次の次の北方辺境伯を継ぐかもしれない人物。彼はそれに相応しい人物であるのか。こんなことを考える資格など自分にないことは、ジャラッドには分かっている。騎士は当主がどのような人物であろうと、全身全霊を尽くして仕えるだけ。そうでなければならない…
ブラックバーン家の王都屋敷内には緊迫した空気が漂っている。現当主、北方辺境伯コンラッド・ブラックバーンが領地から王都にやってきたのが、その理由だ。彼の父、ベラトリックス・ブラックバーンも家臣に舐められるような人物ではないが、王都屋敷にいる…
裏社会の縄張り争い。ワ組と彼との戦いはそういうことにされた。当然、それにブラックバーン家が関わっていたなんて話はない。憲兵に連れられていた子供は、犯人ではなくワ組に誘拐されていた被害者。連行されたのではなく保護された、という強引な作り話が…
裏中央通りを西門から城に向かって真っすぐに進み、三つ目の交差点を北側に曲がって、最初の路地。そこを右に折れるとすぐに見えてくる建物は一見、普通の宿屋。入口の扉を抜けるとすぐのところに受付があり、その雰囲気もまた宿屋そのものだ。 だが実際にそ…
ワ組の組長の耳に届いた報告は、化け物と子供に襲われ、五人のうち四人が殺されたというもの。あり得ない事態に、組長であるベージルは激怒した。返り討ちにされたことに怒ったのではない。子供はまだ、喧嘩での彼の実力は分かっているので受け入れられるが…
花街の花は美女と喧嘩。その喧嘩が今日も行われている。ただ、今日の喧嘩は花とするには賑やかさが足りない。始まったばかりの時は、いつものように野次馬の歓声でそれなりに盛り上がっていたのだが、今は皆が固唾をのんで中央で戦う二人を見つめている。彼…