月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

異伝ブルーメンリッター戦記 #10 モブキャラの強さ

異世界ファンタジー小説 異伝ブルーメンリッター戦記

 学院の強化合宿は、合宿所までの往復の行程を除いて、わずか一日で終了した。リーゼロッテのグループを襲った魔物襲撃事件の影響だ。
 合宿地は一般の人が登山を楽しむ行楽地でもある。そんな場所に魔物の集団が出現したのだ。事は学院内で処理出来るような問題ではなく、ローゼンガルテン王国、それも軍が対処すべき事件なのだ。
 合宿の中止は速やかに判断され、生徒たちはその日のうちに下山することとなった。合宿所で働いている人たちも、準備ができ次第、下山すると聞いているが、どうなったかを生徒たちが知る術はない。合宿所どころか山全体が立ち入り禁止となり、そこに続く麓の入り口全てが軍によって閉鎖されたのだ。その奥で何がなされているかなど、たとえ貴族家の子弟であっても知ることは出来ないのだ。
 無事に帰還が叶えば、学院もとくに何も行うことはない。参加した生徒の混乱もほぼない。魔物に遭遇したのはリーゼロッテたちだけ。その彼女たちも軽傷者が数人出ただけで済んだのだ。
 そのような状況であったのでどこからか、といってもジグルスには出所は明らかだが、リーゼロッテが話を大袈裟にして、そのせいでせっかくの強化合宿が中止になってしまった、などという噂が流れた。ただこれはジグルスが何もしなくても、すぐに鎮まることになる。
 魔物に遭遇した生徒たちの一部がその噂を聞いて激怒し、その場で起きた事実を声高に周囲に話すだけでなく、噂を流した犯人捜しを始めた結果だ。
 その噂の代わりに広がったのが、その時にリーゼロッテが発した言葉。
 「命に代えても平民の生徒を守る」という言葉だ。
人気取り目的の言葉だ、なんて否定の声もあがったが、その程度で打ち消せる内容ではない。特に平民の生徒たちの間では、実際にその場にいた生徒から話を聞けることもあって、それは事実として認識され、リーゼロッテに対する見方を改めるきっかけとなった。
 「イベントを達成した成果かな?」これはその事実を知ったジグルスの感想だ。
 これによりリーゼロッテの立場が回復したわけではない。貴族の子弟たちは、エカードやレオポルドといった影響力のある生徒が彼女に批判的である為に、その態度を変えることはなかったのだ。
 結局、今回の一件を受けての大きな変化はジグルスを取り巻く環境。徐々に「リーゼロッテの」ではなく、ジグルス本人に注目する生徒が出てきたのだ。ただこれは、魔物襲撃事件が直接関係したのではなく制約の緩みもあってのことだ。

「……あの……相手を間違っていませんか?」

 周囲の変化はジグルスにとっては良いことではない。煩わしいことが増えただけだ。

「間違ってはいない。ジグルス・クロニクス、俺は君との立ち合いを望んでいる」

 合同授業の時間にジグルスに立ち合いを申し込んできた相手がいた。黒目黒髪、キリリとした太めの眉の下の鋭い目でジグルスを見つめているのはタバート・アスカン。主人公の攻略対象の一人であり、ジグルスが考えるエカードを外した場合の準最強パーティーの中心人物だ。

「貴方と俺では立ち合いにならないと思います」

 タバートは剣の腕前では学院トップのエカードに並ぶと言われる実力者。そのタバートが自分と対戦したがる理由が分からない。

「負けるつもりはない。だが実戦を経験した者の剣というものを見てみたいだけだ」

 タバートが自分に対戦を申し込んだのは魔物襲撃事件があったから。理由は分かったが、それでも自分である必要はないとジグルスは思う。一緒に戦った生徒は何人もいるのだ。

「……何かが変わるわけではありません。期待外れになるのがオチですので、お断りします」

 ジグルスに立ち合いを受ける義務はない。

「……リーゼロッテ殿。君のところの騎士はこんなことを言っているが、これで良いのか?」

 ジグルスに断られたタバートは、話をリーゼロッテに向けた。

「これで良いのか、とはどういう意味かしら?」

 やや視線をきつくして、タバートに問い返すリーゼロッテ。良い傾向ではないようにジグルスには感じられた。

「分かっているはずだ。君の騎士は敵に背を向けるような弱虫なのかと聞いている」

「……それは挑発しているのね?」

 タバートはわざとリーゼロッテを怒らせようとしている。怒らせて、立ち合いを受けさせようとしているのだ。それはリーゼロッテにもすぐに分かった。

「ああ。挑発されていると分かっていて、引くはずがないと思っているからな」

「……良いわ。ジーク、申し入れを受けなさい」

 分かっているのにリーゼロッテは、立ち合いを受け入れてしまう。リーゼロッテのプライド、ではなく、ジグルスの名誉が汚された気がして、我慢出来なかったのだ。

「主の命令だ。受けてもらうぞ」

 まんまとリーゼロッテの了承を取り付けたタバートは、嬉しそうにジグルスにそれを伝えてきた。わざわざ言われなくても、目の前のやり取りだ。ジグルスには分かっている。

「……では仕方がありません」

 リーゼロッテの命令とあれば受けざるを得ない。ジグルスが授業用の模造剣を持って、前に進み出た。そのジグルスの正面に立つタバート。すでに臨戦態勢で、体から放たれる気配が変わっている。
 さすがは英雄候補の一人。ジグルスは心の中で呟いた。

