月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-勇者の影で生まれた英雄

勇者の影で生まれた英雄 #137 揺れる気持ち

モンタナ王国侵攻の準備。それは今のところ順調とは言えない。ウェヌス王国が望むよりも早く、事が動き始めているのだ。 モンタナ王国内の戦気は高まっている。国王と王弟の戦いはいつ始まってもおかしくない状態だ。それに合わせて王弟を支援する軍勢を送ら…

勇者の影で生まれた英雄 #136 目的を間違ってはいけない

モンタナ王国に不穏な空気が漂っている。王弟派が戦いの準備を始めたという噂が国内に広まっているのだ。本来であれば秘匿すべき反乱準備。それが決起する前に広く知れ渡ったのは王弟派に隠す意図がないから。国王派を刺激し、内乱のきっかけを作る為だ。そ…

勇者の影で生まれた英雄 #135 まさかの結びつき

トリプルテンの調練は、少し前とは異なり熱気を帯びている。訓練メニューそのものは厳しいものであったが、それに対して初めから出来ないと思って真剣に取り組まなかった隊員たち。訓練メニューが厳しいだけで、逆に隊員たちの様子は気の抜けたものだったの…

勇者の影で生まれた英雄 #134 いつかの繰り返し

バレル千人将の助言を受けた健太郎は、自分なりに何をすれば良いかを考えた。実戦経験を得る機会は簡単には得られそうにない。たとえ得られたとしても、今の隊員たちでは経験を得る前に命を失ってしまうかもしれない。それでは鍛えることにならない。 勇者と…

勇者の影で生まれた英雄 #133 再、落ちこぼれ小隊の隊長

事もあろうに自国の正妃候補を手込めにしようとした。勇者といえども、さすがにタダでは済まない。まして現国王であるエドワードは、元から健太郎に良い印象を持っていないのだ。甘やかすことなど絶対にない。 それでも死罪を免れたのは、勇者としての健太郎…

勇者の影で生まれた英雄 #132 勇者再び

モンタナ王国はウェヌス王国の北東。アシュラム王国とも国境を接している小国だ。国の規模してはアシュラム王国よりも小さい。領土の広さの問題ではない。国情が不安定である為、というのは言い訳で、施政者の統治能力の低さが原因で、国が発展どころか疲弊…

勇者の影で生まれた英雄 #131 夢再び

ソフィアとの会談を終えて、執務室に戻ったエドワード王。苦々しい思いは、今も消えていない。ウェヌス王国に得られたものはなし。エドワード個人としては失うもののほうが多かった。飾り物であるソフィアに会談の主導権を奪われたのだ。面目丸つぶれといっ…

勇者の影で生まれた英雄 #130 二国会談

ウェヌス王国の王都を東西に走る大通り。騎士たちが立ち並ぶその大通りに沢山の王都住民、そして近隣の街や村からやってきた人々が集まっている。人々が集うのは、その大通りの中央をゆっくりと進む軍列を見学する為。出陣するウェヌス王国軍の軍列ではない…

勇者の影で生まれた英雄 #129 踏み出された一歩

ゼクソン王国の王城。その城内の謁見の間に文武の重臣が居並んでいる。玉座に座るのはヴィクトリア。本来の玉座の主であるヴィクトルは、そのヴィクトリアの腕の中だ。 銀色の髪は両親譲り。まだ幼くありながら思慮深さを感じさせる、その瞳は父親似だと、グ…

勇者の影で生まれた英雄 #128 密やかな再始動

他国への無断侵攻の責任を取って大将軍を辞め、一近衛騎士となった健太郎ではあるが、それはあくまでも軍部内での地位に限ってのこと。爵位はそのままになっている。 健太郎を処分する目的は軍部からランカスター侯爵家の影響力を排除する為。その目的が会議…

勇者の影で生まれた英雄 #127 三妃会議

ルート王国の都ルーテイジは賓客を迎えて、大騒ぎになっている。訪れたのはゼクソン王国の国王ヴィクトルとその母ヴィクトリア。幼いとはいえ、一国の王を迎え入れるのだ。それなりの形式を整えなければならない。なんといってもルート王国の人々が、それを…

勇者の影で生まれた英雄 #126 大切なものは何か

王位に就いてからエドワードは精力的に働いている。その勤勉さは部下たちが新王に期待していた通りか、それ以上のもの。そんな新王エドワードの動きは、これまで国政の場に漂っていた衰退の匂いを吹き飛ばし、人々に活気を取り戻させることになる。 なんて話…

勇者の影で生まれた英雄 #125 小さなズレ

王都に連行されたランカスター侯爵と次男のロイド。エドワード王はすぐに二人と話し合いの場をもった。それも余人を交えない、二人だけでのし合いだ。 ランカスター侯爵家の二人との話を、他の者には聞かせたくないのだ。その理由は。 「……嘘だ。父上がその…

勇者の影で生まれた英雄 #124 政変

ジョシュア国王の早過ぎる死。それはウェヌス王国に驚愕をもたらした。 だが、もたらしたのは驚愕だけだった。グレンを題材とした小説の影響によって、ジョシュア国王に好意を向けることとなった極々少数の国民の涙を除けば、悲しみも混乱も広がることはなく…

勇者の影で生まれた英雄 #123 異変

侯爵家といっても領内に大都市をいくつも抱えているわけではない。大都市といえるのは領主館がある街くらいで、それ以外は小さな街ばかりだ。 暴動が起きたバッカスもその一つ。ランカスター侯爵領の南東の外れにある街で、特別な産業も豊かな耕作地もない貧…

