ファンタジー小説-黒き狼たちの戦記
グローセンハング王国の王都シュヴェアヴェルを訪れているヴォルフリックたちが拠点にしているのは、繁華街の裏路地にある安宿、を装っている黒狼団の隠れ家。ピークとクロイツが、コーツ一家の一員としてシュヴェアヴェルに進出したあとに作った隠れ家だ。…
かなりの人気店であるエマの食堂だが、お昼時を過ぎれば客足も途絶え、店は閑散とした雰囲気に変わる。午後の仕事が始まり、食堂でのんびりしていられる時間の余裕はないのだ。逆にエマたち食堂で働く人たちにとっては一息つける時間。後片付けを終え、夜の…
ベルクムント王国にシュタインフルス王国の使者が訪れ、救援要請が行われた。これによりシュタインフルス王国の内乱は公式のものとなった。常日頃から従属国に不穏な動きがないか監視を行っているベルクムント王国にとっては既知の事実なのだが、シュタイン…
シュタインフルス王国の内乱はさらにその規模を拡大しようとしている。アンドレーアス王はライヘンベルク王国との国境に貼り付けていた王国軍を王都に呼び戻し、討伐軍を再編。その数は五千。ほぼ全戦力を投入する形だ。 一方でクノル侯爵は他の有力貴族家に…
絶対的な切り札、とされている、ベスティエを投入しながらの敗戦。しかも送り込んだ千名の部隊が一人も帰還してこないという惨敗だ。この結果を知ったシュタインフルス王国の動揺は凄まじい。やや誇張も含みながらベスティエの恐ろしさを世間に知らしめてい…
ベスティエを加えたシュタインフルス王国軍は王都を進発すると、とりあえずその進路を反乱軍の動きが活発な北部に向けた。反乱軍を討つ。目的は明確だが、反乱軍の本拠地を突き止めていない為に、目標は明確にはなっていなかったのだ。だが王国軍はあてもな…
◆◆◆ 登場人物一覧 ~第64話時点~ ◆◆◆ PC故障で作品データが壊れてしまったので再作成したついでに投稿します。 ※ネタバレ注意 【黒狼団および主人公の近親者】 名前:シュバルツもしくはヴォルフリック(公式名はリステアード=ディートリッヒ)性別:男…
敵の動きを読み、時には策を用いて動かして、数百人規模の戦いの場を作り出し、勝利を重ねていく。反乱軍は連戦連勝。シュタインフルス王国の人々の心に「もしかすると」という思いが浮かぶようになった。だがそこまでだ。反乱の火が王国全土に広がる気配は…
バックアッププランの検討、準備は進めていても、それ以外は、王都でただ伝書烏が届ける伝書を待っているしかなかったディアークたちにも、ようやくシュタインフルス王国内の状況が理解出来るようになってきた。隣国のノイエラグーネ王国の国境近くの街ガル…
目の前に展開しているのはシュタインフルス王国軍四百。対する反乱軍は三百。そのうちの百は飾り物だが、当然、敵であるシュタインフルス王国軍はそれを知らない。フォークラー家の旗が立つ、コンラート自身が率いる本軍。そう思わせることで敵の動きに制約…
ヴォルフリックたちの行動によって大いに動揺しているのはシュタインフルス王国だけではない。彼らを送り出したアルカナ傭兵団もまた違う意味でひどく驚かされている。普通のやり方を選ばないことは予想通り。だが反乱を起こすという選択は想像以上のものだ…
シュタインフルス王国は、決して豊かとはいえない国で、民の暮らしはかなり厳しいものだ。シュタインフルス王国は中央諸国連合加盟国であるノイエラグーネ王国と国境を接している。もともと国力が低かった上に、軍事力の強化に資源を集中させなければならな…
愚者がノイエラグーネ王国を出て、山越えルートを使ってライヘンベルク王国に向かったという連絡があってから三か月。今回の任務がかなりの長期に渡ることは初めから分かっていたが、それでもさすがに三か月の音信不通は普通ではない。実際はノイエラグーネ…
シュタインフルス王国の都アインシュネスバッハ。北門からまっすぐに城に伸びる大通りにある大広場。その場所に今、多くの人が集まっている。大広場は普段から多くの人が行き交う賑やかな場所であり、人の数もいつもと同じかそれ以上であるのだが、今は張り…
エーデルハウプトシュタット教国は聖神心教会の総本山。だが教会の運営のほとんどは各教会、もしくはそれを束ねる教区に任されている。大陸全土に教会がある為に、一極集中で日々の運営状況を管理することなど不可能なのだ。 事実ではある。だが、それが結果…
