「「「うわぁああああっ!!」」」 大森林に絶叫が響き渡る。叫び声の主はヒューガの拠点で一緒に生活することになった人族たち。今日もいつものように外縁までやって来て鍛錬を行っていたのだが、この有様だ。 「まったく情けないですね。あの程度の魔獣相…
目の前に並ぶナイフをただ見つめているだけで、グレンの手は全く動かなかった。 しばらく、そうやっていたグレンだったが、やがてナイフを一つ一つ手に取ると、切れ味を確かめるように撫でてみたり、握ってみたりを繰り返している。 周りからクスクス笑いが…
イベントのメインであるダンスパーティー。ミス・ミスターである自分たちはその時間を一緒に過ごさなければならないのだと分かって、檀上で呆然と立ち尽くすジグルスとユリアーナの二人。最初に立ち直ったのはジグルスだった。 「はい、提案があります」 「…
「残念。今日は貴方の騎士はいないのね?」 部室に入ってきたマリアンネの第一声はこれだった。リーゼロッテと仲が良い彼女ではあるが、この部室を訪れるのは初めてのこと。「くだらない取り巻きの顔なんて見たくない」、こう言って部室に近づこうともしなか…
窓から見える空が、橙色から青紫色に変わって行く。晴れの日に時折見られる、夕闇迫る、このひと時の空の色の移り変わりを見るのがグレンは好きだった。一日の終わりを感じて、何となく気持ちが落ち着くのだ。 ぼんやりとそれを眺めているグレン、だったのだ…
ヒューガは助けたエルフとの話を終えて、人族が捕らえられている部屋に向かう。その表情には疲労の色が浮かんでいる。彼女が受けた仕打ちを考えれば、正気でいられるだけで大変なこと。正気でいるほうが辛いのかもしれない。同情の気持ちが湧くが、胸に残っ…