月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

勇者の影で生まれた英雄 #57 グレンの秘密

――ローズの正体はソフィア・ローズ・セントフォーリア。大陸を統べていたエイトフォリウム帝国の皇族。 執事の衝撃の告白からグレンが立ち直るには、長い時間を要した。ようやく口を開いて出来てきたのは。 「嘘ですよね?」 否定の言葉だった。執事が嘘をつ…

異伝ブルーメンリッター戦記 第71話 主人公が多くの人の心を捉えるのに手段は問われない

キルシュバオム公国南西部。エカードたち花の騎士団が向かった戦場では激しい戦いが行われていた。キルシュバオム公国に侵攻した魔人軍はおよそ五万。それに対してローゼンガルテン王国とキルシュバオム公国の連合軍は三万。数の上で劣勢だ。さらに質の上で…

勇者の影で生まれた英雄 #56 ローズの秘密

幾本もの木々が整然と立ち並ぶ緑豊かなその場所はウェヌス王都の墓地。木々の間には白い墓石が、これもまた整然と並んでいる。 人気のないその場所に一人佇む男の姿があった。漆黒の髪、どこにでもいそうな商人の様な姿をしたその男は、グレンだ。 墓石にフ…

異伝ブルーメンリッター戦記 第70話 何故物語は悲劇を求めるのか

リリエンベルク公国領に侵攻した魔人軍は三万。その第一報を聞いたリリエンベルク公爵が懸念した通り、その軍はほぼ魔人だけで編成された精鋭と呼べる軍だった。 その魔人軍に対してリリエンベルク公国軍は善戦した。兵を鍛えるだけでなく、防衛線と定めた地…

勇者の影で生まれた英雄 #55 ちぎれた鎖

翌日、何の先触れもないままにゼクソン国王は採掘場にやってきた。 それなりに豪奢な馬車を囲む騎馬がわずかに十騎。一国の王としては身軽な移動だろう。それを確認しながらも、グレンはいつまでも視線をそれに向けることなく、自分の仕事に取り掛かった。 …

異伝ブルーメンリッター戦記 第69話 今もまだ世界は定められたストーリーで動いている

花の騎士団の行軍はかなりその様相を変えている。隊列を整えて進むのではなく。バラバラに走っているのだ。移動中も兵士を鍛えようというクラーラの提案を、エカードはこういう形で実現していた。 これにより行軍速度は大いに速まった、とはならない。永遠に…