月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

黒き狼たちの戦記 第91話 番狂わせとは言わせない

異世界ファンタジー 黒き狼たちの戦記

 上級騎士最後の登場は第二シードのルイーサ。対戦相手はクローヴィスだった。ここまでなんとか勝ち上がってこられたクローヴィスにとって、この対戦が最後の腕試しの機会。それを理解していたルイーサも、彼の実力を確かめるような戦い方を行った。それなりに白熱した戦いが続いたが、それもルイーサが本気を出すまで。保有能力『幻影』により何人にも分かれたルイーサ。クローヴィスは本物を見極めることが出来ず、一か八かで斬りかかった相手はハズレ。本物の剣を体に受けて、敗北が決まった。これで上級騎士は全勝。実力差を見せつけた形になった。
 準々決勝ではジギワルドとベルントの上級騎士同士の対戦もあった。結果は、これもジギワルドにとっては不本意な結果。どのような形であれ、衝撃波が当たってしまえば勝ちというのは、まるでジギワルドを勝たせる為のルールに思える。当たり前だが、ディアークがそんな意図でルールを作ることを許すはずがなく、結果としてそんな形になってしまったのだ。
 そうなると準決勝はどうなるのか、ということを人々は考えるようになる。実力ではアーテルハイドが圧倒的に優勢。だがルールはジギワルドに有利。結果が見えなくなったのだ。
 人々が注目する中、アーテルハイドとジギワルドの対戦が始まった、のだが。

「勝者! 白! アーテルハイド」

 開始数秒でアーテルハイドの勝利が決まった。

「容赦ないな」

「団長が絶対に負けるな、なんて言うからでしょ?」

 準決勝になってトゥナも観戦席にやってきている。対戦そのものに彼女は興味ない。アーテルハイドとルイーサを応援しに来たのだ。

「アーテルハイドのやつ、密かに団長に勝つ方法を考えていたのではないですかな?」

 アーテルハイドはジギワルドの衝撃波をかすらせもしなかった。「神速」の能力を持つアーテルハイドだが、その速さ故に体のコントロールは難しい。そうであるのに紙一重の動きを見せたのは、そういう鍛錬を行ってきたからだとテレルは考えた。

「密かにというのは違うだろ? 勝ち抜けば俺と対戦することになる。それに備えるのは当たり前のことだ」

「アーテルハイドとも戦うのですか?」

 ディアークとの対戦はシュバルツに限った話だとテレルは思っていた。

「勝ち抜いた奴と戦うと俺は言ったのだ。それがアーテルハイドであれば、当然、戦う」

「団長とアーテルハイドが……いつ以来ですかな?」

「覚えていないくらい前だ。これも反省しなければならないな。強くなろうと思っているなら、普段から実力が近い同士で競い合うべき。それを俺たちは怠っていた」

 ディアークもアーテルハイドも強い。だがその強さをさらに高める努力をいつの間にか忘れていた。ただ、がむしゃらに競い合っていた昔を忘れていた。

「それなら俺とも戦うべきですな。ベルントとは戦いがない日はほぼ毎日、立ち合いを行っております。団長との差はかなり縮まっているかもしれませんな」

 最前線にいるテレルは、同じ場所にいるベルントと鍛え合っている。実力差は少しあり、テレルのほうが上なのだが、それでも鍛錬の質は、国にいるディアークやアーテルハイドに勝っていると考えている。

「ほう。それは楽しみだな。俺だって完全に怠けていたわけではないからな。まだまだ負けるつもりはない」

「では、大会が終わったあとでお手合わせ願います」

「ああ、もちろんだ」

 二人の会話をトゥナは笑顔で聞いている。このところずっと見せなかった笑顔で。二人の会話は昔を思い出させる。団長がディアークであることは当時も変わらないが、その頃のテレルは、アーテルハイドももっと挑戦的だった。いつまでも負けていないという気持ちが表に出ていた。機会があればすぐに勝負を挑んでいた。みんなが、もっとギラギラしていた。

「さて、まずは二人の対戦ですか」

 武術競技会においてもっとも注目されている対戦カード。この二人の喧嘩、ということにディアークがした、の決着としてこの武術競技会は開催が決まったのだ。シュバルツとルイーサが競技台の上に登った。いよいよ注目の戦いが始まる。

「あんたには腕試しなんて必要ないわね? 一瞬で終わらせてあげるわ」

 注目カードをさらに盛り上げようとしているわけではないのだろうが、ルイーサがシュバルツを挑発している。

「一瞬は無理かな? 五秒、いや、三秒あれば十分か。それで俺の勝ち」

 そのルイーサの挑発にシュバルツも乗ってくる。

「……そんな挑発にはのらない」

「挑発じゃない。事実を伝えただけだ」

「なんですって!?」

 結局、シュバルツの言葉を受けて、怒りを面に出してしまうルイーサ。感情の制御が、特にシュバルツが関わることについては、彼女は苦手なのだ。

「お前はコテンパンにやっつけてやる。俺たちを脅したことを後悔しろ」

「……やれるものならやってみなさい!」

 一瞬でルイーサの体が八つに分かれた。幻影を展開したまま、一気にシュバルツとの間合いを詰めるルイーサ。クローヴィスの時とは異なり、初手から全力。言葉にした通り、一瞬で勝負を終わらせるつもりだ。

