王位継承を巡っての内乱が起こり、それが決着つくことなく終わった事で、二国に分裂したままとなった。元々豊かというには程遠い国だったのだが、二つに分裂した事で益々貧しくなった。 特に何の資…
タリア王国からの依頼を受けるかどうか。これについては、リオンの考えは決っている。まだ子供でありながら、王としての風格を見せたタリア国王にリオンは感心している。自分が持たない覚悟を、タリア国王が持っている事にも。 タリア国王を名だけの国王で終…
メリカ王国軍は侵攻作戦の失敗を悟って、送り込んだ部隊を全て撤退させた。その時には既にかなりの部隊が襲撃を受けていたので、手遅れと言えばそうなのだが、それでも放置しておく訳にはいかない。侵攻を続ければ、それだけ撃破される部隊が増えるだけなの…
グランフラム王国に新たな動乱が巻き起ころうとしている中、それよりも一足も二足も早く、大陸東南部で戦争が行われていた。メリカ王国と、その東にある幾つかの小国の連合、東方諸国連合との戦いだ。 グランフラム王国との決戦を前に東方平定を試みたメリカ…
王族の生活空間である城の奥は、仕える侍女以外は、近衛であっても極限られた者しか立ち入りが許されない閉鎖空間だ。奥に住む者に外部の者が面会する場合は、奥の手前にある謁見室を利用する事になる。 その謁見室の一つで、エアリエルは訪れた者たちと向か…
西部国境の街カンザワ。跡継ぎの座を追われたランスロットが領主として流されたノウトの中心都市だ。だがこの四年間で、この辺境のノウトがグランフラム王国内でもっとも発展した土地となった。 これはマリアの力が大きい。今のマリアの自信は、かつての思い…
アーノルド王太子の視線に気付いたマリアが近づいてくる。ランスロットに同行を頼むことなく一人でだ。 ランスロットの妻といってもマリア本人は無爵位。一人で王族の前に出るのは無礼なのだが、本人には全く気にする様子はない。実に嬉しそうな笑みを浮かべ…
魔人との戦いが終結して四年の歳月が経つ。グランフラム国王にとっては、ずっと薄氷の上を歩いているような気持ちの四年間だった。それだけ魔人との戦いはグランフラム王国に深い傷跡を残していたという事だ。 実際に国王は、いくつもの問題に対処する必要が…
王太子の婚姻は、当人たちの同意だけで決められるものではない。これは、偽装でなくても同じだ。そもそも、王族や貴族の結婚に、本人たちの意思など関係ないのだ。 シャルロットとの結婚について、アーノルド王太子が了承とまではいかないまでも、前向きに考…
ソルがエアリエルの部屋の前に辿り着いた時は、事態は少し落ち着いていた。そうは言っても、ただ刃物がしまわれているというだけで、扉の前に陣取る近衛侍女と、王国の近衛騎士たちの間には、睨み合いが続いている。 それを、騒動を引き起こした張本人である…
バンドゥへの行軍を急いでいたアーノルド王太子たちではあるが、当然と言うべきか、救援には間に合わなかった。行程を半ばも行かないうちに戦いが終わったとの情報を聞き、更に先に進んだ所で戦闘に参加したバンドゥ領軍のかなりの人数が討ち死にしたと聞き…
魔神がその全容を現すまでに、そう時間が掛からなかった。もっとも、じっと魔神の様子を見ていた者も、何が全容なのかは分からない。それだけ異質な存在なのだ。 パッと見た感じは動物というよりは巨大な植物だ。もしくは、とてつもなく大きなミミズが何百匹…
地下通路を進み、奥に進むとすでに魔人が待ち構えていた。いつもの事だ。何らかの方法で、グランフラム王国側の動向を監視しているのだ。 前に進み出たのは、マリアとアーノルド王太子、そしてエルウィンだった。マリアの希望を受け入れてのことだ。 カシス…
早朝のカマークの街に、耳をつんざくような鐘の音が鳴り響いている。非常事態の発生を告げる鐘の音だ。これは、カマークの住民たちに聞かせるというものではなく、バンドゥ領全土に知らしめる為のもので、カマークの鐘を受けて、周囲の村でもすでに鐘が鳴ら…
バンドゥに戻って、これからの事をゆっくりと考えるつもりだったリオンだが、周囲がそれを許してくれなかった。リオンが行方不明だった王子だったという噂は、あっという間に広まっていた。もちろん、あくまでも噂としてであり、広まる先も貴族たちに限って…
魔人との決戦に向けた準備は着々と進められている。やるべき事がはっきりとしたのだ。こうなれば、グランフラム王国の文武官には、それを着実に進める力はある。 ただ、この事と、決戦までにはまだ時間が掛かるという状況が、別の問題を人々の意識に上らせる…
リオンが去った後の謁見の間は、国王夫妻がその場に居るにも関わらず、大騒ぎになった。行方不明だった王族が見つかった。しかも王女ではなく王子であったとなれば、騒がずには居られない。これがリオンでなければ、この場に居る者たちも、もう少し落ち着い…
グランフラム王城の謁見の間は、異様な雰囲気に包まれている。反乱を噂されていたリオンが、近衛騎士団長を派遣するという異例な対応の甲斐があって、ようやく召喚に応じて王都にやってきたのだ。しかも、国王と王妃が揃って謁見するという、厚遇とも受け取…
カマークの城の会議室。到着してすぐに近衛騎士団長は、そこに通された。一息付く前も与えられない慌ただしさだが、近衛騎士団長にも文句はない。事態の収拾を急ぎたいのは、近衛騎士団長の方なのだ。 通された会議室には、極限られた人数だけが集められてい…
リオンはグランフラム王国どころか、その周辺国においても注目の的となっている。先の戦いで、単独でメリカ王国に攻め入って、戦女神とも呼ばれているオリビア王女を捕虜にするという大功をあげた。それだけで驚きなのに、自国に戻るとすぐに反乱を疑われる…
メリカ王国のオリビア王女が捕虜になっている。この事実をグランフラム王国は、事もあろうにメリカ王国から教えられて初めて知った。戦後の交渉の為にと現れたメリカ王国の使者が真っ先にこれを話したのだ。 全く事情を知らないグランフラム王国側の交渉担当…
オクス王国との国境に後少しの位置まで、グランフラム王国の軍勢は退却してきた。後は、国境の緩衝地帯となっている丘陵地を超えるだけ。それで、オクス王国の領内に逃げ込む事が出来る。 だが、その丘陵地の入り口でグランフラム王国軍は移動を止めて、陣形…
グランフラム王国とメリカ王国の戦いは、結果としてグランフラム王国側の勝利で終わった。王都攻略を目指して、侵攻してきたメリカ王国側が、その目的を果たすことが出来なかった、というだけでなく、勝敗がはっきりと分かるほどの損害をグランフラム王国は…
メリカ王国との戦いが進んでいる中、アーノルド王太子たち、魔人討伐軍の一行は、任務を終えて帰途についていた。 マリアしか分かっていない事だが、後半パートも終盤に差し掛かっている。魔人との戦いも架橋を向かえ、より一層厳しい戦いとなる、はずなのだ…