月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

ファンタジー小説-SRPGアルデバラン王国動乱記~改~

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第132話 新しい暮らし

レグルスがいなくなった王立中央学院では、それ以前と変わらず、学院生たちの熱のこもった授業が行われている。レグルスがいなくなった影響はない、ということでもない。熱意を高めている学院生の中心は、タイラーとキャリナローズ。レグルスと再会を誓った…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第131話 残された人々、その二

王都のブラックバーン家は、未だに失ったものの大きさを理解していない。この先も理解することはないだろう。理解出来るのであれば、このような状況にはなっていない。守護家の一つ、北方辺境伯家ブラックバーンは、少なくとも王都ブラックバーン家はその力…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第130話 天才魔道具士の選択

王都を出てからの旅程は、「鉄格子は恰好だけ」という付き人の言葉通り、自由なものになった。ずっと馬車の中にこもっている必要もない。同行している騎士の馬を借りて乗ることも許される。体力づくりの為に走るのも自由。さらに時間があれば、騎士のほうか…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第129話 残された人々

レグルスが王都を去った。公にそれを知る人は少ない。ブラックバーン家は自家の人間をどう処分したかなど、公式に発表しない。レグルスが都落ちすることなど公にはしない。罰の軽重を論じられるような事態は望まないのだ。 レグルスが王都を去ること、さらに…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第128話 意外な別れ

レグルスに下された処分は分家預かり。ブラックバーン本家からは除名されて分家、再従兄のディアーンの父親の家に預けられることになった。街の名から通称モルクブラックバーン家と呼ばれている分家だ。 いずれは分家となる身であったレグルスだが、これで後…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第127話 信じられる人、信じられない人

襲撃事件に関する話は、王立中央学院の学院生たちの間でも広まった。王都に暮らす庶民に知られた情報だ。貴族家の公子や官僚の子が多くいる中央学院の学院生たちに伝わらないはずがない。ましてその話の中でも中心はレグルスの捕縛なのだ。話題にならないは…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第126話 冤罪事件です

レグルス逮捕の情報は、すぐに広く知れ渡ることになった。多くの憲兵が隊列を組んで郊外に出て行った時点で、それを見た王都の人々は、これから起こる出来事を予感していた。今、郊外で起きている農場主襲撃事件と結びつけられないはずがないのだ。 いよいよ…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第125話 望み通りの決着

アリシアはようやくレグルスと会うことが出来た。彼女の望んだ形ではない。レグルスが望むものでもない。レグルスのほうはアリシアに会うつもりはなかった。二人の共通の幼馴染であるリキたちが関係するこの件にアリシアを近づけるべきではないと考えていた…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第124話 狭まる罠

最初にその事件についての話を聞いた時、アリシアは農場主を襲撃した雇われ農民たちのほうに共感した。虐げられていた人々が立ち上がった。自由と解放を求める戦いは、アリシアの価値観では、正義の戦いなのだ。 だが事はそんな単純なものではない。そうであ…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第123話 巻き込まれが止まらない

王都に帰還しているエリザベス王女一行。いよいよ王都外壁までたどり着き、残る旅程もあとわずか、となったところで想定外の事態が起きた。先に進むことを、外壁の門を守っている衛兵たちに止められたのだ。 「王都郊外で暴動が起こっているようです」 先に…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第122話 悪意は続く

ドイル伯爵領でやるべきことをやり終えて、エリザベス王女一行は帰路についた。レグルスも一緒だ。なんだかんだで、一か月ほどの滞在。当初、王都帰還まで予定では二か月だったものが、三か月以上になってしまった。帰路はかなり急いでの移動になる。すでに…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第121話 この世界の秘密

ドイル伯爵の後は、あくまでも王国の正式決定がなされるまでの暫定的なものだが、息子が継ぐことになった。ドイル伯爵家内の混乱を最小限に抑える為の選択であるが、無条件にそう決めたわけではない。息子は父親の行いに否定的な考えを持っていた。本人の言…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第120話 愚者の末路

ドイル伯爵家軍は部隊を二つに分けて、進軍を開始した。数はそれぞれ千二百といったところ。最初に現れた時よりも少し数が減っているのは、エリザベス王女の手前、軍勢を引き揚げさせたという形を作る必要があったからだ。エリザベス王女一行が去ったあとは…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第119話 また一難

エリザベス王女が駐留地を去る様子を見送ることなく、レグルスは行動を開始している。のんびりしている時間はない。やるべきことは、まだ何をやるべきかも分かっていないが、山ほどあるはずなのだ。 真っ先に向かったのは駐留地の奥。その先で待っている人が…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第118話 一難去って

近づいてくる軍勢は、大きく横に広がって前に進んでくる。逃げ道を塞ごうという意図だとレグルスは判断した。レグルスにとっては都合の悪い状況だ。居留地を囲む塀は敵の侵入を防げるようなものではない。そのような堅牢な居留地の建設をドイル伯爵が許さな…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第117話 為すべきこと

