月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

SRPGアルデバラン王国動乱記~改~ 第91話 盛り上がっていますか?

異世界ファンタジー SRPGアルデバラン王国動乱記~改~

 喧嘩祭りの会場は、普段の喧嘩と同じ大通りを奥に進んだ広場。いつもと違うのは、そこに観覧席が設けられていることだ。木で作った箱をいくつも積み重ね、固定しただけの簡易なものであるが、段差を作れば後ろにいる人たちも良く見えるようになる。それで十分なのだ。
 ただ北方辺境伯一行に用意された席は、それとは違う主催者席。きちんと櫓が組まれ、一般観覧席よりもさらに高くなっている場所だ。

「すでに始まっていたのか」

 会場では、すでに対戦が始まっていた。時間に遅れたと北方辺境伯は思ったのだが。

「ここからが本番でございます。有力者はシードになっておりまして、準々決勝からの参加なのです」

「なるほど」

 喧嘩祭りはさすがにないが、北方辺境伯領でも騎士の競技大会は行われている。それと同じやり方なのだと北方辺境伯は理解した。実際にその通りだ。

「……シードされた者がかなり有利だな?」

 対戦は本当に言葉通りの喧嘩。素手での殴り合い、蹴り合いだ。勝ったとしても、かなりのダメージが残るだろうと北方辺境伯は考えた。対戦を重ねた者が不利になる戦いだと。

「そうですが、それでもシードにしなければならないくらいの実力差がありますので」

 シードをなくせば、早い段階で有力者とあたることになる人たちが不利になる。参加者全員ではないが、喧嘩屋を商売にしている人がいる。そういう人たちにとって、この喧嘩祭りは自分の実力を示し、報酬をあげるチャンス。そのチャンスを奪うわけにはいかないという考えだ。

「孫は?」

「第一シード。次の対戦からです」

「そうか」

 レグルスの出番が迫っている。はたしてどのような戦いになるのか。それを楽しみにも不安にも思っていた北方辺境伯であったが、実際に対戦が始まる前に驚くことになる。
 準々決勝、いよいよシード選手の参加となることがアナウンスされた途端、騒がしかった会場が静かになった。

「……東! 二代、胆勇無双っ! ア~オ~ッ!!」

 レグルスの名が呼ばれる。その瞬間――会場が爆発した。そう思うくらいの歓声が空に突き上がった。さらにレグルスが前に進み出て来て、拳を突き上げると、会場は大盛り上がり。野太い声が、甲高い女性の声が、レグルスに向かって放たれる。

「なんと……これは、また……」

「場を盛り上げるという点でも、アオは今、花街で一番と言えるほどですので」

 喧嘩を盛り上げる為の演出。レグルスはそれを躊躇うことがない。花街の花のひとつである喧嘩は、そうあるべきだと考えているのだ。
 だが観衆がレグルスの登場を喜ぶ理由には、まだ続きがある。

「……なるほど。実力差があり過ぎるというのは事実のようだな」

 対戦が始まったものの相手は完全に腰が引けている。今、もっとも強いとされているレグルス相手ということで、勝ち目はないと考えているのだ。
 そんな相手にレグルスは一瞬で勝負をつける、ということはしない。素早い動きで相手の背後に回ると、両手の平で思いっきり、その背中を叩いた。

「気合入ったか!? ここまで来て、ビビってんじゃねえ! そんなんで、お前に負けた奴らに顔向け出来るのか!?」

 対戦相手に気合を入れようとするレグルス。

「喧嘩を汚すな。全力で来いっ!」

「う、うぉおおおおっ!!」

 レグルスの激に応えて、それでも完全に怯えは消えないまま、雄たけびをあげて殴りかかる対戦相手。その拳は、レグルスの顔面を打ちぬいた。

「……やれば出来るじゃねえか。じゃあ、今度はこっちの番だ!」

 レグルスの拳を受けて、後ろに吹き飛ぶ対戦相手。一発で決着、と見ている観客は思ったのだが、ゆっくりと、ふらつきながらも対戦相手は立ち上がって来た。
 それを見た観客から、対戦相手に向けて応援の声が飛ぶ。

「なんとか根性を見せられたか……」

 それを見て、親分もホットした様子だ。いくらレグルスが人気でも、喧嘩そのものがつまらなければ場の盛り上がりに欠ける。それが避けられたことに安堵しているのだ。

「あれは……演出、だな?」

「はい。お互いに全力を出した上で、勝敗が決まるという形にしようとしています。片方が圧倒するだけでは盛り上がりにも限界がありますので」

「そんなことまで気にして戦うのか……」

「今日のこれは興行ですから。それをアオは理解してくれております」

 普段の喧嘩であれば、さすがにここまでしない。勝って依頼人に利を与えることを優先しなければならない。
 もっとも普段の喧嘩では、レグルスに限らず強者は同時に多くを相手することになる。多勢に無勢で戦う様子を見学者は楽しめたりするのだ。
 相手の見せ場が出来たところで、レグルスも決着に動く。余裕でレグルスの勝利となった。そして対戦は第二シードの登場となる。

