月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

黒き狼たちの戦記 第35話 人はそれぞれ背負っているものがある

異世界ファンタジー 黒き狼たちの戦記

 ノートメアシュトラーセ王国は小国。その小国の二十人にも満たないアルカナ傭兵団の上級騎士たちが、大陸の東西二大国ベルクムント王国とオストハウプトシュタット王国を相手にして堂々と渡り合っている。そのアルカナ傭兵団の上級騎士たちはクローヴィスにとって憧れの存在。その一人である父親は彼の自慢だった。
 いつか自分もアルカナ傭兵団の一員として、大国相手に大活躍する。物心がついた時には、その想いは自然と心の中にあった。その日の為に懸命の努力を続けたつもりだった。だが、ある日、それは夢のままで終わることに気付いてしまった。アルカナ傭兵団の上級騎士たちが持つ特殊能力が自分にはないことをクローヴィスは知ってしまったのだ。
 その時の悔しい思いは今も心の中に残っている。特殊能力がなくても、努力すれば同じだけの戦闘能力を持てるようになると信じ、その為の努力を続けてきた。だがその思いは何度もくじけることになる。
 アルカナ傭兵団の頂点に立つディアークの息子二人は、父親と同じ能力を持って生まれてきた。どうして自分だけが。そんな思いが湧いてきた。幼馴染である力のテレルの娘セーレンも自分と同じように特殊能力を持たないと分かった時は少し慰めになったが、そんなものは一時のこと。セーレンが自分と同じであることを喜んだ自分が情けなかった。
 従士としてアルカナ傭兵団で働けることを知ったが、その決断はなかなかつかなかった。最後まで決断出来なかったが正しい。あくまでもヴォルフリックを監視する為という理由で、従士になっただけなのだ。
 初めは特殊能力を持っているというだけで上級騎士となったヴォルフリックが憎かった。自分がどれだけ求めても手に入れられない立場を、ヴォルフリックは嫌がっていた。それが許せなかった。
 だが、ずっと彼を見ているうちに、そんな気持ちは少しずつ薄れてきた。ヴォルフリックは特殊能力保有者でありながら、それを絶対視していない。特殊能力の有無に関係なく強い人は強い。そういう考え方だ。
 戦い方を教えたギルベアトの影響があるのだとクローヴィスは考えている。ギルベアトは特殊能力がなくても自分よりも強い。ヴォルフリックはそう思って、育ってきたのだ。
 強くなるための努力をヴォルフリックは惜しまない。鍛錬をしている彼を見ていると特殊能力保有者であることなど分からない。地道な体作り。剣の型の稽古。量と内容の濃さは別にして、騎士や従士と変わらない鍛錬を続けている。
 実際にはヴォルフリックが特別なわけではない。他の上級騎士たちも特殊能力を磨くだけの鍛錬を行っているわけではないのだが、ヴォルフリックのそれは地味なものが多いので、特別な印象を持ってしまうのだ。
 自分はどこまで行けるのか。クローヴィスは考える。三団対抗戦で、ディアークとの対戦でヴォルフリックが見せた動き。父親の能力である神速なのではないかと思うくらいの動きをヴォルフリックは見せた。特殊能力に関係なく、そこまで到達してみせたのだ。

「何をボーとしているの? 怠けていると追い抜くわよ」

 一緒に鍛錬を行っているセーレンが話しかけてきた。

「……セーレン、君は嫉妬したことがあるか?」

「へっ?」

「嫉妬」

「わ、私、好きな人いないもの」

 顔を赤らめて、クローヴィスの問いに答えるセーレン。勘違いなのだが、これはクローヴィスが言葉足らず過ぎる。
 
「その嫉妬じゃなくて、自分にないものを持つ人に対してとか」

「ああ……あるわよ。私はクローヴィスに嫉妬していた」

「えっ?」

 セーレンの嫉妬の相手は、まさかの自分。年が近いジギワルドあたりをクローヴィスは考えていたのだ。

「貴方は男で私は女。父上は私が男に生まれてきていたら、従士になることを反対なんてしなかったはず」

「……そうか」

 セーレンは従士になることさえ父親に認められていない。特殊能力の有無以前の問題だった。

「今はそういう気持ちはないかな? 前にヴォルフリックに聞かれたの。従士になりたいのか、それとも強くなりたいのかって」

「それで?」

「その時は強くなって従士になりたいと答えた。でも今は先のことはどうでも良い。強くなる為に頑張っていることが楽しい」

「楽しい……そうだな」

 強くならなければならないと自分を追い込んでいた頃は、鍛錬は苦行だった。その頃よりも今のほうが遥かに厳しい鍛錬を行っている。だがその鍛錬を苦行だと思うことはない。辛く苦しくても、楽しいのだ。

