月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

悪役令嬢に恋をして #52 戦う理由

異世界ファンタジー小説 悪役令嬢に恋をして

 リオン率いるニガータ防衛別働隊の出陣は、当初の予定とは異なり、近衛騎士団と日にちを合わせる事になった。リオンが別の日に出発するつもりである事を知った近衛騎士団長が、横槍を入れてきたのだ。
 ただでさえ近衛騎士団長は、リオンとソルの関係が良いものになって欲しいという期待を持っていた。その時点で、別々の行動など認めなかっただろうが、そこに更にアーノルド王太子の同行まで加わった。しかも、アーノルド王太子が自ら望んでの同行だ。
 少なくともアーノルド王太子の側は、リオンとの関係を変えようという意思がある。それを知った近衛騎士団長が別行動など許すはずがなかった。
 かくして、近衛騎士団長命令という何の権限によるものか分からない命令によって、強引に出陣の予定を決められたのだ。
 リオンとしては、全く納得のいかない状況だが、さすがに軍令違反を行うわけにはいかず、指示通りに近衛騎士団と出発日をあわせる事にした。もちろん、リオンがただ大人しく言うことを聞くわけがない。少しでも煩わしい事態を避けようと色々画策はしているのだが、それは王都を出たあとでの話だ。まずは命令通りに、近衛騎士団と同じ日時で王都を発たなければならない。
 今日がその日。リオンが出発地、自軍であるバンドゥ領軍の集合地点に選んだのは、とても出陣には似つかわしくない場所だった。 
 四色の鎧に身を固めて整列しているバンドゥ領軍が見守る中、リオンはエアリエルと二人で、処刑台の上に花を捧げていた。ヴィンセントが最後に倒れた場所だ。
 リオンがこの場所に来るのは、ヴィンセントが亡くなった日以来。エアリエルにいたって初めてだ。二人はようやく、この場所に来る事が出来た。気持ちの整理が出来たというわけではない。今も尚、ヴィンセントの死への恨みは少しも薄れていないし、ヴィンセントを守れなかった自分を許せてもいない。ただ少しだけ、自分たちがやるべき事が、やれる事が見えてきた。全ての者に復讐をという漠然としたものではなく、もっと具体的な事だ。
 今日は、それをヴィンセントに報告に来た。その第一歩となる今日の日に――

 その場に跪いて、ずっと祈るように何かを呟いているリオン。エアリエルも又、その横で頭を垂れていた。その二人の様子を、バンドゥ領軍の者たちは少し離れた場所で、ただじっと黙って見ていた。彼らはヴィンセントを知らない。だが普段、厳しいところしか見せない自分たちの領主が、これほど真摯な態度を見せる主は、余程の者だったのだろうという事だけは感じていた。
 やがてリオンが、その隣のエアリエルがすっくと立ち上がる。二人の儀式は終わりを告げたようだ。処刑台の階段を降りて、リオンが領軍の前に立つ。
 
「では行くか」

 出陣だというのに、特に激を飛ばすこともなく、落ち着いた口調でリオンは告げた。それを受けて、リオンとエアリエルの馬が前に引き出される。部下から手綱を受け取って、二人は馬上の人となった。
 そのまま、二人を先頭にして、ゆっくりと部隊は進み始めた。
 処刑場を出てすぐに、先で待ち構えている騎馬隊が見えてくる。ソル率いる近衛騎士見習いの部隊だ。数は五百騎。四百騎のバンドゥ領軍より、少し多いくらいだ。

