ローゼンガルテン王国の都。王城の一室でアルベルト王子は書類の束に目を通している。国王の座を継ぐ者として政務を行っているのではない。軟禁状態のアルベルト王子にはそんな権限は与えられていない。 手元の資料は特別に頼んで入手したもの。ブルーメンリ…
ゾンネンブルーメ公国での戦いはその激しさを増していた。ローゼンガルテン王国がこれまで以上の攻勢に出たのだ。 エカードがそれを決断した理由は三つ。一つは増援として到着したラヴェンデル公国軍、タバートが率いる軍勢が期待していた以上に強力であった…
王太子の婚姻は、当人たちの同意だけで決められるものではない。これは、偽装でなくても同じだ。そもそも、王族や貴族の結婚に、本人たちの意思など関係ないのだ。 シャルロットとの結婚について、アーノルド王太子が了承とまではいかないまでも、前向きに考…
ソルがエアリエルの部屋の前に辿り着いた時は、事態は少し落ち着いていた。そうは言っても、ただ刃物がしまわれているというだけで、扉の前に陣取る近衛侍女と、王国の近衛騎士たちの間には、睨み合いが続いている。 それを、騒動を引き起こした張本人である…
バンドゥへの行軍を急いでいたアーノルド王太子たちではあるが、当然と言うべきか、救援には間に合わなかった。行程を半ばも行かないうちに戦いが終わったとの情報を聞き、更に先に進んだ所で戦闘に参加したバンドゥ領軍のかなりの人数が討ち死にしたと聞き…
魔神がその全容を現すまでに、そう時間が掛からなかった。もっとも、じっと魔神の様子を見ていた者も、何が全容なのかは分からない。それだけ異質な存在なのだ。 パッと見た感じは動物というよりは巨大な植物だ。もしくは、とてつもなく大きなミミズが何百匹…