「えっ」

 だが間合いを完全に詰めきる前に、体を押し戻されるような感覚をルイーサは感じた。それに続く、衝撃も。何が起きたか分からないまま地面に転がるルイーサ。

「……し、勝者! 白! ヴォルフリック!」

 シュバルツの勝利を告げる審判の声。

「三秒かかったか?」

「…………」

 屈辱で顔を真っ赤に染めているルイーサ。わずかな静寂の後、空気が震えたと思うほどの大歓声が会場に響き渡った。
 アルカナ傭兵団においてディアークに次ぐ実力者の一人とされているルイーサを、シュバルツはわずか数秒で倒した。まさかの番狂わせに、人々の気持ちは沸き立っている。

「……ルイーサ対策だな。思いついていたのか……我々はまだあいつを見る目が甘かったようだ」

「どういうこと? 何が起きたの?」

 トゥナには何が起きたか分からない。見えたのは、八人に分かれたルイーサの分身の一体が、いきなり後方に吹き飛んだこと。その分身のいた場所にシュバルツが立っていることだけだ。

「俺にも完全に見えたわけではない。だがおそらくは、あいつは認識できないほど小さな衝撃波をルイーサの分身全てに放った」

 衝撃波は視認出来る。衝撃波そのもののわずかな光と衝撃波がもたらす光のゆがみがその存在を示すのだ。だが小さなものになれば視認はかなり難しくなる。シュバルツはそういう小さな衝撃波を分身全てに放ったのだとディアークは考えている。

「それで後ろに吹き飛んだってことですか?」

「いや、それを受けてわずかに動きが止まったのを本体と見極め、攻撃したのだ」

 ディアークが衝撃波の攻撃だと考えているのはこれが理由。ルイーサの本体の動きを止めた何か。目に見えない何かとシュバルツの持つ自分と同じ能力を結びつけるのに、考える時間は必要ない。

「ルイーサの能力を無力化したということですね?」

「ああ、そうだ。ルイーサの能力は幻影。影を見せているだけの分身には相手を傷つけることは出来ない。本体を見極めることが簡単に出来るとなれば、能力に何の意味もなくなる」

「……彼を本気で怒らせちゃっていたのね? それはそうか」

 シュバルツの戦い方はそれをルイーサに思い知らせるもの。自分には『幻影』が通用しないと、はっきりと分からせたのだ。そうするくらいにシュバルツは怒っている。それも当然かとトゥナは思う。軍事裁判でのルイーサは、仲の良いトゥナでも擁護する気になれない酷いものだった。

「砂をまく。水をまく。あらかじめ備えていれば分身には対処出来る。一瞬で本体を見極めた上で、ルイーサの次の手を許さない攻撃の速さがあれば、という前提だがな」

「彼にはそれが出来た」

「ルイーサの油断もあったと思う。体になにかが当たった感触はあったはずだ。だが、続く攻撃を予測出来ていなかったな」

 衝撃波が当たった感触はあった。だからルイーサの動きは止まった、というより分身よりもわずかに動きが遅れたのだ。その瞬間に回避行動に移っていれば、シュバルツの攻撃を避けられていた可能性はある。あくまでも可能性だ。

「出来るのか分からないが、分身の数を増やすか。だがそうすれば当然、あの男も数を増やす。数の競い合いになってもルイーサの分が悪いな。本体を見極められなくても、分身を半分も見極めれば攻撃は避けられる」

 テレルはルイーサがどう対処するべきかを考え始めた。分身の数とそれに向けて放つ衝撃波の数。その数を競ってもルイーサに勝ち目はない。もともとルイーサと衝撃波の能力は相性が悪いのだ。ディアークの場合は、この競技会のルールでは難しいが、隙間なく衝撃波を放つ。見えていても関係ない。避けることは出来ない。斬り裂いて躱せば、それが本体だと分かるだけ。
 衝撃波を使うという方法を思いついた時点で、シュバルツのほうが有利になっていたのだ。

「純粋に剣の腕で競うしかない。あいつの攻撃を受けきり、守りを突き破れば良いのだ」

「それはあの男も分かっているはずですな。それでも勝つ自信があったのか……これは想像するしかありませんか」

 純粋な剣の腕でルイーサを上回ることが出来ているとすれば、シュバルツは彼女を超えたということだ。

「……アーテルハイドとの戦いが楽しみになってきたな。すぐにでも見たいところだが」

「決勝戦は年明けね。それはそれで楽しみに待つ時間があって良いじゃない」

「そうだな」

 決勝戦およびその後のディアークとの対戦は新年を迎えた後というスケジュールになっている。お楽しみは来年に持ち越しだ。

 

