月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

奪うだけの世界など壊れてしまえば良い 第144話 男って奴は

異世界ファンタジー 奪うだけの世界など壊れてしまえば良い

 

◇◆◇ 夜王=金井力 ◇◆◇

 

 あり得ない。あり得ない。あり得ない。どうしてこんなことになっている? クズミまでこの世界に転生している。これは仕方ない。同じクラスの奴らが何人も転生しているのだとすれば、その中にクズミがいてもおかしくない。でもどうして、あいつが新たな「魔王」と見られている? そんな力は奴にはない。あるはずがない。
 僕の知らないストーリー、設定。その中心に、よりにもよってクズミがいる。ストーリー改変にしても、あり得ない。退魔兵団の兵士なんて、ただのモブ。ナレーションで、それも一、二行で魔王国に滅ぼされたことが説明されていただけ。兵士はゲーム内で登場してもいない。そんな存在がどうしてこんな状況を作れる?
 もう、どうでも良い。今ここで叩き潰してやる。それで、クズミの物語は終わりだ。物語は僕の物になる。

 

「おや、ザグブルもいるな」

 

「ザグブル?」

 

 クズミの仲間に嵐王が知っている奴がいたようだ。

 

「夜王は知らないのか? 悪魔にしては、そこそこな奴だ。だから名を与えてやった」

 

 魔族の表現では本当の強さは分からない。「そこそこ」というのはどの程度だ? ただ、名を与えたということは嵐王よりは格下。それであれば問題ない。それに僕が戦う相手でもない。
 クズミの仲間は三人。そのザグブルと鬼人族の男、そして人族の女だ。岩王はいない。

 

「おい、ザグブル。お前、そこで何をしている?」

 

「おや、過去の人ではないですか? 貴方がくれた名はドブに捨てました。今の私はアレクサンダーです」

 

「……何だと?」

 

 ザグブル、今の名はアレクサンダーのようだが、が嵐王を挑発している。勝手にやってくれ。僕はクズミを殺すことに専念する。

 

「クズミ」

 

「……はあ……あのさ、もういい加減にしてくれないか?」

 

「何の話だ?」

 

 わざとらしくため息をつき、呆れ顔を見せるクズミ。この反応は僕には読めない。油断させようとでもしているのか? そうだとしても、そんなものに引っかかる僕じゃない。

 

「この台詞、もう何度、口にしたか……俺の名はヒ・サ・ズ・ミ。久住海斗だ。今はカイトだけどな」

 

「…………」

 

 クズミではなく、ヒサズミ。そんなはずはない。先生だって、クズミと呼んでいたはずだ。いや、そうか。榊にそう呼ばされていたのだ。学校も、あの男に逆らえなかった。誰もあの男を止められなかった。学校の中で、榊は絶対者だった。

 

「そういう顔も見飽きた。えっと、金井力で合っているのかな?」

 

「……そうだ」

 

 クズミは、いや、ヒサズミか。とにかく、こいつは僕が誰だが知っていた。いつ知られた? <鑑定>をかけられた感覚はなかった。そうなると以前から知っていたのか?

 

「俺は皆の名前を憶えていたのに……どいつもこいつも」

 

「……名前なんてどうでも良い。お前は僕が殺す」

 

 こいつの名がクズミだろうとヒサズミだろうと、どうでも良いことだ。どうせ、こいつはここで死ぬ。僕が殺す。

 

「んん? 聞き捨てならない台詞。カイト君はミユウが守る!」

 

「……誰だ、お前? 雑魚は引っ込んでいろ」

 

 割り込んできた女。この女は前に会ったことがある。退魔兵団の夢魔、クズミの仲間だ。いや、仲間じゃなくて、女か。クズミのやつ、こんな女を彼女にしている。クズミのくせに。

 

「ミユウは雑魚じゃないもん。<魔王の柱>だから」

 

「何、それ? くだらない」

 

 本当にくだらない。生意気な女。ちょっと可愛いところがムカつく。クズミなんかの彼女になったことを後悔させてやる。いや、そうだ。僕が奴よりも、ずっと楽しませてやろう。この女をクズミから奪ってやる。

 

「夜の帳が下りて、世界は僕のものになる」

 

 僕のスキル<結界魔法>。結界の中では僕が絶対者だ。誰も僕には逆らえない。この女も、僕のいいなりだ。

 

「僕にひざまずけ」

 

「……はい。ご主人様」

 

