月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

四季は大地を駆け巡る #72 うねり

イーストエンド侯爵家の領主館。その執務室で今日も、チャールズとクラウディアは各地から届けられる報告書や決裁書に目を通している。 クラウディアはこういった仕事が得意だ。王家に生まれた彼女。王女であっても、きちんとした帝王教育を受けている。パル…

四季は大地を駆け巡る #71 分かり合えない人たち

「話って、どこでするの?」 武器屋を出て少し歩いた所で、夏が美理愛に話しかけてきた。一秒でも速く、美理愛と離れたい夏。話をしたいのは美理愛であるのに、何も言ってこないことに焦れた結果だ。 「あっ、そうね。じゃあ、お城に戻りましょうか」 「冗談…

四季は大地を駆け巡る #70 転機

真夜中の貧民区。夜の闇に覆われているはずの貧民区は今、赤々とした光に照らされている。自然の光ではない。何者かが火をつけたのだ。 その何者かたちの姿は今も貧民区にある。いかにもという感じの黒装束の男たちが、あちこちで駆け回っている。顔は見えな…

四季は大地を駆け巡る #69 王国を守る盾

勇者が帰還し、いよいよ魔族領侵攻作戦の開始が間近に迫っている。そんな状況であるのに、アレックスはエリザベートの下へ日参する羽目に陥っている。 大事な時期だ。疑いを持たれるような行動は取りたくないのだが、それがエリザベートには通じない。毎日、…

四季は大地を駆け巡る #68 残酷な運命

ネロは地下室へ続く長い階段を降りている。彼一人ではない。彼と淫魔の間に出来た子供たちも一緒だ。 子供たちを母親に会わせてやろうなんて優しさから連れてきたわけではない。そんなことが出来るはずがない。子供たちの母親は鎖に繋がれているのだ。そんな…

四季は大地を駆け巡る #67 種まき

都市連盟の南の外れにある街。そこにある商業ギルドは閑散としている。商業ギルドの職員は忙しい毎日を過ごしているのが一般的であるのだが、この場所は例外だ。 ドワーフの国であるアイオン共和国との国境であるというだけで商業ギルドの支店が設けてあるの…