月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

悪役令嬢に恋をして 第56話 届かぬ思い

異世界ファンタジー小説 悪役令嬢に恋をして

 ニガータでの戦いについての反省会を終えて、リオンもエアリエルと二人、のつもりだったが、シャルロットが付いてきたので、三人で食事に出た。初めての街なので適当に店を選んでなどという事はなく、戦いの前から美味しいと評判の店を予め調べさせて予約までしていた。
 リオンなりのちょっとした冗談だ。絶対に勝てる、と兵に信じさせる為のパフォーマンスも少しは兼ねている。
 だが、そうまでした店に来たというのに、リオンは難しい顔をして、ずっと何かを考え込んでいる。戦勝のお祝いなんて雰囲気などまるでない。目の前に並んだ食事にもほとんど手を付けないままだ。

「……ねえ、さっきから何を考えているのかしら?」

 エアリエルには慣れっこの状況もシャルロットではそうはいかない。不満そうな声でリオンに話しかけた。戦いが終わって、ようやく少しは私的な会話が出来ると思っていたのに、この状況だ。我慢が出来なかったのだ。

「我儘な女はリオンは嫌いよ?」

 そのシャルロットにエアリエルがこんな事を言ってきた。どの口がそれを言う、とは言われたシャルロットは口には出来なかった。

「我儘って。少し話をしたいなと思っただけよ」

「そう。でも、バンドゥはまだ貧しいわ」

「……いきなり何かしら?」

 全く繋がりのないエアリエルの話に、シャルロットは戸惑った様子を見せている。

「側室を養う余裕はないって言っているの」

 そのシャルロットにエアリエルは笑みを浮かべて、とんでもない事を言い放った。

「……ち、違うから。私はそういうつもりで、リオンくんと話したいわけではないわ」

「あら? 私は別に貴女の事とは言っていないわ」

「…………」

 年下のエアリエルに良いように嬲られているシャルロットだった。

「……シャルロットさん」

 二人の会話の内容を全く気にした様子もなく、リオンはシャルロットに話しかけてきた。気にしていないのではなく、考え事に集中していて聞こえていなかったのだ。

「あっ、何かしら?」

 弾んだ様子で返事をするシャルロット。エアリエルが目を細めて睨んでいる事には気付いているが、視線をリオンに真っ直ぐに向けて無視している。

「あの女は魔人も魔物も少しずつ強くなるって言っていたのですよね?」

「……ええ。そうよ」

 マリアの話だと分かって、一転、シャルロットは不満顔に変わる。

「今回の魔物については何か言っていましたか?」

「驚いていたわね。予定外に強い魔物だったみたい」

「そうですか……魔人討伐が終わるのはまだまだ先ですよね?」

「もう、つまらない質問ばっかり。私はリオンくんとこんな話をしたいわけじゃないわ。同じ質問するなら、私の事を聞いて」

「えっ?」

 初めて見るシャルロットの我儘な態度にリオンは戸惑ってしまっている。一方でエアリエルは、実に楽しそうな表情で口を手で塞いでいる。そうしないと笑い声が抑ええられないというアピールで、シャルロットをからかっているのだ。

「……えっと」

 シャルロットの頭は真っ白。自分で自分が何をしているのか分からなくなっている。

「シャルロットさんの何を聞けば?」

「い、いえ、何でもないの。あの女の話ね。そうね、そんな事を言っていたわよ」

「そうですか……」

「ねえ、何を気にしているかくらい教えてもらえないかしら?」

「ああ、そうですね。まだ序盤にしては、魔物の数も多いし、質も高いなと思って」

「そうなの?」

 実際の戦いは、リオンには不満はあっても、完全勝利と言える内容だ。その結果を出しておいて、リオンがこんな風に考えているなんて、シャルロットは思っていなかった。

「こういう事もあるかなとは思っていましたけど、ちょっと想像以上で。魔物の数だけでも、この調子で増えていったら、あとのほうはどんな事になりますか? 敵は数十万の魔物なんて事になったら、さすがに厳しいと思います」

 主人公のマリアの戦力に合わせて、敵も強くなる。これはリオンも想定していた。だが、あまりにも最初から数が多すぎると感じている。

「そうね。でも、その辺りは私には分からないわね」

「そうですよね? あの女は分かっているのかな? 分かっていなそうだな」

 魔人討伐がゲームイベントと知っているリオンだからこその疑問だ。ゲームだと考えれば、徐々に敵は強くなっていくはずだ。これはマリアも言っているから間違いはない。だが、それに比例してマリアたちも強くなれるのかリオンは少し疑問に思っている。この世界に、レベルアップなど存在しない事は、リオンには分かっている。強くなるには、地道に鍛錬を繰り返すしか無いのだ。

