月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

竜血の玉座 第21話 隠れている事実

近衛特務兵団。ルシェル王女が率いる部隊の名称だ。名称の「近衛」はルシェル王女が指揮官であるから。「特務」は、他の王国軍の部隊と一線を画す意味を持つ。組織としては王国軍の一部隊ではあるが、色々な意味で別物。人によって良い意味か悪い意味かの受…

竜血の玉座 第20話 不信

勝敗が決したあとは講評。といっても今回の対抗戦ではリーバルト軍務卿と、わざわざ対抗戦の様子を観戦しにきたユーリウス王子に結果を報告するだけで終わりとなる予定だ。王国騎士の頂点に立つディートハルトの戦いぶりを批評出来る者は王国軍にはいない。…

竜血の玉座 第19話 番狂わせ

王国軍による模擬戦が始まろうとしている。すでに両軍勢は初期配置から、広々とした丘陵地帯への展開が完了している。ルシェル王女は部隊を四つに分け、自身がいる本陣に五十。右翼にも五十、中央と左翼に百ずつを配置している。ディートハルト率いる第一〇…

竜血の玉座 第18話 敵を知り己を知れば

対抗戦に向けて、部隊のメンバーもそれなりに気合いが入っている。負ければ失業だというのだから、理不尽さに憤りを覚えながらも、気合いを入れて頑張るしかない。とはいえ、特別なことを行っているわけではない。訓練の内容は、ほぼこれまでと同じ。走り込…

竜血の玉座 第17話 露呈

城の奥にあるバラウル王家の人々が暮らす居住区域。城に来てからは、そこがソルの生活空間の、ほぼ全てだった。外出は許されず、城の中でも居住区を出ることは、ほとんどなかった。居住区以外でソルの記憶にはっきりと残っているのは、建国記念日などの王国…

竜血の玉座 第16話 生まれた齟齬

ユーリウス王子が即位する日が決まった。少し、ユーリウス王子にとってはだが、時間がかかったのは招待客をどうするかを決めるのに時間が必要だったから。王都から使者を送り、相手が招待されたことを知ってから準備を整えて王都までやってくるのに必要な期…

竜血の玉座 第15話 勉強中

ハイン家への処置は速やかに進んだ。王国は王都への召喚命令を伝える使者を送ると同時に、軍勢も送り出した。ユーリウス王子が王都に到着している今、小領主を制圧するに必要な軍勢の数は揃っている。出し惜しみする理由もない。ハイン家は一切抵抗すること…

竜血の玉座 第14話 黒幕の存在

フーバー家軍との戦いに見事勝利して、それで一件落着、とはいかない。いかないことが分かった。まずは戦場から逃げ出したフーバー家の者たちの捕縛。捕縛対象はそれだけにとどまらない。戦場にはいなかったフーバー家の人間、家臣たち、一族郎党全てが捕縛…

竜血の玉座 第13話 片鱗

いくつもの丘の間を縫うようにして、それは近づいてくる。意識してのことかナーゲリング王国側には分からないが、丘が邪魔をしていて、その全容は見えない。見えないが、自分たちが思っていた以上の難敵であることは分かる。近づいてくる敵の速さ、地面をな…

竜血の玉座 第12話 初陣

緩やかな起伏が広がる丘陵地帯。それがフーバー家が戦場として選んだ場所だ。占拠していた用水路近くからこの地に移動してきたフーバー家の軍勢は、辺りで最も高いと思われる丘に陣取っている。対するバルナバス率いるナーゲリング王国軍は丘の下。高所を取…

竜血の玉座 第11話 新王来着

王都を発ったバルナバスが率いる軍勢は、目的地に向かって街道を西に進んでいる。総勢五百四十八名。新兵五百二名にバルナバスを筆頭に十名の騎士とその従士たちが加わって、その数だ。荷駄を運ぶ為だけの人数はいない。兵士たちが自らの物と騎士、部隊全体…

竜血の玉座 第10話 無茶振り

今日も会議の間では、重臣たちが集まって会議が開かれている。四卿会議ではない。四卿以外に情報局長フリッツ、軍政局長のローマン、さらに騎士のバルナバスまで出席している会議だ。その出席者の面子で、軍事的な話し合いが行われているのが、分かる人には…

竜血の玉座 第9話 疑念

三か月の訓練期間を終えて、兵士候補たちは候補が取れて兵士になった。 だからといって日常は変わらない。訓練の日々が続き、その内容もほぼこれまでと同じだ。候補が取れたからといってそれで一人前となったわけではない。末端とはいえ職業軍人である彼らは…

竜血の玉座 第8話 すれ違い

今日も四卿会議が開かれている。四卿とエルヴィン王子が参加する会議だ。ただ今日は議題がある。これまでも議題がまったくなかったわけではなかったが、今日中に決めなければならない重要でかつ緊急な検討事項があって、会議が開かれているのだ。 話し合う内…

竜血の玉座 第7話 ツェンタルヒルシュ公国

ツェンタルヒルシュ公国領は、ナーゲリング王国の直轄地域とノルデンヴォルフ公国に南北を挟まれた位置にある。フルモアザ王国時代に比べると少し広がっているが、それでも五公国の中でもっとも狭い領土であることは変わっていない。 ツェンタルヒルシュ公国…

