王都での戦いは、ヴェストフックス公国軍による一方的な殺戮という形になっている。ユーリウス王の死が伝わり、守るべき主を失った王国軍に死を賭して戦う理由はなくなった。王国軍の騎士、兵士の多くが降伏を訴えたのだがヴェストフックス公国軍、と称して…
呆気なく、これほど呆気なく、ナーゲリング王国が滅びることになるとは、ユーリウス王は思っていなかった。砂上の楼閣という言葉がぴったりな脆い、わずかな衝撃で崩れてしまうような国だった。そんな王国の王に、なりたくもなかったのに、ならされた自分は…
王都から腐死者の森までは馬で四刻ほど。ソルたちはその距離を歩いて移動した。馬をずっと駆け続けさせることは出来ないので、歩いても時間はそれほど大きくは変わらない。そうであれば、何頭もの馬で移動して、わざわざ他人の注目を集めることはないという…
ソルはリベルト外務卿の手引きで牢を抜け出した。見張りの牢番もソルの逃亡を防ごうとしない。何の苦労もなく、あっさりと外に出て、さらに城の奥に辿り着くことが出来た。 これも国王に対する裏切り行為。そうソルは思い、ナーゲリング王国の脆さを感じたも…
城内の牢は城の地下にある。同じ城の中で、ここまで違うかと思うくらい暗く、異臭も漂う、不衛生な場所だ。そこに閉じ込められているのはソル一人。ナーゲリング王国に変わってから、牢獄は城の敷地の外に新たに作られた。今は使うことのない場所なのだ。 窓…
ソルの裁きは軍事裁判ではなく、四卿会議の場で行われることになった。ユーリウス王が望んだことではない。ソルの公式記録は、イグナーツ・シュバイツァー。王家の人間であるソルを、しかも先王殺しという罪で裁くことは秘匿すべきという四卿、特にリベルト…