ウェヌス王国の王都から東に延びる街道を多くの人馬が進んでいる。戦争に向かうウェヌス王国騎士団の隊列だ。
王都を出立したウェヌス王国騎士団は、軍団単位に分かれて進軍を続けることになった。行軍の規模を小さくして進軍速度を上げる為だ。形式だけとはいえ出陣が公表された以上は、速やかに戦地に移動する必要がある。
先行するのは先軍である騎士団第一大隊。率いる将は、先軍全体の軍将でもあるハーリー千人将だ。隊列を組んで、街道を並足で進んでいる騎士団第一大隊であったが、一部の騎馬隊が、その隊列から離れて先を進んでいた。勇者親衛隊の二百騎だ。
何か軍事的な意味があって、それをしているわけではない。まだ馬の達者と言えない健太郎の練習の為という口実の、従卒たちへの嫌がらせだ。
「遅れているぞ! もっと急げ!」
前を進んでいた騎士の一人が戻ってきて、従卒たちを怒鳴りつけている。ただの言い掛かりに過ぎない。
馬に乗らず、騎士の荷物まで背負って走っている従卒たちが、騎馬の駈足に追いつけるはずがないのだ。
「隊列を崩すな! 速さは今のままで良い!」
騎士の言葉を否定する命令が従卒たちに向けられる。グレンだ。グレンも従卒たちと一緒に徒歩で進んでいた。
「……俺は従卒たちに急げと言っているのだが?」
親衛隊の騎士の一人が文句を言ってきた。当たり前だが、これでグレンが引くはずがない。
「では貴方も同じように走ってみれば良い。それで騎馬に追いつけるなら、貴方の指示通りに急がせましょう」
「何だと?」
「さあ、早く。彼等に見本を見せてやってください」
真剣な表情でグレンは手本を示すように騎士に迫っている。
「…………」
手本など見せられるはずがない。騎士は憎々し気な表情を見せたまま、黙り込んでしまった。
「出来ないのですか?」
「出来るはずがない!」
「では何故、出来ないことを彼等に命じるのですか?」
「……とにかく、急げ」
今のグレンは客将という訳の分からない身分だが、将官であることには変わりない。役もない一騎士が正面から逆らって良い相手ではなかった。
不満そうな顔を見せながらも、それ以上は何も言えずに騎士はまた前の方に進んでいった。それを見て、ほっとした雰囲気が従卒たちの間に流れていく。
「足を緩めるな! 速度維持だ!」
「「「はっ!」」」
それを諌める号令がグレンから発せられた。相手は嫌がらせのつもりであっても、グレンにとっては事務仕事で鈍った体を鍛え直す良い機会としてとらえていた。従卒たちにも、それを伝え、きちんと隊列を組んで走らせている。
途中で何度か歩きを入れて休みながらも一刻、従卒たちは休憩地まで走り込みを続けることになった。
それでも騎馬に追いつけるはずはなく、予定された休憩地に着いた時には、勇者親衛隊はとっくに休憩に入っていた。
「整列!」
ジャスティンの号令で従卒たちがグレンの前に並ぶ。今のジャスティンは自称ではなく、他の従卒にも認められた副官的な立場になっていた。
「従卒任務に戻れ。まあ、ほどほどに怠けろ。さすがに休みなしでは辛そうだ」
「「「はっ!」」」
グレンの命令に苦笑いを浮かべながら従卒たちは騎士たちの方に向かって行った。
その場に残ったのは行軍計画案の策定に関わった六人。彼等は従卒であることには変わりはないが、グレンの従卒なのだ。トルーマン元帥の力が働いた結果だ。
「少し鈍っているか?」
「はい。自主練はやっていたつもりだったのですが、厳しさが足りなかったようです」
行軍計画の見直し作業は寝る間もないほどの忙しさだった。その分、鍛錬は疎かになっていた。
「厳しさというより、時間が足りないのが原因だな。走り込みにはそれなりの時間が必要だ」
「はい」
「引き続き素振りの鍛錬だ」
「「「えっ!?」」」
グレンの言葉に従卒たちが驚きの声をあげる。
