月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

四季は大地を駆け巡る #8 違いは比べなければ分からない。

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 王城の敷地の外れにある林の奥。三人の為にクラリスが魔法の鍛錬場として見つけてくれた場所だ。三人も薄々気が付いているが、日向たちが行っている鍛錬は特殊な内容。それを人に知られないようにしようと思えば、周りを木々に囲まれたこの場所は持ってこいの場所だ。クラリスもそれが分かっていて、選んだに違いない。
 まだ暗いうちから自主錬を行うようになってからまだ一週間。それでも三人とも確実に体力がついてきて、午前中一杯かかっていたトレーニングもかなり早く終わるようになっていた。
 そうなると夏は起きる時間を遅くしようと言い出し、夏に反対できない冬樹も同意してしまったことで三人での鍛錬は朝食の後、四の鐘と半刻、つまり九時からになった。
 ただ以前から日の出とともに起きている日向にとっては関係ない。起きる時間を遅くすることなく、一人でトレーニングを続けることにした。
 今日の朝は珍しくクラリスも一緒。普段は朝食の時まで顔を合わせることはないのだが、毎朝、日向が一人で何をしているか気になったのだ。

「ふっ、ふっ、ふっ」

「あの……何をされているのですか?」

 だが目の前で見ていてもクラリスには日向が何をしているのか分からない。

「スクワット。下半身を鍛える鍛錬だ」

「そうですか」

 林の中を走り回って、人目については困るので、早朝のトレーニングは筋トレを中心に行っている。

「よし、次は」

「あの……それは」

 次の鍛錬もクラリスには何の為か分からない。

「腹筋。お腹の、筋力を、鍛える、鍛錬だ」

「そうですか……なんか楽しそうですね?」

「楽しいよ。鍛えれば鍛えただけ体が強くなるのが分かるからね。お腹も割れてきたし、中学生の体とは思えないと思う。見てみる?」

「いえ! 結構です!」

 クラリスに腹筋を見せようとした日向だが、それはものすごい勢いで拒否された。年上であってもクラリスはかなり純情なのだな、くらいに思ってまた筋トレに戻る日向。

「そういえば、ふっ、クラリスさんは、ふっ、あの二人が、ふっ、何してるか、ふっ、知ってる?」

「まだ寝ていると思いますけど?」

「あっ、冬樹たち、ふっ、じゃなくて、ふっ、勇者のほう」

 日向が聞いたは二人は冬樹と夏ではなく、勇者たち。

「気になりますか?」

「どんな、ふっ、鍛錬を、ふっ、しているかはね」

 今の段階で実力差を気にしても仕方ない。日向が知りたいのは勇者である二人の鍛錬がどのようなものか。教わる環境は勇者の二人のほうが圧倒的に良いはずなのだ。

「ユート様は剣術を、ミリア様は魔法の鍛錬を主にしています」

「えっ!、ふっ、片方しか、ふっ、してないの?」

 すでに勇者の二人は鍛えることを絞っている。それに日向は驚いた。

「それぞれ得手不得手があるようです。得意な面を伸ばそうという考えだと思います」

「考える事は、ふっ、一緒か。しかし、ふっ、もう、ふっ、基礎は、ふっ、終わったって、ふっ、ことか。それで、ふっ、どんな、ふっ、鍛錬を?」

「ユート様は近衛第一大隊長のアレックス殿の指導の下、近衛第一大隊の隊長クラスがつきっきりで剣術の稽古。ミリア様には宮廷筆頭魔法士のグラン殿と宮廷魔法士団の上級魔法士がこれもつきっきりで教えています。あとは魔獣についての講義でしょうか。どんな魔獣がいて、それぞれどう戦うのが効率的か。そういうことを教わっているようです」

 日向が考えていた以上にクラリスは、勇者二人の鍛錬内容を詳しく知っていた。

「さすが、ふっ、勇者、ふっ、待遇が、ふっ、違うね」

「ええ。いずれもこの国一番の剣術の使い手と魔法士ですからね。ユート様は既に近衛の中隊長クラスでも相手にならないくらいです。なんでも剣道というものを既に会得しているとか。ホクシンなんとかと言うそうです」

「ふぅー。北辰一刀流かな? さすが、プリンス。剣道の心得があると言っていたけど、そんなものを習っていたのか」

 実際にどの程度のものか日向は知らない。ただ自分でも名前を知っている流派だということで感心しているだけだ。

「もうよろしいのですか?」

「せっかくクラリスさんがいるから、魔法のほうもやっておこうと思って」

「もしかしてお気を使わせてしまいましたか? すみません」

「全然。魔法も大事だから……そういえばもう一人はどういう感じ?」

 美理愛は魔法に特化した鍛錬を行っている。それもどのような内容なのか日向は気になった。 

「ミリア様も魔法の才をかなり発揮しているようです。わずか二週間で初級魔法を会得し、中級魔法に移っているようです。この調子ですと一年もかからずに上級までいってしまいそうですね」

