ヴラドがイーストエンド侯領に戻った後、ヒューガはヴラドが残していった美理愛からの手紙を読み始めた。 「へえ、綺麗な字だな」 手紙を開いて最初にヒューガは書かれている字の美しさに感心した。楷書体で丁寧に書かれた文字は、文字の間隔もきれいに整っ…
アルカナ傭兵団の施設は王城のすぐ隣、王国騎士団と一部の施設を共有しているが、その部分を除いても、かなり広大な敷地だ。そこにあった王家と有力貴族家の屋敷はすべて取り壊し、王国騎士団の施設があった場所はそれを別の場所に移し、さらに王城の敷地だ…
翌朝、まだ日が昇って間もない時間にヴォルフリックは地下牢から出されることになった。思っていたよりも遥かに早い解放だ。さらに地下牢から出たあとの待遇も悪いものではない。 まっさきに連れて行かれたのは水浴び場。そこで体の汚れを落とすことになった…
マンセル王国の王都。パルス王国の王都に比べれば規模は小さいが、その賑わいは決して劣るものではない。ここ最近は優っていると言えるくらいだ。その理由はミネルバ王国を併合したことにある。ただ領土が広くなったということではなく、マンセル王国は戦い…
息を切らして周囲を駆けまわっている人々。一方で剣を打ち鳴らして立ち合いを行っている人々もいる。千人規模でそれが行われていると、まるでそこは戦場のようだ。 ドュンケルハイト大森林とレンベルク帝国との国境に近い平原地帯。今日もまた、いつもの声が…
パルス王国南東部。旧ミネルバ王国との国境地帯にある深い森。今となっては魔族の支配地域となっているその森の中に深い洞窟がある。自然に出来たものではない。住処とするために人工的に作られた洞窟だ。 その洞窟の奥にある一際広い空間で、ライアンはいら…