「……どうしてそう思うのかしら?」

 シャルロットにはリオンの考えている事など、全く分からない。マリアもさすがにゲームの世界だとは誰にも話していなかった。

「何となくですけど、きっと失敗する事なんて夢にも考えていませんよね?」

「そうね。それは私も感じているわね」

「何か勝算があるのか、それとも何も考えていないのか」

 ゲーム知識があるマリアだ。リオンの知らない何か切り札を持っている可能性はある。だが、持っていないとすれば、その時はどうなるのか。マリアのバッドエンドは望むところだが、それに自分とエアリエルが巻き込まれるのは真っ平ゴメンだ。

「すまない。ちょっと良いか?」

「アーノルド様?」

 不意に現れたアーノルド王太子にシャルロットは驚いている。店の場所は伝えたが、まさか本当に来るとは思っていなかったのだ。

「……何の用ですか?」

 リオンの方は実は気付いていた。気付いていたが、知らない振りをしていたのだ。出来れば、声を掛けるのを躊躇って、そのまま帰ってくれればと思っていたが、それはさすがに無理というものだった。

「エアリエル、いや、奥方と少し話がしたい」

「……どうぞ」

 アーノルド王太子の言葉を聞いて、リオンは眉をしかめている。今更、それもこの状況で、エアリエルと話をしようとするアーノルド王太子の意図が掴めないでいる。

「出来れば二人きりで」

「はっ?」

 更にまさかの言葉がアーノルド王太子の口から飛び出てきた。リオンは呆れ顔を遠慮無くアーノルド王太子に向けている。

「あっ、いや、誤解をしないでもらいたい。真面目な話なのだ。ただ奥方にしか聞かせたくない話で」

 アーノルド王太子もリオンが何を考えているか分かる。リオンの誤解を解こうと話をした。

「……真面目な話でも、二人きりでしか話せない?」

「今は、だ。いずれはお前にも相談する事になる」

「そうですか……エアリエルが良ければ俺に文句は言えません。但し、見える場所にしてください」

 少し考えて、リオンは了承を口にした。正面から頼んできて、それで策に嵌めるような性格ではアーノルド王太子はないと思っての事だ。

「どうだろう?」

 リオンの言葉を受けて、アーノルド王太子はエアリエルに問いを向けた。

「ええ。構いませんわ」

 エアリエルは即答。ここまでしてアーノルド王太子が何を話すか気になっている。

「では……あのテーブルで」

 食堂内の少し離れた所にあるテーブルをアーノルド王太子は指差した。声は聞こえないが、姿は丸見え。条件通りの位置だ。
 先に歩き出したアーノルド王太子の後を追って、エアリエルも席を立つ。テーブルに向かい合う形で二人は腰を下ろした。

「立場が逆になったわね?」

 その様子を見てシャルロットが少し意地悪そうな笑みを浮かべて、リオンに話しかけてきた。

「立場?」

「学院の時とは反対に、リオンくんの方がヤキモチを焼く立場になったでしょ?」

 あえてこんな話をシャルロットが持ち出してきたのは、嘗て、アーノルド王太子の気持ちについて、リオンと二人で話した事を思い出したからだ。

「ああ。そういえば前にそういう話をしましたね?」

 リオンも嘗ての出来事を思い出した。リオンには楽しい思い出ではない。エアリエルと距離を置こうと考えたきっかけとなった出来事だ。

「どう? 少しは気持ちが分かった?」

「いえ、ヤキモチはないですね。何かされないか心配なだけです」

「……そう」

 少し話をするようになっても、アーノルド王太子に対するリオンの気持ちに変わりはない。それが分かって、少しシャルロットは残念そうだ。

「シャルロットさんのほうこそ、気が気じゃないのでは?」

「私は平気よ。もう何とも思っていないから」

「そうなのですか?」

 この事実は初耳だった。それどころか、アーノルド王太子の為に、シャルロットは自分の側に居るのだとリオンは思っていた。

「ええ。自分がやった事を考えると申し訳ない気もするけど、正直に話すとそうなの」

「あっ、分かった!」

「えっ? あっ?」

 シャルロットは自分の胸が大きく高鳴った事に驚いた。

「さては他に好きな人が出来ましたね?」

 嬉しそうに、問いかけてくるリオン。シャルロットはこれを聞いて苦笑いだ。

「……ええ、でも、とっても鈍感な人なの」

 おかげで自分の気持ちをはっきりと自覚する事になった。自分の気持ちに気付いてくれない、リオンに苛立っている自分を。

「へえ、それは大変ですね」

「……相変わらずね」

 自分の気持ちを認めてしまうと、リオンの鈍感さが堪らなく悲しくなってしまう。

「えっ? 何がですか?」

「もう知らない!」

「え、ええっ? 何? 俺、何か怒らせるような事しましたか?」

「ええ、凄く酷い事をしたわ」

「……全く心当たりがありません」

「それが酷いの。全く、君って人はどうしようもなく馬鹿ね」

「……何故?」

「そして私も馬鹿」

 リオンみたいな人、この気持ちが自分にあるのはシャルロットは分かっていた。だが、まさか、本人を好きになってしまっていたとは今の今まで気づいていなかった。
 そうなると、今度はどうして自分は叶わない恋を追ってしまうのか、という思いが湧いてくる。リオンがエアリエル以外の女性に気持ちを向けるなど、想像出来ない。そういう一途なところが、シャルロットは好きなのだ。

