傭兵王が敗北を認めたことでマーセナリー王国の情勢は一気に変化した。相変わらず各地に割拠している勢力は存在しているが、どれもそう遠くないうちにマリ王国に吸収されるか、奪えるだけ奪って解散するかのいずれかを選択することになる。それ以外の選択肢…
サウスエンド伯爵家の居城があるエルツシュロスは、当然だが、南部最大都市。サウスエンド伯爵家の家風もあって華やかさにはやや欠けるものの、南部経済の中心地として多くの人々が行き交う賑やかな街だ。本来は。 今現在、エルツシュロスを訪れる商人や旅人…
今日は定例の従士試験の日。会場となっている王国騎士団の野外鍛錬場は見物客とその見物役目当ての露店、さらにその露店目当ての客で大いに賑わっている。いつものことだ。 ヴォルフリックにとっては二回目の従士試験。試験そのものはもっと行われているのだ…
アルカナ傭兵団の定例会議の場。出席者は国王であり団長であるディアークとアーテルハード、ルイーサとトゥナの四人だ。力の称号を持つテレルも本来は出席者であるが、今は任地にいる為、参加していない。この参加者五人がアルカナ傭兵団の幹部ということだ…
夜の陣地は静寂に包まれている。傭兵王は、まるで広い陣地にたった一人でいるような気分だった。そんなはずはない。陣地には四千を超える騎士や兵士がいる。今この瞬間にも減っているかもしれないが。 自軍はずっと負け続けている。一騎打ちで負け、五十人と…
ヴォルフリックが独房に入れられていたのは二週間。長すぎず短すぎず、軍法会議での彼の発言が人々に広まり、それに対する様々な反応が盛り上がりを見せ、そこから静まるまでの期間としては適当だ。傭兵団の上層部は、人々の反応をそれとなく観察し、その状…