王都を出てからの旅程は、「鉄格子は恰好だけ」という付き人の言葉通り、自由なものになった。ずっと馬車の中にこもっている必要もない。同行している騎士の馬を借りて乗ることも許される。体力づくりの為に走るのも自由。さらに時間があれば、騎士のほうか…
レグルスが王都を去った。公にそれを知る人は少ない。ブラックバーン家は自家の人間をどう処分したかなど、公式に発表しない。レグルスが都落ちすることなど公にはしない。罰の軽重を論じられるような事態は望まないのだ。 レグルスが王都を去ること、さらに…
レグルスに下された処分は分家預かり。ブラックバーン本家からは除名されて分家、再従兄のディアーンの父親の家に預けられることになった。街の名から通称モルクブラックバーン家と呼ばれている分家だ。 いずれは分家となる身であったレグルスだが、これで後…
襲撃事件に関する話は、王立中央学院の学院生たちの間でも広まった。王都に暮らす庶民に知られた情報だ。貴族家の公子や官僚の子が多くいる中央学院の学院生たちに伝わらないはずがない。ましてその話の中でも中心はレグルスの捕縛なのだ。話題にならないは…
レグルス逮捕の情報は、すぐに広く知れ渡ることになった。多くの憲兵が隊列を組んで郊外に出て行った時点で、それを見た王都の人々は、これから起こる出来事を予感していた。今、郊外で起きている農場主襲撃事件と結びつけられないはずがないのだ。 いよいよ…
アリシアはようやくレグルスと会うことが出来た。彼女の望んだ形ではない。レグルスが望むものでもない。レグルスのほうはアリシアに会うつもりはなかった。二人の共通の幼馴染であるリキたちが関係するこの件にアリシアを近づけるべきではないと考えていた…