「もう中級……こっちは基礎訓練だというのに。あせっても仕方ないけどね」

「その通りです。では、位置についてください。的はいつもの通りです」

 いつも魔法の鍛錬を行う時と同じやり方。日向は所定の位置に立って、少し離れた場所に立っている的を見る。魔法の鍛錬の為にクラリスが用意した的だ。細い杭の上に蝋燭(ろうそく)が立っている。

「じゃあ、始める」

 意識を先にある蝋燭に集中させる。そこから徐々に意識を手元、指先に移す。

「Fire」

 呟きとともに、指先から炎の玉が飛び出す。炎の玉はまっすぐに的である蝋燭に向かい、それを燃やし尽くした。

「うわ、失敗」

「そうですね。コースは悪くなかったと思いますが、凝縮が足りなかったようです。もう少し、魔力の凝縮を意識してください」

「わかった」

 一度大きく深呼吸をしてから日向は意識を集中させる。先ほどよりも更に魔力を凝縮、玉を圧縮するイメージを持つ。

「Fire」

 先ほどとは異なる的に向かった火の玉は、蝋燭の先に火をつけて、さらに先に飛んで行った。

「Break」

 日向の言葉とほぼ同時に火の玉が消える。今度は成功だ。

「次です」

 続けて並んでいる他の的に向かって、同じことを繰り返す。日向は失敗することなく、残りの蝋燭全てに火を灯すことが出来た。

「では、続けて水で」

「Water」

 今度は指先から水の塊が飛び出す。先ほどと同じように蝋燭の先をかすめて水の塊は飛んでいく。先ほどと違うのは、ついている火を消していくことだ。
 それが終わるとまた火の魔法で蝋燭に火をつける。二回目のほうが難しい。一度水にぬれた蝋燭の芯に火をつけるには、最初よりも更に魔力の凝縮が必要になるからだ。
 それが成功すると次は風で消す。これで一巡。始めたばかりの頃は水の次に風で乾かして、その次に火だったが、今はこの順番になった。
 使っているのは初級魔法で、この鍛錬の目的は魔力の量と方向性の両方のコントロール。基礎を固めるための訓練だ。これを何順も繰り返すのが、日向たちがクラリスさん教わった訓練の方法。
 これをひたすら繰り返していると突然体から力ががくんと抜ける。いわゆる魔力切れというものだ。立っているのもつらくなって、その場に座り込むことになる。

「ここまですね」

 その様子を見て、クラリスが鍛錬の終了を告げた。

「大分慣れてきましたね? 次はもう少し速度をあげることを意識しましょうか。目標は、この半分くらいにしましょう」

「……わかった」

 なにげにクラリスはスパルタだ。今の速度でも日向にはかなり難しいのだが、それのさらに上を求めてきた。今の半分となると一回一回集中している時間はない。連続で魔力を飛ばすことになる。つまりそれを会得する為の訓練なのだ。

「……クラリスさんって、どれくらいのスピードで出来るの?」

「今のヒューガ様とそれ程変わりませんよ。これはある人から教わった鍛錬の方法です。残念ながら私はその人の教えを完全にマスターできないうちに教わることが出来なくなってしまいましたので」

「そう……」

 自分にも出来ないことをクラリスはやらせようとしている。それは少し意外な気がしたが、問題はない。城にいる間に襲われることは可能な限り多く教わっておきたい。そう日向は考えている。

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 手に持った杖を目の前に掲げて、宮廷筆頭魔術士のグランは魔法の言葉を紡いでいる。

「我に宿りし魔の力よ、その力を顕現し、水の刃となりて、敵を切り裂け! ウォーターカッター!」

 詠唱が終わると同時に杖の先から刃の形をした水が放たれた。放たれた水の刃は遠く離れた的に向かっていき、それを切り裂く。

「すごい!」

 それを見て美理愛が感嘆の声をあげた。

「これが水の中級魔法の一つ。ウォーターカッターじゃ。どうじゃな?」

「ちょっと怖い感じです」

 今の魔法が人に当たった時のことを想像して、美理愛は恐怖を感じた。噴き出す血を見て、喜ぶ趣味は美理愛にはないのだ。

「怖い? なるほど。確かに初級魔法のウォーターと比べて、殺傷力はこちらの方が上じゃ。ウォーターが水を敵に叩きつける魔法であるのに比べて、ウォーターカッターは敵を切り裂く魔法じゃからな。だが、攻撃魔法とは、そういうものだ。一度放ったら、確実に敵にダメージを与えるものでなければならん」

