月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説

異伝ブルーメンリッター戦記 #65 裏表

リリエンベルク公国軍に割り当てられた陣営はそれほど広くはない。もっとも人数が少ない部隊なのだから当然ではある。ただその狭さはあくまでもここまでが陣営と線を引いた、実際には線ではなく壕で区切られている範囲内でのこと。その壕の外に出れば、訓練…

勇者の影で生まれた英雄 #50 愚行

敗戦の第一報が入った時点では、動揺はしても戦争である以上はそういうこともあると冷静に受け止めていた軍上層部も、続報が入るにつれて大混乱に陥っていった。 王都とエステスト城塞の間を多くの軍使が行き来し、情報のやり取りが行われた結果、決められた…

異伝ブルーメンリッター戦記 #64 物語が加速する

ようやく魔人軍に動きがあった。膠着気味であった戦況もこれで動くはずだ。ローゼンガルテン王国軍にとって待ちに待った、なんていえる状況ではない。一日でも早い戦争の終結は強く望んでいるが、 激しさを増すことまで求めているわけではない。だが今回の動…

勇者の影で生まれた英雄 #49 退却戦

アシュラム国境から少しゼクソン側に街道を戻った場所。 アシュラム国境から少しゼクソン側に街道を戻った場所。 そこには迫り来るアシュラム軍を懸命に防いでいるウェヌス国軍の姿があった。どの兵士も満身創痍と言って良い状態だ。 崩壊寸前の部隊を支えて…

異伝ブルーメンリッター戦記 #63 主人公しか知らない物語

戦いの頻度が少なくなっている。魔人軍からの攻撃が減っているのだ。いよいよ撤退したのか、と喜んだローゼンガルテン王国軍であったが、さすがにそれは甘い考えだった。偵察で飛ばした飛竜は魔人軍の存在を、それも依然として大軍であることを確認して帰っ…

勇者の影で生まれた英雄 #48 勇者の野心

いよいよ先軍が国境を越える日となった。 予定からは二日遅れているが、その理由は公表されていない。知っているのは、一部の将だけだ。前日に総大将であるハドスン将軍の名によって密やかに通達された内容は、ゼクソンが裏切る可能性がある、いざという事態…

異伝ブルーメンリッター戦記 #62 まさかの接近

戦況は一変した。道の拡張と砦の建設工事。その場はローゼンガルテン王国軍にとっては奇襲に怯える場所ではなく、敵を罠にかける場所に変わっているのだ。奇襲を狙って森に潜んでいる魔人軍に対して、ジグルス率いるリリエンベルク公国軍は片端から襲撃を行…

勇者の影で生まれた英雄 #47 裏切りの気配

ゼクソンとの国境にある城塞は、両国を結ぶ街道のすぐ脇、街道南側の丘陵突端に築かれており、常時二千程のウェヌス国軍東方辺境師団が駐屯している。 街道をそのまま東に進むと、少し先に両側から山がせり出している地点があり、そこを抜けるともうそこはゼ…

異伝ブルーメンリッター戦記 #61 主人公の思い

多くの木々が空に向かって伸びている。その先は雲ひとつない晴天。青々とした空に太陽が浮かんでいる。だが陽の光は生い茂る葉に遮られて、ほとんど地上に届かない。届く必要もない。陽の暖かさを、青空の美しさを喜ぶ余裕など、地上で殺し合いを行っている…

勇者の影で生まれた英雄 #46 夢物語

夜の野営地に並ぶ多くの天幕。その幾つかの中からは、今夜も嬌声が聞こえてくる。行軍の最初の頃は少なかったそれも今ではかなり数も増え、聞こえる声も大きくなってきている。 グレンは、この状況を批判する気にはなれなくなっていた。戦地に近付くにつれて…

勇者の影で生まれた英雄 #45 行軍中も鬱陶しい

ウェヌス王国の王都から東に延びる街道を多くの人馬が進んでいる。戦争に向かうウェヌス王国騎士団の隊列だ。 王都を出立したウェヌス王国騎士団は、軍団単位に分かれて進軍を続けることになった。行軍の規模を小さくして進軍速度を上げる為だ。形式だけとは…

異伝ブルーメンリッター戦記 #60 一つの物語が終わりに近づいている

ローゼンガルテン王国軍の陣営のほぼ正面から森の奥に伸びる道。もともとは猟師やきこりなど森で育まれる資源で、生活の糧を得ている人たちが使っていた道だ。 かろうじて荷馬車が通れるくらいの道幅だったそれは、今はその何倍もの広さになっている。多くの…

異伝ブルーメンリッター戦記 #59 モブキャラ舞台に昇る

ローゼンガルテン王国の西、ラヴェンデル公国の西端にも、東の大森林地帯ほどの規模ではないが森が広がっている。隣国との国境となる山岳地帯から広がっている森だ。 戦場はその森の中に移っている。一進一退の攻防を繰り広げた結果、なんとかここまで魔人軍…

異伝ブルーメンリッター戦記 #58 激戦の始まり

前線は両軍が入り乱れての混戦となっている。どちらが優勢かは最前線で戦っている騎士や兵士には分からない。考える余裕もない。 群がる魔物、それに混ざって現れる魔人。魔物に対抗させようと兵士を前に出せば魔人に、実際は力ある魔物である場合もあるが、…

異伝ブルーメンリッター戦記 #57 舞台の上では

兵士たちの休憩時間。いつものようにジグルスにとっては個人の鍛錬を行う時間だ。だが今日に限っては、その中身は少し違っている。ジグルスの目の前に立っているのは父親のクロニクス男爵ではなく、母親のほうだった。母親と立ち合いを行うことになったのだ…

