華やかなドレスを身にまとった女性たち。その彼女たちをエスコートする男性の装いも豪奢なものだ。王城で最も大きい広間を、さらにそれに繋がる庭園までも開放して行われているパーティー。王都で暮らす貴族だけでなく、王国中央部に領地を持つ貴族たちも招…
北方辺境伯家の王都屋敷。広大なその屋敷に置かれている家具はどれも一級品。ダイニングセット一つで、庶民であれば、何年も暮らしていける金額であったりする。貴族と平民、それもトップクラスの貴族家と平民の家では、その暮らしに大きな、という表現では…
悲しみを心の内に宿しながらも彼は前に進んでいる。進むしかないのだ。本来、彼の人生において苦難が始まるのは、まだ先のこと。今はその時に備えて、自分を鍛える時だ。実際には、その目的に対する意欲は以前よりも、かなり弱まっているが、自らを鍛えると…
大切な家族。そう思える存在を失った彼だが、その日常は大きく変わらない。変わらな過ぎて、リキなどは、逆に心配になるくらいだ。 朝早くから郊外に出て、走って開墾場所に向かう。開墾と鍛錬を兼ねた作業を行って、午前中の大半を過ごす。その中にはリキ、…
もう何度通ったか数えきれなくなったくらい通い慣れた道。その道を彼は速足で歩いている。本当は駆け出してしまいたいのだが、それを行っては不安が現実のものになってしまうような気がして、逸る気持ちを抑え込んでいるのだ。何もない。あっても、せいぜい…
遂にこの時がやってきた。両親から話を聞かされた彼女の心に浮かんだのは、この思いだ。この段階で説明されたのは養女になることだけなのだが、それでも彼女はこう思う。自分が貴族の養女になることを、彼女は知っていたのだ。養女になるだけでなく、名も変…