 

◆◆◆

「「「かんぱ~いっ!!」」」

 グラスとグラスが打ち合う音が食堂に響く。シュバルツたちは武術競技会の打ち上げをエマたちの食堂で行っていた。まだシュバルツは試合が残っているが、他の人たちにとって武術競技会は終わってしまったのだ。

「ご苦労だったな。皆、見事の活躍だった」

「……何故、お前が最初に声をかける? というか、何故いる?」

 打ち上げにはディアークも参加している。シュバルツには招待した覚えはまったくないが。

「良いではないか。頑張った団員を労うのも団長の仕事だ」

「他にも頑張った団員はいるけど?」

「他のチームの団員ともこういう機会を持つ予定だ。年明けに公式の場を用意しているが、そちらは少し堅苦しいものになるだろうからな」

 かつてのアルカナ傭兵団はもっと団員同士の距離が近かった。今は当時とは人数が違うというのが距離が出来た一番の理由だが、縮める努力をしてこなったのも事実だ。そういうところも改めてみようとディアークは考えている。

「国王に来られたらそれだけで堅苦しくなるだろ?」

 距離が出来た理由にはディアークが国王という立場になったというのもある。国と傭兵団は別とは考えられない団員も大勢いるのだ。

「それはあるかもしれないな。その点、ここは楽だ。お前は国王扱いなんてしないからな」

「…………」

「なんだ?」

 睨むような目で自分を見るシュバルツに戸惑うディアーク。好かれているとは思っていないが、このタイミングで睨まれる覚えもないのだ。

「別に」

 国王扱いしないからといって、父親扱いをするつもりもない。親だと認めた覚えはない。これを他のメンバーもいる、この場で口にするわけにはいかない。

「そういえば、その頑張った他の団員を知りたい。誰か手ごわいのはいたか?」

「そういうの見ていないのか?」

「試合数が多すぎて、全てを見ることは出来なかったからな。審判を任せた騎士から報告はあがってくることになっているが、実際に戦った者から話を聞くのが一番だろ?」

 これまで見落としていた強者、もしくは強者になれる可能性のある従士。その情報をディアークたち幹部は集めようとしている。シュバルツだけでなく、他の団員にも聞くつもりだ。

「……最初に当たった人かな?」

「確か、ベルントのところの従士か。あっさりと勝ったように見えたが?」

 シュバルツの初戦は特殊能力なしの剣と剣の正面からの戦いで圧倒したとディアークは思っていた。

「あっさりに見えたか? 紙一重とまでは言わないけど、良い勝負だと思ったけどな」

「そうか……お前がそう言うのであればそうなのだろうな。他には? クローヴィスたちはどうだ?」

 シードであったシュバルツは対戦数が少ない。隠れた逸材がいるとすれば、それはクローヴィスたちが戦った相手だとディアークは考えている。

「手強いのは皆、そうでした」

「そういう謙遜や相手に気を使うのは無用だ。こいつはヤバいと思う対戦相手はいなかったのか?」

 従士試験に合格し、鍛錬を続けてきた者たちだ。ある程度、強いのは当たり前。ディアークが求めている情報は、才能を活かしきれていないような従士だ。

「ヤバい、ですか……それでしたらブランドの対戦相手が」

「そういう相手がいたのか?」

「私は分かりませんが、ブランドは『ヤバい』と言っていました」

 その対戦相手の実力をクローヴィスは見積もれていない。ブランドが対戦後に、ディアークの言う「ヤバい」と表現したのを聞いているだけだ。

「ブランド? どういう相手だ?」

「……初戦の相手」

 ディアークの問いに短く答えるブランド。これだけではディアークが知りたいことは何も分からない。

「何がヤバかった?」

 言葉を変えて、ディアークは聞き直す。こういうやり取りはシュバルツを相手にして少し慣れている。聞かれたことには答えるが、その内容は最小限のもの。嘘ではないが、本質でもない。話したくない時のシュバルツにも、こういうところがあるのだ。

「……飢えている感じ? お腹がすいているということじゃなくて、人殺しに」

「おい……?」

 予想していなかった答えに戸惑うディアーク。人を殺すことを欲しているなど、確かにヤバいが、ディアークが口にしたのはそういう意味ではないのだ。

「そんなに怖くはなかったよ。強くなって浮かれちゃってる感じかな?」

「……なるほど。なんとなく分かる。その従士はどこの従士だ?」

 自分の能力に気づき、その力に舞い上がった経験はディアークにもある。さらにその力を過信し、溺れてしまうと、意味もなく誇示したくなる気持ちもなんとなくは分かる。ありがちではあるが、良くない傾向だ。所属するチームを率いている者に注意しておこうとディアークは考えた。