「……王都の外で待っていれば良かっただろ?」

 馬を並べてきたソルに向かって、開口一番、リオンが文句を言う。

「別の門から出られては困るのでな」

「なるほど、その手があったか」

 ソルの嫌味はリオンには利かなかった。返された言葉で、ソルの方が苛ついてしまう。だが、こんなやり取りをする為に、ソルはここまで出張っていた訳ではない。

「……本当だったのだな?」

「何が?」

「元従者だと聞いた」

「ああ、その事か。それがどうした?」

「主を助けるために、単身で処刑場に乗り込んだという話も聞いた」

「……だから何だ?」

 リオンの表情が険しくなる。ヴィンセントを死なせてしまった事は、リオンの心の傷となっている。他人に軽々しく触れられたくはない。

「どうして、そこまでの事が出来た?」

「……お前に説明しなければいけない義務はない」

「では、質問を変える。人に忠誠を捧げるというのは、どういう気持だ?」

「それを近衛であるお前が聞くのか? 近衛は王族への忠誠をもって仕えているのだと思っていた」

 近衛の忠誠は、王国ではなく、王族にある。もっと言えば、直接に仕える相手だけに向けられる。一言で近衛騎士といっても、それぞれ忠誠の向け先が違うのだ。もちろん、あくまでも、あるべき姿としてであり、現実にはそうではない。自分の仕える相手の為に、国王に逆らう者など滅多にいないだろう。

「……自分には仕える相手がいない」

「はっ?」

「いや、いないわけではない。どこに居るのか分からないのだ」

「……全然意味が分からない。お前、何を言っている?」

「近衛騎士の中には、生まれた時からお側で仕える者が居る。近衛騎士の中というのは正しくないな。まだ子供の時に選ばれて、その方が生まれた時から側で仕え、成長とともに近衛騎士となる者だ」

 そんな近衛の話などリオンは初めて聞いた。だが、その話を聞いても、だから何だという気持ちが生まれただけだ。

「……お前がそうだと?」

「そうだ」

「それは、自分は選ばれた者だって自慢か?」

「そうではない。自分が仕えるはずだった方は第一王女、アーノルド王太子殿下のすぐ下の妹君だ」

 妹ではないのだが、ソルは事実を知らされていない。一般に広がっている話を信じているのだ。

「……もしかして行方不明の?」

「そうだ」

「それなら見つかっただろ?」

「何だと!? それは本当か!?」

 リオンの言葉に、ソルは血相を変えている。ずっと探し続けていた主。すでに見つかっているなんて話は知らなかったのだ。

「あの女だろ? 黒髪の、青い目の、異世界人の勇者」

 あえて名前を口にしないところに、リオンの子供っぽさが出ている。ほんのわずかでも距離が近いように周囲に思われるのが嫌なのだ。
 リオンの言っているのはマリアの事。つまり間違った情報だ。

「……あの女は違う」

「えっ? そうなのか? 学院に居た頃だが、そういう話になっていたはずだ」

「王妃殿下が違うと断言なされたそうだ」

「へえ。ヴィンセント様の罪状には、王族である、あの女への不敬も含まれていたはずだがな。それを違うと? だったら、もっと前にそう言って欲しかったな」

 冤罪である事は最初から分かっているが、それでもリオンは嫌味を口にせずにはいられなかった。

「……その言葉こそ王妃殿下への不敬ではないのか?」

「では、訴えろ。俺は別に構わない」

「そんな事をしても意味は無い。証拠がない以上、お前に惚けられて終わりだ」

「心配するな。俺には王族への忠誠などないし、それを隠すつもりもない」

「何だって?」

「俺が忠誠を捧げる相手はヴィンセント様ただ一人だ。これは、この先もずっと変わらない」

「……どうして?」

 結局、最初の問いに戻ってしまった。だが、内容は微妙に違う。死んだ者へどうして忠誠を向け続けていられるのか。それは、忠誠を向ける相手を失ってしまったソルには、どうしても聞きたい事だった。

「どうしても何も、他に忠誠を向けたいと思える人がいない。居るとしたらエアリエルだけど、今は妻だから主に向ける忠誠とは違う」

「……しかし、お前は国王陛下から爵位と領地を拝領している。国王陛下に忠誠を向けるべきではないか?」

「欲しくてもらったものじゃない。それに領主としての義務は果たしているつもりだ。その上、忠誠まで求められてもな」

「……分からない。王国に仕えているからには、王国に忠誠を向けるべきだ」

「向けるべきって。義務感で本当の忠誠心なんて生まれるのか? 少なくとも俺は従者になったから、ヴィンセント様に忠誠を向けたわけじゃない。この人の為に何かしたいと思えたから、ずっと従者でいただけだ」