「さすがにあれはどうかと思うけど」

 セーレンが指さしたのは鍛錬をしているヴォルフリック。彼は馬の上に立ち、鍛錬場内を駆けまわっている。実に楽しそうな鍛錬だ。

「馬に乗れないはずなのに」

「制御はしていないわね。暴れ馬の上に立っているだけだもの」

 馬を御しているわけではない。ただ手綱を握って、馬が自由に駆けるに任せているだけ。その馬の上にヴォルフリックは立ち続けているのだ。

「……いずれ出来るようになるのかな?」

「多分ね。私たちの才能がブランドに大きく劣るものでなければ」

 駆け回る馬に近づいていくブランド。すぐ脇を馬が通る瞬間に、ヴォルフリックが伸ばした手に捕まって、馬の上に飛び乗った。まるで軽業師のような身のこなし。やっていることが曲芸そのものなので、そう見えるのは当然だ。
 ヴォルフリックと入れ替わったブランドは、同じように馬の上でバランスを崩すことなく、立ち続けている。型を習得すれば、これくらいは出来るようになるはず。ブランドはそれを示している。二人にとってブランドは一番近いところにいる目標なのだ。

「……陛下との対戦をどう思った?」

「いつか私もあの場に立ちたいと思った。堂々と陛下に挑戦できるだけの強さを身につけたいって」

「俺もだ」

 憧れの父親が尊敬するディアークは二人にとって雲の上の存在だった。その高みに辿り着こうなんて考えたこともなかった。だがヴォルフリックは本気でそこを目指している。身の程の知らずという思いはもう二人にはない。ディアークとの対戦でヴォルフリックは、二人に可能性を見せたのだ。
 いつか自分も同じ舞台に。二人はそれを夢見ることが出来るようになった。

 

◆◆◆

 鍛錬三昧のヴォルフリックの毎日を邪魔が出来、実際にそれを行う唯一の存在はアデリッサだ。今日もヴォルフリックは鍛錬の途中でアデリッサに呼び出され、城内の中庭にいる。同席しているのはオトフリート。なんとも気まずい会なのだが、その場を用意したアデリッサは上機嫌だ。
 会の目的は三団対抗戦での優勝を祝うというもの。そうであればジギワルドもいるべきなのだが、アデリッサが彼を呼ぶはずがない。

「近衛騎士団との対戦は見事なものだったと聞いたわ」

 アデリッサが上機嫌なのは、ただ優勝したからではない。誰かが近衛騎士団戦でのオトフリートの活躍を彼女の耳に入れたのだ。その前の王国騎士団戦での苦戦は隠して。

「まあ、まったく危なげなく三戦全勝だから」

 ヴォルフリックも王国騎士団戦について語って、アデリッサの機嫌を損ねるつもりはなない。

「相手はどうだったのかしら?」

「近衛騎士団の中から選抜された騎士だから、弱くはないと思う。ただこちらの勢いが完全に勝っていたかな」

「それはオトフリートが作った勢いですね?」

「まったく相手に反撃を許さずに勝ったので」

 柄にもなくオトフリートを持ちあげる、というほどではないのだが、ヴォルフリックにしては上手く話を合わせている。アデリッサがあまりに上機嫌なので、そうすることしか出来ないのだ。

「私も二人の活躍を見たかったわ」

 見たかったのはオトフリートの活躍。ヴォルフリックはついでだ。

「そういう機会があれば良いけど……俺にはどうにも出来ないか」

「次の機会には観戦が許されるように陛下にお願いしてみようかしら?」

「母上……そういうお願いは、あまり……」

 オトフリートとしては、アデリッサの観戦は望ましいことではない。今回の近衛騎士団戦では良い評価を得ることが出来た。だが次もそうなるとは限らない。真逆の結果になる可能性だってあるのだ。

「わがままに思われるかしらね……」

 ディアークに願い出ても、叶えてもらえるとは限らない。関係は良好とは言えないのだ。それを考えて、浮かれていたアデリッサの気持ちが沈んでしまう。

「……お茶が冷めてしまったかしら? 新しいのを入れるわね?」

「じゃあ、お願い」

 沈んだ心を落ち着かせる為。それが分かっているヴォルフリックは、カップをアデリッサの前に差し出した。それをお盆に乗せて、立ち上がるアデリッサ。

「……心が痛いのだけど」

 アデリッサが席を離れたところで、ヴォルフリックは小声でオトフリートに話し掛けた。

「どうしてお前の心が痛くなる?」

「お前が不正して勝ったことを彼女が知ったらどうなる?」

「…………」

 ヴォルフリックの言葉に黙り込むオトフリート。その反応が、三団対抗戦での不正は従士たちが勝手に行ったことではないと、ヴォルフリックに教えた。

「何故、あんな真似をした? 二度も相手の剣を折って勝ったら、絶対に疑われただろ?」

 近衛騎士団戦で順番を変えたのはこの心配があったから。相手に剣を使わせることなく、一気に決着をつけたのも剣の細工を明らかにしない為。ディアークに対戦を求めたのも、証拠となる細工された剣を隠す隙を作る為に会場を混乱させることが目的だった。
 幸いにもそれは、今のところだが、上手く行った。疑問の声はどこからもあがっていない。