「確か……月だったかな?」

「月? オトフリートのところか……分かった」

 ブランドと対戦した従士はオトフリートのチームに所属している。元々、問題のある従士は多かったが、そのほとんどが解雇されたとディアークは聞いていた。そこまでのことをして、まだ問題のある従士がいるとすれば、それはオトフリートが少し可哀そうだとディアークは思った。

「……盛り上がらない話だったな。皆の活躍した話にしようか。ボリス、頑張ったな」

 空気が重くなるような話になってしまったので、ディアークは話を変えることにした。振る相手は、無難?な相手であるボリスだ。

「い、いえ、僕は全然」

「アーテルハイドのいる準々決勝まで届いたのだ。そのブロックの従士の中では一番ということだろ? 凄いじゃないか。正直、そこまで勝ち上がれるとは思っていなかった。テレルは大会のルールは自分に圧倒的に不利だと言っていたからな」

 ボリスの特殊能力は強力。テレルと同じように馬鹿力で相手を圧倒するものだ。ボリスにとっても大会ルールは不利だとディアークは思っている。

「それは、皆が戦い方を教えてくれましたので」

「戦い方? どういう戦い方だ?」

 ボリスは大会ルールに合わせて戦い方を工夫していた。それで勝ち上がれたのだから、その方法がどういうものかディアークもかなり気になる。

「受けて押す、というものです」

「……はっ?」

「敵の攻撃を剣で受けたあと、そのまま力いっぱい押し返すという戦い方です。幸い僕は皆のおかげで守りには自信、いえ、自信があるというのは思い上がりですけど……」

 普段立ち合いを行っているシュバルツとブランド、それにクローヴィスもセーレンも剣の腕はかなりのもの。その攻撃を受け続けていることで、守りについてはボリスも少し自信がついてきた。その得意な守りと特殊能力を組み合わせた戦い方だ。これだけの説明ではそれで勝てるのかと思ってしまうが。

「なるほど。受けて押すを、相手に隙が出来るまで繰り返すのか」

 特殊能力を使って押し返されれば大きく体勢が崩れてしまう。一度では無理でも、崩れるまで何度も繰り返せば、それで相手は消耗もする。全ての攻撃を受けきれればの話だが、それにボリスは成功したのだ。

「と、とにかく、勝って自信をつけるのが、僕には大切だと、シュバルツ様が……」

 ボリスに必要なのは自信。この大会は技を磨く為ではなく、自信をつけるために勝ちにこだわっていた。

「……クローヴィスとセーレンは? 何か工夫したのか?」

「私は攻め切ることを考えていました。とにかく攻め続けるという戦い方です」

「私は逆。最初は守りに徹するように言われた」

 クローヴィスとセーレンは、ボリスとは違い、弱点の克服。考えすぎるクローヴィスは、考える間を持てないくらいに、守りを無視した攻め一辺倒の戦い。感覚に頼りがちなセーレンは、相手を良く見て、その動きを考える間を作る戦い方。それを大会で行っていた。

「……そうか。シュバルツ」

「俺の戦いはまだ終わっていない」

 まだアーテルハイドと、そしてディアークとの戦いは待っている。ここで自分の戦法について話すつもりはシュバルツにはない。ただ、ディアークもそんなことを聞くつもりはない。

「戦い方を教えろというのではない。今度、従士を集めての合同訓練を行う。お前、その時に講師をやれ」

「はい?」

「合同合宿にするか。個々の能力を見極めるには時間が必要だろうからな」

 アルカナ傭兵団全体の戦力向上。これをディアークはシュバルツに任せようと考えた。一律の鍛錬ではなく、個々人に合った方法を、シュバルツなら見つけるのではないかと考えたのだ。

「断る」

「これは任務だ」

「そんな任務があるか!? そういうのは……そういうのは……」

「今の近衛騎士団長は向いていない。ギルベアトとは違う」

 シュバルツのやり方はギルベアトの教え方ではないかとディアークは考えている。孤児一人一人に合った方法でギルベアトは彼らを教えたのではないかと。

「そうか……だからといって俺がやらなければいけないという規則はない」

 ディアークの考えは正しかった。シュバルツはギルベアトのやり方を真似ているのだ。

「お前以外に誰がいる? ギルベアト殿を一番よく知っているのはお前だ」

「それと従士たちに教えることに、なんの関係がある?」

「関係はある。ギルベアト殿は元々、この国の人間だ」

「いや、だから」

 といったやり取りが続いたが、結局、シュバルツは引き受けることになる。聞いている周囲が二人のやり取りを鬱陶しく感じて、シュバルツを説得した結果だ。

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