「……そうか」

 ただの義務感からであるならば、それは本当の忠誠ではないとリオンは言っている。ソルにも納得出来る言葉だ。だが、そうであるなら自分がずっと行方不明になった王女に向けていた想いは何だったのか、ソルには分からなくなった。

「まあ、あれだ。お前の場合はまず相手を探すところからだな。そうじゃないと、仕えるのに相応しいかそうでないかも分からない」

 ひどく落ち込んだ様子を見せるソルに、慰めの言葉をかけたつもりなのだが、何の慰めにもなっていない。

「簡単に言うな。俺がどれだけ探したと思っているのだ?」

「さあ? 俺が知るはずがないだろ?」

「だから軽々しく言うなと言っている」

「忠誠なんて言葉を軽々しく口にする方がどうかと思うけどな」

「それは……」

「正直、俺にも分かっていない。主に対する忠誠心ではなく、友情だったようにも今は思える。もっと違う感情のような気もするな」

「……違う感情とは?」

「分からない。分かっているのは、俺にとって、この世で信頼出来たのは、ヴィンセント様とエアリエルの二人だけだったという事だ」

 リオンの感情をどれだけ聞いても、ソルには理解出来ないだろう。ヴィンセントとエアリエルは、周囲の全ての者から蔑みの目で見られていたリオンが、生まれて初めて出会った信頼出来る人たちだ。自身の好意の向け先は、リオンには二人しか居なかったのだ。
 それでもソルは聞かずには居られない。

「その信頼出来る人を失って、どうして、普通で居られる? 隣に居る奥さんのおかげか?」

「……普通で居るつもりはないけどな。そう見えるとしたら、今はやる事があるからだな」

「それは何だ?」

「名を上げることだ」

「何?」

「魔人との戦いで、誰も及ぶ者がいないほどの戦功をあげて、俺の名を王国全土に広める事」

「……出世を?」

 これまでの話と全く繋がらないリオンの宣言にソルは戸惑いながら、問いを返した。

「違う。俺の名が広まれば、ヴィンセント様の事も多くの人が知るようになる。俺は王国の全ての人に知らしめたい。ヴィンセント・ウッドヴィルは、あのリオン・フレイが忠誠を捧げた唯一人の人物だと。そのような人物を殺したのは間違っていると」

 世界が無理やり舞台に引き出そうとするならば、その舞台を利用してみせる。これがリオンの決意だ。ゲーム設定を回避するのではなく、正面から突破する。そう覚悟を決めていた。

「それは……」

 リオンの心のうちは、ソルには分からない。
 だが、リオンの行動は、ヴィンセントの名をあげると共に、その間違った処分を下した王国を貶める事にもなる。近衛騎士としては、その行動を止めるべきだ。
 だがそう思う一方で、ソルはリオンの言葉に心を震わせていた。失ってもなお、その人の為に行動しようとするリオンが、自分がそう在りたいと思う姿に重なるのだ。