ドイル伯爵領に到着したエリザベス王女一行は、伯爵からの晩餐会への招待を、形としては丁寧に、実態として断固とした態度で拒絶して、目的地であるフルド族の居住地にまっすぐに向かった。事実確認を行うことが最優先。伯爵と接するのは、それが明らかにな…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第116話 女性たちの想い

個人としての戦闘力を高める為に必要と思われるあらゆる鍛錬をレグルスは行ってきた。広く浅くではない。個人の戦闘力と学問では戦術、戦略の類、歴史や財務会計など、レグルスなりに対象を絞って、深く追求しようとしている。 逆に言えば、追及していること…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第115話 交錯する闇

レグルスがいない間もオーウェンとジュードは中央学院に通い続けている。本当はレグルスに同行したかったのだが、それは許されなかった。王国側がオーウェンとジュードの存在を無視していたからだ。認識していても恐らくは同行は難しかったはず。二人はレグ…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第114話 世界が動き出す

エリザベス王女の護衛任務を引き受ける上で、レグルスがもっとも懸念していたのは鍛錬と勉強が出来なくなること。授業は欠席。当たり前だが、舞術の道場にも通えない。往復の二か月間、一人で出来る鍛錬を行うしかなくなってしまう。 魔力の制御や魔法の訓練…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第113話 思惑が駆け巡る

今回の教会が行う慈善活動の目的は、内乱で荒廃した戦争被害者の救済を行うというもの。内乱といっても王国を揺るがすような大規模なものではない。王国支配に反抗的な少数民族のひとつが、その少数民族の居住地を統治する貴族家と揉め事を起こし、暴動に発…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第112話 見えない動き

「何でも屋」の仕事については、その多くをバンディーに任せるようになっている。いつまでもレグルスが仕事を仕切っているわけにはいかない。もともと「何でも屋」はバンディーたち、今はスカルたちも加えた仲間の生活を支える為のもの。レグルスは商売の立…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第111話 変わっていくのは周りのほう

王国騎士団施設は王城のすぐ横にある。すぐ横といっても王城の敷地に接しているというだけで、王城そのものとの間は外濠、防壁、内濠によって隔てられている。王国騎士団であっても信用ならない、と現国王は思っていないが、過去の王は、王国騎士団が反旗を…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第110話 スカウトされました

王国騎士団との合同演習を終えた王立中央学院生たちの実技授業への取り組みは それ以前よりも、さらに熱を帯びるようになった。王国は反抗心を押さえつけることには失敗したが、学院生たちから驕りを取り除き、やる気を引き出すことには成功した。このほうが…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第109話 誤解です

百人の敵が放つ殺気も、それに比べれば、そよ風のように感じられる。それほどの殺気だった。戦意など欠片も残さず吹き飛んでしまう。一瞬そう感じたレグルスであったが、そうはならなかった。心の奥底に潜むどす黒い感情が、それを許さなかった。 殺意が、普…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第108話 示された片鱗

王立中央学院と王国騎士団による合同演習は、学院ではなく王国騎士団施設で行われている。合同演習は、元々は年に一回行われる国王による王国騎士団視察の定例行事。王国騎士団を統べる立場である国王に日頃の努力の成果を示す、という王国騎士団の行事に、…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第107話 モテる二人?

南方辺境伯家、ディクソン家の屋敷は他の辺境伯家と同じで王城近くにある。王城の南側にある広大な敷地に建てられた屋敷だ。 ディクソン家は武を尊ぶ。他の辺境伯家も王国の国境を任されるに相応しい武に優れた家であるのだが、ディクソン家は、その中でも特…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第106話 恥ずかしくないのだろうか?

道場からの帰り道。レグルスは一人で夜道を歩いている。周りからはそう見えるというだけで、実際には一人ではない。エモンたち、隠密能力に優れた者たちが遠巻きにレグルスの周囲を警護している。レグルスを狙う暗殺者を捕らえる為だ。 暗殺者の襲撃を恐れて…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第105話 束の間の休息

郊外に確保した隠れ家でレグルスたちは合宿を行っている。合宿といっても週末を利用した一泊だけだ。全員で広々とした場所で鍛錬を行える。周囲には民家もないので魔法も、もっぱら使うのはラクランだが、使える。往復二時間の距離も、走れば鍛錬になる。か…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第104話 すれ違いの関係

食堂の個室にその男は姿を現した。レグルスたち「何でも屋」の店舗とは異なり、表通りの一等地にある建物に入っている高級食堂だ。店を利用するのは貴族か、裕福な商人くらい。単価は高いが、利用者は多くない。全て個室なので客には分からないが、いつも空…

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第103話 暗殺未遂

レグルスとラクランは夕飯を共にすることがよくある。ご近所なのだから、おかしなことではない。最初の頃とは違い、ラクランもレグルスに対して緊張することはなくなった。それに、何度か行っている食堂を選んだとしても、怪しげな客もいるその場所に一人で…