「……うるさい」

「はあ? うるさいって何だ?」

「うるさいと言ったらうるさい! 貴様に何が分かる!? 俺の気持ちなんて分かるはずがない!」

 顔を真っ赤にしてオトフリートはヴォルフリックに向かって怒鳴ってきた。

「そういうことは言ってないだろ!?」

 逆ギレされたことに怒ったヴォルフリックも、小声で話すことを忘れてしまう。

「俺は勝たなければならないんだ! 一番でなければならないんだ! 何も背負っていない貴様に! 俺の気持ちが分かるか!?」

「お前……」

 さらにウォフリックに、掴みかからんばかりの勢いで訴えるオトフリート。ここまでの反応はヴォルフリックにとって予想外のことだった。

「頑張っても頑張っても……貴様に分かるか……」

「…………」

 オトフリートの声が呟きに変わる。初めて目の当たりにしたオトフリートの弱気な姿。その様子を見て、ヴォルフリックは言葉を失ってしまった。

「……どうしたのですか?」

 不安そうにアデリッサがヴォルフリックに問い掛けてきた。オトフリートの様子は只事ではない。直接、聞くのを躊躇ったのだ。

「ごめん。いつもの調子で悪乗りしたつもりだったのだけど……ちょっとやり過ぎた」

「そうですか……」

 ヴォルフリックの答えには何も具体的な説明がない。オトフリートの様子が尋常ではないのもあって、いつもの喧嘩という言葉をそのまま信じる気にはアデリッサはなれなかった。だからといってオトフリートに詳しい話を聞くのも躊躇われる。

「せっかくの会だけど、今日はこれで。お互いに頭を冷やす時間が必要だ」

「そうですね。分かりました」

 オトフリートに聞くにしても、何も聞くことなくただ慰めるにしても母子二人だけのほうが良い。そう考えて会の終わりを受け入れるアデリッサ。その返事を聞いて、ヴォルフリックは席を立った。
 傭兵団施設に足を向けるヴォルフリック。だがその足は途中で止まることになる。

「……皇帝はどこにいる?」

 廊下に立っていた見張り役の近衛騎士にディアークの居場所を尋ねるヴォルフリック。

「はい?」

 いきなり質問を向けられた近衛騎士は何のことか分からない。

「陛下は今どこにいるか知っている?」

「ああ、陛下か。どうだろう? この時間だと私室の隣の執務室か」

「それはどこ?」

「……聞いてどうする?」

 さすがに近衛騎士もヴォルフリックの問いを怪しんだ。いきなりディアークに対戦を申し込むような、近衛騎士にとって、危険人物であるヴォルフリックだ。警戒するのが当然だ。

「アデリッサ様が陛下に会いたいと言っていた。その執務室に行けば会えるのか?」

「……会うかどうかは陛下が決めることだ」

「それはそうだな。それで? そこはどこ? 私室の隣ってことは、そう遠くないな」

 この場所はすでに王家の人たちの私的空間。国王であるディアークの私室も近くにあるとヴォルフリックは考えた。正解だ。

「……こっちだな」

「おい!? 勝手に行くな!」

 この近衛騎士の言葉で、自分の考えが間違いではないと確信したヴォルフリック。近衛騎士の制止を無視して、奥に進んでいった。

 

◆◆◆

 ヴォルフリックが目指す執務室。近衛騎士の予想通り、ディアークはその場所にいた。国王の公務としての打ち合わせや謁見の時以外は、ディアークはほとんどこの場所にいる。一人でいるのに一番落ち着く場所であり、古くからの仲間と自由に語り合える憩いの場所でもあるのだ。
 だがその憩いの時を邪魔する喧騒が聞こえてくる。

「何かあったのか?」

 そんな場所であっても護衛役はいる。廊下の外で待機している近衛騎士にディアークは何の騒ぎか尋ねた。

「はい。それが……傭兵団のヴォルフリック殿が陛下に会わせろと」

「なんだと? 愚者が俺に……良い。通せ」

 ヴォルフリックが自分に何の用があるのかディアークには見当がつかない。そうであれば会って話を聞くしかない。別に会いたくない相手ではない。嫌がるのはヴォルフリックのほうであるはずで、その彼が自ら会いに来ようとしているのだ。会わないという選択はない。
 喧騒がおさまって、すぐにヴォルフリックが扉のところに姿を現した。

