花祭りは、過去に何度も行われている花街最大のお祭りだ。ただこの十年、一度も開催されていない。準備にそれなりに手間がかかること。日常業務だけで十分に忙しい花街の人々にとって、結構な負担になるのだ。さらに花祭りは店側の持ち出しになる。祭りには…
何かがおかしい。ようやくレグルスは、こんな風に考えるようになった。周りにいる人たちにしてみれば、何を今更だ。 レグルスはモテる。想いに強弱の差はあっても、彼に好意を持つ女性は少なくない。婚約者であるアリシアは別にしても、フランセスとエリザベ…
ジークフリート第二王子暗殺未遂事件の調査は、実質、打ち切りとなった。公式には「もう調査はしない」とは宣言出来ないので、続けられることになっているが、それだけに費やされる人員はいない。他の事件と同様に、軍務局警察部や内務省警保部の日常業務の…
ジークフリート第二王子暗殺未遂事件の影響で、王立中央学院はしばらく休み。空いた時間をレグルスは道場と「何でも屋」の仕事にあてた。当初は自主鍛錬の時間も増やすつもりだったのだが、それは断念。時間がたっぷり取れると分かった師匠たちが張り切り過…
ジークフリート暗殺未遂事件は王国を、そして王立中央学院を大いに揺るがせた。少し考えれば分かる。食事に薬を混入させた者が誰かとなると、もっとも怪しむべきは学院関係者。襲撃犯であることが明らかな猛獣使いたちでは、絶対に不可能とは言わないが、誰…
王立中央学院の武系コースの学院生は、猛獣相手に一対一であれば余裕で戦えるくらいには鍛えられている。強者であれば一対四、五であっても戦えるだろう。公平な条件下であれば。 今、彼らを苦しめているのは夜の闇。宿舎を燃やしていた炎はその勢いが衰え、…