城代であるカシスに領政を見るに必要な情報の収集を命じたリオンだったが、案の定、望む情報はすぐには集まらなかった。バンドゥには文官と呼べる者が、見事に一人もいなかったのだ。 バンドゥの文官は全て中央から派遣された役人が担っていた。その役人たち…
グレンの行動は止まらない。それはローズでさえ呆れるほどの動きだった。 ストーケンドから離れた山中。周りを銀狼兵団に囲まれて、跪いて震えている大勢の盗賊たちに向かって、グレンは厳しい視線を向けていた。 「さて、お前らの選択肢は二つだ。俺に従う…
領地へ向かう旅も一ヶ月になる。結構な長旅ではあるが、王都周辺しか知らないリオンとエアリエルの二人にとっては、見るもの全てが目新しく、毎日が退屈しない楽しい日々だった。ましてこの旅は、この世界にはない習慣ではあるが、新婚旅行だ。何をしていて…
しばらくは戦争の疲れを癒す為に体を休めて。ハーバードにこう言われたグレンだったが、そもそも彼にそういう習慣はない。時間があれば鍛錬や勉強に費やし、寝る時間以外は何もしないという時を持つことなど出来ないのだ。 それでも何もすることなく一晩だけ…
ゼクソン国王と約束した物資は、半月もしないうちにエステスト城塞に届いた。ウェヌス王国との戦いの為に用意され、前線に近い猛牛兵団駐屯地に置かれていたものを運んできたのだ。 城塞まで物資を運んできたのはゼークト将軍率いる猛虎兵団だった。猛虎兵団…
カロリーネ王女を乗せた馬車は街道を西へと進んでいる。ローゼンガルテン王国の王女である彼女が乗るには相応しくない、行商人が使用するような粗末な馬車だ。さらに乗っている彼女の服装も町娘が着るような粗末、というのはカロリーネ王女が普段着ている服…