「どうした? まさか、また対戦をなんて言うのではないだろ?」

「今やっても結果は同じ。無駄なことに時間を使うほど、俺は暇じゃない」

「では何の用だ?」

 暇ではない中でわざわざ時間を使っての用件は何のか。ますますディアークは気になった。

「どうして後継者を決めない?」

「はあ?」

 まさかの質問。ヴォルフリックがこんなことを聞いてくるなど、まったく想像出来ないことだ。

「後継者の決定を先延ばしにする理由はなんだ?」

「……何故、そんなことを知りたい?」

「そのせいで追い詰められている奴がいる。実際はどれほどのことか俺には分からないが、そう見えた」

 母親の前で我を忘れてしまうほど。きっかけを作ったのはヴォルフリックであるが、オトフリートの反応はまったく想像していなかったものだった。

「……オトフリートか」

「分かっているのであれば何故、先延ばしにする? 後継者に選ぶにしても選ばないにしても、早く決めてやろうとは思わないのか?」

「早く決めることがオトフリートの為になるとは思わない。今、オトフリートが感じている重圧など、国王になった時のそれに比べれば軽いものだ」

「……解放される部分もある」

 国王の重圧などヴォルフリックには分からない。だが別の重圧があるとしても、今、オトフリートが感じているものからは解放されるはずだとヴォルフリックは思っている。

「その結果、良い方向に進むか分からない。今の重圧でつぶれるようであれば、国王になる資格はない。では後継者にはなれないと決めれば良いとお前は言うかもしれないが、それでオトフリートは本当に楽になれるのか? 国王失格と判定されたことで、もっと追い詰められることにならないか?」

「…………」

「お前にも背負うものがある。だがお前の仲間は皆、信頼できる人物なのだろう? 国王は違う。信頼出来る人物は極少数。いつ裏切るか分からない者たちも含めて、背負っていかなければならないのだ。それに耐えうる心を持たなければならないのだ」

 ディアークの話は、ヴォルフリックがこれまで考えたことのないものだった。本当に信頼できる仲間たちと共にあるから、何事も出来るのだ。信頼出来ない者まで背負うなんてことはヴォルフリックにはあり得ないことだった。

「……オトフリートはそうなれるのか?」

「分からない」

「ではジギワルドは?」

「分からない。だから後継者は決められない」

 ジギワルドにも後継者とするには足りないところがあるとディアークは考えている。ジギワルドの周りにいるのは彼を肯定する人々ばかり。そんな環境に甘んじているようでは、国王にするわけにはいかない。

「そうか……」

「……但し、オトフリートを後継者に決める条件がないわけではない」

「それは何だ?」

「お前が支えることだ。お前が臣下としてオトフリートを支えるのであれば、補える部分が多くある。お前はオトフリートを甘やかさないだろう。それでいて、こうして気持ちを推し量って行動する優しさもある」

 ディアークも別に息子二人に完璧な王になることを求めているわけではない。自分自身がこうしていられるのは、少なくはあるが、信頼出来る仲間のおかげ。息子たちにもそういう信頼出来、頼りになる存在がいてくれれば良いと思っている。
 後継者を決められない理由には、二人の息子の周りにいる人々に物足りなさを感じていることもあるのだ。

「無理だな」

「考える余地もなしか?」

「俺はこの国を潰そうとしている人間だ。それに、もっと大切な仲間がいる」

 ヴォルフリックの背中にオトフリートが乗る余地はない。ヴォルフリックとオトフリートとでは、ジギワルドともだが、目指すものが違う。共に歩むことは出来ないのだ。

「そうか……まあ、良い。今、良い答えをもらっても信用できないからな」

 ヴォルフリックとオトフリート、というより自分の目指すものは同じ。それをヴォルフリックに分からせない限り、ディアークの望む形にはならない。

「今でなくても同じだ……後継者の件は理解した。余計なお世話だったな」

 ディアークにはディアークの、ヴォルフリックももっともだと思う考えがあった。それが分かれば、もう文句は言えない。

「……俺からも聞きたいことがある」

「何だ?」

「お前の炎は……母親譲りか?」

「……息子なのだからそうなのだろうな」

 親の能力は子供に遺伝する場合がある。ディアークの息子たちがそうであるのだから、自分も同じ。ヴォルフリックはそう考えた。

「そうではなく……いや、分かった。聞きたいのはこれだけだ。行け」

「……ああ」

 わざわざ聞くようなことか。こんな風に思いながらヴォルフリックは執務室を出ていく。彼の疑問はもっともだ。ディアークが聞きたかったのは、ヴォルフリックが思うようなことではない。ただ、それをどう表現すれば良いのか分からなかった。
 お前の炎に包まれた時、まるでミーナに抱きしめられているようだった。それは何故だ。なんてことは恥ずかしくて聞けるはずがない。