「休憩は後続が到着した後。行軍を乱した上に先に休んでいては白い目で見られる」
「確かに……親衛隊にはそれを言わなくてよろしいのですか?」
「もう白い目で見られている。そしてその目で見られるのは騎士だけであって従卒には及ばないだろう。問題ないな」
「分かりました。では始めます」
背負っていた荷物を地面に降ろすと六人は向かい合って、素振りを始めた。
グレンもただ見ているだけではなく、自分の剣を抜いて、ゆっくりと剣の重さを感じながら素振りを行っていく。
黒光りしている刀身。ザット直作のその剣が、甲高い風切音をあげて宙を切る。新しい剣がかなり馴染んできたことを感じて、自然とグレンの顔に笑みが浮かんだ。
だが更に動きを速めようとしたところで、グレンは小さく舌打ちをして剣を収めることになった。健太郎たちの視線を感じたからだ。
「……素振りも出来ない」
未だにグレンは利き腕が上手く動かないことにしている。そうしないと健太郎が立ち合いを求めてくるのが分かっているからだ。
仕方なく残りの時間は六人の素振りの様子を見るだけにした。
――やがて騎士団第一大隊が休憩地に到着する。馬を降りて思い思いに休憩を取る騎士たち。従卒たちは大変だ。馬の汗を拭きとると近くの小川に連れて行って水を飲ませる。それと同時に水筒に水を汲んで、馬を適当にその辺の木につなぐと、その水筒を持って、騎士の下に駆けていく。
複数の従卒や小姓がいれば良いが、そうでないと全ての世話を一人で行わなければならない。馬と騎士、両方の世話が終わってようやく従卒たちは自分の休憩となる。
「よし、休憩だ」
従卒たちの何人かが休憩に入ったのを見て、グレンも休憩を許した。グレンが気にしているのは騎士の目だけではない。後々は騎士として六人の同期になるだろう従卒たちの目も気にしているのだ。
素振りの手を止めて、六人は小川に向かって行く。汗を軽く流す為と、水の補給の為だ。グレンも同じことをする為に、六人の後に続いて歩いた。
◆◆◆
二度目の休憩は昼時となる。さすがに午前中一杯を徒歩で移動した従卒や小姓たちの顔には、疲労の色が見えている。それ以上に疲労しているのは、グレンと勇者親衛隊の従卒たちだ。
午前の行軍のほとんどを重い荷物を背負って、全力にはほど遠いとはいえ駈足で進んできたのだ。それも当然だろう。
休憩所では、輜重隊の面々が昼食の準備に追われて、忙しく働いていた。
もっと時間を掛けてやれば良いのに。こんな共通の思いが従卒たちの間に自然と広がっていた。
「グレン」
声を掛けてきたのは、ハーリー千人将だった。
「何でしょうか?」
「あんな行軍を続けていて、最後までもつのか?」
「もちません」
「では止めろ」
グレンの返事を聞くと、間髪入れずにハーリー千人将は無理な行軍を止めるように告げてきた。だが、これは言う相手が違う。
「それは勇者に言うべきではないですか?」
「当然言う」
「先に言うべきだと思います。潰れるのは向こうの方が先ですから」
「……そうか。休みを入れているとはいえ、駈足で行軍を続けていては馬が持つわけがないな」
「そう思います。自分としては、そうなっても構いませんけど。彼等も徒歩で移動することになれば、こちらの問題は解消されますから」
「……それは止めておこう。馬が潰れれば、予備の馬を要求されるに決まっている」
返答に間が空いたのは、それも有りかと少しハーリー千人将も考えたからだ。
「確かに」
「アレはどうすれば言うことを聞くのだ?」
ハーリー千人将は健太郎をアレ呼ばわりしている。勝手な行動に本気で腹を立てているのだ。
「それへの答えは必要ですか? ハーリー千人将はこの軍を率いる大将です。それに剣の師匠ではなかったですか?」
「アレは軍の上下関係を守らない。そして剣はすでに私を超えている。残っているのは、馴れ馴れしさだけだな」
