周囲に広がるのはのどかな風景。わずかな畑地とそれの何倍もある牧草地の中を、都市部とは異なり整備が行き届いていない荒れた道が遠くまで伸びている。遠くに見えるのはローゼンガルテン王国の北東に広がる大森林地帯、それに繋がる大山脈だ。すでに大山脈…
ジグルスが去った後のローゼンバッツ王立学院。学院イベントは期待通りの結果に終わり、生徒たちの雰囲気は全体的に良くなっている。貴族の生徒と平民の生徒との間の交流に関しては、探り探りの部分はかなりあるが、少なくともネガティブな行動をとる生徒は…
いよいよリオンとエアリエルが王都を発つ日がやってきた。だからといって特別な行事があるわけではない。一男爵家夫妻が領地に向かうことに誰も興味なんてない、はずだった。 まだ陽が昇ったばかりの早朝。人気の少ない王都の大通りを、エアリエルを抱きかか…
この場所に閉じ込められて既に何日が経過したのか。もうエアリエルには分からなくなっている。そもそも初めの数日間の記憶が全くないのだ。 全く身に覚えのないことで糾弾を受け、それでも監察部の目的が親しい平民の生徒たちにあるのだと分かり、彼らを庇う…
城内にある謁見室の中でもこの場所は、あまり形式張る必要のない非公式な場面で使われる場所だ。ここに国王と王妃が居るのはおかしなことではない。相手が近衛騎士団長だけでなければ。 近衛騎士団長との打ち合わせに謁見室など使う必要はない。執務室で普通…
その日、王都は何とも言えない複雑な雰囲気に包まれていた。 既に二週間前から告知されていたウィンヒール侯家のヴィンセント・ウッドヴィルの公開処刑。それが今日行われるのだ。 公開処刑をただ見世物として楽しみにしている者、逆に人の死を見世物にする…