月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

黒き狼たちの戦記 第8話 強くなると決めて何が悪い?

異世界ファンタジー 黒き狼たちの戦記

 ヴォルフリックの日常は、スケジュールこそほとんど変わらないが、中身は大きく変わることになった。一番大きな変化は従士がついたこと。従士試験に合格したブランドはその日のうちにヴォルフリックに合流した。彼がヴォルフリックの従士になる為に試験を受けたのは、ディアーク始め傭兵団の上層部には分かっている。さらにブランドだけでなくロートも、この時点では偽名でしか分かっていないが。いたと知り、さらにその彼が試験を棄権して王国を離れていったという事実には上層部は疑問を感じ、その疑問を解消すべく動き出したのだが、その結果が出るのはまだ先の話。ヴォルフリックの日常に影響を与える段階でもない。
 午後の鍛錬の時間になってヴォルフリックたちは屋外鍛錬場に出て、剣術の鍛錬を行っている。これまでヴォルフリックが行っていたような型をゆっくりとなぞるものではない。一対一での立ち合いだ。ただ型にこだわるのは変わらない。
 次々と攻撃の型を変化させてブランドを攻めるヴォルフリック。ブランドもまた防御の型でそれに対応していく。しばらくすると交代。ブランドが攻め、ヴォルフリックが守りに変わる。それを何度も何度も繰り返している。

「……あれは……本気なのか?」

 それを眺めていたクローヴィスが呟きを漏らす。二人の立ち合いは型に沿った見事のもの。だがそれはまるで演舞のようで実戦の怖さが感じられない。綺麗ではあるが普通の剣。こんな印象だった。

「人の立ち合いを気にしている余裕はあるのかな?」

 ヴォルフリックの周りに増えたのはブランドだけではない。もうひとりの従士志願者、フィデリオ。元近衛騎士で若い頃はギルベアトの従士だった男だ。従士試験に合格して、傭兵団に入団。ヴォルフリックに従士として仕えたいと志願したが、クローヴィス同様、拒否されている。勝手に側にいるのもクローヴィスと同じだ。
 クローヴィスにとってはありがたい。これまではヴォルフリックの鍛錬の様子を眺めながら、自身も型の確認や素振りを繰り返しているだけだった。フィデリオが加わったことで立ち合い稽古が出来るようになったのだ。

「彼の立ち合いを見るのは初めてなので。それに想像していたのと違っていて」

 目の前で行われている立ち合いがヴォルフリックの実力であるのなら、少なくとも剣の実力は自分のほうが上だとクローヴィスは思える。

「……丁寧な立ち合いだね。お互いに寸分違わず、同じ場所に撃ち込んでいる」

「えっ?」

「あくまでも型の練習だね。実戦形式の立ち合いだと、また違うのではないかな?」

 一人で行っていた型の稽古を、二人で向き合って、スピードを上げて行っているだけ。本気とはいえない稽古だとフィデリオをクローヴィスに教えた。

「あれにどのような意味があるのでしょう?」

「型の大切さは剣を学んでいる者なら知っているはずだけど?」

「そうですが、彼らがそれに費やす時間は普通ではありません」

 型の大切さはクローヴィスも理解しているつもりだ。だがヴォルフリックが型の稽古に費やす時間は、他者とは比べ物にならない長さ。今のところ、午後の鍛錬時間のほとんどをそれに当てているのだ。

「……体に染み込ませているのだろうね。頭で考えるまでもなく、体が反応するくらいに」

「もしかしてフィデリオ殿も同じ鍛錬を?」

 ヴォルフリックの稽古の意味を、正解なのかは分からないが、説明出来るフィデリオ。彼がヴォルフリックを育てたギルベアトの従士だったことをクローヴィスも知っている。同じ稽古を習っていた可能性をクローヴィスは考えた。

「似たことはやっているね。ただ私も、彼らほど長い時間はそれに費やしていないかな?」

「……もう少し詳しくあの稽古の意味を教えてもらえますか?」

「詳しくと言われても……動きが同じだからといって、意味まで同じとは限らないからね」

 クローヴィスから詳しい説明を求められて、困り顔のフィデリオ。

「近衛騎士団の正式剣術であれば、機密扱いではないと思いますが?」

 フィデリオが説明を躊躇っているのは、自分の技を他人に教えたくないから。そう考えてクローヴィスはこんな言い方をした。

「……じゃあ、あくまでも私が知っている範囲で。あの立ち合いは守りの稽古。攻め手の動きに出来るだけ速く、正確に反応出来るようになる為の基礎鍛錬だね」

「守りの稽古ですか」

「他の鍛錬を見ていないから分からないけど、ギルベアト様は彼らに徹底的に基礎を叩き込もうとしていたのだろうね。土台がしっかりしていなくては、高みに到達出来ない。ギルベアト様らしい考えだ」

