低いモーター音が部屋の中に響いている。それほど大きな音ではないのだが、地下にあるこの部屋の作りが、そこにいる人々の沈黙が、それを彼等の耳に届けてしまうのだ。 ここは、いくつもある『YOMI』のアジトの一つ。その中でも幹部だけが知る特別なアジ…
新大魔将軍ブラギ率いる魔王軍に対峙しているアイネマンシャフト王国軍。その編成は、ジグルスの直率で、セントール族とエルフ族の混合部隊である近衛機動部隊が二中隊二百騎、熊人族を中心とした重装歩兵部隊が一大隊一千名、犬人族を中心とした機動歩兵部…
第七七四特務部隊に休日の定めはない。鬼が出現し、出動の要請があれば、いつでも現場に向かうことになる。とはいえ、日ごとに分隊の出動優先順が決められていて、それが最下位の分隊員は、割と自由にその日を過ごしている。外出も許可されるのだ。 今日は遊…
ユリアーナ率いる魔王軍の物量作戦に対抗するには味方もそれに負けない物量で。ローゼンガルテン王国軍はその方針で反撃の準備を進めた。王都から送られた増援軍により総兵力を増加させただけではない。味方を悩ませている魔王軍による遠距離攻撃。それに負…
第七七四特務部隊の次の任務は、その難度を増している。今回の作戦も『YOMI』のアジトの襲撃。それを一分隊だけで実施しようというのだ。もちろん、前回よりも敵の数は少ない。確認されている敵の数は二人。それに対して一分隊を当てるのだから、数の優…
湾岸南地区にある『YOMI』のアジト。以前、国防軍に襲撃されたアジトとは別のものだ。多くのメンバーにとって、アジトなんて特別なものではない。仲間が集まっていて、そこで寝起きしていれば、そこがアジト。そういうことだ。 「そう……ミコトくんが、そ…