「……はっ? どうしてジャラッドが出ている!?」

 第二シードとして登場したのは、まさかのジャラッド。それにレグルスは驚いた。ジャラッドが喧嘩祭りに出場することなど、まったく知らなかったのだ。

「上等だ。今日こそ、叩きのめしてやる!」

 以前、ジャラッドに指導を受けた時は、まったく歯が立たなかった。ここまで差があるものかと落ち込んだものだ。今回はリベンジの機会。レグルスはさらに気合が入った、のだが――

 

 

◆◆◆

「……負けた」

「俺も……」

 喧嘩祭りが終わり、場は茶屋の座敷に移っている。喧嘩の結果はジャラッドの勝利。続く決勝戦でも、こちらはレグルスへのリベンジを誓って勝ち上がってきていたザックを破り、見事に優勝、となってしまった。

「ていうか、こいつ何者だ? 俺は一度も見たことねえぞ」

 ジャラッドは、当たり前だが、これまで一度も喧嘩に参加したことがない。ザックは彼が何者かも分かっていなかった。

「ブラックバーン騎士団、北方辺境伯家の騎士団の副団長だ」

「はあ!? そんな奴が参加するのは反則だろ?」

 騎士団の実態など知らないザックだが、守護家の一つである北方辺境伯家というだけで、かなり強い騎士団であることは分かる。しかも、そこの副団長を努めている人物に、腕自慢の喧嘩屋であっても、勝てるはずがないことは認めるしかない。

「あっ、確かに。主催者の関係者が優勝賞金をかっさらっていくのはおかしいだろ?」

 ただレグルスはザックとは違い、実力ではなく立場のほうで参加するのは反則だと考えた。

「いや、それを言ったらレグルス様は主催者そのものではありませんか。家臣の私が出たからといって、文句を言える立場ではございません」

 レグルスの主張に反論するジャラッド。確かに彼の言う通りだ。言う通りなのだが。

「……どうかされましたか?」

 目の前でわざとらしく頭を抱えているレグルスに、ジャラッドはその理由を尋ねた。

「オーウェンといい、騎士っていうのは、やっぱり脳筋ばかりだ」

「ノウキンというのは……?」

「脳みそが筋肉で出来ているっていう意味! そんなこと言ったら、俺が何者か分かるだろ!? 少しは考えて発言しろ!」

 レグルスの言葉にハッとするジャラッド。慌てて謝罪を口にしようとしたのだが。

『えぇええええーーーーっ!?』

 レグルスの素性を知らなかった人たちの声にかき消されてしまった。

「……う、嘘だろ? あっ、いや、嘘ですよね?」

 すぐ目の前にいるザックが事実を確かめようと、レグルスに問いかけてきた。言葉遣いを改めた時点で、すでに事実だと思っている。

「あ~あ、気持ち悪い敬語を使われる羽目になった。そういうのいらないから。俺はアオ。この街ではそれだけの存在だ」

「いや、だって。お前はそれで良いかもしれないけどよ」

 レグルスの素性が分かったからといって、ザックも態度を改めるような真似はしたくない。ただ、この場でこれまで同様の接し方をしづらいだけなのだ。

「……ああ、私を気にしているのか」

 ザック以外にもチラチラと視線を向けてくる人たちがいる。北方辺境伯は、周囲が自分を気にしていることが分かった。

「ではこうしよう。孫に対する態度を改める必要はない。無礼だと咎められることは決してないと、この北方辺境伯、コンラッド・ブラックバーンの名にかけて誓おう」

 北方辺境伯のお許しが出た、などと、たちまち安心して態度を戻す人たちではない。北方辺境伯に限らず、そこまで貴族は信用されていない。

「……いっそのこと、今日は無礼講にすれば?」

 それをレグルスは良く分かっている。

「それはどういうことだ?」

「良し、そうしよう! 今日はうちの爺のことは気にするな! 無礼講だ!」

「じ、爺!?」

 血縁関係にあっても上下関係は明確に。これが貴族家の基本。祖父であっても常に礼儀を保って接してきた。そのレグルスに「爺」呼ばわりされて、北方辺境伯は、周囲の者も驚いている。

「ジャラッド、踊るぞ! 場を面倒くさくした責任を取って、盛り上げろ!」

 レグルスが巻き込んだのはジャラッド。副騎士団長という、ここにいるブラックバーン家関係者の中では、北方辺境伯に次ぐ地位にある彼を巻き込むことで、一気に場の雰囲気を変えようと考えたのだ。

