ファンタジー小説-霊魔血戦
実地訓練の実施が発表された。それが例年よりも、かなり早いということは今期入所の人たちには分からない。そういう訓練があるのかと思うだけだ。だが、その内容が明らかになると、一気に騒がしくなる。実地訓練は実戦。実際に敵と戦い、相手を倒さなければ…
養成所での訓練はますます活気を帯びている。これは指導教官たちにとって予想外の状況だ。入所から半年以上経てば、同期の間でも力の差ははっきりと現れるようになってくる。自分の能力の低さを思い知り、努力ではどうにもできない現実を知り、やる気を失う…
クラリスにはサーベラスが良く分からない。入所時の霊力判定で「卒業は無理」と言われるほどの低評価を受けた。講義の時間はいつも上の空。体力作りの訓練でも、いつも周りから遅れていた。霊力は少なく、武器型はまともな形を成していない。判定通りの落ち…
指導教官たちは毎日打合せを行っている。特別なイベントが間近に迫っていない状況であれば、明日の訓練内容を確認して、担当を決めるだけの簡単な打合せ。その担当決めも基本は、順番にローテーションするだけなので話し合うことはほとんどない。打合せの時…
指導教官は日替わり、もしくは一日の中でも何人かに代わることになるのが通常。だが、実習に限ってだが、サーベラスたちのチームを担当する指導教官は、ガスパー教官が専任となっている。公式に決められたものではない。その時間になるとやってきて、問答無…
午前中の講義内容が大きく変わった。座学から実習形式になったのだ。今、行っているのは霊力の制御。基本これがずっと続くことになる。霊力の制御にも段階がある。一日二日どころか、半年続けても、完璧と言えるようなものにはならないのだ。 まずは霊力を武…
朝早く起きて、軽い運動で体をほぐす。それが終わると講義の時間。昼食の時間まで講義は行われ、午後になってようやく鍛錬の時間になる。規則正しい生活に文句はないが、自由時間が少ないことはサーベラスには不満だ。自主練に費やす時間が取れないのだ。午…
入所二日目。午前中は講義の時間だ。守護兵士は、守護騎士もだが、霊力を活用して戦う。それがどういうことか、どういう戦い方を考えるべきかなど、守護兵士として必要な知識を学ぶ時間だ。それ以外にも部隊において守護兵士、ボーンとして、どう動かなけれ…
自由行動の時間が終わり、夕食の時間。食事の時間もチームでの行動だ。これがサーベラスには理解出来ない。養成所にいる間にどれだけチーム内の関係性を深め、それが戦闘訓練での連携強化に繋がっても、何の意味もない。卒業すればチームはバラバラになるの…
守護兵士養成所への入所初日は、施設内の案内と所内で定められている各種規則の説明などのオリエンテーション、あとはチーム分けで終わり。残りの時間はチームごとの自由行動となった。自由時間であればと屋内訓練場に向かおうとしたサーベラスだが、当然、…
アストリンゲント王国の王都ファーストヒル。国を滅亡から救った英雄王とその仲間たちが反抗を決意し、勝利を誓った丘、と伝わっている場所に街が造られ、アストリンゲント王国建国後、しばらくして王都と定められた。何もなかったその場所も、長い年月をか…
守護兵士養成所に向かって出発するまでの三日間。ルーの仕事は観光名所を調べる、ではなく、士官学校を調査することになった。そこでどのような教育が行われているのかを知ることが目的だ。たった三日で何が分かるのだろうとルーは思ったが、サーベラスの頼…
ルークの鍛錬はさらに激しさを増している。動きの速さが見ているルーにそう思わせるのだ。心肺機能の強化として取り入れた鍛錬は、他を鍛えるのと同じで負荷をかけること。これまで行っていた鍛錬は、体の動きを確かめながら、耐えうる最大の負荷をかけると…
「僕ってけっこう格好良いかも」。近頃、ルーはそう思うようになっている。霊としての自分のことではない。元々は自分の体であったルークのことだ。切れ長の瞳に長いまつ毛は女性的であるが、幼さが薄れ、精悍さが表れてきた顔は、ひ弱さを感じさせなくなっ…
屋敷の外に出るのはいつ以来か。答えは簡単。六年と少し前、幼年学校に行った時だ。その日、自宅に帰ってルー、当時のルークは、高熱を発して、そのまま死んだ。そのままといっても五年間、昏睡状態でいたあとだ。亡くなって霊になってからも一年以上、ルー…
霊を操れる人が僕の家にはいる。その霊は霊になった僕の姿を見ることが出来る。そして、実際に見られた。 その結果、何が起こるか。それを僕ではないルークは恐れている。僕と僕ではないルークが入れ替わった。ここまではっきりと分からなくても、僕が死んだ…
あだ名は「お化け」。学校に通うようになってからずっと嫌われ者だった。友達と呼べる存在どころか、近づいてくる同級生も一人もいない。クラス替えで仲良くなれそうな人が出来たと思っても、すぐに自分から離れていった。歪んでいる自覚がある性格も、周囲…
昏睡状態からなんとか意識を取り戻した僕、ではないルーク。本当の僕は死んでしまったのだから「なんとか意識を取り戻した」という表現はおかしいのだけど、周りから見れば、そういうことになる。ただ、まだまだ安心出来る状態ではない。これは僕ではないル…