苦笑いを浮かべながらハーリー千人将はグレンにこう告げた。苦笑いでも笑顔を見るのは初めてだ。こんな事を思いながらグレンはゆっくりと口を開く。
「……煽てと脅し。このどちらかです」
「なるほど。参考にさせてもらう」
こう言ってハーリー千人将は真っ直ぐに勇者親衛隊が集まっている場所に向かって行った。
「ハーリー千人将も大変ですね」
離れて行ったところで、口を開いたのはセインだ。
「まあ。剣の師匠だということで、勇者をこちらに置いたのかもしれないけど」
「先ほどの話だと却って良くなかったようですね?」
「馴れ馴れしさだけが残るって最悪だからな」
「教官もそうではないのですか?」
距離の近さでいえば、グレンはハーリー千人将に負けていない。あくまでも健太郎の距離感だが。
「まあ、確かに他人事ではない。性質が悪いからな。決して勇者は悪人ではない。人の善意を素直に受け取るのは良いところだ。でも善意が向けられるのが当たり前だと思っている面もある」
「……ただの甘えに聞こえますが?」
「そう言っている。異世界人は自分たちとは考え方が違うようだ。そのせいだろうな」
「そうですか」
異世界人だからではないのだが、健太郎と結衣以外に異世界人を知らないグレンたちには分からない。
「勇者だけじゃ……どうしている?」
「はっ?」
頭に浮かんだ人物。その姿が目線の先にあるのを見て、グレンは顔をしかめている。先軍にはいないはずの結衣だ。
「どうして、聖女がこの部隊にいる?」
「……あっ、本当ですね……こちらに向かっていますね」
休憩所をふらふらと歩いていた結衣だったが、今は真っ直ぐにグレンたちに向かってきていた。グレンが結衣を見つけたように、結衣もグレンを見つけていた。
「どんな善意を要求されると思う?」
「さあ? 見当もつきません」
「だろうな。自分もだ」
こう言ってグレンは大きくため息をついた。
「いた、いた」
しかめ面のグレンとは対照的に嬉しそうな笑顔を向けて、結衣はやってきた。
「何故、この部隊にいるのですか? 聖女様は救護隊の一員として後軍と共に行動していると思っておりました」
戦う術を持たない結衣は、回復魔法を活かす為に、後軍に配置されているはずだった。
「知らない人ばかりだと寂しいじゃない」
「そんな理由で?」
「目的地で合流すれば良いのよ。途中をどう移動しようと同じでしょ?」
「それはそうですが」
「健太郎とグレンに話し相手になってもらうつもりだったのに、二人とも私を放ったらかしにして先に進んじゃうし」
「……行軍ですから」
これから戦争に向かうというのに結衣には全く緊張した様子が見られない。この期に及んでも、やはり現実を生きていないのだとグレンは感じた。
「相変わらず、そっけないわね。まあ、それもあれね」
「あれ?」
また結衣は意味の分からないことを言い出してきた。
「ツンよね」
「ツン?」
「だからデレを見たいと思って」
「デレ?」
いよいよ頭がおかしくなったのかとグレンは思った。
「だってさ。召喚されてからも私には全然イベントが無いじゃない?」
「……それは知りません」
イベントを出来事と翻訳するのに、グレンには一瞬の間が必要だった。
「ないの。最初は王子様に期待したのよ。でも顔は普通だし、性格もちょっとね。問題外なのよね。そう思わない?」
「発言は控えさせて頂きます」
「でっ、エリックだと思ったの。美形だし、剣の腕前も一流。でもさ、性格がちょっとじゃない。それに全くフラグが立つ気配がないし」
「フラグ……」
異世界語であることは分かるが、前後の言葉を考えても意味が全く推測できない。
「色々と出会った人とのことを考えてみた結果、やっぱり健太郎かグレンかなと思って。健太郎はまあ定番だし、グレンはほら、フラグが立った気配があるじゃない」
「旗を立てた覚えはありません」
「それはフラッグ……あれ? フラグ、フラッグ。もしかして同じ?」