勇者の影で生まれた英雄 #122 まだ終わっていない

どうしてこうなった。今のランカスター侯爵の気持ちを言葉にするとこれだ。万全の準備を整えて、動き出したはずだった。アシュラム戦役で軍部の実権を握り、戦争を自由に行えるようにする。 その後、ゼクソン王国を滅ぼして、その地に王を据える。ランカスタ…

勇者の影で生まれた英雄 #121 変わらない人

第二次アシュラム戦役の影響は思わぬところにも出ている。ただ、それを気にする人はわずかな数でしかない。さらに本気で困っている人はたった一人だ。 城内の食堂では、久しぶりに夕食会が開かれている。結衣の強い要望で開かれた、その会の参加者は健太郎、…

勇者の影で生まれた英雄 #120 変わろうとする人

勇者軍を撃退し終えたあとも、ルート王国の人たちは忙しい日々を送っていた。都はほぼ無傷といっても投石の撤去や穴の空いた場所の修復など、戦後処理は決して少なくない。 それに忙しい理由はそれだけではない。付け入る隙を全く見せない完勝と言える内容で…

勇者の影で生まれた英雄 #119 揺れ動く大国

勇者軍によるストーケンド襲撃。たとえトキオという独自の駐屯地を持っているとしても、多くの犠牲者を出した戦いだ。それを秘匿しておくことは出来なかった。仮に犠牲が少なくても同じこと。襲撃の情報は間者を通じて、ジョシュア国王の耳に入ることになる…

勇者の影で生まれた英雄 #118 戦いの目的

ルート王国は勇者軍との戦いに向けて着々と準備を進めている。勇者軍も行軍を隠す段階ではなくなっていて、かなりの勢いでルーテイジに近づいていた。その情報は逐一グレンの下に届けられる。出動した勇者軍は五千。率いているのは健太郎。大量の攻城兵器と…

勇者の影で生まれた英雄 #117 銀鷹傭兵団襲撃

エリック・ハーリー千人将、アシュリー・カー千人将を筆頭にした騎士団の帰還は、ウェヌス王国に驚きを持って迎えられた。彼らはすでに忘れられた存在だったのだ。 早速にジョシュア国王臨席の下、帰還報告の場が設けられた。居並ぶ重臣の中、両名を先頭に四…

勇者の影で生まれた英雄 #116 グレンの国とは

ウェヌス王都にあるランカスター侯爵家の屋敷。ランカスター侯爵は冷たい目で列席者を見つめていた。それでもレスリーからの報告を受けた時よりは随分と落ち着いた様子だ。過ぎた失敗をいつまでも悔やんではいられない。それくらいの分別はウェヌス王国の大…

勇者の影で生まれた英雄 #115 勇者の誓い

アシュラム王国の都メイプルで二ヶ月の時を過ごすことになった健太郎。とはいっても健太郎が自由を許されているのは城内だけだ。それでさえ破格の待遇というものだが、健太郎にとっては不自由で仕方がない。 街に出ることが出来るのであれば、それなりの期間…

勇者の影で生まれた英雄 #114 信じられる人

健太郎をなんとしても中央に戻す。そのために動き出したランカスター侯爵家の最初の一手はレスリーを健太郎のもとに送り込むというものだった。状況把握と健太郎の説得、それがレスリーの役割だ。事態を解決する為の使者という名目でゼクソン王国にも正式に…

勇者の影で生まれた英雄 #113 アシュラム戦役の後で

エステスト城砦の一室にゼクソン王国とウェヌス王国の外交担当者が集まっていた。アシュラム王国との戦いの後処理が会談における議題だ。 ゼクソン王国側の代表者はエルンスト伯爵。ウェヌス王国側はランカスター宰相だ。ランカスター宰相は事態が予想外の方…

勇者の影で生まれた英雄 #112 城砦の旗

全軍での総攻撃を決めた翌日。勇者軍は早朝からその準備に入っていた。本陣では総攻撃にあたっての戦法の確認を行うために大隊長以上の将官が集まっている。 それを率いる健太郎はといえば、上座に座ったままテーブルに突っ伏していた。 「ケン様、全員集ま…

勇者の影で生まれた英雄 #111 国境の攻防

ウェヌス王国とアシュラム王国との国境にある城砦。その城砦に向かって大小様々な石が大量に降り注いでいく。勇者軍の投石器が発した石だ。 健太郎が考えに考えた自軍の強化策。それは結局、各種兵器を大量に運用するというものだった。大国ウェヌスの国力を…

勇者の影で生まれた英雄 #110 手の平の上

ランカスター侯爵屋敷の一室にレスリーは呼び出された。呼び出したのは兄であるランカスター宰相だ。会議の場で健太郎が発した「恩賞としてアシュラムを」という要求。ランカスター宰相はそれを入れ知恵したとすればレスリーだと疑っていたのだが。 「私は知…

勇者の影で生まれた英雄 #109 新たな戦い

ウェヌス王都。王城の大広間では今まさにアシュラム王国への侵攻が決定されようとしていた。居並ぶ重臣を前にランカスター宰相はジョシュア王に向かい合っている。 「アシュラム王国への侵攻を決定したいと思います」 「また戦争か。ゼクソンとの戦争が同盟…

勇者の影で生まれた英雄 #108 謀略

「行ったり来たり忙しい奴だな」 これがゼクソン王都に到着したグレンに向けてのヴィクトリアの第一声だった。それを聞いて、グレンは青筋の立て方を教えてもらいたくなった。グレンが忙しくしている原因の一端はヴィクトリアにもあるのだ。 「わざと怒らせ…