 目指す高みは遥か遠く。鍛錬はそこまで一つ一つ石を積み上げていく作業と同じ。途中で崩れないように土台は広く、しっかりと。そうでなければ高く石は積み上げられない。仮に積み上がったとしても不安定なものになってしまう。

「……目指す高みとは?」

「それはそこに到達した者でなければ語れないことだね。それともクローヴィス殿は自分が目指す高みが見えているのかな?」

「私は……父を超えることが目標です」

 クローヴィスには目標がある。父であるアーテルハードを超えること。今のクローヴィスにとってはそれは遥かに遠い目標だ。

「そうだね。貴方には明確な目標があるのだった」

 アーテルハードの実力は、当然フィデリオも良く知っている。今のクローヴィスには超えるのは難しい目標であることも。

「……無理だと思いますか?」

 フィデリオの表情はこう言っているようにクローヴィスには見える。実際にどうかは関係なく、クローヴィスの心がそう見せているのだ。

「それを人に問うことに意味があるとは思えない。ただ、聞かないではいられないクローヴィス殿の気持ちは分かる」

 クローヴィスの父は特殊能力持ち。無能力者であるクローヴィスが父を超えるなんて言っても、本気で受け取る者はほとんどいない。それどころか同情の目を向けられてしまうくらいだ。
 クローヴィスにとって父親は、憧れの存在であると同時に強いコンプレックスの元なのだ。

「同じ聞くのでしたら、あの二人に聞いてみたらどうかな?」

「どうしてですか?」

 フィデリオよりも遥かに若く経験が少ない二人に聞く意味がどこにあるのか。クローヴィスには分からない。

「あの二人はギルベアト様を超えたいと考えて、鍛錬を行っているのかな?」

「違うと?」

「分からない。だから聞いてみることを勧めている」

 こんな言い方をしたがフィデリオは違うと考えている。彼らが目指しているのはギルベアトが到達した場所の更に上。ギルベアトもそこに届く為の鍛錬を教えていたのだと。
 この考えに間違いがなければ、自分は何を為すべきか。ヴォルフリックの想いを知りたいのはフィデリオも同じ。クローヴィスよりも強くそれを望んでいるのだ。

 

◆◆◆

 午後の鍛錬終わりに、クローヴィスはヴォルフリックに、フィデリオに相談していたことを聞くことにした。日が空けば恥ずかしさや躊躇いが湧いてきて、結果、聞くことが出来なくなる。そう思ったからだ。
 水場に来て鍛錬で流した汗を洗い流している四人。これもいつものスケジュール通りだ。

「はっ? 爺を超える?」

 クローヴィスに聞かれたヴォルフリックの反応はこんな感じ。何を言っているのかという顔をしている。

「お前に剣を教えたのはギルベアト殿。いわば師匠だ。その師匠を超えようと考えているのではないか?」

「それならとっくに超えている」

「はい?」

 クローヴィスが想定していなかった答え。まさかこんな答えが返ってくるとは思っていなかったクローヴィスは目を丸くしている。驚いているのはヴォルフリックに聞くことを勧めたフィデリオも同じだ。

「爺の絶頂期を俺は知らない。ただ爺が今の俺の年だった頃よりは勝っているはずだ。そしてさらに俺は爺以上に成長する。だからこの先も俺のほうが強い」

 ヴォルフリックの言っているのは同じ年だった時を比べてのこと。

「それは……お前は特殊能力者だから」

 特殊能力者である父が自分と同じ年だった頃と比べても、クローヴィスは自分が勝っていると思えない。特殊能力者とそうでない者とではスタート地点が違うのだと。

「俺は剣と剣で戦った場合を言っているつもりだけど?」

「……自信家なのだな?」

「ある程度、自信を持てるくらいには努力してきたつもりだからな。それでもお前の親父に手も足も出なかったのはショックだったけど、それも今は勝てないというだけだ」

「いずれは勝てると言うのか?」

 クローヴィスの視線がきつくなる。自分が目指している、それでも届かないと諦めている父親にヴォルフリックは勝てるつもりだ。それが許せなかった。

「それはそうだ。俺は世界一を目指しているからな」

「……世界一?」

 ヴォルフリックが目指しているのは世界一。そこまでの話となると現実味を失い、クローヴィスはには子供が夢を語っているように聞こえてしまう。

「世界一だからお前の親父だけでなく、全員に勝てるようになる」

「……本当に世界一になんてなれると思っているのか?」

「はっ? どこの誰かは知らないが世界一強い奴はいるだろ? そいつがなれるのであれば、俺だってなれる」

「……どれだけ楽観的なんだ。それも特殊能力を持っているが故の驕りか?」

 クローヴィスはヴォルフリックのようには考えられない。世界一なんてものは実力だけでなく、運も味方してのこと。その運も常にその人物に微笑み続けるとは限らない。絶対的な世界一の強者などいないと。

