目が覚めた頃には日がすっかり昇っていた。こんな時間まで寝ていたのは久しぶりだ。慣れない長旅でさすがに疲れていたのかもしれない。 王都を出て一カ月。かなりパルス王国の東のはずれに近づいてきている。乗合馬車など、出来るだけ速く移動できる手段を使…
時系列についての誤差は多少あるものの、物事はジグルスの知っている通りに進んでいく。今のこの状況も既知のイベントだ。 (しかし、まだこのイベントが必要なのだろうか? エカード様はとっくに攻略されていると思うのに) そう疑問に思いながら、ジグルス…
一学期もあっという間に終わり、夏季休暇に入った。 リオンはヴィンセントに少し遅れて、屋敷に戻る事にした。寮の片づけや、休暇の間に読みたい本を借りる為、など理由は色々とある。 だが、それは表向きの理由で、実際には纏まった自由な時間が欲しかった…
クラウディア第一王女の部屋の隣。そこに小さな隠し部屋がある。本来の目的は刺客などから逃れるために一時的に隠れる為の場所だが、今は別の目的で使われていた。 彼女を監視するための部屋だ。その部屋で今、小さな騒ぎが起きている。見張り役たちはクラウ…
自分が転生者だと気が付いたのは六歳になったばかりの頃だった。何気なく枕元に置かれていた、いつも寝る前に母親が読んでくれていた本を開いてみると、初めて見るはずの文字の意味が分かった。 そして、分かっているということを自分が認識した瞬間、堰を切…
貴族の子弟に対して、爵位に応じた待遇の違いがあるように、その従者にも違いがある。主人たちが授業を受けている間、従者たちは控室で待つ事になるが、その控室も、仕える家の爵位によって変わるのだ。 今年から用意された王家と三侯爵家の従者専用室はその…