「さあ?」
「とにかく、今回のイベントは何かが起こると思って」
結衣にとっては、そしてこの場にいない健太郎にとっても、今回の戦争はストーリーを盛り上げる為のイベントなのだ。
「何かではなく戦争です」
「その中でよ」
「……さっきから全く言っている意味が分かりません。つまり、何を言いたいのですか?」
「話をしましょう」
「していますけど?」
グレンは、もうすでに嫌になるほど会話をしているつもりだ。結衣相手では、挨拶を交わすだけでも嫌になりそうだが。
「そうじゃなくて……手強いわね。グレンはきっと最難関攻略キャラね」
「……全く分からない」
「分からなくて良いの。とにかく、もっと親しくなろうと思ってね」
「ご遠慮致します」
「……まあ、良いわ。時間はたっぷりあるし。今回はさすがに何か起きる予感がするのよね。フラグを積み上げて、絶対にグレンのデレを出させてあげるから」
「…………」
一方的に言いたいことを言って結衣は離れて行った。結局、最後までグレンには彼女が何を言いたかったのか分からないままだ。
「意味が分かった人?」
「あっ、自分は少し」
「えっ本当に!?」
まさか分かる人がいるとは思っていなかったグレンは大いに驚いている。しかも声を上げたのは、六人の中では一番大人しい、あまり発言をしないポールだった。
「はい。ツンは冷たく接すること。デレは逆に甘えることです。ツンデレという言葉です」
「異世界語だよな?」
「そうです」
「もしかして、あれか? シスコン勇者のなんたらという本」
メアリー王女に教わった、異世界語がこの世界に広がるきっかけとなった本だ。
「教官も知っていましたか?」
ポールの知識はその本から得たものだった。
「読んだことはない。知っているのは勇者が書いた本で、異世界語を広めるきっかけになったってことだけ」
「そうですか。結構、面白いですよ。物語はくだらないですけど、会話とかは」
「そうか。機会があったら読んでみる。他は? 結局、聖女は何を言いたかったか分かるか?」
「多分ですけど、フラグって言っていましたから、聖女様はハーレムを作りたいのではないですか?」
本の中にもフラグという言葉はちょくちょく出ている。それを知っていれば、こういう考えになる。
「……ハーレムって側妻を大勢囲うことだよな?」
「そうですね。でも、そう聞こえました。異世界では男のハーレムもあるのではないですか?」
「聖女が何人もの男性を囲う。それおかしいだろ?」
そんな聖女はいない。というか、そういう女性は周囲から聖女と呼ばれるのは難しいだろう。
「でもフラグってやつはそれですよ。シスコン勇者はそのフラグってやつを次々と女性に立てて、ハーレムを作るのですから」
「……凄いな。同じことを女性の身でやろうとしているのか。つまり、誰でも良いってことだ。どうだ?」
「えっ?」
いきなりグレンに問いを投げられて、ポールは戸惑っている。
「誰でも良いなら、お前らにも機会があるだろ?」
グレンの問いに従卒全員が全力で首を横に振って拒否を示している。
「どうして? 顔も体もそれなりに美形だと思うけど?」
全員が拒否するとは思っていなかったグレンは、意外に思って従卒たちに理由を尋ねた。
「何だか自分が男性に好かれるのは当然って態度じゃないですか」
「全員、そう思っていたのか?」
ちなみにグレンも同じように思っている。
「そうです。確かに執務室に来るようになった最初の頃は綺麗だなと見惚れることはありました。でも、ちょっと視線を向けていただけで、変な目で見ないでとか、私は貴方に興味ないの、とか言ってくるのです」
「……知らなかった」
その執務室にはグレンもいた。だがグレンは従卒たちが結衣とそんなやり取りをしている場面を見た覚えがない。