「馬鹿同士ですね」

「……そうね。リオンくんと私は同じね」

 それでもこの一時が楽しいと思える。それがシャルロットには嬉しかった。一番にはなれない。でも、きっとリオンが、エアリエル以外で、こうして話す女性は自分しか居ないと、シャルロットは思えた。
 これを相手を思う故の自分に都合の良い勘違いとは言えない。二人が話している様子は、周囲で見ていれば、痴話喧嘩をしているようで微笑ましく感じてしまうものだ。

 


 そして、二人のそんな様子を見て不機嫌になる者も居る。エアリエルだ。

「あ、あれだ、話はすぐに済むから」

 エアリエルが何に不機嫌になったかアーノルド王太子は分かっている。それはそうだ。エアリエルはじっとリオンとシャルロットのほうを睨んでいるのだから。

「……それでお話は何かしら?」

 早く席に戻りたいエアリエルとしても話を早く終わらせるのは大歓迎。積極的に協力する事にした。

「……こうして向かい会うのは久しぶりだな」

「それが用?」

 エアリエルの視線が一瞬できつくなる。無駄話など一切求めていないのだ。

「あっ、いや、話に入る前に少し気持ちを和ませようかと」

「王太子殿下は昔話で気持ちが和むと本気で思っているのかしら?」

「いや……ただ全く関係のない話ではないので」

「……そうですわね」

 二人が話すとなれば過去の事しかない。エアリエルはとりあえず、不機嫌さを抑える事にした。

「俺の事は恨んでいるか?」

「……どう答えれば良いのかしら?」

 憎い相手でも王太子だ。王国の貴族家という今の立場では、本音で答えられる問いではない。

「王太子としての問いではない。いや、王太子としてか」

 エアリエルの本音を聞こうとしたアーノルド王太子だが、うまく話が出来ない。いざとなると、やはり話しづらいのだ。

「もっと、はっきり話して頂けると助かるわ」

 エアリエルの方はとっとと話を終わらせたい。アーノルド王太子の感情にかまっている時間はないのだ。

「……そうだな。今からいう話はこの国の王太子としての話だ。個人としての俺では話してはいけない話でもある」

「用件」

「ああ。俺は恨まれて当然の事をした。だから許してくれとはいえない。だが、リオンを巻き込む事については少し考えて欲しい」

「……巻き込む?」

 エアリエルにはそんな気持ちはない。アーノルド王太子が何を言いたいのか、これだけでは理解出来なかった。

「俺への恨みに囚われて、リオンが才能を閉じ込めてしまう事になるのは不幸ではないか?」

「……えっ?」

 これも全く考えてもいなかった言葉。アーノルド王太子の言葉の意味を理解するのに、エアリエルは少し時間を必要とした。だが、アーノルド王太子の言いたい事は分かった。納得は出来ないが。

「リオンは才能を発揮していると思うわ」

「それは分かっている。だが、才能の使う方向を間違っていると思わないか?」

「方向……何が間違っていると思っているのかしら?」

 方向については、エアリエルの口からは言い辛い事だ。アーノルド王太子がどこまで考えているかを、エアリエルは確かめる事にした。

「今回の戦いも、本気で戦功を求めているのではなく、俺たちに戦功を上げさせない事を優先している。結果として戦功の多くはリオンの手に渡るが、それによって驚くような地位を手にする事になっても、リオンは心底、王国に仕える事などしないだろう。何といっても次代の王は俺なのだ」

「…………」

 図星ではあるが、さすがに一緒に行動していれば、これくらいは分かるだろうとエアリエルも思っている。驚きはないが、答える事も出来ない。

「今回の件で力を得て、それを俺への復讐に使うか? だが、それをすれば、リオンは全てを失う事になる。その先も得られるであろう地位も名声も」

「……そうですわね」

 例え王太子を殺す事が出来ても、その後は王国を敵に回すことになる。リオンもエアリエルも覚悟の上だが、こうして改めて、それも自分ではなく、リオンの事として話されると、エアリエルの気持ちも少し揺れてしまう。
 更に続くアーノルド王太子の言葉がエアリエルの感情を別の方向に振り切らせる事になる。

