月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

四季は大地を駆け巡る #71 分かり合えない人たち

「話って、どこでするの?」 武器屋を出て少し歩いた所で、夏が美理愛に話しかけてきた。一秒でも速く、美理愛と離れたい夏。話をしたいのは美理愛であるのに、何も言ってこないことに焦れた結果だ。 「あっ、そうね。じゃあ、お城に戻りましょうか」 「冗談…

四季は大地を駆け巡る #70 転機

真夜中の貧民区。夜の闇に覆われているはずの貧民区は今、赤々とした光に照らされている。自然の光ではない。何者かが火をつけたのだ。 その何者かたちの姿は今も貧民区にある。いかにもという感じの黒装束の男たちが、あちこちで駆け回っている。顔は見えな…

四季は大地を駆け巡る #69 王国を守る盾

勇者が帰還し、いよいよ魔族領侵攻作戦の開始が間近に迫っている。そんな状況であるのに、アレックスはエリザベートの下へ日参する羽目に陥っている。 大事な時期だ。疑いを持たれるような行動は取りたくないのだが、それがエリザベートには通じない。毎日、…

四季は大地を駆け巡る #68 残酷な運命

ネロは地下室へ続く長い階段を降りている。彼一人ではない。彼と淫魔の間に出来た子供たちも一緒だ。 子供たちを母親に会わせてやろうなんて優しさから連れてきたわけではない。そんなことが出来るはずがない。子供たちの母親は鎖に繋がれているのだ。そんな…

四季は大地を駆け巡る #67 種まき

都市連盟の南の外れにある街。そこにある商業ギルドは閑散としている。商業ギルドの職員は忙しい毎日を過ごしているのが一般的であるのだが、この場所は例外だ。 ドワーフの国であるアイオン共和国との国境であるというだけで商業ギルドの支店が設けてあるの…

四季は大地を駆け巡る #66 策士、策に溺れる

魔族討伐を終えての久しぶりの王都への帰還。王都の住民たちは熱狂的に勇者の凱旋を迎えた。大通りの沿道を埋め尽くす人々。その人たちの歓声に、にこやかな笑みを浮かべながら手を振って応える優斗。その姿はここを出て行った頃の優斗と変わらない。 素直に…