「はい。それは分かります」

 魔法は何度も敵に向けられるものではない。魔力量には限界があり、強力な魔法ほど魔力の集中と詠唱に時間がかかる。だから魔法での攻撃は確実に相手を倒すものでなければならない。これは最初のほうで、師匠であるグランから教わったことだ。

「さて、詠唱の違いは分かったな」

「はい。ウォーターに比べて、少し詠唱が長いですね」

「ああ。級が上がるほど長い詠唱が必要になる。じゃが、その分威力があがるわけだ。だからこそ威力の高い魔法を放つときは、機会を見極めなければならない。味方との連携も大切じゃ。まあこの辺はもう少し先の話じゃな。今はまず個人の技量を高める時期じゃ」

「はい」

 優斗と一緒に戦う為には、それに相応しい技量を身に着けなければならない。美理愛はこう考えている。彼女にとって幸いなのは、優斗は魔法が得意ではないこと。魔法が得意な美理愛は確実に彼の力になれる。

「さて、では実際にやってみよ」

「はい」

 手に持った杖に向かって意識を集中させながら、美理愛は詠唱を開始する。

「我に宿りし魔の力よ、その力を顕現し、水の刃となりて、敵を切り裂け! ウォーターカッター!」

 魔力が水になって的に向かっていく。が、グランとは異なり、的を切り裂くような形にならなかった。地面に打ち付けられている的が大きく揺れるのが遠目にも分かる。

「あっ…」

 失敗だ。今のは初級魔法のウォーターと同じ。威力は少し上かもしれない。それでも意図したものでないのは確かだ。

「ふむ。悪くはなかった」

「でも、失敗でした」

「そうじゃな。ちょっと急ぎ過ぎじゃ。詠唱はもっと丁寧に唱えなければならん。それと詠唱の違いをもう少し考えてみるがよい」

「詠唱の違いですか?」

 初級魔法のウォーターの詠唱は『水の力で、敵を討て』。一方、ウォーターカッターは『水の刃となりて、敵を切り裂け』。先程の失敗は刃にならなかったことと的を切り裂けなかったこと。そう考えるとこの二つの部分が失敗の原因。グランの助言で美理愛はそれが分かった。

「もう一度、やってみます」

「うむ」

 だが結果は同じ。魔力は上手く刃となってくれない。

「もう一度じゃ」

「はい」

 何度か繰り返したが、なかなか切り裂くまでにいかない。

「落ち着け。お主なら必ず出来る。気を落ち着けてもう一度だ」

「わかりました」

 美理愛は軽く息を吐いて気持ちを落ち着ける。手に持った杖を目の前に掲げて意識を集中。ひとつひとつの言葉を確実に唱えることに気をつけて。

「我に宿りし魔の力よ……その力を顕現し……水の刃となりて、敵を切り裂けっ! ウォーターカッター!」

 体から何かが抜けるような感覚とともに、魔法が的に向かって飛んでいく。今回は大きく揺れている感じはない。だが。

「また失敗ですね?」

「いや、成功じゃ」

「えっ? でも?」

「少しずれたの。そのせいで的にかする程度だった。だが確かに的を切り裂いていた。うむ。たいしたものじゃ。中級魔法を一日でマスターするとは」

「そうですか」

 グランに褒められても美理愛の表情は浮かないまま。初級魔法の時はもっと簡単にマスター出来た。こう思っているのだ。

「自信を持て。お主には恐るべき魔法の才能がある。そもそも初級魔法の取得は年単位の時間がかかるものだ。それをお主はひと月もしないうちに会得した。今の調子でいけば、中級魔法も数か月で会得できるであろう。このまま行けばお主はこの世界の歴史に名を残すような魔法士になるだろう。いや、まあ、その前にお主は勇者であったな。だが魔王を倒した後は、ぜひ宮廷魔法士団に入ってくれ。きっと次代の宮廷筆頭魔法士の名は、お主の物となるであろうよ」

 納得いかない様子の美理愛に向かって、グランは長々と、最上級の褒め言葉を語った。お世辞ではない。実際に美理愛の魔法の才はグランが驚くべきものだ。

「ふふ。まだ魔王を倒したわけでもないのに。師匠は気が早いですね?」

 グランの言葉でようやく美理愛の顔に笑みが浮かぶ。パルス王国における魔法士の頂点は自分。こう言われて悪い気はしない。

「魔法士団は他にもあるからな。今のうちに勧誘しておかないと」

「そうですね。その時が来たら当然、宮廷魔法士団に加入させていただきます。なんといっても師匠の魔法士団ですから」

「おお、頼むぞ。よし、続けるか」

「はい!」

 師匠に褒められるというのは嬉しいものだ。美理愛はそう思った。それと同時に元の世界にいたときのことも思い出す。父親はいつも彼女を褒めてくれた。彼女はそれが嬉しくて、小さい頃から様々なことで頑張っていたのだ。
 父親は元気だろうか。自分のことを心配しているだろうか。これを考えると気持ちが沈んでしまう。
 だが元の世界への想いに囚われているわけにはいかない。美理愛には魔王と倒す使命があるのだ。全てはそれが終わってから。それが自分の責任。

