月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説

四季は大地を駆け巡る #74 新生活の始まり

城に続く大通りを馬車の行列が進んでいる。もうすぐ領主であるイーストエンド侯爵の到着。それを迎える為に城門の前には多くの騎士が並んでいる。クラウディアもその迎えの列に加わって、チャールズの隣に立っている。ただ彼女の気持ちは、イーストエンド侯…

四季は大地を駆け巡る #73 見えない未来

イーストエンド侯爵一行は領地へ続く街道を東に向かって急いでいる。本来はこれほど急ぐ道程ではなかったのだが、今は事情が出来た。先行する集団に追いつこうとしているのだ。 それも最初はここまでとは思っていなかった。追いかけている集団には子供もいる…

四季は大地を駆け巡る #72 うねり

イーストエンド侯爵家の領主館。その執務室で今日も、チャールズとクラウディアは各地から届けられる報告書や決裁書に目を通している。 クラウディアはこういった仕事が得意だ。王家に生まれた彼女。王女であっても、きちんとした帝王教育を受けている。パル…

四季は大地を駆け巡る #71 分かり合えない人たち

「話って、どこでするの?」 武器屋を出て少し歩いた所で、夏が美理愛に話しかけてきた。一秒でも速く、美理愛と離れたい夏。話をしたいのは美理愛であるのに、何も言ってこないことに焦れた結果だ。 「あっ、そうね。じゃあ、お城に戻りましょうか」 「冗談…

四季は大地を駆け巡る #70 転機

真夜中の貧民区。夜の闇に覆われているはずの貧民区は今、赤々とした光に照らされている。自然の光ではない。何者かが火をつけたのだ。 その何者かたちの姿は今も貧民区にある。いかにもという感じの黒装束の男たちが、あちこちで駆け回っている。顔は見えな…

四季は大地を駆け巡る #69 王国を守る盾

勇者が帰還し、いよいよ魔族領侵攻作戦の開始が間近に迫っている。そんな状況であるのに、アレックスはエリザベートの下へ日参する羽目に陥っている。 大事な時期だ。疑いを持たれるような行動は取りたくないのだが、それがエリザベートには通じない。毎日、…

四季は大地を駆け巡る #68 残酷な運命

ネロは地下室へ続く長い階段を降りている。彼一人ではない。彼と淫魔の間に出来た子供たちも一緒だ。 子供たちを母親に会わせてやろうなんて優しさから連れてきたわけではない。そんなことが出来るはずがない。子供たちの母親は鎖に繋がれているのだ。そんな…

四季は大地を駆け巡る #67 種まき

都市連盟の南の外れにある街。そこにある商業ギルドは閑散としている。商業ギルドの職員は忙しい毎日を過ごしているのが一般的であるのだが、この場所は例外だ。 ドワーフの国であるアイオン共和国との国境であるというだけで商業ギルドの支店が設けてあるの…

四季は大地を駆け巡る #66 策士、策に溺れる

魔族討伐を終えての久しぶりの王都への帰還。王都の住民たちは熱狂的に勇者の凱旋を迎えた。大通りの沿道を埋め尽くす人々。その人たちの歓声に、にこやかな笑みを浮かべながら手を振って応える優斗。その姿はここを出て行った頃の優斗と変わらない。 素直に…

悪役令嬢に恋をして #58 英雄の誕生

近衛騎士ソル・アリステスはいつになく緊張していた。理由は明確。今、ソルの目の前に居るのは、自分の組織の頂点である近衛騎士団長と、全ての近衛騎士が忠誠を捧げるべき相手、国王陛下なのだ。 平騎士である自分がどうしてこの場に居るのか、はソルも分か…

四季は大地を駆け巡る #65 先の可能性

街の路地裏にひっそりと佇む建物。外から見れば粗末な建物だが中に足を踏み入れると、外観からは想像出来ない豪華な内装になっている。特にこの執務室は家具もかなり立派な物が置いてある。普通の仕事をしていては、決して手に入れられない高価な家具だ。 街…

悪役令嬢に恋をして #57 束の間の休息

何かと周囲を悩ますリオンだが、その影響を受けた者がまた一人増えた。近衛騎士のソルだ。戦いを共にはしていたが、常に一定の距離感を保って、ソルはリオンに接していた。 何故かと聞かれてもソルは何も答えられない。敢えて答えれば、近づいてしまうと、ず…

四季は大地を駆け巡る #64 ドワーフ族

目の前に立っている息子を見つめる彼の表情には苦いものが浮かんでいる。おどおどした様子で、威厳など欠片も感じられない。ドワーフの王である彼にとっては表情そのまま、苦々しいものだ。 ドワーフの王は各部族の長の中からもっとも相応しい者が選ばれる。…

悪役令嬢に恋をして #56 届かぬ思い

ニガータでの戦いについての反省会を終えて、リオンもエアリエルと二人、のつもりだったが、シャルロットが付いてきたので、三人で食事に出た。初めての街なので適当に店を選んでなどという事はなく、戦いの前から美味しいと評判の店を予め調べさせて予約ま…

四季は大地を駆け巡る #63 野心

野営地はひっそりと静まり返っている。戦いが終わるたびに優斗は不機嫌になる。それがあまりにも続いた為、いつしか戦勝の宴を行うことはなくなった。戦勝の喜びは、多くの人にとっては勝利よりも生への喜びが強いだろうが、とにかくそれぞれが胸の中で噛み…