「責任は取りますが、踊りというのは?」

「簡単な踊りだ。俺のを見ていれば、すぐに分かる。音楽、お願いします!」

 ジャラッドを連れて、前に出て行くレグルス。彼の声に応えて、部屋の中に賑やかな音楽が流れ始めた。

「……さて、では私も」

 と言って立ち上がったのは百合太夫だ。

「さてと、じゃないから。太夫に凧踊りをさせられるわけないだろ?」

 さすがにそれはレグルスに止められた。すでに太夫となった百合に、お道化た凧踊りをさせるわけにはいかない。そんな真似は許されない。

「ずっと一緒に踊って来たわ。それに、無礼講でしょ?」

「うちの爺に花街のしきたりまで自由にする権限なんてない。花街のことは花街で決めるものだ」

「そうね……」

 レグルスの言うことは正しい。そして太夫は、その模範とならなければならない存在。自分の感情だけで行動してはいけないのだ。

「……どうやら儂の出番か。儂にも、しきたりそのものを変える権限はないが、少しの例外を作るくらいの裁量はある」

 落ち込む百合太夫に救いの手を差し伸べたのは親分だ。親分としての権限は、どこまで許されるのか微妙なところだが、この場の雰囲気を良くする為には必要と考えたのだ。

「それは、つまり?」

「無礼講だ。今日は花祭り。特別な日だ。本来の立場を忘れて、皆で楽しむことが許される日だ。そう皆に伝えろ」

 この場だけではなく、花街全体に無礼講を許す。そうでなくてはならない。この場だけで、百合太夫だけに例外を認めるような真似は、それ以外の人たちから反発を招くことになると親分は考えたのだ。

『親分からのお達しだ! 今日は無礼講! 立場を忘れて、皆、楽しめ!』

 素早く反応した男衆の一人が、窓の外に向けて叫ぶ。

『皆に伝えろ! 今日は無礼講だ!! 太夫も禿も、誰もが祭りを楽しめる日だ!!』

 窓の外からどよめきが聞こえてくる。最初の叫びではピンと来なかった人々も、太夫に「祭りを楽しめ」という言葉で、どういうことかを理解した。本当に太夫が祭りに姿を現すのか。そんな期待の声も中には含まれている。

「さてと……足りるかな? なんとか足りるか」

 それを聞いたレグルスも次の行動を起こしていた。懐から取り出した袋の中を覗いて中を確かめると、それをジャラッドに渡す。

「悪いけど部下に、これを全部の出店に配るように命じてくれ」

「中身は何ですか?」

「金。今日は北方辺境伯家の驕り。客にただで食べさせてやってくれと伝えるのを忘れないように。ちゃんと周りにも聞こえるように大声で」

「……分かりました。おい! 聞いていたな。手分けしてご指示通りにしろ」

 何故そのようなことをするのかと思ったジャラッドだが、意味なくレグルスがこんなことを命じるはずがない。護衛の為についてきた部下に指示を出した。
 部下のほうは命じられれば従うだけ。すぐに部屋を出て行った。

「あと、オーウェン」

「はっ」

「ここは良いから裏通りに差し入れを配ってくれ。祭りに参加出来ていない人もいるはずだ。俺からではなく、北方辺境伯家からだからな」

「承知しました」

 さらにレグルスはオーウェンに、祭りに参加していない人、病気か金がないからか理由は様々だろうが、に差し入れを届けるように命じる。施しの心もあるが、それだけではないことは周囲の人にもすぐに分かった。
 窓の外から聞こえてきたのは、レグルスに言われた通りに出店の店主に伝える騎士の声。それを聞いた人々の歓声が、すぐに続いた。

「依頼を伝えてきた父上が『さすがは北方辺境伯と思わせるようにしろ』と言っていたので」

「……全て任せる。好きにしろ」

「分かりました。では、お待たせしました。盛り上がってまいりましょう!」

 止まっていた音楽が鳴り始める。部屋はまた一気に騒がしくなった。さらにレグルスと百合太夫、さらに朝顔太夫も加わって凧踊りを始めると、周囲は大盛り上がり。慣れない踊りに戸惑うジャラッドに大笑いだ。