 

◇◇◇

 剣の鍛錬場では優斗がアレックスと激しい鍛錬を行っている。ほぼ毎日行われている鍛錬だ。

「うおー!」

 気合いを込めて剣を振り下ろす。剣と剣がぶつかる金属音があたりに響いた。そのまま相手を押し切るつもりで、優斗は剣を押し込む。
 だがその瞬間、彼の剣を支えていた力が消えた。それによって優斗は前にバランスを崩す。その首にあたる冷たい感触。

「……参りました」

 優斗は少し悔しそうに、負けを宣言した。

「大分良くなりましたが、まだまだ力に頼りすぎですね。もっと体全体のバランスを考えないと」

 こう言ってきたのは近衛騎士団第一大隊長のアレックス。この国一番の剣士で優斗の剣の師匠だ。

「駄目だな。アレックスには敵わないや」

「いえ、今のは私もかなり本気になりました。まあ、そう簡単に超えられては師匠としての面子が保ちませんがね」

「でも僕は勇者として、少しでも早く強くならないと」

 勇者である自分は早く強くならなければならない。強くなって魔族の脅威を討ち払わなくてはならない。優斗は強い使命感を持っている。

「ユート様は今でも十分に強いですよ。近衛でユート様に勝てるのは大隊長クラスだけでしょう。とてもこれまで戦いの経験がないとは思えません。このままの勢いでいけばすぐに、この国一番の剣士になれます。剣聖と呼ばれる私が言うのです。間違いはありません」

 落ち込む優斗にアレックスは最大限の褒め言葉を送る。

「でもそうなったら、その剣聖の名は僕の物だな」

 そのおかげ、だけではないのだが優斗の気持ちはすぐに立ち直った。

「おや、これは一本取られましたな」

 こう言って、アレックスは大声で笑った。その余裕を感じさせる態度が優斗は少し悔しい。
 優斗にも強くなった自信はある。もともと剣道では高校生日本一になれるくらいの実力があるのだ。部活とは別に習っていた道場でも実力はトップクラスだった。そう遠くないうちにアレックスを超える。これが今の優斗の目標だ。

「さて、今日はここまでにしましょう」

「えっ、もう?」

「剣術は正しい形を身に着けるのが大切です。あまり疲れている時に鍛錬してしまうと、かえってバランスを崩すことになりかねません。バランスについては先ほど注意したばかりでしょう?」

「でも、僕はそんなに疲れてないよ」

「そういうことは自分では分からないものです。疲れていないように思うのは身体強化の魔法を使っているからです。気持ちも高揚していますしね。休み時を判断するのも師匠である私の役目なのです」

「……分かったよ」

 渋々という感じで優斗はアレックスの言葉を受け入れた。立ち会いだけが鍛錬ではない。余った時間は別の訓練で費やそうと考えたのだ。

「ユート様、素敵でした」

 稽古を終えた優斗に近づいて来たのはローズマリー王女。いつものことだ。

「ありがとう。でもアレックスにはまだまだ勝てないよ」

「アレックスはこの国一番の剣士です。なんといっても魔族の上級魔将を一対一で倒したことがあるのですよ? そのアレックスと互角に戦える者はこの世界全体でも、数えるほどしかいないはずですわ。そう考えればユート様はとても凄いと私は思います」

 ローズマリー王女は優斗が落ち込んでいるかなど関係なく、いつも最大限の褒め言葉を送ってくる。
 そんなローズマリー王女に優斗は時折、母親を重ねてしまう。彼の母親もローズマリー王女と同じようにいつも彼を褒めていたのだ。それが嬉しくて優斗は勉強も運動も頑張っていたものだ。
 母親は、家族は元気だろうか。自分のことを心配していないだろうか。こんなことを思うと優斗の胸が苦しくなる。

「……」

「どうされました?」

「いや、なんでもない」

「……お茶をご用意しておりますので、そちらに参りましょう。今日は美味しいケーキも用意してあります。きっとユート様のお口に合うと思いますわよ」

「そう! それは楽しみだな。僕は甘いものが大好きなんだ」

 落ち込んでいた気持ちがケーキがあると聞いただけで一気に晴れた。優斗は甘い物が大好きなのだ。それもまた母親を思い出すきっかけになるのが、ケーキの存在がそれを悲しみにしなかった。

「もう。ユート様のそういうところはまだまだ子供ですわね」

「仕方がないよ。好きなものは好きなんだ」

「はい、はい。では参りましょう」

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