悪役令嬢に恋をして #55 マリアの焦り

ニガータ防衛戦の勝利を祝っての宴、は今回開かれなかった。本隊を率いていた王国騎士兵団長が望まなかった事、そして、それに誰も文句を言わなかったからだ。 マリアたちは王国騎士兵団長と同様に勝利の喜びよりも、リオンに出し抜かれた事への悔しさの方が…

四季は大地を駆け巡る #62 非道

王城の奥にひっそりと立つ離れの塔。行き交う人はほとんどいない。その塔の中に豪奢な家具で彩られた一室がある。国王の妃であるエリザベートの寝室だ。 本来であれば男子禁制であるその場所にアレックスはもう何度も通っている。この事実が表沙汰になれば間…

悪役令嬢に恋をして #54 イベント:ニガータ防衛戦

ニガータ防衛戦における主戦力は、王国騎士兵団の五千。それに遊撃部隊として、ニガータ周辺に配置した各二千の三部隊。合計一万一千である。さらに予備兵力として、ニガータ及び周辺の貴族領軍が六千いる。 王国に油断はない。ニガータの防衛にあたって、万…

四季は大地を駆け巡る #61 それぞれの縁

月に一度、傭兵ギルド本部に送られてくる営業報告の資料。各支部から送られてきたそれに、ギルド長は順番に目を通している。常であれば、大まかな数字と特別に報告されてきた事項のみを確認して終わる作業に、今回は朝からかかりっきりだ。それも自分一人で…

勇者の影で生まれた英雄 #90 心の整理

クレインに知らされた母親の真実の姿はグレンの心に大きな傷を与えた。だが、そのことがグレンとヴィクトリアの距離を縮めるきっかけにもなり、グレンに一つの小さな決断を促すことにもなった。 通された部屋。そこにある小さなベッドで眠る赤子を気難しそう…

勇者の影で生まれた英雄 #89 後始末

ウェヌス王国軍が領内から撤退したことを確認したところで、グレンはゼクソン王都に入った。王都に入ってすぐに状況の確認に取り組む。真っ先に行ったのは当然、今回の反乱に関わる情報の確認からだ。 その報告を行うのはクレインだ。 「まず今回の反乱の原…

悪役令嬢に恋をして #53 バンドゥの剣

リオンたち、別働隊の今日の宿泊地は、ニガータに続く街道沿いにある街マーバスだ。王都を出て北に向かう街道を進むと最初に辿り着く城塞都市だ。 千人程度の軍勢であれば、軽く収容出来る規模を持っているので、リオンはここを最初の集合地点と決めていた。…

勇者の影で生まれた英雄 #88 最後の仕上げ

ゼクソン王国の反乱がすでに終息しているとも知らずに、健太郎率いるウェヌス王国軍は、ゼクソンとの国境を越えて領内に入っていた。 率いる軍勢は五千。その士気は、それなりに高い。今度こそゼクソン王国に勝つ。そういう思いに軍全体が奮い立っていた。 …

悪役令嬢に恋をして #52 戦う理由

リオン率いるニガータ防衛別働隊の出陣は、当初の予定とは異なり、近衛騎士団と日にちを合わせる事になった。リオンが別の日に出発するつもりである事を知った近衛騎士団長が、横槍を入れてきたのだ。 ただでさえ近衛騎士団長は、リオンとソルの関係が良いも…

悪役令嬢に恋をして #51 第一印象は最悪

近衛騎士団長にまんまと嵌められて、納得いかないリオンだが、そのリオンより、もっと納得いかない様子の者が居る。軍議の席で、すっかり蚊帳の外に置かれる形となったマリアだ。 本来であれば、軍議の主人公はマリアなのだ。といってもゲームの中に軍議のシ…

悪役令嬢に恋をして #50 示された器

王都での戦勝報告会。リオンにとって、幸いにもそれは大袈裟なものではなく、ごく普通の会議形式で行われた。とはいっても、参加者はかなり豪華だ。上座には国王がつき、その左側にはアーノルド王太子、近衛騎士団長、ランスロットと順番に並んでいる。リオ…

勇者の影で生まれた英雄 #87 ゼクソン王の選択

駐屯地に入って休むことを受け入れたグレンだったが、すぐに部屋に入ったわけではない。グレンにはまだまだやることがあった。 まずは投降した兵のもとにいって下手なことをしなければ身の安全は必ず保証すると何度も約束し、兵の不安を消していく。 それが…

勇者の影で生まれた英雄 #86 処遇

反乱軍の兵士のほとんどが、結果として逃亡のような形で投降していった。 それを呆然と見送っていたシュナイダー将軍だったが、いつまでも、そうしている場合ではない。わずかに残った兵をまとめてグレンに向かうか、逃亡するかを迫られることになった。 も…

悪役令嬢に恋をして #49 貧乏領主暇なし

結果は満足出来るものではないが、とにかく魔物討伐任務は完了した。 そうとなれば、速やかにバンドゥに帰って、領政に精を出そうと考えていたリオンだったが、残念ながらそれは叶わなかった。王都での任務完了報告に同行する羽目になったのだ。 国王への報…

勇者の影で生まれた英雄 #85 鎮圧

ゼクソン王国で起きた反乱の情報はウェヌス王国にも届いていた。それを受けて集まった重臣たち。顔ぶれはグレンが知るそれではない。 上座に座るのは王太子であるジョシュア。既に国王は引退も同然だ。元々の怠け癖の上に、度重なる敗戦にすっかり嫌気がさし…