 あっさりと女は僕の術にはまった。簡単な女だ。クズミが見ている前で、辱めてやる。

 

「跪くだけで僕が許すと思うのか?」

 

「…………」

 

「靴を舐めろ」

 

「はい。ご主人様」

 

 這いつくばったまま、僕に近づいてくる女。ああ、先に裸に剥いたほうが良かったかな? まあ、それはあとでも良い。見ていろ、クズミ。自分の女が僕に奉仕する姿を。

 

「靴はもう良い。舐めるのはもっと上だ」

 

「ご主人様の命じるままに」

 

 馬鹿な女だ。自分が今、何をしているか分かっていないだろう。どこかで正気に戻してやろう。その時、この女がどんな反応を見せるか楽しみだ。でもそれは、もっともっと辱めてから。もっともっと楽しんでからだ。

 

「服を脱げ」

「はい。ご主人様」

 

「全身を舐めろ」

「はい。ご主人様」

 

 もっとだ。もっともっと! もっと恥ずかしいことをしろ!

 

「四つん這いになれ」

「はい。ご主人様」

 

「もっと尻をあげろ」

「はい」

 

「もっとだ! もっともっとだ!」

 

 この女は僕の物だ。この世界も僕の物だ。全てが僕の物だ。誰にも渡さない。渡さない。この世界では僕が支配者だ。誰も僕には逆らえない。もっともっと、恥ずかしことをしろ。全てが僕に従え。欲望が止まらない。僕の欲望はどこまでも肥大していく。僕の……僕の欲望は、どうして止まらない?

 

「夜王! 正気に戻れ!」

 

「えっ……?」

 

 剛拳王の声。彼は何を言っている? 正気に戻れって、どういう……ことだ?

 

「良い夢、見れた?」

 

「なっ……あっ……ああああああっ!」

 

 痛い。熱い。これは何? 剣が、剣が僕の体に刺さっている。どうして? どうして、こうなった? 僕は、僕は死ぬのか?

 

「……げ、幻夢夜姫なのか?」

 

 それは誰? 剛拳王は何を知っている? この女は何者だ? ゲンムヤキって、何のことだ?

 

「大きなオジサンは、どうしてミユウの新しい称号を知っているの?」

 

「……やはり……本物の<魔王の柱>なのか……」

 

 どういうことだ? 剛拳王、教えろ。これはどういうことだ? 僕はどうして、どうして僕は刺されている? 僕の結界で僕は絶対者なのに。

 

「金井力くん。君、変態だったのだね? 一人で卑猥な言葉を叫んで。それも素っ裸になって」

 

「……そ、そんな……ぼ、僕は……」

 

 クズミは何を言っている? 僕はそんなことはしていない。一人で……僕は……げ、幻影……僕は幻を見せられていたのか。

 

「ああ、分かった。榊を裸にしていたのは自分の趣味か。何、榊も喜ぶと思ったの? 金井君は、榊を喜ばそうとしていたのか?」

 

「そんな、はず、ないだろ?」

 

「そうかな……? 女の子を辱めて喜ぶ。やっていることは榊と同じだけどな」

 

「……ち……違う……ぼ、僕は……」

 

 違う。違う、違う。僕はあんな男と同じじゃない。僕は、僕は彼女の為に復讐をするはずだった……のに、どこで僕は、僕は間違った?

 

「ど、どうして、け、怪我……が……」

 

 どうして治らない? 僕のスキルには<治癒>がある。胸を刺されたのはちょっとだけど、それでも治せるはず。何度もスキルを発動しているはずなのに。

 

「ミユウが駄目って言ったから」

 

「そ、そんな……」

 

 そんな馬鹿な。僕はこの女に支配されているのか? 夜王の称号を持つ、幻影魔法では最高峰の力を持つ僕が、どうしてこんな女に支配される? あり得ない。

 

「……た、助けて……久住くん……お願いだから、僕を……助けて。昔のことは……あ、謝るから……」

 

「謝罪するのは昔のことじゃないし、俺に対してでもない。お前は、この世界の人々を苦しめた。よそ者の俺たちに、そんな真似は許されない」

 

「……お、お前……だって……」

 

「ああ、俺にもいつか裁かれる時が来るかもしれない。その時は受け入れるしかない」

 

 どうして、そんな風に……お、思える……い、異世界に転生……した……僕たちは……特別な……存在。僕たちには……この世界を……支配する……権利が……あった、はず…………

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