「皆の前では言わないのです。全員の前で言ってもらえれば、それは少し恥ずかしいですけど、冗談で済むじゃないですか? でも、こっそり言われると、まるで自分が凄く駄目なことをしているような気がして」
ポールの言葉に他の五人も大きく頷いている。全員が同じ思いをしていたのだ。
「なるほどな」
話を聞いてみれば、いかにも結衣らしい。影でこそこそ話してくるのは、グレンも何度も経験していた。
「その点、フローラとローズさんは良いですよね?」
「えっ、何が?」
急にポールはフローラとローズを持ち出してきた。
「フローラはそういう時にですね、嫌な顔なんて絶対にしないで、にっこりと笑みを返してくれます。もうあの笑顔で邪な気持ちが消えますね」
「邪?」
「あっ」
自分の失言に気が付いたポールの顔は一気に青ざめた。
「邪な気持ちを持っていたのか?」
「い、いえ、表現の問題です。ただ恋人になりたいなって」
「それは邪だな。まあ、それくらいは許す。好意を向けるなっていうのは無理だからな。フローラは凄く可愛いから仕方がない」
「はい……」
相変わらずのグレンのシスコンぶりに、ポールは苦笑するしかない。
「でもローズはそういう感じではないよな?」
「ああ、ローズさんは……」
ローズについて聞かれたポールは答えに困っている。
「何?」
「ちゃんとこちらの気持ちを見抜くというか……」
「何が言いたいんだ?」
「あの……言葉通りに邪な気持ちで見ている時に限っては」
「お前な」
「いや、だってローズさんは色気が凄いじゃないですか? それも常にではなくて、ちょっとした仕草の中にドキリとさせる何かがあって、それが却って、何と言うか……」
「……ああ、なんとなく分かる」
なんとなくなはずはない。ローズが纏う魅力を誰よりも知っているのはグレンだ。
「つい目を離せなくなって……」
そして又、ポールの言葉に五人も大きく頷いている。これに対しては嬉しく思うグレンだった。
「それで?」
「あっ、そうです。そういう時にローズさんが何て言うかと言いますと」
困惑顔だったポールの表情が一気に明るくなった。
「何でいきなり嬉しそうになる?」
「聞けば分かります。そういう時にローズさんはですね、魅力を感じてくれるのは嬉しいけど、自分の全ては教官の物だから想像だけでも駄目って。これを言うローズさんがまた色っぽくて」
「…………」
嬉しそうに話すポールに、何を返してよいかグレンは分からない。とにかく、凄く恥ずかしかった。
「良いですね? 愛されているって感じです」
「ば、馬鹿か」
「自分はフローラよりもローズさんのような女性が好みです」
このポールの言葉に頷いているのは二人。フローラ派とローズ派は半々というところだ。まるで自分の気持ちを表しているようで、少しグレンは気持ちが重くなった。
そんなグレンの気持ちに構わずに、ポールはさらに話を進めてきた。
「教官が羨ましいです。自分もああいう女性を妻にしたいと思います」
「妻って。別に結婚するって決まっているわけでは」
「教官はモテるからそう言えるのです。でも、ああいう女性は他にいないと思いますけど」
「まあ……」
ポールに言われなくても、グレンも分かっている。ローズのように、自分の気持ちを殺してでも尽くしてくれる女性はいないと
「そういう点からも自分は聖女が嫌いです。教官はローズさんと結ばれるべきです。それを邪魔する聖女は許せません」
「いや、そこまで強く言わなくても」
「いえ、絶対に邪魔はさせません」
何故かこの件についてポールは頑なだった。そしてポールたちは実際に行動を起こすことになる。
この日を境に結衣に言い寄る騎士や従者が一気に増えることになった。心の中にかなり邪な思いを抱きながら。
それに対して結衣はというと。
「いやだ。いきなりモテ期到来? やっぱり、今回のイベントは何かあるのね」
素直にそのことを喜んでいた。