「準備は良いですか?」

 リーゼロッテも前に出てきていた。立ち位置で審判を務めるつもりなのだと、ジグルスには分かった。それに対してタバートは何も言わない。贔屓などしないとリーゼロッテを信じているのか、そんなことに関係なく勝つつもりなのかは分からない。
 剣を構えて向かい合う二人。タ

「……始め!」

 リーゼロッテの声を受けて、先に動いたのはタバートだった。一瞬で間合いを詰めるともの凄い速さで剣を振り下ろす。風斬り音が少し離れた位置で、見学している生徒にも聞こえてきた。

「……ほう」

 感心の声を漏らすタバート。剣を振り下ろした先にジグルスはいない。右に跳んで間合いを空けていた。
 構えを取り直すタバート。そこからゆっくりと左足を前に出す、と見えた瞬間に、素早く斜め左に跳び、ジグルスに向かって袈裟懸けに剣を振る。
 その剣もまたジグルスは躱した。ただ今度はタバートも止まることをしない。もの凄い勢いで右に左に剣を振るってくる。タバートの剣を完全な攻撃型。猛攻という言葉そのままに途切れることなく攻め続けるのが特徴だ。

「……ふうん」

 感心の声を漏らしたのは審判を務めているリーゼロッテだ。近くで見ているリーゼロッテには、二人の動きが良く分かる。魔法のほうが得手とはいえ、リーゼロッテは剣の腕もそれなりなのだ。
 そのリーゼロッテから見て、ジグルスの動きは考えていた以上だった。ここまで強かったのかと感心し、不思議にも思っている。一方的に攻められているが、タバートの猛攻をここまで耐え続けているのはかなりのもの。
 だがジグルスはこれまで剣において高い評価など得ていない。

「見えている……いえ、見ていない……私には判別は無理ね」

 ジグルスの動きをリーゼロッテは見極められない。それだけの動きをジグルスが見せているということだ。ジグルスの実力は把握していたよりも遙かに上。それだけは分かった。
 そしてそう感じているのは対戦しているタバートも同じ。まさか、ここまで粘られるとは対戦前はまったく考えていなかった。

(……こ、この……何故、捉えられない!? まさか、こいつ。実力を隠していたか?)

 こんな思いが胸に湧いてくる。 

(落ち着け……熱くならずに冷静に見極めろ……油断は捨てろ……)

 なんとか自分の動揺を鎮め、ジグルスの動きを見極めようと考える。相手を侮る気持ちを消し去り、強敵と前にすると同じ覚悟を定める。

(……違う……俺がこいつに見切られているのだ。何故だ……何故、こいつは俺の剣を読める)

 冷静に見るとジグルスはかなり早い段階で回避動作に入っている。それはつまり剣の動きを読んでいるということ。それは何故か。自分には何か癖があるのではないかとまで疑ってしまう。

(……今考えることではない……今は勝つ為に……ちっ……)

 心の中で舌打ちをするタバート。まさかこんなところで使うとは思っていなかった。
 わずかに緩めた攻撃の勢い。それでも攻めそのものは止めない。ジグルスに反撃する間を与えることなく、攻撃を続けていく。

(……ここだ!)

 振り下ろした剣を一瞬で切り返し、下から斜めに切り上げる。甲高い音が響き渡り、ジグルスの剣が宙を舞う。

「そこまで! 勝者、タバート!」

 それに続いてリーゼロッテがタバートの勝ちを宣言する。剣を失っては戦えない。これが実戦であればまた違うが、これは授業の中での対戦なのだ。

「……参りました」

 ジグルスも負けを認め、タバートに礼をして、下がっていく。

「ま、待て!」

「……勝敗はつきました。負けたのは俺。文句はないはずですけど?」

 もう一度なんて言われては堪らない。それを拒否する気持ちを込めて、ジグルスはこんな言い方をした。

「そうじゃない。何故、分かった?」

「はい?」

「最後の。どうして剣を合わせられた?」

 最後の技はタバートのとっておき。豪剣という表現が相応しいタバートの剣だが、その動きは直線的だ。本人もそれを承知していて、そう思われていることを逆手にとって変化の技を身につけた。何度も見せては意味のない技。エカードと勝負をつける時の為にとっておいた技なのだ。