竜血の玉座 第6話 消えない記憶

フルモアザ王国の王都にある城は百五十年、改修を続けてきたことで難攻不落の名城と評価されている。百五十年間、一度も城内に敵の侵入を許していないという点だけであれば、その通りかもしれないが、そもそも敵軍が攻め寄せてきたことがない。外敵はこの百…

竜血の玉座 第5話 訓練が始まった

兵士候補たちの訓練は陽の日を除いて毎日行われている。週休一日となっているのだ。兵士候補の数は五百名まで増えた。目標の半分といったところだ。再度、募兵対象地域で告知を行うこととなっているが、その効果はあまり期待されていない。 テレビもラジオも…

竜血の玉座 第4話 虎穴に入らずんば

募兵はまだ続いている。二日目は百名と初日の三分の一まで減ったが、王都から少し離れた土地からやってくる応募者の到着が遅れているようだという情報が伝わり、軍政局、そしてルシェル王女の不安はそれほど強いものではなくなっている。 募兵の目標数は千名…

竜血の玉座 第3話 集う者たち

ルシェル王女が企画した募兵は速やかに事務手続きが進められ、具体的に動き出した。ルシェル王女の相談に乗り、実際に募兵手続きを行う軍政局は、それを行うに必要な情報をあらかじめ持っている。軍政局に必要なのは募兵を行うという意思決定と、どれだけの…

竜血の玉座 第2話 主のいない王国

ベルムント王の死は、その翌日には王国の知るところとなった。腐死者の森に向かった国王が深夜になっても戻ってこない。伝令も送られてこないとなれば、すぐに捜索の為の手勢が送られる。捜索隊がベルムント王の遺体を見つけ出すのに、そう時間はかからなか…

竜血の玉座 第1話 流血の時代が始まる

ナーゲリング王国の都ドラッケングラブの北門を抜け、二刻ほど馬を駆けさせたところで東に逸れ、さらに二刻。支道が途切れた先に、その森はある。『腐死者の森』と呼ばれるそこはその名の通り、死者、アンデッドモンスターが跋扈している場所。王都から四刻…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第200話 向かう先に待つものは

栄光騎士団はめざましい活躍を見せている。アリシアの活躍のおかげ、とするのは少し違う。活躍はアリシアのお人好し、ではなく正義感があってこそであるのは間違いないことだが、それだけで任務が上手く行くはずがない。栄光騎士団の活躍は王国諜報部の支え…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第199話 敵味方

タイラーはずっと亡くなった兄クリスチャンの屋敷に引きこもっている。心の整理が出来ないでいるのだ。そうであって欲しくはなかったが、やはり、クリスティアンは自分の暗殺を企んでいた。それはすでに明らかになっている。自分を殺そうとしたクリスティア…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第198話 運命は巡る

ジュリアン王子の騎士団、栄光騎士団の初任務は王国中央南部にある少数民族バスケス族の居住地での調査になった。そこが選ばれた理由は単にカリバ族が暮らしているハートランドから、比較的近いというだけ。協力するカリバ族の人たちが合流しやすいからとい…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第197話 新たな動き

黒色兵団は王都に戻って来た。自ら望んでのことではない。国王の召喚を受けて、仕方なくだ。さすがにレグルスも国王の命令を無視するわけにはいかなかったのだ。 王都は、王国各地で争乱が起きているとは思えない、明るい雰囲気。それに疑問を感じたレグルス…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第196話 意外な動き

王都に戻って来たアリシアだが、彼女には住む場所がない。レグルスとの婚約が解消となり、ブラックバーン家に貸し与えられていた屋敷を出た後は、ジークフリート王子が用意してくれた屋敷に住んでいたのだが、今はそこも出ている。好意に甘え続けているのは…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第195話 齟齬

黒色兵団が任務に復帰する、という情報はまだ王都には伝わっていない。だからといって、それを待たなければ任務を行えないということではない。王国騎士団の下部組織という位置づけではあるが、王女であるエリザベス王女が率いる黒色兵団には、かなりの独立…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第194話 転換点

アリシアは忙しい任務の合間を利用して、王都に戻って来た。国王の命令を受けての帰還なので、合間がなくても戻らなければならなかっただろう。 王国の各地で次々と起こる争乱。貴族家の内乱であったり、少数民族の蜂起であったり、大規模盗賊団が暴れている…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第193話 予想外の展開

猫の手も借りたいほどの忙しさ。この言葉通りの状況に陥っている王国騎士団ではあるが、実際に猫の手を借りても事態は解決しない。それが人の手であったとしても、戦う力のない者の手では役に立たない。無駄に死傷者を増やすだけの結果に終わってしまう。 反…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第192話 誰が為の人生

物語が一気に加速した。これはアリシアの感想だ。この世界がゲーム世界、ゲームストーリーからは完全に外れているがゲームと同じ設定の人々が生きる、普通とは違う世界だと知っているアリシアだからそう思うのであって、そうではない人々は、各地で起きた争…