「特殊能力、特殊能力ってうるさいな。そんなものあってもなくても強くなれる」

「なんだと……?」

 クローヴィスの体から怒気が吹き上がる。無能力者であることはクローヴィスのコンプレックス。特殊能力を持っていたらと、どれだけ悩んだことか。それをヴォルフリックはどうでも良いことのように言った。それが許せなかった。

「えっ? 怒ってる?」

「当たり前だ!」

「ええっと……とりあえず、悪い」

 クローヴィスが本気で怒っていることに気がついて、謝罪を口にするヴォルフリック。だがこんな謝り方でクローヴィスの怒りが収まるはずがない。きつい目でヴォルフリックを睨みつけている。

「まあまあ。ヴォルフリック様は強くなろうと努力することに、特殊能力のあるなしは関係ないって言っているのだよ」

 クローヴィスの怒りをなだめようとフィデリオが割って入ってきた。こういう展開になるとは彼も予想していなかったのだ。

「そうかもしれませんが……」

 フィデリオの言葉に少し気持ちを落ち着かせたクローヴィス。だが完全には納得出来ていない。心に秘めていた特殊能力を持つヴォルフリックを羨む気持ち。それが怒りに火を送り続けているのだ。

「……ツヴァイ殿はどうかな? 貴方は何を目指しているのだろう?」

 ここは特殊能力を持たない人の話を聞いて、クローヴィスの心を落ち着かせようと考えたフィデリオだったが。

「殿って……年上の人にそんな呼ばれ方しても気持ち悪いよ。それに僕の名はブランドだから」

「年齢は関係なく従士になったのは……えっ?」

 殿をつけて呼ぶのは従士になった順番が序列になるから、と説明しようとしたフィデリオだが、途中でブランドが重大発言したことに気がついた。

「えっと……偽名で試験を受けたら合格取り消し?」

 ブランドは、ロートもだが、偽名を使って従士試験を受けていた。素性を洗われるのを警戒してのことだ。

「……いや、大丈夫だと思う。ただ書類の記載名は正しいものに直しておいたほうが良いな」

 国王ディアークや父であるアーテルハードはブランドがヴォルフリックの仲間であると分かっていて合格にしたことをクローヴィスは知っている。偽名を使っていたからといって今更不合格になどしないはずだ。

「それはどうやって?」

「私のほうで手配しておく」

「じゃあ、頼む」

 従士として認めていないくせにヴォルフリックは、傭兵団の手続き関係はクローヴィスに任せっきり。クローヴィスもそれをなんとも思っていない。おかしな関係だとフィデリオを感じた。ただ今はそのことは重要ではない。

「結局……ブランド殿か。ブランド殿が目指しているのもヴォルフリック様と同じなのかな?」

「僕? ヴォルフリックが世界一強いやつだから、僕は世界一、剣で戦うと強いやつかな?」

「それはヴォルフリック様に一歩譲るということだろうか?」

 ブランドが目指している高みはヴォルフリックとは違っていた。剣での戦いであれば、という条件付きの世界一だ。それはブランドがヴォルフリックに勝つことを諦めているか、譲っているのだとフィデリオを考えたのだが。

「譲る? 違うね。僕はかけっこではヴォルフリックに勝てない。勉強でも負ける。でも剣でなら勝てると思っている。勝てるもので勝負しようとしているだけさ」

「……なるほど」

「もちろん、この先、ヴォルフリックが怠けていれば話は別。僕が世界一さ。でも、その可能性は少ないからね」

 ブランドはヴォルフリックが特殊能力を持っていることなど気にしていない。そんなものがあろうとなかろうと、強くなろうと人一倍努力した者が強くなる。こういう考え方だ。これはヴォルフリックも同じ。特殊能力があるから自分は強くなれるなんてことは考えていない。
 これこそがフィデリオがクローヴィスに聞かせたかった答え。フィデリオ本人も聞きたかった答えだ。

「強くなる為にはこの先も厳しい鍛錬を続けなければならない。ですがヴォルフリック様。この先、何をどうすれば良いか貴方は分かっていますか?」

「……どういう意味?」

 ヴォルフリックの目がわずかに細められている。意味を問うているが、フィデリオが何を言っているかは分かっている。それを知られていることを警戒している。

「ギルベアト様は鍛錬方法を記述した資料など王国騎士団に残されておりません。探しても時間の無駄です」

「……じゃあ、どこにある?」

 ヴォルフリックが図書室に通い続けていたのは、理由の全てではないが、この先の鍛錬方法を考える為。ギルベアトが何か残していないか探していたのだ。口実を作って王国騎士団の資料を閲覧することも出来るようになったが、目的のものは見つかっていなかった。