異伝ブルーメンリッター戦記 #56 主人公たちの戦いが始まる

ラヴェンデル公国の中心都市リラヒューゲルから真っ直ぐ西に移動した位置にある平原地帯ドゥエルヴィーゼ。そこが魔人軍との会戦の場となった。 魔人軍十万に対してローゼンガルテン王国軍、ラヴェンデル公国軍の二軍を含めて、は総勢二万四千。数の差は圧倒…

異伝ブルーメンリッター戦記 #55 開戦

――その日は突然やってきた。 すでに一年近く前からローゼンガルテン王国は戦時体制に移行し、開戦に備えてきたのだが、多くの人々がそういう感覚を持ってしまうほど、何の前触れもなく魔人軍は現れた。ローゼンガルテン王国の西の国境、ラヴェンデル公国領に…

異伝ブルーメンリッター戦記 #54 重なる影

リリエンベルク公国の都市シュバルツリーリエ。公国領のほぼ中央にあるリリエンベルク公国の政治、軍事、そして商業の中心となる都市だ。その場所に公主であるリリエンベルク公爵家の本屋敷がある。 リリエンベルク公爵家は四公爵家の中でも、もっとも芸術や…

異伝ブルーメンリッター戦記 #53 再会の時

ジグルスが教官となっている新設部隊は、リリエンベルク公国軍特別遊撃隊と名付けられた。リリエンベルク公爵が自ら行った視察の結果、公国軍の正式部隊として認められたのだ。 視察時にリリエンベルク公爵が残していった二百名、それにさらに三百があとから…

異伝ブルーメンリッター戦記 #52 正しいのは誰?

ローゼンガルテン王国が戦時体制に移行して半年以上が過ぎているが、魔人との戦いは始まっていない。それは王国にとって良いことばかりではない。今はもう悪いことのほうが多くなったという状況だ。あくまでも、平和であるという、どれだけ悪いことが増えて…

異伝ブルーメンリッター戦記 #51 モブキャラ増員

寒さも緩み、春の訪れを感じられるようになったリリエンベルク公国北部。雪の消えた、決して広いとはいえない街道に何台もの馬車が連なっている。その中でも一際豪華な馬車。鎧姿の騎士が乗る馬に周囲を囲まれて進んでくるそれは、リリエンベルク公爵が乗る…

異伝ブルーメンリッター戦記 #50 主人公は誰?

広大な王城の敷地のすぐ隣に王国騎士団の施設はある。隣といっても、実際にはほぼ一体化している。王国騎士団の施設もまた、いざという時には敵の侵入を防ぐ防御施設となるのだ。 その施設のひとつである第三訓練場。いくつかある王国騎士団の訓練場の中でも…

異伝ブルーメンリッター戦記 #49 家族として

リリエンベルク公国はローゼンガルテン王国領の中で、もっとも北に位置する。さらに北東に位置する大森林地帯に近い土地のように人の往来が難しくなるほどではないが、それでも冬の寒さが本格化する年明けとなると領地のほとんどが雪に覆われることになる。…

異伝ブルーメンリッター戦記 #48 モブキャラは先駆者

ジグルスが教官を務める新設部隊の鍛錬は、学院の同級生たちが加わったことにより、さらに激しさを増している。中身は以前と変わらないのだが、いくらジグルスが頑張っても全員には目が届かなかった問題が解消されたのだ。それにより兵士たちは益々気を抜け…

異伝ブルーメンリッター戦記 #47 目標は脱モブ

周囲に広がるのはのどかな風景。わずかな畑地とそれの何倍もある牧草地の中を、都市部とは異なり整備が行き届いていない荒れた道が遠くまで伸びている。遠くに見えるのはローゼンガルテン王国の北東に広がる大森林地帯、それに繋がる大山脈だ。すでに大山脈…

異伝ブルーメンリッター戦記 #46 主人公補正?

ジグルスが去った後のローゼンバッツ王立学院。学院イベントは期待通りの結果に終わり、生徒たちの雰囲気は全体的に良くなっている。貴族の生徒と平民の生徒との間の交流に関しては、探り探りの部分はかなりあるが、少なくともネガティブな行動をとる生徒は…

悪役令嬢に恋をして #35 学院パートの終わり

いよいよリオンとエアリエルが王都を発つ日がやってきた。だからといって特別な行事があるわけではない。一男爵家夫妻が領地に向かうことに誰も興味なんてない、はずだった。 まだ陽が昇ったばかりの早朝。人気の少ない王都の大通りを、エアリエルを抱きかか…

悪役令嬢に恋をして #34 イベントの結末は変わらない

この場所に閉じ込められて既に何日が経過したのか。もうエアリエルには分からなくなっている。そもそも初めの数日間の記憶が全くないのだ。 全く身に覚えのないことで糾弾を受け、それでも監察部の目的が親しい平民の生徒たちにあるのだと分かり、彼らを庇う…

悪役令嬢に恋をして #33 失ったものの大きさ

城内にある謁見室の中でもこの場所は、あまり形式張る必要のない非公式な場面で使われる場所だ。ここに国王と王妃が居るのはおかしなことではない。相手が近衛騎士団長だけでなければ。 近衛騎士団長との打ち合わせに謁見室など使う必要はない。執務室で普通…

悪役令嬢に恋をして #32 友との別れ

その日、王都は何とも言えない複雑な雰囲気に包まれていた。 既に二週間前から告知されていたウィンヒール侯家のヴィンセント・ウッドヴィルの公開処刑。それが今日行われるのだ。 公開処刑をただ見世物として楽しみにしている者、逆に人の死を見世物にする…