「協力しろとは言わないが、邪魔はするな。それを許すほど、俺には余裕はない」

 この言葉の意味もソルには分からなかったのだが、リオンはこれ以上、何も言う事なく、馬の足を速める事で会話の終わりを宣言した。
 それにソルが聞いても、リオンは何も答えなかっただろう。余裕はないという言葉の意味は、邪魔をすれば、すぐに消しにかかるという意味だ。その殺す相手に話す事ではない。
 仕方なく、後ろについて馬を進めていたソルだったが、やがて周囲の様子に気が付いた。処刑場から外壁の門までは、それなりの距離がある。千にも満たない数とはいえ、軍勢が行進していれば、やたら目立つ。しかも、バンドゥ領軍の四色の鎧武者が整列して馬を進める様子は、騎士や兵を見慣れている王都の民にとっても、実に珍しい光景だった。
 そして何よりも目立っているのは先頭を進む二騎。リオンとエアリエルが並んでいる姿は、周囲の注目を集めずにはいられないほど、絵になっていた。
 王国に名を知らしめる。リオンがすでにその為の行動を起こしている事をソルは知った。もっとも、ソルに分かるのはここまでだ。リオンの策がこの程度のはずがない。
 この日から数日後には、四色の鎧を纏った軍勢がバンドゥ領の軍で、それを率いているのがリオンであるという事実が広がる事になる。主であり、兄であるヴィンセントの死という悲劇の中で結ばれたリオンとエアリエルの奇跡の愛の物語と共に、吟遊詩人に歌われる事によって。
 ただ、吟遊詩人の件は、情報操作を任された貧民街の者たちが、リオンに内緒で行った事で、後日、彼らは主人公に祭り上げられた事を恥ずかしく思うリオンに、少し怒られる事になる。余談だ。

 

◆◆◆

 アーノルド王太子の部隊とは北門で合流した。リオンにとって面倒ではあるが、予定していた事なので、もう覚悟は決めている。逆に特別な事は何もなく、ただ合流したのだが、一つだけ誤算があった。
 そこにシャルロットまで居たことだ。シャルロットは、てっきりマリアたちの本隊で行動するものと思っていたリオンにとって全く予想外の事態だった。
 シャルロットに対して、リオンは思うところはほとんどない。足し引きして五分ということなので、普通に話をするのだが、それが状況をややこしくしている。
 シャルロットは意識しての事なのか分からないが、アーノルド王太子との会話の仲介役のような役目を果たしてしまっているのだ。

「リオンの領地の人たちはどこに行ったの?」

 リオンは王都を出てすぐにバンドゥ領軍をいくつかの部隊に分けて散開させた。シャルロットはその事を聞いている。

「少し離れた所で、目的地に向かって進んでいます」

「そう」

「……どうして、そのような事をするのだろう?」

 シャルロットの質問へのリオンの答えを聞いて、アーノルド王太子が疑問の言葉を呟いた。

「どうして、そんな事をさせているの?」

「……訓練です」

「そう」

「行軍の訓練なのか? いや、違うな、ただの行軍訓練であれば、目の届く範囲で行うはずだ」

 又、アーノルド王太子が呟く。

「何の訓練なの?」

「……今回の任務の目的は魔物の集団を合流前に各個撃破する事です。これは知っていますよね?」

「ええ。さすがに知っているわね」

「魔物はいくつものルートで国境付近から進んできます。それを討つためにこちらも部隊を分散させようと思っています」

「そう」

「それでは兵力の分散、逐次投入という事態になる可能性もあるな。良い策とは思えないが……」

 そして、又、アーノルド王太子の疑問の声。

「えっと……」

 自分の言葉にするには、ちょっとシャルロットには難しかったようだ。

「もう良いです。さては最初からこのつもりで、同行してきましたね?」

「違うわよ。ただ、今の関係はちょっと寂しいと思って……」

「……はあ、女性って、あれですね?」

 アーノルド王太子の手前、一応は気を使って「好きな人の為に一生懸命」という言葉を口にするのは控えておいたのだが。

「違うわ!」

「えっ?」

 それでも大声で否定してきたシャルロットに、リオンは戸惑いを見せる。そのリオンを見て、シャルロットは自分の失敗に気が付いた。

「あ、あれよ。私はただそれぞれの友人として、二人が仲良くなってくれればと思って」

「……俺とシャルロットさんは友人でしたっけ?」

「ええ、私はそのつもりよ」

「あっ、そうですか……」

 きっぱりと言い切られると、さすがに否定しづらい。曖昧な感じではあるが、リオンは友人である事を受け入れた形になってしまった。

「それで? アーノルド様の疑問の答えは?」

「……出来る事なら、分散はしたくないと思います。でも、まとまったままでは、幾つにも分かれて進んでくる魔物を防ぎきれません。俺が言っている『防ぎきる』は、一つの街も村も襲わせないという意味です」

