最初にその事件についての話を聞いた時、アリシアは農場主を襲撃した雇われ農民たちのほうに共感した。虐げられていた人々が立ち上がった。自由と解放を求める戦いは、アリシアの価値観では、正義の戦いなのだ。 だが事はそんな単純なものではない。そうであ…
王都に帰還しているエリザベス王女一行。いよいよ王都外壁までたどり着き、残る旅程もあとわずか、となったところで想定外の事態が起きた。先に進むことを、外壁の門を守っている衛兵たちに止められたのだ。 「王都郊外で暴動が起こっているようです」 先に…
ドイル伯爵領でやるべきことをやり終えて、エリザベス王女一行は帰路についた。レグルスも一緒だ。なんだかんだで、一か月ほどの滞在。当初、王都帰還まで予定では二か月だったものが、三か月以上になってしまった。帰路はかなり急いでの移動になる。すでに…
ドイル伯爵の後は、あくまでも王国の正式決定がなされるまでの暫定的なものだが、息子が継ぐことになった。ドイル伯爵家内の混乱を最小限に抑える為の選択であるが、無条件にそう決めたわけではない。息子は父親の行いに否定的な考えを持っていた。本人の言…
ドイル伯爵家軍は部隊を二つに分けて、進軍を開始した。数はそれぞれ千二百といったところ。最初に現れた時よりも少し数が減っているのは、エリザベス王女の手前、軍勢を引き揚げさせたという形を作る必要があったからだ。エリザベス王女一行が去ったあとは…
エリザベス王女が駐留地を去る様子を見送ることなく、レグルスは行動を開始している。のんびりしている時間はない。やるべきことは、まだ何をやるべきかも分かっていないが、山ほどあるはずなのだ。 真っ先に向かったのは駐留地の奥。その先で待っている人が…