「……なんとも、あれだな」

 それを見る国王は楽しみよりも、別の思いが湧いてきてしまう。

「お相手を忘れての勝手な振る舞い。お詫びいたします」

「いや、謝罪は無用。今日の私はただの付き添い。主役は伯だ」

 そうは言っても、いくら素性は隠しているといっても、蚊帳の外に置かれたような気分を味わうのは、良いものではない。ただそれを口にするほど、国王は傲慢でもない。

「よろしければ、如何ですか?」

 そんな客を桜太夫は放っておかない。酒器を持って、国王の隣に移って来た。

「あ、ああ、頂こう」

「では……まずは失礼して」

 桜太夫はグラスに注いだ酒を一気に飲み干してしまう。酒を勧めておいて、自分が先に飲む。どういうマナーなのかと驚いた国王だったが。

「どうぞ」

 桜太夫はグラスのふちをタオルで拭うと、その同じグラスに酒を注いで国王に差し出してきた。

「……このような気遣いをするのか」

 桜太夫は毒見をしてみせたのだと国王は分かった。さらに差し出されたグラスを良く見てみれば、それは、毒に反応すると言われていて王家の食卓でも使われている銀製のもの。

「花街でございますから」

「そうか……これが花街か」

 この台詞を口にするのは早い。まだ国王は花街の極々一部しか見ていない。それは本人も分かっているが、この言葉が自然と口から出た。

「おやおや。ちょっと、百合太夫を止めてきて。ああ、そうだ。リズ様と、それにアオも呼んできてくれる?」

 そんなことをしている間に、調子に乗った百合太夫はエリザベス王女まで蛸踊りに誘おうとしていた。エリザベル王女であれば、嫌がる素振りを見せることなく、一緒に踊ってみせるかもしれないが、さすがにどうかと桜太夫は思ったのだ。
 桜太夫の制止となると百合太夫も無茶は出来ない。大人しくエリザベス王女と、そして少し遅れてレグルスもやってきた。

「百合太夫、さすがに凧踊りはないでしょう?」

「姉さん、すみません。ただ、一緒に踊って欲しいなと思ってしまいまして……」

 百合太夫は自分にとって思い出深い踊りを、エリザベス王女にもレグルスと一緒に踊らせたかったのだ。

「だから、凧踊りはないでしょう、と言っているのです」

「あっ、ああ。そういうことでしたか。では、すぐに準備を?」

 桜太夫の考えが、百合太夫にも分かった。凧踊りではなく別の踊りを二人に踊らせようという思いが。急に決めたことではない。百合太夫と、朝顔太夫も一緒に、考えて準備していたものだ。

「そうね。お願いするわ。アオ、リズ様と一緒に準備をしてもらえる?」

「準備って、何の?」

「踊りの。難しい踊りではないわ。すぐに二人とも覚えられるはずです」

「踊り……」

 エリザベス王女と踊る。それを聞いたレグルスは、なんとも言えない表情を見せている。嫌がっているのではない。国王の前でどう反応すれば良いのか分からず、困っているのだ。

「じゃあ、行って。その間は」

「我々で繋いでおきましょう」

「えっ?」

 自分が場を繋いでおく、と言うつもりだった桜太夫。だがその台詞を横取りする人がいた。まさかのジャラッドだ。

「部下が戻ってくるまで待たなければなりませんが、金を配るだけであれば、すぐでしょう」

「繋ぐって何をするつもりだ?」

 ジャラッドに花街の場を繋ぐことなど出来るとは思えない。そう考えたレグルスは、ジャラッドが何をするつもりか不安になって尋ねてきた。

「ブラックバーン騎士団といえば、ひとつしかありません。さすがは北方辺境伯家というところを我々も皆に知らしめてみせます」

 そう言われてもレグルスには思いつくことがない。ジャラッドの言い方だと常識のようだが、自分にはその記憶がないのだと考えた。

「ああ、じゃあ、任せた」

「やるのは良いが、この部屋で大丈夫なのか?」

 ジャラッドが何をやろうとしている北方辺境伯は分かっている。部屋で行えるようなものではないことを知っているのだ。

「確かに……」

「いつもの様に、外でやるのが良いのではないか? 我々は窓から観覧することにしよう」

「それは……」

 ジャラッドが視線を向けた先は、国王の護衛である諜報部長。北方辺境伯の護衛が一人もいなくなる状況を心配してのことだ。

「貴殿が思われているより、この部屋は安全だ。不穏な者の出入りを簡単に許すような結界ではない」

「……承知した。では閣下、と、お客人、行ってまいります」

 なんだか分からないが、部屋の中では出来ないもの。それを行う為にジャラッドは部屋を出て行く。それに続いて、レグルスたちも準備の為に別の部屋に向かった。

「一体、何を?」

 国王は目で見る前に、ジャラッドが何をするつもりなのかを北方辺境伯に尋ねてきた。この花街で、ブラックバーン騎士団の副団長を努める人物が自ら行おうとしていること。すごく気になるのだ。

「ご存じなかったですか? 我らが騎士団には、戦いの前に行う士気を高める為の儀式がございます。それを行おうというのでしょう。踊りに見えなくもありませんので……ただ、盛り上がるかは分かりません」

「なるほど……楽しみだ」

 どうやら花街の人々を盛り上げるには、微妙なもの。それが分かった国王は、こんな言葉しか思いつかなかった。

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