イザール侯爵家のアイビスが、成人式の最中に亡くなった事件の影響は、意外なところにも波及した。トゥレイス第二皇子の嘘がバレるきっかけになったのだ。嘘がばれることは想定内のこと。トゥレイス第二皇子は嘘がばれ、自分への無用な期待が消え、兄のフォ…
四方を山に囲われた盆地にその里はある。今は「あった」と過去形を使うべきかもしれない。里の建物は、そのほとんどが燃え尽き、あちこちから白い煙があがっている。地面に転がるいくつもの死体。多くが子供で、手を、足を切り取られ、無残な姿を晒している…
アイビスの死は帝国に衝撃を与えた。少なくとも、この百年間、成人式は形式的なものだった。成人式を終えた人たちも、式の前と後で何が変ったか分かる人はほとんどいない。変ったと思う人もなんとなくそう感じるだけという、周囲からはまったく認識出来ない…
帝国騎士養成学校の昼休み。クラスの仲間たちと授業の話や養成学校とは全然関係ない雑談で過ごす時間だったのだが、それが変わってしまった。まさかの事態によって。 トゥレイス第二皇子が同じテーブルに座ってきたのだ。ローレルはまだしも、他の二年ガンマ…
帝国騎士養成学校が騒がしい。その原因はトゥレイス第二皇子。前日の模擬戦で人々を驚かせたトゥレイス第二皇子が、今日も養成学校を訪れているのだ。しかも昼休みの食堂に。 食堂にいた騎士候補生たちは突然現れたトゥレイス第二皇子に驚いた。驚くだけでな…
本日の授業は全学年合同となった。といっても騎士候補生たちはただ見ているだけ。帝国騎士団の模擬戦を見学するという授業だ。 これには騎士候補生の多くが戸惑いを覚えている。この授業は前から決まっていたものではない。前日になって急に伝えられたのだ。…