 これを話すリオンの視線はアーノルド王太子に向いている。シャルロットを通したやり取りが面倒くさくなったからだ。

「それは……出来るのか?」

 リオンの言っている事は理想だ。だが、アーノルド王太子には出来るとは思えない。

「分かりません。ですから、訓練をしています」

「その訓練の中身が分からない」

「連携というか、情報伝達というか……離れて移動している各部隊を、効率的に移動させる練習です」

「……分からない」

「伝令を頻繁に動かして、各部隊の状況を出来るだけ最新の状態で把握する。各部隊が、今の場所から次の目的地まで、どれくらいで移動出来るかを正確に算出して、どの部隊を動かすのが良いか判断する。場合によっては合流、分散も。こんな感じです」

「……出来るのか?」

「だから分からないと言っています。出来るか出来ないかは、やってみないと分からなくて、その為の訓練です」

「そうか……」

 発想は理解出来るが、実現イメージがアーノルド王太子には湧いてこない。伝令を飛ばして部隊を動かす。そんな、ただ当たり前の事をリオンがしようとしているとは思えないのだ。その考えが間違いでない事は、すぐに分かる事になった。

「赤、目的地に到着する頃です」

「遅い。もっと早く伝令を送れと伝えろ。今から部隊まで戻る時間、行軍は止まる。無駄な時間だ」

「はっ」

「そこから北東の村に進むように。本隊から更に距離が離れる。その計算を間違えるな」

「はっ」

 リオンの指示を受けて、伝令が戻っていく。だが、この伝令が非常識な事になっていく。

「青、次の指示を」

「その前に。現在地は?」

「ほぼ真西です。本隊と目的地を結ぶ三角形の位置におります」

「へえ、さすが。では目的地到着後、本隊と合流。合流地点を誤らないように」

 別の部隊の伝令も指示を聞いて、本隊から離れていく。これに続いて、黄の党、緑の党からの伝令も辿り着いては、リオンの指示を受けて戻っていく。
 それで一区切りとはならなかった。次から次へと、どれほどの数が居るのかと驚くほどの頻度で、伝令が現れては、部隊の現在地と、リオンからの指示を聞いて戻っていく。頻度もそうだが、リオンは時折、前の伝令に告げた命令とは別の指示まで出していた。

「……命令を受ける部隊は混乱しないのか?」

 指示内容が頻繁に変わっては、部隊が混乱して動けなくなる。アーノルド王太子はそれを心配しての言葉だったが。

「混乱するのは、余計な事を考えるからです。ただ指示に忠実に、正反対の命令であっても、最新の命令に従えば良いだけ」

「……それはそうかもしれないが」

「部隊が気を付けるのは、一定の速度で移動する事だけです。この訓練で難しいのは伝令が迷わずに部隊に戻る事が出来るか、そして伝令がもたらした情報を整理して次の指示を誤らない事です」

「それが出来れば?」

「理屈では部隊を効率的に動かす事が出来て、結果として、魔物を撃ち漏らす可能性が減ります。まあ、もう少し訓練してみないと、使い物になるか分かりませんけど」

「……そうだな」

 つまり、この訓練の要は伝令から情報を受けて、それに基いて指示を出す者、リオンだ。アーノルド王太子は気が付いた。リオンは馬上のままで、次から次へと現れる伝令に対応している。地図を見ることもなく、全て、自分の頭の中だけで考えて。
 もしこれで誤ること無く、全ての指示を出せていて、部隊が混乱なく行動出来ているとしたら。
 ただ側に居て、その行動を見聞きすることで色々と学ぼうと考えていた自分は、とんでもなく甘かったのかもしれない。そうアーノルド王太子は思った。