「私の頭の中に」

「そう来たか」

「正直、全てが頭に入っているとは言いませんし、どこかに資料はあるかもしれません。ですが、それが見つかるまで今のままでとどまっているわけにはいかないのではありませんか?」

 基礎は大切だ。だがさらに強くなる為には次の段階に進まなければならない。ヴォルフリックとブランドはそうするべきレベルに到達しているとフィデリオは考えている。

「……分かった。俺の従士と認める」

 フィデリオが要求しているのはこれ。ヴォルフリックは従士として受け入れることにした。先に進むにはこうするしかないのだ。

「クローヴィス殿も」

 だがフィデリオはさらなる要求をしてきた。

「……本人が望むなら」

 ヴォルフリックはこれも認めた。あとは本人の意思だが、ヴォルフリックが言っているのは、ただ従士になりたいというだけの意思ではない。

「どうしますか?」

「……私も学べるのですか?」

「貴方がそれを望むのであれば。最初に言っておくけど、貴方と二人との間には大きな差がある。一から剣を学ぶくらいの覚悟がないと身につくことはない」

 クローヴィスの剣術はヴォルフリックが学んでいるものとは違う。父であるアーテルハードが実戦の中で身につけた戦い方だ。それではフィデリオは教えられない。クローヴィスは積み上げる土台を持っていないのだ。

「……やります。強くなれるのであれば、必ずやり遂げて見せます」

 今のままでは父を超えることなど夢のまた夢。それを実現するには今とは大きく異なることを始めなければならない。

「自分だって楽観的じゃないか」

 決意を告げたクローヴィスにヴォルフリックが文句を言ってきた。

「私のどこが楽観的だと言うのだ?」

「俺たちがやってきたことは、やる前から必ずやり遂げますなんて言えるようなものじゃない」

 ギルベアトに課せられた厳しい鍛錬。普段は優しいギルベアトが鬼に見えるほどの辛く厳しい鍛錬にヴォルフリックたちは耐えてきた。ヴォルフリックなどは物心ついてすぐの頃から、さすがにその頃は少し緩かったが、ずっと鍛えてきたのだ。

「……それでもだ。どれだけ困難なことであっても俺はやり遂げてみせる」

「じゃあ、認めてやる」

「えっ?」

「従士として認めてやると言っている」

 視線はそっぽを向きながら、クローヴィスが従士になることを認めるとヴォルフリックは告げた。

「あ、ああ。それは……ありがとう」

 これまで散々、拒否してきたヴォルフリックが従士になることを認めた。クローヴィスは喜ぶよりも戸惑ってしまう。それでもお礼の言葉を口にした、のだが。

「……ありがとうございます。ヴォルフリック様」

「なんだって?」

「お前、従士だろ? 従士なら従士らしく敬語を使え。さあ、もう一度」

「…………」

 ヴォルフリックの言っていることは間違いではない。騎士と従士は上司と部下、これが王国騎士団であれば一家の主とその家臣だ。敬語を使うのは当然のこと。だがクローヴィスはそれをする気にはならない。クローヴィスが嫌がらせをしているだけなのは明らかだ。

「首にするぞ?」

「こ、この、愚か者が! 騎士なら騎士らしく振る舞え! 優れた騎士は下の者にも敬意を払うものだ!」

「残念! 俺は騎士見習い。見習いというのは未熟なものだ」

「ああ、いえばこういう! 見習いを外してもらう為にも騎士に相応しい振る舞いをするべきだろ!」

 ヴォルフリックの挑発に乗って、大声で怒鳴るクローヴィス。大食堂にいる他の人々は、何が始まったのかと驚いている。

「別に騎士になりたいなんて思ってない」

「お前は……そういう敵を作る発言は慎め」

 ヴォルフリックの発言は問題発言。そう考えたクローヴィスは、周囲の意識が自分たちに向いていることもあって、小声にしてヴォルフリックをたしなめた。

「敵を作る?」

「騎士になりたい人がここには大勢いる。なりたくてもなれない人だ」

 クローヴィス自身もその一人だ。

「それは……特殊能力を持たないと騎士になれないなんて制度を作るのが悪い。実力があれば能力の有無に関わらず、騎士にすれば良い」

「……そうか。そういう考えなのだな。だがそれをここで理解する人は少ない。だから気をつけろ」

 ヴォルフリックの不用意な発言は特殊能力を特別視していないから。特殊能力を持たなくても強くなれる。特殊能力保有者を超えることさえ出来る。そう考えているからの発言なのだ。だがアルカナ傭兵団でその考えに共感する人はいない。クローヴィスはそう考える。
 本当にそうなのか。クローヴィス自身は無能力者であるが、その立ち位置は父親と同じ特殊能力者の側にある。そんな彼では気づけないこともある。