「ああ……なんとなく?」

「はあ?」

「剣の勢いを緩めたので、何かしてくるなと思っていました。でも駄目でしたね」

 ジグルスはタバートの技を防げたとは思っていない。

「……俺の剣が見えていたのだな?」

「見えていたというか……」

「何故、実力を隠していた?」

「はい? 隠していたつもりはありません」

 なんとなく体の調子は良くなっている。だがそれだけのこと。これまでも本気で授業を受けていたつもりだ。

「俺の剣はその程度のものだと?」

 タバートの視線が鋭くなる。ジグルスに馬鹿にされていると考えているのだ。

「……ああ、善戦した理由があるとすれば相性だと思います」

「相性だと?」

「貴方の剣は、俺の父親のそれに似ています。どこがと聞かれると困るのですけど、そう感じました。だからです」

「……分からん。似ていると剣を見切れるのか?」

 これを聞くタバートには知らないことがある。

「えっと……怒らないと約束してもらえます?」

「……約束する」

 こう言わなければジグルスは話さない。約束しないという選択はタバートにはない。

「あのですね……速くて恐いのです」

「……何が?」

 これだけは何のことは、タバートにはさっぱり分からない。

「俺の父親の剣のほうが……速くて恐いので」

 幼い頃からの鍛錬で父親の剣は嫌というほど見ている、というか見させられていた。それと比べてしまうとタバートの剣は劣る。ただ、これをはっきりというとタバートは怒り出すに違いないとジグルスは考えている。

「……つまり、こういうことか? 君の父親に劣る俺の剣であれば見切れると?」

 タバートの眉が吊り上がっている。怒っているのは誰の目にも分かる。

「そういう言い方はしていません」

「言い方って! そういう意味で……! あっ、いや、約束だったな。君の父親は……」

 タバートの視線がリーゼロッテに向いた。それにリーゼロッテは首を振るだけで答える。リーゼロッテもジグルスの父親については詳しいことまでは知らないのだ。

「タバート様はこの年でその実力なのです。俺の父親などすぐに抜きますよ」

 タバートが怒っているとみて、慰めの言葉を口にするジグルス。

「そういうのはいらん。だが、そうか……君には俺の剣が見えるのだな?」

「ですからそれは相性の問題なので」

「原因が相性であろうと何であろうと、君は俺と互角に戦える」

「……戦ってませんけど?」

 一方的に攻められていただけ。それを互角とは言わない。

「……また来る」

「えっ……?」

 何故こうなる。魔獣襲撃事件でどんなフラグが立ってしまったのか。考えてもジグルスには心当たりがない。去って行くタバートの背中を呆然と見つめるしかなかった。

 

 一方で、その場を離れたタバートは。

(……分からん。彼は強いのか弱いのか)

 ジグルスに対する評価で悩んでいた。自分の攻撃をことごとく避けられたことには驚いた。だがそれだけだ。タバートはジグルスに攻める隙を一切与えなかったと思っている。逃げているだけでは勝てないのだ。

(……父親か……何者なのだ?)

 タバートよりも父親のほうが上。遠慮しながらもジグルスは、こう言った。遠慮を見せながらも自分を低く評価したのだ、事実なのだろうとタバートは思う。
 自分よりも強い人は当然いる。そんなことは分かっている。それでもジグルスの父親がどのような人物であるか気になる。

(今分かっているのは。勝負にならなくても鍛錬にはなるということか……)

 振り返ってジグルスに視線を向ける。そのジグルスは、取り巻き仲間の生徒と剣の立ち合いを始めていた。相手を圧倒している様子はない。これを見ると平凡な実力ということになる。
 だがそんなはずはないのだ。

(やはり手加減をしているのか。しかし……)

 何故それが必要なのかが分からない。
 近頃、やたらとジグルスの名を聞くようになった。何人もいるリーゼロッテの取り巻きの中で、何故ジグルスだけがと最初は思ったが、よくよく話を聞いてみると「なるほど」と思えるものはあった。
 そこにさらに魔物襲撃事件の話を聞き、軽い気持ちで実力試しを行ってみたのだが、その結果はこの通りだ。実力を測りきれたとは思えない。

(……リーゼロッテ殿の信頼は彼の忠誠心に対してか……他にも何かあるのか……)

 リーゼロッテについての噂も絶えない。初めは酷いものだったが、それに、少しずつではあるが好意的なものが混じるようになってきた。その変化にジグルスが関わっているのは間違いないとタバートは考えている。
 何かがある。これはタバートの直感だ。こういった勘の類いをタバートは無視しないようにしている。