幼い頃から周囲は常に温もりを感じさせてくれる雰囲気だった。誰もが自分に笑みを向け、何か行えば褒めてくれた。そうであることが当たり前だった。 世の中に悪意というものが存在するのを知ったのは八歳の時。父に剣を教えてもらえることが決まったあとだっ…
屋敷を得たあと、色々と変化のあった生活もようやく落ち着いてきた。一日の予定がほぼ固まったのだ。午前中は以前と同じく傭兵団の屋外鍛錬場に行って、体力づくり。走り込みなどは屋敷では出来ないというのが理由だ。昼はエマが作った食事を、というヴォル…
中庭でヴォルフリックたちが鍛錬を行っている様子を眺めているフィデリオ。彼自身の鍛錬もあるのだが、どうにも気が散って集中出来ないでいた。上の空のような状態で鍛錬を行っても効果はない。それどころか怪我をしてしまう危険もあると考えて、こうして中…
ロートが営む食堂。フロアの隅にあるテーブルでヴォルフリックたちは食事をとっている。クローヴィスもセーレンも、ボリスも一緒だ。彼らを黒狼団の拠点である食堂に連れてきたのには訳がある。もちろん、食堂が黒狼団の拠点だと正直に話すことではない。そ…
ノートメアシュトラーセ王国軍部の重臣たちを集めた会議。その場は重苦しい雰囲気に包まれている。また新たな軍事上の難題が沸き上がってきたのだ。ベルクムント王国との戦いを勝利で終わらせた中央諸国連合。だがそれで本当の終わりとはならなかった。さら…
パラストブルク王国のゴードン将軍は近頃、ご機嫌だ。ベルクムント王国との戦いでパラストブルク王国軍は、他国を圧倒する活躍を見せたノートメアシュトラーセ王国以外では唯一、論功行賞において上位の評価を得ている。ゴードン将軍にとっても想像を遥かに…
ベルクムント王国との戦争における論功行賞で、育ての親であるギルベアトが使っていた屋敷を手に入れたヴォルフリック。それは行動の自由を手に入れたのと同じだ。当たり前だが、ギルベアトの屋敷はアルカナ傭兵団施設の外にある。自動的にヴォルフリックは…
戦勝会が終わるとすぐにディアークは執務室に引きこもった。そこに次々と姿を現す傭兵団の幹部たち。示し合わせたものではない。戦勝会での出来事を受けて、それぞれがディアークの様子を知りたいと考えて、集まってきたのだ。 そのディアークは深々とソファ…
カルンフィッセフルスの戦いは決戦と呼ぶにふさわしい様相になっている。中軍が合流して、一万を超える軍勢となった中央諸国連合軍。それに対するベルクムント王国とその従属国連合軍はおよそ二万八千。当初侵攻してきた二万に、フルーリンタクベルク砦攻め…
中央諸国連合軍の中軍と共にアイシェカープを発し、ガルンフィッセフルスに向かっている愚者とパラストブルク王国軍。その移動中も鍛錬をかかしていない。中軍六千が隊列を組んで整然と街道を進んでいる間、愚者とパラストブルク王国軍は走り込み。ヴォルフ…
周囲にひしめく味方。もっと速く先に進み、見晴らしの良い場所に出たいのだが、前が詰まっていてそれは出来ない。この地は一万六千もの大軍が展開するには狭すぎる場所なのだ。だがこの状況も少し先に進めば変わる。敵の砦に向かっていくにつれて、平地は扇…
攻めるベルクムント王国とその従属国の連合軍は総勢一万六千。それに対するはフルーリンタクベルク砦に籠る中央諸国連合軍三百だ。砦を守る壁はあっても、そんなものはわずかな時間稼ぎにしかならない。ベルクムント王国にとっては勝利が確定している戦い、…
山越えを終えたベルクムント王国軍は、すぐにフルーリンタクベルク砦に攻め寄せてきた。といってもその数は千ほど。残りは山を下りてすぐの場所で野営の準備を始めている。火薬を使って山道を切り開いたといっても、それは道を塞ぐ大岩があるなど、人力では…
最前線となるガルンフィッセフルスでは、すでに先軍が戦っている。戦場に響き渡る爆発音。ベルクムント王国軍は新兵器を惜しむことなく、戦場に投入してきた。想定されていたことだ。だが初めてそれを見、それを聞くノイエラグーネ王国の兵士たちは、すっか…
戦争に向けて準備を行っているのはアルカナ傭兵団だけではない。人知れず動いている組織がある。黒狼団だ。ベルクムント王国との戦いが始まると聞いたロートは、情報集めに動いた。太い情報源は今はまだいない。それでも食堂の、エマのかもしれないが、評判…