「怒らないで聞いて欲しい。果たしてそれをヴィンセントは望んでいるだろうか?」

「……兄の考えが、貴方になんか分かるはずがないわ!」

 立ち上がってアーノルド王太子を睨みつけるエアリエル。怒るなと予め言われていたとしても、感情を抑えられるはずがない。ヴィンセントを死に追いやった張本人であるアーノルド王太子が言って良い台詞ではないのだ。

「すまない。だが、もう少しだけ話を聞いて欲しい。俺はあの件について、ずっと考えていた。自分の事だけでなく、ヴィンセントの事もだ」

「……だから何?」

「ヴィンセントは逃げようとしなかった。王国への忠誠の故となっているが、俺はそれだけではないと思っている」

「……話してみて」

 怒りが収まったわけではないが、エアリエルは椅子に腰を下ろした。エアリエルは、ヴィンセントが死んだときの詳しい様子を聞かされていなかった。それが聞ける機会だと考えての事だ。

「俺はこう考えている。ヴィンセントは、リオンを自由にしたかったのではないだろうか?」

「えっ?」

「リオンであれば、恐らくは、あの場から逃げきれただろう。だがそうなれば、リオンは自分の一生をヴィンセントの逃亡の為に使う事になる。ヴィンセントはそうさせたくなかったのではないか?」

「お兄様……」

 憎きアーノルド王太子の言葉であったとしても、いかにもヴィンセントらしい考えである事を、エアリエルは認めざるを得ない。そういう兄であるから、エアリエルはヴィンセントが大好きで、リオンはヴィンセントに心から仕えられたのだ。
 アーノルド王太子の言葉は真実を告げている。そう思った途端にエアリエルの瞳から、涙が溢れだした。悲しいような、懐かしいような、嬉しいような、不思議な感情から生まれた涙だ。

「もう一度言わせて欲しい。俺に対する復讐に一生を使うことはヴィンセントが望む事ではないと思わないか?」

「…………」

 今度は怒りの感情は湧いてこなかった。だからといって肯定も出来ない。本音を言えば、アーノルド王太子への復讐の思いはエアリエルの中でかなり薄れている。恨みが消えたわけではなく、リオンが王妃の子、アーノルド王太子の弟である可能性を知ってしまったからだ。もし事実であれば、リオンは兄を殺そうとしている事になる。そんな真似をエアリエルはリオンにさせたくない。
 だが、復讐の相手はアーノルド王太子だけではない。マリアもランスロットもエルウィンも二人の復讐相手なのだ。この三人への復讐を思いとどまる理由はなく、三人への復讐を果たそうとすれば、やはり王国を敵に回すことになる。

「今すぐに答えを求めるつもりはない。ただ、少し考えて欲しい」

「……ええ」

「そうか……良かった」

 とりあえずエアリエルが考えると約束してくれただけで、アーノルド王太子はホッとしている。それだけ、エアリエルにこれを話す事に緊張していたのだ。王太子という立場がなければ、決して自分の口から言って良い話ではないとアーノルド王太子は分かっていた。
 ようやく表情が緩んだアーノルド王太子だったが、その表情がすぐに引きつったものに変わる。

「話とは人の奥さんを泣かせる事ですか? それは俺には聞かせられませんね」

 かろうじて敬語は使っているが、リオンの体からは殺気が噴き出している。

「い、いや、違う。俺が泣かせたのではない」

「貴方以外に誰が居る? まずは説明してもらいましょうか? どうしてエアリエルを泣かせた?」

「だから違う、いや話をした事で泣かせたかもしれないが、俺はお前の事を思って」

「貴方に思ってもらう必要はありません。俺の事は俺自身が考えます」

「……ああ、考えてくれ。人の為ではなく、たまには自分の為に」

「えっ?」

 アーノルド王太子の言葉は完全にリオンの不意を突いたようで、リオンから放たれていた殺気が一気に散ってしまっている。

「人の為の人生も良いが、まずは自分の為の人生があっての事だと俺は思う。この事を一度、考えてみて欲しい。エアリエルに話したのはこういう事だ」

「……はあ」

「では、俺の用は済んだ。また明日、いや、次に話せるとすれば王都か。その時に」

  最後にこう告げて、アーノルド王太子は食堂を出て行った。リオンとしては何が何だか分からないまま、逃げられた感じだ。

「どういう事?」

「さあ? 何だか、お説教みたいだったわ。弟でも欲しいのかしら?」

 さりげなく真実を匂わせてみるエアリエル。

「はあ? そうだとしても、それの相手に俺を選ぶのはおかしいだろ?」

 だが鈍感なリオンが、この程度で何かに気づくはずがない。自分自身の事に対するリオンの鈍感は、ちょっとした才能だ。これがあるから、リオンを良く知るようになった周りの者は「何とかしないと」とリオンを気遣うようになるのだ。切れ者である事と鈍感である事。恐ろしさと愛嬌、二面性こそがリオンの最大の魅力だった。