「タバート」

 ジグルスについては考えているタバートに掛けられた声。

「……エカードか」

 相手はエカードだった。普段から距離を置いている相手だが、今はとくに話をする気になれない。リーゼロッテとエカードの間に諍いが生じていることは、当然タバートも知っているのだ。

「何故、あいつと立ち合いを行った?」

 エカードが話しかけてきたのは、タバートがジグルスと立ち合いを行ったのを気にして。

「……実戦経験者というのはどういうものか知りたかった」

 エカードの問いに対してタバートは、ジグルスにも告げた対戦の口実を返した。詳しいことを話す気はないのだ。

「それで何か違ったのか?」

「さあな。考えてみれば俺は彼の元々の実力を知らなかった。それでは比べようがない」

 こんなことは初めから分かっていることだ。白々しいとは思いながらも、タバートはこう返した。もともと犬猿の仲だ。相手の機嫌など気にする必要はない。

「……それは無駄な時間だったな」

「まあな」

 タバートの予想に反してエカードは、少し間は空いたが、普通に返してきた。

「次からはもっと有意義な授業時間の使い方をしたほうが良い」

「……余計なお世話だ」

 ようやく嫌味っぽい言葉がエカードの口から出てきた、と思ったのだが。

「そうではなくて……俺が相手をすると言っている」

「……相手?」

「そうだ。俺が立ち合いの相手をする」

「……それはまた、どういう風の吹き回しだ?」

 エカードが立ち合いの相手を申し入れてきた。それを素直に受け入れる気にはタバートはなれない。エカードがこんなことを言ってきたことは、これまで一度もなかったのだ。

「お互いに競い合うことで、さらに高みに行けると思わないか?」

「すでに競い合っているつもりだが?」

 タバートの顔に皮肉な笑みが浮かぶ。少し事情が分かってきたのだ。

「……反目するのではなく、協力し合おうと言っているのだ」

「何故?」

「何故って……」

 エカードの表情が歪む。「自分がここまで下手に出ているのに、その態度は何だ」という思いがタバートには見て取れる。自分であればどう思うか考えれば、すぐに分かることだ。

「そんな風に意地を張っていたら、本当の意味で強くはなれないわ」

 ここでこの一件の黒幕。ユリアーナが口を挟んできた。そういうことだとタバートは考えているのだ。

「強さに本当も嘘もない」

「そんなことない! 一人で戦うより仲間と共に戦ったほうが強くなれる! 人を傷つける強さではなく、人を守る強さが本当の強さだと私は思う!」

「……人を守る強さ」

「そうよ。それが本当の強さなの」

 自分の言葉がタバートの心に響いた。そう受け取ってユリアーナの表情に笑みが浮かんだ。だがそうではない。心には響いたのかもしれない。だがタバートの気持ちはユリアーナが望む方向には向いていない。
 また後ろを振り返るタバート。その視線の先にはすでに立ち合いは終えて、談笑しているリーゼロッテとジグルス、それと他の取り巻きたちがいた。

(……なるほど。彼の強さは守る強さか)

 強さは一つではない。そう考えるとジグルスは、守りという点では自分を超える。やはり強いのだ。

「私たちと一緒にお互いを高め合いましょう!」

 タバートの内心の思いに気付くことなく、ユリアーナは勝手に盛り上がっている。だがこれは。タバートの次の一言で鎮まることになる。

「……いや、それはいい」

「えっ……?」

「君の話は為になった。それについては礼を言っておく。ありがとう」

「ち、ちょっと待って? だったらどうして?」

 タバートの心を揺らしたのは間違い。そうであれば何故、拒否されるのか。

「君の言う『高め合う』を行うにしても、誰を相手とするかは俺の勝手だ」

「エカード以外にいないわ」

「そうとは限らない。仮にそうだとしてもエカードを相手にするのであって、そこに君は必要ない」

「なんですって……?」

 拒否されているのは自分。それを知ってユリアーナは動揺している。こんなことを言われるはずはないのだ。

「……君の戦い方は以前見た。君の言う、人を傷つける為の強さを見せられたと記憶している」

「そ、それは……」

 ユリアーナの動揺が激しくなる。タバートが言っているのはリーゼロッテとの立ち合いの件。本人も自覚しているリーゼロッテを傷つける為の立ち合いだ。

「どうやら自分でも分かっているようだ。つまりは、そういうことなのだな」

 ユリアーナの反応が、あの日、ジグルスが匂わせていたことが真実なのだと分からせた。ユリアーナはわざとリーゼロッテを傷つけようとしたのだと。
 強さに拘りを持っているタバートだが、理由もなく相手を傷つけることを認める理由はない。授業中に私情からそれを行ったとなれば、怒りを覚えるほどだ。実際にかなり頭にきている。
 その怒気を露わにすることで、ユリアーナはもちろんエカードにもそれ以上話しかけることを許さず、タバートはその場を離れていった。