領地へ向かう旅も一ヶ月になる。結構な長旅ではあるが、王都周辺しか知らないリオンとエアリエルの二人にとっては、見るもの全てが目新しく、毎日が退屈しない楽しい日々だった。ましてこの旅は、この世界にはない習慣ではあるが、新婚旅行だ。何をしていて…
しばらくは戦争の疲れを癒す為に体を休めて。ハーバードにこう言われたグレンだったが、そもそも彼にそういう習慣はない。時間があれば鍛錬や勉強に費やし、寝る時間以外は何もしないという時を持つことなど出来ないのだ。 それでも何もすることなく一晩だけ…
ゼクソン国王と約束した物資は、半月もしないうちにエステスト城塞に届いた。ウェヌス王国との戦いの為に用意され、前線に近い猛牛兵団駐屯地に置かれていたものを運んできたのだ。 城塞まで物資を運んできたのはゼークト将軍率いる猛虎兵団だった。猛虎兵団…
カロリーネ王女を乗せた馬車は街道を西へと進んでいる。ローゼンガルテン王国の王女である彼女が乗るには相応しくない、行商人が使用するような粗末な馬車だ。さらに乗っている彼女の服装も町娘が着るような粗末、というのはカロリーネ王女が普段着ている服…
「何故、分かったのですか?」 ゼクソン国王とヴィクトリア殿下が同一人物であることを認める問いに納得顔のグレン。ただ、この件については、まだはっきりさせていないことがある。 「陛下」 「この姿でそう呼ばれるのは」 「……変な拘りですね。では、ヴィ…
ジグルスが率いる勢力、アイネマンシャフト王国の参戦はリリエンベルク公国における戦いを複雑にした。といってもそれを仕掛けたジグルスにとっては当然、複雑なんてことはなく、かつリリエンベルク公国軍は、それを率いるリーゼロッテが新たに参戦してきた…